——スバルは目を覚ますと、そっと体を起こした。隣ではレムが眠っている。恥じらうように胸元にアッパーシーツを手繰り寄せ、まるで握って欲しいとでもいうよに、右手をこちらに伸ばしたまま。
レムがスバルの手を優しく握り返す。その寝顔を見ながら、さっき二人の間に起きたことを思い返す。
お互い初めてで、うまくいったのかどうかはよくわからない。だが、おそらく自分だけが一方的に快感を得てしまったということはわかっていた。いくら自分を好いてくれているとはいえ、申し訳ないというか、かっこ悪いというか……。それでも、そんな自分に全てを捧げてくれたレムが、心から愛おしい。
なによりも驚いたのは、この充実感だった。自分でするときは快楽が伴うただの性欲処理に過ぎず、そのあとには虚しさと後ろめたさがいつも付いて回った。
ところが、このレムとの体験は、大きな満足感と幸福感があった。好きな女の子とのセックスがこんなに素晴らしいものだったとは。それを教えてくれたレムにスバルは心から感謝した。
——好きな女の子。そう。大好きな女の子。いまようやくわかった。俺、レムが好きだ。きっと、あの時から好きだったんだ。あの日の笑顔を、そしてあの日あの涙を見た時から。いや、もしかしたら、あの時、手をそっと握っていてくれた、その時から。
スバルは、レムに対する気持ちが、他の誰かに対する想いとは、似ているようで全く違っていたことに気が付いた。
いつの間にか、レムが目を開けてスバルの顔をじっと見ていた。お互いニッコリと微笑み合う。
「目が覚めてたんですね」
「うん。レムの寝顔を見てた」
「そんな優しい目で言われると、レムはちょっと困ってしまいます……」
「そこまで優しい目のつもりはないんだけど。……レム、ありがとう」
「どうしたんですか? いきなり」
「いや、お互い初めてっていうことを差し引いても、俺ばっかり気持ちよくなって……でも、嬉しくて……。レムと一つになれて、本当に嬉しいんだ……あ、あの、俺、レムのこと……」
レムはスバルのその言葉を最後まで言わせず、ほほにキスした。そして自分の手をスバルの胸に乗せると、まるでスバルが本当にそこに存在しているかどうか確かめるように、そっと撫でた。
「スバルくんがレムのこと気持ちいいと思ってくれたことは、レムも知ってます。レムはとっても嬉しいです。だって、あんなに……いっぱい……」
胸を撫で回していたレムの手が、さっきまでレムとつながっていた部分に伸びる。やんわりとそれを握って、
「もう全部出たんですか? あの、ようやく小さく……いつものおち……スバルくんに戻りましたね」
ふと、いたずらな気持ちが湧いてきて――。
「レム」
「は、はい、スバルくん」
「ちゃんと言ってくれないとわからない」
「な、何をですか?」
「さっき言いかけただろ?」
「……い、いったい何を」
「今、レムが触っているところ」
パッとレムの手がスバルから離れる。その手をすかさず掴むと、再び自分にあてがって、
「ここ! なんて言いかけたんだ?」
「……」
「ほれ! 言ってみろ!」
「あ、あの……お、おち……」
「うん、なんって?」
わざとらしく、大きな声で聞き返す。レムは、消え入りそうな声で、
「お、おちんちん……」
そういうと、スバルの胸に顔を埋めながら、
「スバルくん、意地悪過ぎます……」
掴んでいたスバルのものをぎゅーっと握りしめた。
「痛い! 痛い! 痛い!」
そう叫ぶスバルを無視して、上目遣いで可愛らしく睨みつける、レム。
「今のはスバルくんが悪いです!」
「ごめん! ごめん! 悪かった! 悪かったって! もう言わせないから!」
握った手を離さないレムに、スバルは本気モードで謝罪する。
「ほんとですか?」
「ほんとだって! ほんとだってば!」
「じゃあ、許してあげます」
「ううううっ」
「そのかわり」
スバルを握っていた手の力をようやく緩めながら
「あの……男の子の……スバルくんのこと、もっと教えてください」
「教えるって、何を?」
「あの、この、お……」
「お?」
「おち……もう、いやぁん!」
「レム、自分で言いかけて、自分で恥ずかしがるなよ! わかったよ、なんでも言うよ。このおちんちんが、なに?」
苦笑いしながら、スバルは優しく聞き返す。
——レムは気づいているだろうか。素の自分が表に出始めていることに。
「あ、あの……大きい時と普通の時と、どうやって……」
「どうやって?」
「……」
「ああ、わかった、わかった。どうしたら大きくなって、どうしたら普通に戻るかって?」
レムは返事をする代わりに、キュッと握り返す。
「まず、女の子の裸を見ると、大きくなる! それと、エッチなことを考えたり、触ったり、あの、触られたり」
黙って聞いているレム。
「と、とにかく、いろいろ刺激を与えられると、大きくなっちゃうんだよ」
「でも、スバルくん。スバルくんは、寝ている時、何もしていないのに、その……大きくなっていましたよ?」
「え? い、いつ見たの? ああ、さっきか。びっくりした」
「そ、そうです。さっき、レムがお部屋に来た時に、あの、大きく……」
「う、ん? なんかちょっと怪しいけど……。まあ、いいか。そう、そうなんだよ。寝ている時とか、朝起きた時はいつも大きくなってるかな」
「毎朝、ですか?」
「ほとんど毎朝」
「それを、どうしてるんですか?」
「それ、言わなきゃダメ?」
――きゅっ。
「わ、わかった。言うよ。 自然とおさまるのを待つか、自分で出すんだよ」
「自分で、毎朝? 毎日? するんですか?」
「いや、毎朝、毎日ってことはないけど」
さらにレムの指に力が入る。
「ああ、あの、たまに、いや何日かに一回、その、時間が! あの、時間のあるときに! ね、寝る前とか! わ、わかった。正直に言う、言う! 毎日してた。いや、毎日何回もしてた! してました! 御免なさい!」
「ま、毎日……何回も……」
「で、でも、この屋敷に運ばれて来てから、それどころじゃなかったし、しばらくの間、出してなかったんだよ」
「じゃあ、レムが……あの、した時、いっぱい出たのは……」
「んー、そう。ずっとしてなかったし、すごく溜まってたんだと思う」
「で、でも、今日もたくさん出ましたよね? 一日であんなに溜まるんですか?」
「いや、おまえ、質問に遠慮がないな。痛い! 痛い! は、はい。そうです! たくさん出たよ。たくさん出しました! でもそれはさ、レムが」
「レムが?」
「レムが、その、だ、大好きで、可愛くて、綺麗だったから!」
「だい……すき……」
その言葉に顔を真っ赤にするレム。呼応するように、レムの手に力が入る。
「痛い! 痛い! 痛い! 痛い!」
「あ! ご、ごめんなさい! つ、つい……」
強く握っていた指から力が抜けた。
「ふうっ。でも、ほんとなんだ。レムがあんまりに可愛くて綺麗で、俺なんかに、その、いろいろしてくれたり見せてくれたり。多分それでたくさん出たんだよ」
「そ、そうなんですね……ほ、ほかには?」
「あ、あとは、ぼーっとしている時とか、外で、眠い時とかにも大きくなって、焦ることがあるんだよな。あれ、自分の意思とか関係ないから、非常に困る!」
なぜかここで、男の子の生理の不合理さを訴えるスバル。
「へええ。そんなことが……女の子も、その、いろいろ大変ですけど……男の子も違うところで大変なんですね。レムは知りませんでした」
興味津々といった表情をスバルに向ける。
「そうなんだよ。うん。それを隠すのがまた大変で。ズボンのポケットに手を入れて隠したり」
「ポケットに手を。じゃあ、スバルくんがポケットに手を入れている時は……」
「ばか! 何を言っているんだ! いつもじゃない! いつもじゃあ!」
レムはクスクスと笑って、
「今こうやって触ってるのに、ちゃんと固くなって無いですよ? ううん、ふだんより少しは、あの……ですけど」
いわゆる半立ち状態のことだ。
「レムは、そうやって自分で言って勝手に恥ずかしがるよな。そういうレム、かわいいな!」
——きゅうっ。
「わ、わ! いや、たくさんレムにしてもらったし、その、レムの中には、入れて……今は身も心も満足してるんだよ。うん。でもそうやってレムに触ってもらうと、その、やっぱり気持ち、いい、かな」
これはスバルも意外だった。触られ続けると、最後には射精という結果を得ないと満足しないと思っていた。ところが今は、レムにこうして触ってもらえているだけで、出すという以外の気持ち良さと満足感を感じている。
それを聞いてスバルの隣で、にっこり笑うレム。
「あと他には? スバルくんの秘密をもっともっとレムに教えてください」
「秘密って言ったって、もう、そんなに無いよ」
「ええー、本当ですか? スバルくん」
「じゃあ、俺もレムのこと聞いていいか?」
「レムに答えらえることなら……あの、あんまり恥ずかしい質問はダメですよ」
「えー? 俺には恥ずかしいこと聞いておいて。痛い! 痛い! わかった!
わかったって! んー、それじゃあ、そうだなぁ」
本当は聞いてみたい恥ずかしいことは、山ほどあるのだが。目をぐるりと回しながら、考える。
と——。
「そうだ! あの、魔獣騒ぎの時にレムが使っていたあの鎖のついたやつ」
「え?」
「あの鉄球、いつもどうやって持って歩いてるんだ?」
想定外の質問に戸惑うように、
「ど、どうやって武器を持ち歩いているか、ですか? な、なんで今そんなことを……」
「い、いや、だって、恥ずかしい質問はダメだっていうから」
「そ、それは……」
「それは?」
「……乙女の秘密……です!」
少しだけむくれた顔で、
「スバルくんはやっぱり意地悪です……」
レムはそう言ってスバルの胸に顔を埋め、握っている手に力を込めた。