「なぁ、レム」
ちょっとだけ真剣な口調に、スバルの顔を見る、レム。
「レムは大丈夫って言ってたけど、俺、レムの中に、二回も、その、たくさん出しちゃって……あの、本当に、いや、ちゃんと責任を……」
「そのことなら心配しないでください。さっきも言いましたけど、今は大丈夫な時期のはずですから。それに……」
体のリズムが安定してきてもう随分経つ。あと何日かで出血が始まるはずだった。だが、それ以前に——。
ちょっと真剣な口調でレムが続ける。
「レムや姉様、鬼族は、元来子供ができにくい体なんです」
「そうなのか?」
「はい、おそらく。レムと姉様以外、里には子供がいませんでしたし……」
このことに関しては、レムも疑問に思っていたことがあった。幼少の頃、自分たち姉妹しか、故郷の里には子供がいなかった。それが普通でなかったことは、のちに領地の村や王都に訪れた時に、すぐに理解した。
考えられる原因はひとつ。鬼族は子孫を残しづらい種族だったということだ。
そもそも、なぜ鬼族はあんな山奥で、ひっそりと隠れるように暮らしていたのだろう? 他にも鬼族はいるのだろうか? それとも、もうすでに——。
「そうだ! 話は変わるけどさ、レム」
スバルの言葉が、レムの思考を遮った。
「はい? なんでしょう?」
「レム、下の、あの、下はもともと生えてないのか?」
「え? あ、あの……」
「いや、あの、レムは、なんって言うか、その、つるつるで、産毛みたいのはあったけど。あの、ほら、普通、生えてる、んじゃないかなぁ、と」
スバルがなんのことを言っているのかようやく思い浮かんで、レムは顔を赤くした。
「ど、ど、ど、どうしてそんな恥ずかしいことを聞くんですか!」
レムは、再びスバルに手を伸ばすと、今度は袋の部分をきつく握った。
「痛い! 痛い! 本当に痛い!」
「そんなこと、レムにだってわかりません! 生まれつきというか、もともと無いものは無いですから!」
「そ、そうなのか? いや、その、かわいくて綺麗だなと思って——」
——え? かわいいだなんて、そんな。レムのは、かわいいんですか? 照れちゃいます……って、あ、あぶないところでした……。そ、そもそも……。
「女の子にそんなことを聞いちゃダメです!」
再び手に力を入れる。
「痛い! 痛い!」
スバルの叫び声を聞きながら、でも——とレムは思った。
「でも、確かにそうですよね。姉様もレムと同じで、下には何も……。でもエミリア様には、綺麗な銀色の……。もともと鬼族には無いのでしょうか……」
何時もではないが、たまに三人の入浴が重なることがあった。特に隠す理由もないので気にもしていなかったが、確かに自分と同様、双子の姉であるラムにも、その部分には何もない。
でも、エミリアは、髪の毛と同じ綺麗な銀色の毛が、その部分を飾っていた気がする。ということは、やはり鬼族は——。それとも自分たち姉妹だけが何か特別なのだろうか? もう今となっては、知りようもな——。
「え? ええええ?」
スバルの驚いたような声に、レムは、ハッと我に返った。そしてスバルの顔に浮かんでいる表情を見て、
「今、想像しましたね……。想像したでしょう! スバルくん!」
——い、一体誰を思い浮かべたんですか? 誰ですか? スバルくん!
「してない! してないって! いたたたたた! してません! してませんから、ゆ、許して!」
「もう! スバルくんが見ていいのはレムのだけですっ!」
「お、おまっ! レムの、だけって……」
「あ……」
カーッと顔が赤くなる。スバルも真っ赤な顔をしている。
「ほんっとに、スバルくんは意地悪な人です!」
恥ずかしいのか、それとも嬉しいのか。自分の気持ちがよくわからないまま、レムはスバルのものをぎゅーっと握り込んだ。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。青の章、これにて終幕です。次話より第三章に入ります。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。