あのキスから数日が過ぎた。スバルの体調は少しずつ良くなってきている。顔色もいいし、体もずいぶん動くようになっている。何より、自分の作った食事を美味しそうに食べてくれる。それが一番嬉しい。
ベッドに体を起こしているスバルの口元にスプーンを当て、嬉しそうに食事の世話をするレム。
ただ一つ、気になることもある。ここ二日ほど、レムが入っていくと、スバルはなぜか気まずそうな、ちょっと苦しいような顔をするのだ。そして、やっと動くようになった手でタオルケットをお腹のあたりにまとめると、それをなかなか離そうとしない。
トイレに関しては、すでにレムかラムが連れていくことで解決し、もう普通の下着をつけている。とはいえ、何日も体を綺麗にしないなんて、あまりに不潔だ。ただでさえお風呂に入っていないのに!
そんなことを考えながら、薬の準備をしていると、
「な、なぁ、レム。その薬、まだ飲まないとダメなのか? それに、口元に持って来てくれたら、普通に飲めるんだけど」
スバルがそう言った。
「ダメですよ。まだ」
「いや、けっしてダメじゃないと思うんですが」
「絶対にダメです。全部レムに任せて、いえ、やらせてください! そもそも、ベアトリス様が、毎回新しいお薬を調合してくださっているおかげで、スバルくんは起き上がれるようになったんですよ! ですから、全部、一滴残らず飲んでもらわないと。それがレムの役目でもあるんですから!」
「ベアトリスの、薬?」
「さあ、横になって、目を閉じてください」
スバルをベットに横たえ、いつものように薬を口に含んで、スバルに飲ませる。薬の成分が変わったのか、この数日、薬を飲んでスバルがすぐ寝てしまうということがなくなっていた。そのせいで口移しで飲ませるたびに、どうしてもスバルと目が合ってしまう。その都度、あまりの恥ずかしさで、つい素っ気なくしてしまう、レム。
そして今も、あの時のことを思い出して、さっと口を離そうとした——しかし今度は、突然スバルの舌が伸びてきて、レムの唇をいきなりくすぐった。
びっくりして唇を離したレムは、両手を口に手を当てて、スバルの顔をじっと見つめる。
赤い顔をして、ふいっと顔を背けるスバル。
「クスッ」
——スバルくん! スバルくん! 大好き!
努めて何もなかったように振る舞うと、今日こそはと、レムは言った。
「こ、こほん。さ、さあ、寝る前に、体を拭きましょうか、スバルくん」
「いや、今日はいいよ。うん。今日はやめておく」
「ダメですよ。ここ何日か、綺麗にしていないじゃないですか」
「いや、いいって」
「だめです!」
なぜここまで頑ななのか、わからない。
「いやって言っても、今日は拭いちゃいますよ!」
そう言って、スバルに掛けられているタオルケットを引きはがそうとするレム。
「た、たのむ。い、いや、お願いします! お願いですから、それだけは——」
突然、レムの胸が何かに掴まれた。
「ひゃっ!」
そこからじーんという感覚が体を駆け抜ける。
気づくと、スバルの左手がレムの胸を鷲掴みにしていた。
突然のことに、スバルの手から離れようとしたレムは、手をついて、スバルの横にへたり込んだ。ベッドに着くはずだったその手が、スバルの体の何かに触れた。何か棒状のものが、レムの小さな手の中に綺麗に収まっている。
「あ……」
レムは自分の手元に目をやると、一体何に触れているのかを瞬時に理解した。その途端、顔が火を吹いたようにカーッとなって、体が動かなくなってしまう。
——こ、これ……いつものスバルくんじゃなくなってます……。ど、ど、どうしましょう……。
長い時間が流れたように感じた。どうしていいかわからず、でも、なにか強力な力で引き寄せられているように、そこから手を離すことができない。
——な、何もなかったことに、す、するしか……で、でも一体何を言ったら……。
「うぁぁぁ、ごめん!」
その声にようやくレムは我に返った。あわててスバルに触れている手を引っ込め、顔を伏せながら胸の上で両手を握った。
「ごめん、ごめん、ごめん、ごめん!」
「……」
「わざとじゃないんだ! わざとじゃぁぁぁぁ!」
——スバルくんに恥ずかしい思いをさせたくない……それに……。
「あ、あの……スバルくん」
ゆっくりと顔を上げ、スバルを見つめる、レム。頬が熱い。声が震える。目が涙で潤むのがわかる。
「スバルくん、レムは、レムは男の子のこと、あんまり解んなくて……でも、いま、あの、スバルくんの……あの……」
いつだったか、フレデリカが教えてくれた、その部分のこと。その変化のこと。
「あ、あの、スバルくん。レムはもう子供じゃありませんから、これがどう言うことなのかはわかります。いえ、ちゃんとはわかりませんけど」
声が小さく震えているのが自分でもわかる。
「あの、ここ数日、スバルくんが、その、体を……その、苦しそうだったのは、あの……これのせい、ですか?」
スバルはレムの視線から顔を背けると、赤い顔をして、
「いや、そ、それは、その」
消えるような声で答える。
その声に呼応するように、スバルの隣に腰を下ろしたまま、レムは再び俯いた。
時間が過ぎた。開け放たれた窓の外から、虫の声だけが聞こえていた。
「あ、あの……」
スバルが何かを言いかける。それを最後まで言わせないように、思い切ってスバルの手を取って、破裂しそうな自分の胸にあてがうレム。
「スバルくん。レムのドキドキ、わかりますか? すごくドキドキしているの、わかりますか? スバルくん」
レムの心臓の鼓動が早くなる。メイド服の上から触れているスバルの手が熱い。ジンとした感覚が再び胸から体に伝わる。口が、喉が乾く。
ようやくスバルが顔をレムの方に戻した。二人の目と目が合う。
大好きな、大好きな男の子の顔がそこにある。そして、そして。
一度大きく息を吸ってから思い切って口にする
「スバルくん、さっきスバルくんの、その……あの……触ってしまったとき、びっくりしましたけど……でも、あの、とっても嬉しかったんです!」
「え?」
「スバルくんが元気になってるって思って。だ、だって、こ、これってそうですよね? だから、とっても嬉しいんです。でも、スバルくんのその苦しそうな顔を見ると、どうしていいのか、わからなくて……。だって、レムのせいでこんな……」
——スバルくん! スバルくん! スバルくん!
「だ、だから、スバルくん、レムがお手伝いします。レムのせいなんです。だから、全部レムが!」
レムはそう言うと、再び、今度はしっかりと、大きくなったままのスバルの上に右手を優しくあてがった。
「うっ」
その声に驚いて、一瞬手を離す。
「ご、ごめんなさい。痛くしちゃいましたか?」
「い、いや、ちが……そ……ちがくっ」
レムはホッとして、改めて右手で、今度はゆっくりと形を確かめながら、まるで子猫を撫でるように、優しく優しく、タオルケットの上からその手を動かした。
手に伝わってくる熱さと脈動に、ドキドキが止まらない。スバルを見ると、目を固くつぶったまま、息を荒くしている。
一度手を離したレムは、ゆっくりとスバルからタオルケットを取り去った。固くなって上を向いたものが、ガウンから見えている下着を押し上げている。ガウンの前合わせをすっかり開いてはだけ、その手が一瞬止まる。そして勇気を出して、下着をスバルから取り去った。
と、今まで見たことのない男の子の器官が、上を向いてピッタリと下腹に張り付いていた。
スバルが意識を取り戻す前から、そして取り戻してからも、しばらくは実際に手にして、見慣れたもののはずのもの。ところが目の前にあるのは、今まで、想像もしていなかった別のものに姿を変えていた。
朝食に並ぶ腸詰肉のようだったその器官は、故郷でよく目にした大きい蕈の類——なんという名前だっただろう——にそっくりな形に変貌している。固く太くなった先端に目をやると、そこを半分ほど包んでいた皮の部分はすっかりめくれ、鮮やかな赤ピンク色の傘が艶やかに大きく膨らんでいた。
ただそれを見ただけで、レムは気が遠くなりそうな感覚を覚えた。気絶しそうなくらい、激しく胸がドキドキする。
「す、スバルくん。レムに教えてください。どうしたら、いいですか?」
レムはそう言って勇気を振り絞ると、恐る恐るその白くて細い指でスバルをやさしく握った。柔らかかったはずのその部位は、まるで骨が入っているように固く、その先端は驚くほどに赤く怒張していた。レムの小さな手に、自分の心臓と同じような、どくどくという鼓動が伝わってくる。熱を持ったように熱くなった先から、透明な液体が滲み出て、レムの指をしっとりと濡らした。
顔が火照る。さっきから心臓が爆発しそうだ。恥ずかしさと緊張で、レムの口腔もカラカラに乾いていく。手伝うとは言ったものの、どうしていいかわからず、その手で握ったまま動かせずにいると、スバルが少しずつ自身の腰を上下に振り始めた。動かないレムの手の中で、動かない体を懸命に動かしていた。
「こうするんですか?」
スバルの下腹部を優しく押さえ、その動きを止めてから、今度はレムの手をさっきスバルが動かしていたように、ゆるゆると上下に動かしてみると、
「あ……」
スバルの口から声が漏れる。
そこを軽く、でも、しっかりと握っているのに、なぜか指は上下に動かせた。そして、ツヤツヤしている先端部分からは、ぬるぬるした透明な液体が絶えず流れ出していた。その液体が指の間に流れ込んでくる。すると、上下の指の動きはますます滑らかになった。
ほんのすこしの時間、そうしていると、
「ううっ、くっ」
突然スバルが苦しそうな声をあげる。レムはその手を止めて、
「スバルくん、大丈夫ですか? どこか苦しいんですか?」
そう聞いた。
「気持ちいいんだ。ものすごく気持ちがいいんだ、レム」
嬉しい言葉が返ってくる。
「そ、そのまま……」
「……はい……スバルくん」
レムは自分が興奮しているのを全く自覚していなかった。スバルに気持ちよくなって欲しいと、それだけを考えていた。
そう、それがとても気持ちいい行為であることは、知識として知ってはいた。その行為が男の人にとって、我慢ができないものだということも。だから、スバルにも我慢して欲しくなかったし、もっと良くなって欲しかった。
先ほどと同じように握っていた手を上下に数回動かすと、急に握っているものがぐっと固く、そして太くなった。と、同時に、スバルが声をあげて痙攣する。
「ううっ、いくっ!」
突然スバルが呻いた。
「えっ? えっ?」
スバルの切迫した声と、引付けを起こしたような体の動きに驚いて、レムは思わずその手を彼から離してしまった。
それと同時に、スバルの先端の割れ目から、白濁した液が勢いよく放出された。
「わっ! び、びっくりしました!」
初めて見る光景だった。
最初に飛び出た白い体液は、放物線を描いて、仰向けで寝ているスバルの顔の近くまで飛び、続けざまに胸、腹、そして下半身に飛び散った。
「レム、レム! やめないで! そのまま続けてくれ!」
スバルの懇願する声に、レムは我に返った。急いで手を伸ばすと、スバルの硬い部分を握り直し、再びその手を動かす。
小さな白い手に握られたものは、熱く、そしてびくんびくんと波打っている。先ほど勢いよく飛び散った白い液は、今では少しの量だけが、その先端から漏れている程度になっていた。
——これが赤ちゃんの……。
レムが実際に精液を見るのはこれが初めてだった。もちろん男の子の怒張したものを見たのも触ったのも、射精の瞬間を見るのもこれが初めてだった。