※この作品はR-18です。

紫紺の夢   作:Kuro Maru

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黒の章・1

——知ってる天井だ。

 

 気づくと、ベッドに横たわっていた。前にもおんなじことがあった。もちろん覚えている。最後に目覚めたのはいつだったか。

 

——ああ、そうか。あの魔獣騒ぎの時か。あの時はそばにレムがいてくれた。手を握っていてくれたっけ。そのあと、いろんな話をしたな。そういえば、あれから随分明るくなったよな。

 

——ところで、今回は一体何があった?

 

 頭がぼーっとして、状況が理解できない。

 

——そもそも俺、なんでここで寝てるんだ?

 

「!」

 

 スバルはとっさに起き上がろうとして、ぎょっとした。体に全く力が入らない。

 

 天井を見上げていた目を閉じ、もう一度体を動かそうと試みる。だが、首を動かすことすらできないのだ。間を空けずにひどい頭痛が始まって、目の奥が痛い。喉も焼けついたようにヒリヒリする。

 

「気がつきましたか? スバルくん」

 

 聞き慣れた声が、自分の右側から聞こえた。

 

「あ……う……」

 

 口から出てきたのは、自分が思ってるよりずっと掠れた声だった。

 

「レムです。わかりますか? スバルくん」

 

 聞き覚えのある声。いつもは冷静で、でも最近は慌てたり怒ったり涙ぐんだり。年相応の喜怒哀楽を見せてくれるようになった女の子。レム。そのレムが、自分の名前を呼んでいる。泣いている様な鼻にかかった声で。

 

「え……え、む?」

 

「はい。スバルくんのレムです!」

 

 首も回せないスバルの右ほほに、小さくて暖かな手がふれた。

 

「お、お……おうして……」

 

 ひどい頭痛と喉の痛みで、どうにもこうにも、言葉にもならない。

 

「あまり無理に話そうとしないで、今はまだ、何も考えずにゆっくり休んでください」

 

 スバルは痛みをこらえて、視線をレムに向けた。彼女の青くて優しい瞳が、前髪の奥から自分を見つめている。泣いているのか、微笑んでいるのか、その表情からは何も伺えない。

 文字通り何も言えずにいると、突然、レムの顔がスバルの顔に近づいた。ふんわりといい匂いがスバルの鼻腔をくすぐったその瞬間、レムの小さな唇が、スバルの唇に触れた。

 

「む、ん~~~んっ!」

 

 冷たくてほんの少し甘みのある液体が、スバルの口にするりと入り込んでくる。

 

「お薬です、スバルくん。それを飲んで、今はゆっくり寝てください」

 

 涙を浮かべ、ほほを赤らめながら、レムはスバルに優しく言った。レムが口移しで飲ませてくれた液体は、スバルの乾いた喉に心地よく滑り込んだ。

 

「ほぉぉっ」

 

 状況は全くわからない。一体全体何が――その先を考える前に、スバルは眠りに落ちた。

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