——知ってる天井だ。
気づくと、ベッドに横たわっていた。前にもおんなじことがあった。もちろん覚えている。最後に目覚めたのはいつだったか。
——ああ、そうか。あの魔獣騒ぎの時か。あの時はそばにレムがいてくれた。手を握っていてくれたっけ。そのあと、いろんな話をしたな。そういえば、あれから随分明るくなったよな。
——ところで、今回は一体何があった?
頭がぼーっとして、状況が理解できない。
——そもそも俺、なんでここで寝てるんだ?
「!」
スバルはとっさに起き上がろうとして、ぎょっとした。体に全く力が入らない。
天井を見上げていた目を閉じ、もう一度体を動かそうと試みる。だが、首を動かすことすらできないのだ。間を空けずにひどい頭痛が始まって、目の奥が痛い。喉も焼けついたようにヒリヒリする。
「気がつきましたか? スバルくん」
聞き慣れた声が、自分の右側から聞こえた。
「あ……う……」
口から出てきたのは、自分が思ってるよりずっと掠れた声だった。
「レムです。わかりますか? スバルくん」
聞き覚えのある声。いつもは冷静で、でも最近は慌てたり怒ったり涙ぐんだり。年相応の喜怒哀楽を見せてくれるようになった女の子。レム。そのレムが、自分の名前を呼んでいる。泣いている様な鼻にかかった声で。
「え……え、む?」
「はい。スバルくんのレムです!」
首も回せないスバルの右ほほに、小さくて暖かな手がふれた。
「お、お……おうして……」
ひどい頭痛と喉の痛みで、どうにもこうにも、言葉にもならない。
「あまり無理に話そうとしないで、今はまだ、何も考えずにゆっくり休んでください」
スバルは痛みをこらえて、視線をレムに向けた。彼女の青くて優しい瞳が、前髪の奥から自分を見つめている。泣いているのか、微笑んでいるのか、その表情からは何も伺えない。
文字通り何も言えずにいると、突然、レムの顔がスバルの顔に近づいた。ふんわりといい匂いがスバルの鼻腔をくすぐったその瞬間、レムの小さな唇が、スバルの唇に触れた。
「む、ん~~~んっ!」
冷たくてほんの少し甘みのある液体が、スバルの口にするりと入り込んでくる。
「お薬です、スバルくん。それを飲んで、今はゆっくり寝てください」
涙を浮かべ、ほほを赤らめながら、レムはスバルに優しく言った。レムが口移しで飲ませてくれた液体は、スバルの乾いた喉に心地よく滑り込んだ。
「ほぉぉっ」
状況は全くわからない。一体全体何が――その先を考える前に、スバルは眠りに落ちた。