パッと目が覚めた。一瞬どこにいるのか、理解できず身を固くする。何か温かいものが自分の肩に回されている。自分の手も、暖かなものに触れている。その暖かさがなんなのかを思い出して、安堵のため息が漏れた。
ゆっくり上下している胸板越しに、スバルの顔を見上げる。
——スバルくんの寝顔、やっぱり可愛い……。
胸の上に乗せていた手を、ゆっくりとスバルの下半身に移動する。レムは、さっき自分の中に入っていた部分を探しあてると、今は柔らかいままのスバルにそっと触った。
それはそこにあるのに、まだ自分の中に入っている感じがする。
——不思議ですね。スバルくんのここがレムの中に入って、熱くて、暖かくて、ちょっと痛くって。スバルくんが一生懸命優しくしてくれて。レムもスバルくんにいっぱいしてあげたくって。
お互いの鼓動が一つになるような、スバルが自分の中で溶けていくような、あの不思議な感覚を思い出すと、目頭が熱くなる。
ひとつになる前の、あの強烈な感覚を与えてくれたスバルの唇を思い出すと、今度は顔から火が出るほどの恥ずかしさで身悶えてしまう。
自分の口を使ってしてあげた時の、スバルの反応。
スバルの上に跨って、初めてあの感覚を体験したこと。
初めて、自分の手で、スバルにしてあげられた時のこと。
一生懸命隠そうとしていたスバルのあの顔。
初めての甘い甘いキス。
その全てが、自分にとってかけがえのない、大切な大切な思い出と経験になった。スバルが倒れたのは自分のせいだが、それがなければ、もしかしたら……、そう思ってしまう。
——レムは、少しずるい女の子なのでしょうか……。
スバルを握っている手を、やわやわと動かし続ける。手に暖かさを感じながら、取り留めない思いが流れてゆく。
あの日、あの出来事も、もしかしたら、今この時のために誰かが用意した試練だったのかもしれない。スバルが村の子供たちを助けようとしなければ。あの時、自分がスバルに手を差し伸べるのをためらわなかったら。もしあの時——。
その思いが、ラムへと分岐する。たった一人の自分の肉親。あの日から、自分の姉だけが全てになり、そのためだけに生きてきた。そうしなければならなかった。そう愛さなければならなかった。だから、他の誰かが二人の間に入り込むことなど、考えもしなかった。
でも今は、体の奥深くで、スバルという存在が根を張り始めている。だが驚いたことに、そのスバルという木は、レムから養分を根こそぎ吸い取ってはいなかった。そこにはラムという大切な大切な木も、今まで通り枯れずに存在していた。
たった一人だけしか愛してはいけないのではない。誰か一人を愛するために、他のだれかを捨て去らなくてもいい。愛は、等しく増えていくものだと知った。
スバルというその存在は、自分を暗闇の中から救ってくれただけでなく、とても大切なことを教えてくれた。この大好きな木が自分の中で大きく育ったら、一体どんな花を咲かせるのだろう。どんな実がなるのだろう。
その花を一緒に愛でられるなら、その実を一緒に口にすることができるなら、それはどんなに素敵なことだろう。
それを思うたびにレムの心は暖かさで包まれた。
だから。
——スバルくんはエミリア様のことが好きって、レムは知っています。でも、スバルくんがエミリア様のことを想っているのと同じくらいに、レムはスバルくんが大好きです。ですから、スバルくんの中のレムの木は……大きさはどんなでもいいですから、スバルくんの中で枯れないでいてくれたら、どんなに幸せでしょう。お願いです。小さな小さな苗木かもしれませんが、スバルくんのどこかに、ずっと、ずっと——。
いつの間にか体を起こして、スバルの顔を見つめていた。涙が頬を濡らしている。
——い、いけません。未来の話は笑ってしないとダメなんですよね?
と、スバルの体が大きく動いた。
——はっ!
触っていたものからパッと手を離して、涙を拭う。自分の胸が丸見えになっているのに気づいたレムは、慌てて胸元にシーツを手繰り寄せると、スバルの隣で横になって目を瞑った。
スバルが起き上がる気配がした。目を瞑っているのに、スバルの視線を感じる。
——あ! つい、寝たふりをしてしまいました!
しばらくして、スバルの手がこちらに近づいてくるのがわかった。
——す、スバルくん。もしかして、もしかして!
伸ばしているレムの右手を、スバルの手が優しくそっと包み込んだ。
ホッとして、ちょっとがっかりして、そしてとても嬉しくて。
——れ、レムは、ちょっと変です。かなり変です。どうしましょう!
スバルの指が自分の指と絡み合う。レムはそれが嬉しくて、その手を握り返した。
「……起きて……いるのか?」
思わずにやけてしまいそうになるのをぐっとこらえて——そっと薄眼でスバルの顔を見る。スバルは優しくて、ちょっとだけ真剣な眼差しで自分を見つめていた。
——スバルくん……スバルくんは今、何を思っているんですか? ああ、今、スバルくんの心の中が見えたらいいのに……。
スバルがレムの視線に気づいて、にっこりと微笑んだ。その笑顔ひとつで、体の奥に暖かさが広がっていくのがわかる。その暖かさが嬉しくて。
「目が覚めてたんですね」
「うん。レムの寝顔を見てた」
——あの時と同じ、優しくて暖かい眼差し。
「そんな優しい目で言われると、レムはちょっと困ってしまいます……」
「そこまで優しい目のつもりはないんだけど。……レム、ありがとう」
「どうしたんですか? いきなり」
「いや、お互い初めてっていうことを差し引いても、俺ばっかり気持ちよくなって……でも、嬉しくて……。レムと一つになれて、本当に嬉しいんだ……あ、あの、俺、レムのこと……」
——スバルくん! レムはその言葉だけで、十分です。今わかりました。レムがスバルくんの中に、ちゃんといるんですね。それだけで、どんなに嬉しいか!
レムはスバルの頬にキスをすると、その胸に手を置いて、
——この胸の中のどこかに……。
探るように、スバルの胸の上を撫でた。
「スバルくんがレムのこと気持ちいいって思ってくれたことは、レムも知ってます。レムはとっても嬉しいです。だって、あんなに……いっぱい……」
レムは、その瞬間のスバルの表情と、熱いものが自分の中に放たれた時のなんとも言えない幸福感を思い出しながら、そう言った。
その手はふたたび、スバルの股間に伸びていた。その理由は自分でもわからなかった。触り心地がいいからなのか、それとも自分にはないものだから、なのか。もしかして、スバルを独り占めしている気がするのかも知れない。
「もう全部出たんですか? あの、ようやく小さく……いつものおち……スバルくんに戻りましたね」
気になっていることが、つい口から出てしまった。
「レム」
「は、はい、スバルくん」
「ちゃんと言ってくれないとわからない」
——どき。
「な、何をですか?」
——どき。どき。
「さっき言いかけただろ?」
——どき。どき。どき。
「……い、いったい何を」
——それ以上は、言わないで! スバルくん!
「今、レムが触っているところ」
——ああ……そ、それは、レムの口からは言えません!
さっとそこから手を引こうとするレム。ところがその手をスバルがとり、さっきまで触っていた場所に、強引に戻した。
「ここ! なんて言いかけたんだ?」
——ご、強引なのは決して嫌いじゃありませんけど……さすがにこれは恥ずかしいです!
「ほれ! 言ってみろ!」
——す、スバルくん。い、言わないと、ダメでしょうか? ダメ、ですか?
「あ、あの……お、おち……」
——れ、レムは、も、もう。ゆ、許してほしいです……。
「うん、なんって?」
レムが覚悟を決めて、その言葉を口にする。
「お、おちんちん……」
恥ずかしさのあまり、スバルの胸に顔を埋めながら、
「スバルくん、意地悪過ぎます……」
掴んでいたスバルのものをぎゅーっと握りしめた。
「痛い! 痛い! 痛い!」
レムはスバルの顔を見上げて、
「今のはスバルくんが悪いです!」
少しむくれた表情で言った。
「ごめん! ごめん! 悪かった! 悪かったって! もう言わせないから!」
「ほんとですか?」
「ほんとだって! ほんとだってば!」
「じゃあ、許してあげます」
「ううううっ」
「そのかわり」
握っていた手を緩めて、
「あの……男の子の……スバルくんのこと、もっと教えてください」
「教えるって、何を?」
「あの、この、お……」
——あ!
「お?」
「おち……もう、いやぁん!」
——もう! もう! 本当にスバルくんは意地悪です!
「レム、自分で言いかけて、自分で恥ずかしがるなよ! わかったよ、なんでも言うよ。このおちんちんが、なに?」
スバルの優しい声が返ってくる。レムは気になっていたその部分のことを口にする。
「あ、あの……大きい時と普通の時と、どうやって……」
「どうやって?」
——ああ、なんて聞けばいいんでしょう?
「ああ、わかった、わかった。どうしたら大きくなって、どうしたら普通に戻るかって?」
——そ、そうです! それです! スバルくん!
意識せず、手に力が入る。
「まず、女の子の裸を見ると、大きくなる! それと、エッチなことを考えたり、触ったり、あの、触られたり」
——は、裸を見ると、ですか? レ、レムの裸も?
「と、とにかく、いろいろ刺激を与えられると、大きくなっちゃうんだよ」
——あ、でも、でも!
「でも、スバルくん。スバルくんは、寝ている時、何もしていないのに、その……大きくなっていましたよ?」
「え? い、いつ見たの?」
——ぎく! そ、それは……。
「ああ、さっきか。びっくりした」
——ああ、スバルくん! ないすふぉろーです!
「そ、そうです。さっき、レムがお部屋に来た時に、あの、大きく……」
「う、ん? なんかちょっと怪しいけど……。まあ、いいか。そう、そうなんだよ。寝ている時とか、朝起きた時はいつも大きくなってるかな」
「毎朝、ですか?」
「ほとんど毎朝」
「それを、どうしてるんですか?」
「それ、言わなきゃダメ?」
きゅっ、と手に力を入れる。
——スバルくんの、内緒にしていること、知りたいんです!
「わ、わかった。言うよ。 自然とおさまるのを待つか、自分で出すんだよ」
「自分で、毎朝? 毎日? するんですか?」
「いや、毎朝毎日ってことはないけど」
さらに、ぎゅぎゅっ、と。
——スバルくん、レムにはわかりますよ! 嘘、ですね?
「ああ、あの、たまに、いや何日かに一回、その、時間が! あの、時間のあるときに! ね、寝る前とか! わ、わかった。正直に言う、言う! 毎日してた。いや、毎日何回もしてた! してました! 御免なさい!」
——え? え? そ、そんなに!
「ま、毎日……何回も……」
「で、でも、この屋敷に運ばれて来てから、それどころじゃなかったし、しばらくの間、出してなかったんだよ」
「じゃあ、レムが……あの、した時、いっぱい出たのは……」
「んー、そう。ずっとしてなかったし、すごく溜まってたんだと思う」
「で、でも、今日もたくさん出ましたよね? 一日であんなに溜まるんですか?」
「いや、おまえ、質問に遠慮がないな」
——だ、だって、スバルくんが聞いていいって言ったじゃないですか!
「痛い! 痛い! は、はい。そうです! たくさん出たよ。たくさん出しました! でもそれはさ、レムが」
「レムが?」
「レムが、その、だ、大好きで、可愛くて、綺麗だったから!」
その言葉を聞いた瞬間、レムの心臓が大きく跳ね上がった。
「だい……すき……」
「痛い! 痛い! 痛い! 痛い!」
「あ! ご、ごめんなさい! つ、つい……」
——つい、強く握ってしまいました。でも、でも……。大好きって。大好きって言いましたよね? 聞き間違いじゃないですよね? スバルくん!
「ふうっ。でも、ほんとなんだ。レムがあんまりに可愛くて綺麗で、俺なんかに、その、いろいろしてくれたり見せてくれたり。多分それでたくさん出たんだよ」
——可愛くて綺麗だなんて、て、照れます……。
「そ、そうなんですね……ほ、ほかには?」
「あ、あとは、ぼーっとしている時とか、外で、眠い時とかにも大きくなって、焦ることがあるんだよな。あれ、自分の意思とか関係ないから、非常に困る!」
意外な答えが返ってきた。
「へええ。そんなことが……女の子も、その、いろいろ大変ですけど……男の子も違うところで大変なんですね。レムは知りませんでした」
「そうなんだよ。うん。それを隠すのがまた大変で。ズボンのポケットに手を入れて隠したり」
「ポケットに手を。じゃあ、スバルくんがポケットに手を入れている時は……」
いつ、そんなことがあっただろうか、とレムは頭を巡らせた。
「ばか! 何を言っているんだ! いつもじゃない! いつもじゃあ!」
——焦ったスバルくんも、可愛い! でも、でも。
「今こうやって触ってるのに、ちゃんと固くなって無いですよ? ううん、ふだんより少しは、あの……ですけど」
——ああっ! ま、また恥ずかしいことを……。
「レムは、そうやって自分で言って勝手に恥ずかしがるよな。そういうレム、かわいいな!」
——か、可愛いだなんて!
思わず手に力が入る。
「わ、わ! いや、たくさんレムにしてもらったし、その、レムの中に、は、入れて……今は身も心も満足してるんだよ。うん。でもそうやってレムに触ってもらうと、その、やっぱり気持ち、いい、かな」
——そんな風に言ってもらえると、うれしい……。
「あと他には? スバルくんの秘密をもっともっとレムに教えてください」
「秘密って言ったって、もう、そんなに無いよ」
「ええー、本当ですか? スバルくん」
「じゃあ、俺もレムのこと聞いていいか?」
「レムに答えらえることなら……あの、あんまり恥ずかしい質問はダメですよ」
「えー? 俺には恥ずかしいこと聞いておいて。痛い! 痛い! わかった! わかったって! んー、それじゃあ、そうだなぁ」
——どき、どき、どき。
「そうだ! あの、魔獣騒ぎの時にレムが使っていたあの鎖のついたやつ」
一瞬、何のことを言っているのかわからず、
「え?」
「あの鉄球、いつもどうやって持って歩いてるんだ?」
「ど、どうやって武器を持ち歩いているか、ですか? な、なんで今そんなことを……」
「い、いや、だって、恥ずかしい質問はダメだっていうから」
「そ、それは……」
「それは?」
「……乙女の秘密……です!」
——れ、レムは、せ、せっかく、ちょっと恥ずかしいことでも、スバルくんが聞きたいなら内緒で教えちゃおうと思っていたのに! そのレムの覚悟を返してください!
「スバルくんはやっぱり意地悪です……」
レムはスバルを握っている手に力を入れた。