※この作品はR-18です。

紫紺の夢   作:Kuro Maru

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黒の章・4

「うぁぁぁぁぁぁ! ちょ、ちょっと待った! まったぁぁぁぁぁ!」

 

 スバルは慌てて前を隠そうとしたが、体が全く動かない。かろうじて動かせるのは頭と、指くらいで、文字どおり手も足も出ない状態だった。

 

「なんだこれ! なんだこれ! こ、こ、この……!」

 

 叫ぶスバル。

 

「何を今更叫んでいるの? この数日でバルスの裸は見飽きたわ」

 

 と、ラム。

 

「ええええええええええええっ! そんなばかなぁぁぁぁぁ!」

 

「恥ずかしがることはないわ、バルス。これもラムとレムの仕事ですもの。そもそも、最初にこの屋敷に運ばれてきたときにも、全員に見られているわ」

 

——そうだ。そうだった。あの日、最初にこの屋敷に連れてこられたとき、エミリアにも、そ、そ、そうなんだけど!

 

 次の一言で、スバルの思考は遮られた。

 

「それに、さっさとオムツを替えてしまわないと、いい加減、臭くなるわよ」

 

——そ、そういえば、掛布を取られた瞬間、何か臭いがした気がする。いや、してる? してるのか、これ! ま、ま、まさか!

 

 昨日までとはまた違った意味で顔を真っ赤にして、

 

「くぁwせdrftgyふじこlpぃぃぃぃぃっ!」

 

 スバルは言葉になっていない何かを叫んだ。

 

「仕方がないですよ、スバルくん。レムは気にしてませんよ。姉様もあんな風に言ってますけど、スバルくんのお世話をするのは嫌じゃないんです」

 

——全く慰めになってない! どこの羞恥プレーだよ、これ。こんな趣味はねえぞ!

 

「ち、ちょっと、お、お伺いしても、よ、よ、よろしいでしょうか? も、もしかして意識のない間、ずっと、そ、その」

 

「はい! 姉様とレムで、いつも清潔にしてましたよ!」

 

「ううっ」

 

——男気が。俺の男気がぁぁぁぁ。

 

 顔真っ赤にし、目を固くつぶって羞恥に耐えているスバルにお構いなく、ラムが局部にあてがわれていた布に手を伸ばす。

 

「いや、まってまってまってまって!」

 

「バルス、うるさい。少しは静かにできないの?」

 

「少しの間、目をつぶっていてくださいね。スバルくん。目があうと、レムもちょっと、あの、は、恥ずかしいです」

 

 スバルの体の下に手を差し込みながらレムが声をかけた。

 

「大丈夫よ、バルス。もう大きいのは出ていないわ」

 

「ぐぅぅぅぅ」

 

 スバルの動かない体を、細い腕で起こし――実際、この双子の方がスバルよりよっぽど力がある――その間にラムがシーツをまとめる。汚れているだろう部分は見たくもないし、そもそも想像すらしたくない。

 泣きたいくらいの恥ずかしさに、スバルは、今こそ死んで、違う地点からリスタートしたいと、本気で思った。

 

「体を拭きますね」

 

——ううううう。

 

 既に羞恥を通り越して、俎板の鯉だった。

 

——せめて、意識のないときにしてくれ!

 

 ラムが左を中心に、レムが右を中心に、スバルの体にタオルをあてた。何か特殊な薬剤を使っているのだろうか。実際に彼女たちが体を拭き始めると、暖かいのにひんやりとして心地よかった。が、確かに心地よかったのは事実だったのだが、すぐにそれどころではなくなった。二人のタオルが胸部から腹部へ、そして、スバルが触られて一番困ったことになる場所に降りていく。

 

——ん? ちょいまち! まずい! まずいまずいまずいまずい! このまま下に行くと……まずいぃぃぃぃ!

 

「待った! 待った! 待った! マッタァァァァ!」

 

——な、なんとかして、それだけは阻止しなければ!

 

「もう十分だ! 十分だからこれで終わりにしてくれぇぇぇ!」

 

「何を言っているの、バルス。黙って綺麗にされなさい」

 

「そうですよ、スバルくん。もう少しですっかり綺麗になりますよ」

 

「そうじゃない! わざとだろ! 絶対わざとやってるだろう! これ以上の辱めはかんべんしてくれぇぇぇっ!」

 

「レム、バルスの足を開いてそちら側に曲げてちょうだい」

 

「姉様も、そっちの足を」

 

 もう隠すどころか、丸見えだった。スバルの足が大きく広げられて、二人のタオルが下腹部から内腿を滑り降りる。足がすっかり綺麗になると、とうとうスバルの一番敏感な場所に二人の手がたどり着いた。

 

「レム、ラムは下を綺麗にするわ。レムはバルスの……」

 

「わかりました、姉様。レムはスバルくんの……」

 

 二人の手が一瞬止まる。やはり恐れていたことになった。恐れていたことになっているに違いない。

 

 スバルは恐る恐る瞼を開けた。

 

 顔を赤くしたレムが、そう言いながらスバルのものを持ち上げて、タオルで包み込んだ。

 隣ではラムが、ほんの少しだけだが、やはり頬を染めて、下の部分、一番汚れている場所を拭いていた。

 

「ぐうう」

 

 もう、ぐうの音しか出すものがないスバルは、恥ずかしさのあまり、泣きたくなった。汚れている部分を綺麗してもらうのは、気持ち良いはずなのだが、それすらわからないくらいに、恥ずかしかった。

 

 だが、今現在、最大級の問題は、そう、スバル自身が変化をしているかどうか、その一点だった。

 

「ん?」

 

 レムがタオルで拭いているはずの箇所からは、なんの感触もなかった。いや、感触がないわけではない。自分で小用を足す時と、なんら変わらない感触しか感じられないのだ。

 

——た、助かったぁ。少なくとも今この瞬間だけは、男を貫いたぜ!

 

 スバルは、ホッとして、再び目を閉じた。体から力が抜けるのがわかった。

 

「やっと力が抜けましたね。そのまま楽にしていてください。もう少しで終わりますから」

 

 レムが声をかけた。

 

「そんなに体に力が入るのだから、もういい加減ベッドから出て仕事が出来るんじゃないの?」

 

 ラムもスバルに声をかける。

 

「起きて仕事ができんなら、二人にこんな恥ずかしいことはしてもらわねェよ!」

 

 全身を綺麗にされたスバルは、糊のきいた新しいシーツのベッドに改めて寝かされた。

 

「いわゆる恥辱の限りを受けた感じだけど、でも、あ、あの、ありが……」

 

「そうね、これは貸しにしておくわ。今度もしラムが倒れた時は、同じようにしてもらおうかしら」

 

 遮るようにラム。

 

「へ? あ、いや、そ、そ、それは、あの、そんなことは……」

 

「何を真剣に考えているの、いやらしい。そんなことがあるわけないじゃない。ほんと下劣ね、バルスは」

 

「で、ですよねぇ」

 

「じゃ、ラムは洗い物をしてくるわ。あとのことはレムに任せるわ」

 

「はい、姉様。あとはレムが全部」

 

「何かあったら呼んでちょうだい」

 

 ドアに向かいながらラムはこう続けた。

 

「そもそも普段の行いがよくないから、こういう目にあうというものよ」

 

 いつもの毒舌。一瞬間があって、 

 

「ま、今回の責任はレムと、レムの姉であるラムにもすこしだけあるわ。ほとんど無いも同然といってもいいくらいだけど。動けるようになるまで、きっちりと面倒は見させてもらうわ。だからといって、ラムの可愛い妹に何かしたら許さないわよ」

 

 そう言って、ラムは部屋から汚れものを持って出て行った。

 

「この状態じゃ、したくても何もできねぇよ!」

 

「ス、スバルくん? あ、あの、何かしたいですか?」

 

「え? あ、いや、そ、そういう意味じゃない! そういう意味じゃないって!」

 

「レムはスバルくんになら、何をされても構いませんよ!」

 

「体が動かないからって、健全な男子に、そんなこと言うなよ! それよりも責任がどうのって、なんの話だ?」

 

「ごめんなさい。あ、あの、その……」

 

 下を向いたまま口ごもるレム。

 

「んん? ま、いっか。わけ分かんねぇけど。とりあえずは動けるようになるのが先だな。それまで」

 

「も、もちろんです! レムの命に代えてもお世話します!」

 

「そんな大げさなことじゃねぇよ。あんまり張り切られると、ちょっと怖いし。今はお前たち姉妹の顔見ながらおとなしく寝ておくとするよ」

 

「はい!」

 

 レムは可愛らしく微笑むと、サイドテーブルから薬のボトルを持ち上げ、中の液体をグラスに注いだ。

 

「じゃ、お薬を……」

 

「お、おう」

 

「あ、あの、スバルくん。そんな目で見つめられると、れ、レムもちょっと……」

 

「ご、ごめん……」

 

 スバルは顔を赤くしたまま、目を閉じた。

 

 スバルの両頬がレムの手のひらに包まれる。

 

 レムの顔が近づいてくるのがわかる。

 

 スバルの心臓の鼓動が早くなって、顔が火照る。

 

 ふんわりと甘くていい匂いが漂って……。

 

 石鹸の香り? 

 

 それともレム自身の香りだろうか。

 

 ショートボブの毛先が、スバルの鼻やほほをくすぐった。

 

 柔らかい唇がスバルの口を優しく塞ぎ、薬が口腔に注がれた。

 

 冷たくてほんの少し甘い液体が、スバルの喉を潤す。

 

 薬は飲みきった、と思う。

 

 だが、レムのその柔らかい唇は、スバルの口を塞いだままだ。

 

——もう薬は飲み終わったんだけど

 

 スバルが言葉を発しようとしたその時、レムの口から、レムの舌が、スバルの口の中に入り込み、何かを探るように口の中を弄った。そしてスバルの舌を探り当てて、その先端にちょんと触れた。

 

 スバルはびっくりして、さらに口が開いた。

 

 その開いた口に、さっきよりももっと大胆にレムの舌が入り込み、スバルの口腔を吸うと同時に彼の舌を絡め取ろうとした。

 

「んっー、んむー」

 

 息ができない。そもそも、息をすることすら忘れている。女の子とキスをしたことがなかったスバルにとって、普通のキスどころか、ディープキスなど想像を絶する出来事だった。

 レムの情熱のこもったキス。女の子の柔らかい舌がスバルの口の中で自由に動き回り、弄り、くすぐり、甘い味と香りが口腔内に爆発する。

 

 そして。

 

 とろけるほど、気持ちよかった。

 

 どのくらいそうやっていただろうか。

 

「あぁ」

 

 レムのため息ともつかない声とともに、ようやく二人の唇が離れる。

 

 恐る恐る目を開けると、ポーッと上気したレムの顔がそばにあった。目が潤んでいる。泣きそうなのか、それとも違うのか、スバルにはわからなかった。

 

「レムがスバルくんにしてあげられることなら、なんでもします。大好きです。スバルくん」

 

 レムの言葉を理解しないうちに、スバルの意識は遠のいた。

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