※この作品はR-18です。

紫紺の夢   作:Kuro Maru

53 / 104
番外篇「コンヨク!」・1

 それは、二人が素敵な初体験を終えた後の、ピロートーク中のことだった。

 

「スバルくん、もしよかったら、お風呂に行きませんか?」

 

「え?」

 

「あの、倒れてから入っていませんよね? レムがさっき綺麗にしましたけど、やっぱりお風呂の方がすっきりすると思うんです」

 

「え? え? いつ綺麗にしたの? そんなの知らなかったんですけど!」

 

「あ、あの、スバルくんが眠っているときに……」

 

 そう言えば、結構汗をかいたはずなのに、なんだか体がスッキリさっぱりしている。寝てる間にって、二人の関係は主人と召使のそれじゃないはずだ。その召使いだって、そんなことはしない。そもそも、レムの献身ぶりは目に余るものがある。二人は対等なんだから。この際だからきちんと言っておかないと——。

 

「レム」

 

「は、はい!」

 

「あのなぁ。そんなのしなくていいんだよ。だって、二人で一緒にセッ……あー、その、二人で一緒に……えー」

 

 レムの前ではどうしてもその言葉が言えなくて。尻すぼみに小声になってしまうスバルに、

 

「はい! 二人で一緒に、いっぱいしちゃいましたね!」

 

 レムが嬉しそうに答える。

 

「う、うん。しちゃったんだけど……。いや、そうじゃなくて。レムは俺の召使じゃないんだから、そんなに色々しなくてもいいんだよ。そんな関係、俺、ちょっとやだぜ。それに、そんなだったら俺だって、レムの体を綺麗にしてあげたいし!」

 

 決していやらしい意味ではなく、普通に口から出た言葉だった。

 

「あ! じゃあ、一緒に入りませんか?」

 

 パッと顔を輝かせて、そうレムが言った。

 

「いや、どうしてそうなるの? そう言うことを言ってるんじゃ……」

 

 というわけで、スバルとレムの二人は、浴室の入り口にいた。

 

 バスタオルを巻いたレムと、同じく腰にタオルを巻いたスバル。これだけだと、温泉に来た普通のラブラブカップルだった。だが、この二人は、

 

「いや、だから。大丈夫だって!」

 

「ダメです! ちゃんと力が入らなくて、転んだりしたらどうするんですか! ここまでだって心配だったんですから!」

 

 レムがしっかりとスバルをお姫様抱っこして、浴室に入って来たのだった。

 

 今お湯が張られているのは、少し前に、例のあの事件(第一次マヨネーズ騒動) が起こった小さい方の浴槽だった。小さいと言っても、二、三人くらいは余裕で入れるほどの大きさがある浴槽の縁に、今は二人仲良く並んで腰掛けて、足をお湯につけていた。

 

「最初は足を温めてから入るのがいいそうですよ、スバルくん」

 

「いや、最初は掛け湯をするとか、体を軽く洗ってから入るんじゃないの?」

 

「え? 体はレムがさっき綺麗にしましたから、それは省いてもいいんじゃ……それに……」

 

「ん? それに?」

 

「い、いいえ。なんでもありません」

 

 その答えはすぐにわかった。スバルは、ふーっ、と言いながら、肩までお湯に浸かる。だがレムは、体にタオルを巻いたまま、お湯に浸かろうとしていた。

 

「タオルを体に巻いたまま入るのは、マナー違反じゃないのか?」

 

「だ、だって、は、裸を見られるのは、ちょっと恥ずかしいです……」

 

 そういうスバルも、実はタオルを腰に巻いたままだった。さっき、お互いに全てを見せ合ったはずなのに、なぜか気恥ずかしい。

 

「ははっ。なんだか変だな、俺たち」

 

「そうですね」

 

 嬉しそうに笑うレムが、本当に愛おしい。その気持ちを伝えたくて、

 

「れ、レム。あの、俺……」

 

 そう言いかけた時、

 

「つっ……」

 

 腰までお湯に浸かったレムの顔が少しゆがんだ。

 

「どっか痛むのか?」

 

「あ、な、なんでもありません」

 

「んー? 大丈夫か?」

 

「だ、大丈夫です!」

 

「痛いって言えば、レム。あ、あの時、痛くしてごめんな。俺、初めてで、あんまりうまくできなくて……」

 

「大丈夫ですよ。スバルくん。レムも初めてで、二人おんなじです!」

 

 レムは肩までお湯に浸かると、頭をスバルの左肩にもたれ掛けた。

 

「ふうっ」

 

 レムの頭の重さに、嬉しさを感じる。

 

「んー、やっぱ風呂はいいな」

 

「そうですね」

 

「レムの言った通りだったな」

 

「そう言ってもらえると、レムも嬉しいです」

 

「それにしても、こうやってレムと一緒に入ってると、温泉に来たみたいだな。そもそも、あっちのでっかい方は、まるっきり銭湯だし……」

 

「オンセン?」

 

 レムが不思議そうな表情を浮かべた。

 

「あー、温泉とか銭湯とか、そういうのないのかな?」

 

「オンセンに戦闘、ですか……?」

 

 レムがますます不思議そうな変な顔をしている。

 

「そうそう。町の人が入りに来るでっかい風呂っていうか……」

 

「あ、公衆浴場なら、多分」

 

「あ、あんだ。そりゃそっか」

 

「でも、男の人と女の人が一緒に入るのは……」

 

「いやいや、そういうのは少ないんじゃないかな。大抵は別だぜ。でも昔ながらの温泉は、男女一緒の混浴のところもあるんだよ」

 

「え……それ、レムは恥ずかしくて入れないかもしれません」

 

「ま、普通そうだよな。でもそういう人のために、家族風呂とかっていうのもあんだぜ」

 

「家族風呂?」

 

「そう、家族風呂。小さい子供と一緒に入れたり、本当に家族だけで入れるやつ」

 

「へええ。それならスバルくんと一緒に入れますね! あと、姉様と一緒にも入れます! あ、でもでも、姉様とスバルくんは別々で……」

 

 レムがうーん、と一度考える。 

 

「こ、困りました。レムはどちらと一緒に入ればいいんでしょう?」

 

「いやいや、普通にラムと一緒に入ってやれよ、そこは」

 

「じゃ、スバルくんとはその後で!」

 

「その後って、どんだけ風呂好きなんだよ! そもそもまだ行ってないし。あるかもわかんないし」

 

「そうですね」

 

 ふふふっ、とレムが可愛らしく笑った。

 

「もっと聞きたいです。その、オンセンのお話」

 

「うーん、そうだな。俺もあんまり行ったことないけど、露天風呂とか。あとはそうだな。湯上りにコーヒー牛乳とか。あ、でも、そりゃ銭湯だな。んー、お揃いの浴衣を着て散歩する、とかか?」

 

 変わらず不思議そうな表情で聞いていたレムが、スバルのある言葉に反応した。

 

「ユカタ?」

 

「そう。浴衣。えーと、ガウンっぽい形で、でも、綺麗な色とか柄とか、種類がいっぱいあってさ。それを帯っていうベルトみたいなので結ぶんだよ」

 

 これくらいの幅の、と、スバルが手で説明をする。

 

「女の子が着ると可愛んだ。あと、足元は下駄。そうだなあ、レムはきっと似合うだろうな」

 

「それって……」

 

 ふと何かに気づいたような表情をするレム。

 

「なに? 浴衣あるの?」

 

「い、いえ。それがユカタかどうかわかりませんが、姉様とレムが生まれた村では、みんなそういう格好をしていました。あれがそうなのでしょうか」

 

「へええ。レムの生まれた村は着物で生活してたのか」

 

「キモノ? あれがキモノ……」

 

「ん。見てないからわかんねーけど、着物があるんなら、浴衣もあるんじゃね? あとは温泉か銭湯があれば完璧、だけどな」

 

「スバルくん、いつかレムをそのオンセンかセントウに連れて行ってくださいね!」

 

「そうだな。温泉なんかは、みんなで行くと楽しいんじゃないかな」

 

 なんでもありのこの世界に、着物があるなら、きっと温泉や銭湯だってあるのだろう。隣のレムが嬉しそうにニコニコしている。

 

「な、なんだよ。何がそんなに嬉しいの?」

 

「嬉しいですよ! だって、いつかスバルくんと一緒にお風呂に入れるなんて! まるで夢のようです!」

 

「そ、そうか? いや、まってまって。今、もうすでに一緒に入ってるけどね!」

 

 照れ臭くて、どうしていいかわからない。何か話題を。そう思っているとレムが先に口を開いた。

 

「スバルくん、あの、聞いてもいいですか?」

 

「ん? なんだ?」

 

「気になってたんですけど、あの……スバルくんが、あ、あの……出すときに行くって言うのは、どこに行くんですか?」

 

「へ?」

 

「あの、スバルくんが、何度かそう言ってから、出してたんです、けど……」

 

「あ……」

 

 なんのことを言っているのか、ようやくわかった。

 

「ど、どこだろう……。そんなこと考えたことなかった……って、なんで今そんなこと聞くの?」

 

「聞きたかったんですけど、聞きそびれちゃって……。スバルくんはどこに行くんでしょう?」

 

「し、真剣に聞かれても、俺も、わかんない……よ。た、ただ、なんとなく……」

 

「じゃ、じゃあ、こんど、レムも言ってみますね。行きます! って。だから、今度またレムのこと、その、き、気持ちよく……」

 

「レム、やめて! それ以上ここでその話は! のぼせちゃうから! 俺、死んじゃうから!」

 

 スバルはレムから顔を背けると、激しく頭を振った。

 

「あ、じゃあ、冷たいタオルを!」

 

 レムはさっと立ち上がると、跨ぐように浴槽に片膝をついて、そばに置いてあったタオルに手を伸ばした。その瞬間、前にかがんだレムの全部が丸見えになった。スバルの目が大きく見開き、その部分に釘付けになった。

 

「れ、れむさん。ちょ、ちょっとその格好は、刺激が強すぎます」

 

「あ!」

 

 レムは慌てて直立すると、パッとタオルの上からお尻の部分を手で隠した。

 

「み、見ました?」

 

 振り返りながら、恐る恐る言葉にするレム。

 

「み、みた……か、可愛かった……」

 

 お互い真っ赤な顔をして、黙り込む。すでにスバルは、非常に困ったことになりつつあった。

 

「スバルくん……見ていいのは、レムの覚悟ができている時だけです!」

 

 レムは冷たいタオルを絞ってスバルの額に当てると、今度はスバルの足の間に入り込み、後ろ向きにピタリとその間に収まった。

 

「スバルくんがレムを見れないようにしちゃいます!」

 

「いや、密着度が増してない? これ」

 

 そんなスバルを無視するように、

 

「ふうっ」

 

 レムは気持ちよさそうに顔をのけぞらせ、スバルの肩に頭を乗せた。

 

「レム……」

 

 レムの顔を覗き込んだスバルの唇が、レムの柔らかな唇に触れる。スバルの手が自然とレムの胸に伸びる。タオル越しに柔らかな膨らみの感触を確かめるように、その手が優しく動く。レムはそのスバルの手に自分の手を重ねた。

 

「す、スバルくん。あの、レムに、スバルくんの硬くなってる部分が当たってます……」

 

 そして、少しだけ言いづらそうにそう言うと、スバルの目を覗き込んだ。

 

「し、仕方ないだろ! さっきレムのあんな……その、か、可愛いところ見ちゃったんだから!」

 

 二人とも真っ赤になっているのは、熱いお湯のせいだけではなかった。

 

「今ここで、だ、出しますか?」

 

「え、あー、その……」

 

「た、ただ……じ、実は、あの、お湯が滲みて……ちょっと痛くて……。あの、レムの中に入るのは……あの、スバルくんと繋がるのは今日はもうお休みでもいいですか?」

 

「あ! れ、レム、大丈夫か? あの、ごめん……」

 

「大丈夫です。きっと、あと何度か……その……」

 

 そこまで言いかけて、声が小さくなる。そんなレムがやっぱり可愛くて。スバルは後ろからレムをぎゅっと抱きしめた。

 

「ちゅっ、ちゅっ……」

 

 スバルの唇が、レムのうなじに繰り返し触れる。その度に、レムの口からため息が漏れる。その唇が形のいいレムの耳を優しく食むと、

 

「ああっ……」

 

 レムの体がぶるっと震えた。

 

「それ、く、くすぐったいです……」

 

 その恥ずかしげな一言一言が、とても可愛い。スバルはその声が聞きたくて、何度もレムのうなじと耳に唇を這わせた。そうして、空いている手をレムのあの場所に伸ばそうとした途端、スバルの大きくなった部分から甘美な痺れが走った。

 

「うっ」

 

 スバルの口からうめき声が漏れた。レムが後ろ手に大きくなったスバルを握り込んで、さすり始めていた。

 

「スバルくん、もうこんなになってますよ」

 

「あっ……くっ……」

 

 指が探りながら、覚えたての敏感な部分を刺激する。

 

「れ、レム……それ以上されると、我慢できなくなっちまう……」

 

「いいんですよ、我慢しなくても! 今出しますか?」

 

「いやいや、そうじゃなくって! 今日はもういいから! もう十分だから!」

 

「でも……」

 

「いいんだってば! すぐ治るから! それよりこのままだと上気せるぜ、二人とも」

 

「そ、そうですね……。じゃあ、体を洗いましょうか!」

 

 レムはそう言って立ち上がると、スバルへ手を差し伸べた。

 




 
 黒丸です。こんにちは。

 紫紺の夢・番外篇です。最初は本篇に入れようと思っていた部分を、 構成し直して書いてみました。ちょっとだけ長いので、3回に分けて投稿させていただきます。こちらも最後までお付き合いのほど、どうぞよろしくお願いします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。