※この作品はR-18です。

紫紺の夢   作:Kuro Maru

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番外篇「ラムとレムのブルーデイズ」・1

「ラム、レム! おはよう!」

 

 気持ちのいい朝だった。心なしか体が軽い。いや、よく考えると病み上がりな体で、そこまで絶好調なことはないはずだが、いろいろと、本当に色々あったせいで、全てが輝いて見える。

 

 職場復帰初日の今日も、充実した一日を過ごせそうだった。スバルは厨房の扉を開くと、すでに揃っていた二人に声をかけた。

 

「おはようございます。スバルくん」

 

「おはよう。バルス」

 

「あ、あれ? 二人とも、どしたの? ラムはいつもな感じだけど、レムは何だか元気ないな」

 

 少しだけもじもじしながら、下を向くレム。 ラムは、何でこんなことに気づかないのか、と言った風で、スバルを見ている。

 

「ん? なんだか二人とも、少し顔色悪くね? あ、ま、まさか、ラム。もう、なのか? だ、大丈夫か?」

 

「バルス、そんなにラムのことを抱きたいの? 確かにラムは、かなり魅力的で、性的にも世の男性全てを魅了するものを持っていると自分でわかっているわ。でも……」 

 

 いままでなら、いやらしい、とか、そんな目で見るなんて、とか、挙げ句の果てには、目を潰すわよ、などと、辛辣な言葉が返ってきていたはずだった。だが、今この瞬間は、そんなスバルの心を抉るような鋭い言葉は返ってきていない。それだけでも随分この関係は変わった、と、スバルは思った。

 

「って、思っているのね。バルス」

 

「いや、だから。モノローグを勝手につけるのはやめてね! ま、まあ、かなりその通りだったりするけど」

 

「あれから二日だけど……。おかげさまで、今のところはマナ不足にはなっていないわ。それに関しては素直に感謝するわ」

 

「ああ、いや、ならいいんだ。うん。よかった」

 

——それにしても。二人とも可愛かったな。レムの胸はとってもやわらかで、ラムの胸は大(・)き(・)さ(・)だ(・)け(・)は(・)レムに負けるけど、綺麗さで言えばレムに勝ってたし。

 そもそも二人はものすごい美人だし、可愛いし、二人ともスタイル抜群で。締まった足首にすらっと伸びた足。キュキュッとした形のいいお尻もとっても可愛くて。

 そして、そして、その奥にある、あの秘密の場所の魅力的なことと言ったら! 驚くほど同じで、可愛くて、柔らかくて、暖かくて。入っていくと溶けてしまいそうで。レムが甘いスロベリだとしたら、ラムは甘い甘いオラージュって感じで。

 ああ、思い出しただけで……いや、だめだだめだ! 仕事中、仕事中! 集中するんだ! 集中、集中! みょんみょんみょんみょん……。あ、やばい、だめかもしんない。

 

「——と、言った感じかしら?」

 

「ばか! やめろって! リアルに思い出すだろ! あと、長すぎるうえに、ねえさま、なんで自分が若干上なのよ?」

 

 自分たちのことを語ったラムの顔が、少しだけ赤くなっている。それを横で聞いていたレムの顔はすでに真っ赤だ。スバルもやや困ったことになって——。

 

「姉様姉様、スバルくんがズボンのポケットに手を入れましたよ」

「レムレム、バルスがズボンのポケットに手を入れたわね」

 

「スバルくんが何かを懸命に隠そうとしてますよ」

「バルスは何かを思い出して大きくしてしまったのね」

 

「出たなっ! しっかり聞こえるひそひそ話攻撃!」

 

 ポケットに手を突っ込んだまま、スバルが叫ぶ。

 

「ちがうって……あ、いや、違うくな……っていうか、もうすでに全部バレてるんですけど!」

 

「姉様姉様、スバルくんは今ここで出したいんでしょうか?」

「レムレム、朝から出したいだなんて、バルスは性欲の塊ね」

 

「だから、やめろってば! すぐ治(おさま)るから! 他の話題にしてくれたら、すぐだから!」

 

 前かがみになったままスバルが、顔を赤くして懇願した。

 

「ごめんなさい、スバルくん。スバルくんの反応があまりに可愛くって……」

 

 くすくすと笑いながら、レムがそう言った。

 

「あのなぁ、可愛いとか、そういう話じゃないんじゃないか?」

 

「あ、あの、今すぐ出したいですか? そ、その、お仕事が終わるまで待っていただけますか?」

 

 いきなりレムが真面目に問いかける。その言葉に、

 

「れ、レム、今すぐとか、出すとか、仕事終わりとか、その、ら、ラムの前で……」

 

「あら、ラムは別に構わないわ。お熱いお二人のお邪魔をするつもりは、ラムにはないもの」

 

 しれっと、そう口にする。

 

「ね、姉様! レムは姉様のことも大好きです! また一緒に……」

 

 言いかけて、再び顔を下を向けてしまう、レム。ラムも頬を染めたままだ。

 

「あーもう! 朝から何なんだっての! おかしいから! おまえら——あ、いや、俺もか……」

 

「じゃあ、夜に……。あ、スバルくん、でも今日は、そ、その……」

 

「あー、もう! そりゃ、もう三人で隠し事はなしって話だけど! あまりにストレートすぎるから! そ、それに無理しなくてもいいんだ、レム。ラムの体のことはその、あれだけど、レムも、あの、あの事だけが目的じゃないから! す、好きだから! 俺、レムが大好きだから! だから、お互いに、その、あの……」

 

 しどろもどろのスバルに、赤くなったレムがこう言った。

 

「大好きだなんて、照れます……。あ、い、いえ、そうじゃなくって、その、今日からしばらく、スバルくんには手か、その、お口でしか……」

 

「いや、く、口でって……」

 

 ラムは、赤くなって焦るスバルを一瞥すると、額に手を当ててこう言った。

 

「バルス、レムの言っている意味がわかっていないようね。これだから鈍感な男って……レムとラムは、始まってしまったの」

 

「始まった? なにが?」

 

「あ、あの、スバルくん、レムは……姉様も、あの、出血が始まってしまって……」

 

「あ……」

 

 流石にスバルにも、二人がどういう状態なのか、ようやく理解できた。その表情を見たラムは、首を横に振りながら、大きなため息をひとつ。

 

「ここまでレムに言わせないと気づかないなんて、ほんと駄目な男ね。レム、こんな男とっとと捨てて、ほか当たったほうがいいんじゃない?」

 

「ね、姉様」

 

「わ、わ! ごめん! 気づかなくて、ごめん、ごめん! そ、その……二人とも、大丈夫、なのか?」

 

 慌てて、二人に謝るスバル。

 

「大丈夫というか、病気じゃないし、二人とも、もう慣れているわ。体全体がちょっとだるくて、まあまあお腹が痛くて、結構腰も痛くて、少しだけ胸も張って、だいぶ出血して、かなりぼーっとして、できるなら一週間くらい休みたいだけよ」

 

「う……」

 

「それにしても、バルスは、女性のことをもっと勉強したほうがいいと、ラムは思うわ。入れて出すだけが男じゃないのよ」

 

「ねえさま、最後のそれ、かなりきっつい……。いや、そこは、その、それ以外の部分に関しては、素直にその通りだと思う、よ。二人とも、ごめん。気づきてやれなくて」

 

「す、スバルくん、仕方ないですよ! だって、女の子と男の子は違いますし、その、わざわざ言うことでもないですし。大変なこともそれぞれ違いますから!」

 

 そう言ってから、ちょっと考えて。

 

「で、でも、姉様とレムのこと、もっと知ってほしい気もします」

 

「そうね、レム。この際だから、バルスに勉強してもらったらどうかしら。将来的なこともあるし」

 

「将来的なことが具体的に何なのかは、聞こえなかったことにするとして……」

 

 ギロリ。ラムの目がスバルを射抜いた。

 

「あ、いや、ちがうちがう! ちゃんと責任とるから! あ、いや、まだ、ってか、そういう意味じゃなくって。レムのことはちゃんと大切にするっていう意味で!」

 

 何を言っているのかよくわからないスバルの言葉に、再び赤くなってうつむくレム。そのレムとは対照的に、ラムは冷ややかな目を保ったままだ。

 

「ま、そういうことにしておこうかしら。じゃ、ラムとレムは体調が優れないから、今日の作業はバルスが中心でお願いするわ」

 

「お、おう。まかせ……られても、あんまりご期待に添えないかもだけど、とにかく二人とも無理しないようにしてくれ」

 

 結局、普段とほとんど変わらない仕事分担で——ラムだけは、大腕を振ってサボっていたが——一日のノルマが終了したのは、いつもと同じ夕方近くだった。そのあと、三人が厨房で夕食をとっている時に、ラムが朝の話題を振ってきた。

 

「で、バルス。朝の話だけど」

 

「ん? ああ、朝の話、ね」

 

「ね、姉様、その話は食事中は、ちょっと……」

 

「そうね。ちょっと生々しいかしら。じゃあ後でお茶を飲みながらにしましょう」

 

 やや気まずい雰囲気の中、三人は静かに食事を終えると、スバルは洗い物、ラムとレムはそれぞれお茶とデザートがわりの焼き菓子を用意し始める。

 

「で、バルスはどの程度理解しているの?」

 

ティーカップにお茶を注ぎながら、ラムが口を開いた。

 

「そ、そうだな。女の子は年頃になると、その、体型に変化があって、その、せ、セイリが始まって、月に一回、血が、その、出血するって事くらいは……」

 

 差し出されたお茶を飲みながら、少ない知識を口にする。それを受けたラムは、ハッ! と鼻であしらうと、

 

「ダメね。その程度の知識しかない男に、レムはあげられないわ」

 

 自身もティーカップに口をつけながら、さらに続けた。

 

「レムも、こんな女の子に理解のない男はさっさと捨てた方がいいと、ラムは思うわ」

 

「ね、姉様……」

 

「い、いや。待った待った。だから今ここで、いろいろ教えてくれるんじゃないのかよ!」

 

「ああ、そうだったわね。すっかり忘れていたわ」

 

 しれっと言い切るラム。その後に、そもそも——と話を続けたのだった。

 

 スバルは彼女の説明を——なんだか保健体育の授業みたいだな——と思いながらも、真剣に頷きながら聞いていた。

 

「——そういうわけで、今晩から、明日、明後日あたりが一番辛いわ」

 

 そうよね、と言うようにレムに顔を向けると、レムもラムにうなずいた。

 

「このお茶も、痛みを和らげる効果はあるのだけど、まあ、気休めね」

 

 盲腸の薬とかはあるのに、バハリン的な鎮痛剤はないんだな。あちらとこちらの微妙なズレに戸惑いながらも、先ほどから一つ、気になっていたことを聞いてみる。

 

「あの、いつも二人とも、その、同じタイミングで、なっちゃうのか?」

 

「は、はい、スバルくん。姉様とレムはほぼ同じ時に。半日もずれませんね」

 

 これは双子だからというより、あの共感覚のせいだろう。

 

「その、ものすごく大変だっていうのは良くわかったよ」

 

 納得したように一人で頷く。

 

「二人とも、辛い時は辛いって言ってくれ。あと、これからは、その、色々内緒にしなくていいから。俺がやれることは、微力だけど——大事なことだからも一回言っとくと、超微力だけど、二人の分いろいろやるからさ」

 

「ありがとうございます、スバルくん。そのお気持ちだけで、レムはどんなに嬉しいか」

 

「そうねレム。この際だから、甘えさせてもらうとしましょう」

 

「あの、び、微力だからね。び・りょ・く。そこんとこ、よろしく!」

 

 一応、念を押すスバル。一言言っておかないと、あとでとんでもないことになりそうで——。

 

「で、でもさ」

 

 スバルが続ける。

 

「そんな痛みとかで、夜とかぐっすり眠れるのか? どうしてるんだ? 二人とも」

 

「レムが調合した香油で、胸とか……あ、その、張っているところをマッサージュしたり……あとは、なるべく冷やさないように……」

 

「へえ。お互いにするのか?」

 

 え? と、ラムとレムはお互いの顔を見つめあった。

 

「そう言えば、お互いにしあったことはないわね。何でかしらね。怪しい雰囲気になるから?」

 

「ね、姉様!」

 

「いやいや、おねえさま、怪しいとか、そう言うこと言うのやめて!」

 

 焦る二人。

 

「でも、レムが調合してくれる香油は、香りも良くて、ぐっすり寝られるわ」

 

「ふうん。それ、今日も使うのか?」

 

「は、はい。スバルくん。姉様の分も、もう作ってありますよ」

 

 へええ。なら——。

 

「そうだなぁ。じゃあさ、俺が、寝る前にそのオイルで腰とか揉んでやろうか? あ、いや、そのいやらしい意味じゃなくて」

 

「えっ!」

 

 レムの顔がパッと明るくなる。

 

「そ、それは、とっても嬉しいです! あ、でも、そんな事をしてもらってもいいのでしょうか……」

 

「もちろん! ラムも一緒にやってやるよ。どうだ?」

 

「そ、それは、かなり魅力的な申し出ね」

 

 予想外のスバルの言葉に、思わずラムの口元も緩む。

 

「じゃ、決まりだな。どうする? この後、寝る前とかでいいのか? あとはどの部屋で……」

 

「あ、あの……」

 

 レムがおずおずとスバルに尋ねた。

 

「す、スバルくん。あの、スバルくんの、その、今日はその……レムは出血してるので、あの……今日の分はどうしましょう……」

 

「あ……」

 

 レムが何のことを言っているのか、すぐにわかって、

 

「いや、今日の分って……。いや、いや……レムがそんな時に、自分だけって言うのは、俺、嫌だよ。だからさ、レムの体調の悪い時とか、ほんと、無理しなくてもいいんだ」

 

「スバルくん……」

 

 二人がまたしても赤くなる。だが、それを聞いていたラムの目がキラリと光ったのに、スバルは全く気づかなかった。

 

「バルス、今の言葉を聞いて、ラムは少しだけ安心したわ。レムのこと、本当に大切に思ってくれているのね。感謝するわ」

 

「あ、当たり前だろ! そうでなきゃ、あんな……あ、その……」

 

 二人は見つめあって、赤くなったままだ。

 

「いえ、ラムは決して誤解していたわけではないわ。バルスのことは信じているもの。で、話の続きをさせてもらうと、バルスは、レムの体調が悪い時は我慢する、ってことであってるかしら?」

 

「え? あ、そう。そうだよ。うん。もちろん!」

 

「じゃ、これから少なくとも、一週間は禁欲するってことね」

 

「え?」

 

「じゃ、これから少なくとも、一週間は禁欲するってことね」

 

「だ、誰が同じこと二度言えといったのかしら! じゃなくて! そ、それって……」

 

「レムから聞いているわ。男の子、いえ、バルスは、一日何度も自慰行為をするそうね。それも毎日」

 

「う……」

 

 一瞬言葉に詰まるスバル。

 

「お、俺だけじゃないから! 男の子はみんなだから! そもそも毎日じゃ……ってか、レム! 何でそんなことをラムに!」

 

 両手で口を覆って、赤くなっているレムに、スバルが叫んだ。

 

「バルスが言っていた、がーるずとーくってやつよ。色々、いいえ、ほとんど聞き出して……聞かされているわ」

 

 ふふん、と、ラムが続けた。レムは真っ赤な顔を手のひらで覆って、指の隙間から二人の様子を見ている。

 

「体調の悪いレムのために、自ら辛い禁欲生活を選ぶとは。さすがね、バルス」

 

「う……」

 

「男に二言はない。そうよね? バルス」

 

「は、はい。そ、そのとおりです……」

 

「でも、でも」

 

 レムが口を挟んだ。

 

「スバルくん、本当に大丈夫ですか? もし辛かったら、レムはスバルくんのお手伝いだけでも……」

 

「そ、それは、う、嬉しいけど。でも、そんな毎日しなくても……あ、いや、したい時もあるけど。はい、はい! わかりました! 正直に言います! したいです! したいけど、でも、やっぱり、俺だけって言うのは嫌かな。俺はレムと一緒にって言うのが嬉しいんだ」

 

 レムは赤い顔のまま、目を潤ませている。それを見たスバルが、だから、と続けた。

 

「レムの体調が戻るまで、我慢するよ。あー、うん。約束する」

 

 はいはい、ごちそうさま、とでも言いたげな表情で二人を見ていたラムが、そのスバルの一言に間髪開けず言う。

 

「その言葉、確かに聞いたわよ。レム……いいえ、ラムとレムが終わるまでの一週間。バルスも禁止ってことでいいのね」

 

「う、うん……」

 

 ラムに念を押されると、ちょっとビビってしまうスバル。本当に我慢できるのか、だんだん自信がなくなってきてしまう。そもそもその約束に、ラムまで含まれていることにすら、気づいていない。

 

「やっぱり、ラムの妹が選んだ男は、一味違うわね」

 

 ラムは、不敵な笑みを浮かべて、勝ち誇ったようにそう言った。

 




 ※オレージュ → オラージュ と修正しました。(オレージュだと思っていたところ、リゼロスにて「オラージュ」と判明したため)
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