※この作品はR-18です。

紫紺の夢   作:Kuro Maru

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青の章・11

「さあ、一度体を綺麗にしますね!」

 

 体にタオルをあてがい、汗と激しく飛び散ったものを綺麗にしていると、

 

「わ、わりぃ……」

 

 小さい声でスバルが言った。

 

「なんで謝るんですか? レムはスバルくんに気持ちよく……い、いえ、そもそも、今度のことはレムが……」

 

——そう。元はと言えばレムが……。

 

 思い出したら、涙が滲んてきた。

 

「そういえば、そんなことを言っていたな。何がどうして、どうなったんだ?」

 

「…………」

 

「そんなに言えないことなのか?」

 

「い、いえ、そういうわけでは……ただ、あの……」

 

 さっきまでとは違う意味で、鼓動が激しくなる、レム。

 

「ただ?」

 

「スバルくんはきっと怒るし、レムのこと嫌いになってしまいます……」

 

「いや、怒るとか嫌いになるとか、何があったのか分からなきゃ怒るに怒れないと思うぞ! それに、俺がレムを嫌いになるとか、あるわけないから!」

 

「ほ、ほんとですか?」

 

「ほんとだ!」

 

「ほんとに、ほんとですか?」

 

「ほんとにほんと……って、子供の言い合いじゃないんだから!」

 

「わ、わかりました」

 

——言わなきゃダメです。きちんとお話をしなければ……。

 

 レムはスバルにタオルケットを掛けると、ベットの横に椅子を引き寄せて座った。覚悟を決めて、スバルに向き直る。

 

「じ、実は……」

 

「実は?」

 

 スバルの体が起き上がり、ふむふむ、と言うようにレムの顔を覗き込んだ。その視線に耐えられず、目を伏せてしまうレム。その口がようやく開いた。

 

「スバルくんが食事中に倒れたのは、内臓が炎症を起こす病気で……その病気はそれほど珍しくないのだそうですが——」

 

「内臓? そういえば痛かったは右の下っ腹だったような。あれか? 盲腸的なやつ?」

 

「もうちょう? レムにはよくわかりませんが、とにかくお薬を飲めば、一日二日くらいでよくなる病気ということで……」

 

「手術とか、こっちにはないのか。まあ、薬飲んで一日二日で治るんなら……いや、まてまて。俺は一週間寝てたって言ってたな。そもそも盲腸で体が動かなくなるってなんだ? 体が動かなくなる薬なのか?」

 

「じ、実は……」

 

「実は、はさっき聞いた。で、なにがあった?」

 

「ちょうど何日か……前に……あの……」

 

 レムの声がだんだん小さくなる。

 

「いいか、レム。腹を割って話そう。もう俺の恥ずかしいところはレムに全部見せた。今更隠し事は無しだ!」

 

「は、はい……。その、ちょうど村で珍しい木の実が手に入って……」

 

「珍しい木の実? まさかそれ、惚れ薬とか言うなよな!」

 

「い、いえ、あ、あの……その、それを煎じて飲むと、最初に目に入った人のそばから離れられなくなると言うか……、あ、惚れ薬と言うのとは違う気がするのですが……」

 

 額に手を当てて絶句しているスバルの姿が、否応無しに目に突き刺さる。恐る恐る、言葉を続ける、レム。 

 

「で、ですね……」

 

「レム。当ててみせよう。そのなんとかという実をある人物に飲ませた翌日、それは、とんでもない効果をその人物に発揮した、で合ってるか?」

 

「いえ、ちょっと違います。お夜食と一緒に煎じてお持ちしたのですが、スバルくんはもう寝てしまっていて……。それで、あの、朝の食事に少しだけスパイスがわりに……使って……みた……のですが……」

 

「で?」

 

「その、スバルくんが急に倒れてしまって、すぐにお屋敷にあったお薬を……そのお薬をスバルくんに……。でも、あの、レムがスバルくんに食べてもらった実は、その、お薬とは一緒に飲んではいけない組み合わせだったようで……」

 

「で?」

 

「あ、あの……そのせいで、スバルくんの体が……あの、全身があのボロボロに……なりかかって……」

 

 あの瞬間の光景が蘇って、涙が溢れてきた。

 

「レムの、レムのせいです! レムのせいでスバルくんが、スバルくんが!」

 

 もうこれ以上は続けられなかった。レムはベッドに泣き伏した。

 

「わ、わかった! わかったから! もういい! もうわかった!」

 

「レムが一生懸命看病してくれたおかげで、もうほとんど治ったから!」

 

「ごめんなさい! ごめんなさい!」

 

「レム、もう十分だから。もう泣かない泣かない。ほら、顔あげて!」

 

「スバルくん、レムのこと嫌いに……」

 

「なってねーよ。そりゃ、ちょっとやりすぎだとは思うぞ。でも、嫌いになんてなってないって!」

 

——そんな優しい言葉をかけてもらう資格がレムには……。

 

「だいたいだ。そんなことがあったからこそ、レムに……レムに、その、あの……色々してもらえて……」

 

 スバルの声が一瞬躊躇する。

 

「とにかく、だ。嫌いじゃないって! なんなら、もう一回、いや、一回と言わず何回だって、その、キ、キスとかしてあげても良くってよ!」

 

——スバルくん! スバルくん! スバルくん! 

 

 その言葉を聞いたレムは、ベッドに飛び込むと、夢中でスバルの唇に吸い付いた。

 

—— んんっ……

 

 ひとしきり情熱的なキスが終わると

 

「大好きです。スバルくん」

 

 そう言ってレムは、スバルの胸に顔を埋めた。スバルの手がレムの細い肩に抱きかかえ、空いている方の手が彼女の青い髪を優しく撫で続けた。

 

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