「そ、その……」
「その? なあに?」
ラムがその表情を変えずに、意地悪くレムに聞き返す。それに対して、うー、とちょっとだけ唸りながら、でも、まんざらでもない様子でレムが答える。
「さ、最初はお互いに体を洗い合って……」
ふむふむ、とラム。
「スバルくんに体を洗ってもらっているうちに、レムは気持ちよくなって、我慢ができなくなってしまって……」
「で、その……お風呂で繋がったの?」
「い、いえ……実はその時、ちょっとまだ痛くって……」
「レムレム、その、やっぱり初めて入れた時は痛かった?」
「い、痛かったです……」
「ラムも最初は痛かったわ。でも、当然よね。あんなのが入ってくるんだから……」
その瞬間を思い出して、ラムの頬が染まった。レムの頬もラム同様、赤く染まっている。
「でも、レムが最初にいろいろ言ってくれたおかげで、その……ラムはそれほど長く痛みを感じなかったわ……。それに、ラムもとっても気持ちよくなって……。レムはどうだったの?」
「れ、レムはその……最初の時はスバルくんがすぐにレムの中でいってしまったので……」
ラムは怪訝そうな表情で聞き返した。
「行く? バルスはレムをほったらかしにして、どこかへ行ってしまったの?」
「あ……。違うんです、姉様」
ラムが何を勘違いしているのかが判って、慌てて説明する、レム。
「その、スバルくんが一番気持ちよくなって、精液を出すとき、『いく!』って言うんです……。ですからレムも、その……」
「へええ。そういう決まりなのかしらね。で、行ってしまったのね?」
「は、はい……。そのあと、スバルくんのおちんちんが小さくならなくて、続けてそのまま……」
「ち、小さくならなかったのね……」
小さく頷く、レム。
「二度目は、スバルくんがレムが痛くないようにゆっくり動いてくれて、レムもとっても気持ちよくて……」
「でも、レムは行かなかったのね?」
「は、はい……」
「なんてこと……バルスのくせに、自分だけ……」
やはり自分のことは棚に上げて、ラムは眉毛を釣り上げた。そして、はたと気づいた。
「あ……。レム、ごめんなさい……。ラムはその……レムは行けなかったのに、ラムだけが……」
レムが再び慌てて首を振った。
「い、いえ、姉様。そのあと、その……お風呂で……レムもいかせてもらって……」
「そ、そう……。どう……何をしてもらったの?」
「そ、その……スバルくんのお口で……」
そう言いながら俯くレム。最後の方はゴニョゴニョと、声も小さくなった。
「そ、そう。よ、よかったわ。レムも気持ちよく……その、行けて……。でも、それでお湯を抜いてしまったの?」
「そ、それは……」
「そ、それは……?」
「ね、姉様、絶対に内緒にしてもらえますか?」
「レム。誰にも言わないから、言ってごらんなさい」
——一体、誰に言うというのかしら?
「じ、じゃあ、言います……。そのスバルくんのお口でしてもらったときに、気持ちよくて……、その、レムはお風呂にお漏らしを……」
「お漏らし? お風呂に? だ、だからお湯を抜いたのね……」
「は、はい……」
信じられない答えが返ってきた。
「それにしても、一体どうやったらそんな風になるのかしらね……」
ラムは驚くと同時に、どうしたらそこまで気持ちよくなるのか、スバルが一体、レムに何をしたのか、どうしても知りたくなった。
「わ、わかりません……でも、とっても気持ちよくって、どうしても我慢ができなくなってしまって……」
「じゃあ、またそれをしてもらう時は、お風呂でしてもらったほうがよさそうね」
「そ、そうですね……。姉様もしてもらう時は、お風呂がいいと思います……」
一人はその時を思い出して、一人はその時を想像して。赤くなったまま、二人は下を向いた。すでにラムもしてもらう話になっていることには、二人とも気づいていなかった。
「で、でも、じゃあ、レムは繋がったままは行ったことがないの?」
「あ、いえ……そ、それは……」
ああ、判ったわ、と言う顔をして、頷くラム。
「あれね。昨夜、ラムが寝てしまったあとで、行けたのね?」
「は、はい……」
レムは小さくなって、小声で答えた。
「も、もう痛みはなかったの?」
「あ、そ、そうですね。ほんの少しだけ。でも、ちゃんと気持ちよく……その、いけましたよ!」
ちょっと嬉しそうに答える、レム。
「で。何回くらい行ったのかしら?」
「に、二回……」
レムはそう言い終わってから、あ、と言って両手で口を押さえた。
「恥ずかしがらなくても、いいわ。もう痛みはないの?」
「……実は……」
そう言いかけるレムに、ふふふ、とラムが笑う。
「まだ何か挟まってる感じなんじゃない?」
「な、なんでわかるんですか!」
「だ、だって、ラムもまだ……。そうね、バニナか何かが入ってる感じがしてるもの」
「そ、そうですね。レムはバニナを見るたびに、思い出してしまいそうです……」
ラムとレムは、お互いに顔を見合わせて、プッと吹き出した。そして、二人はおでことおでこを付け合わせると、声を上げて笑った。
※※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「姉様、この本です」
レムが自室から持ってきたのは、あの日抱えていた一冊の本だった。そのタイトルの書かれていない本をベッドの上で開き、二人で覗き込む。
「こんな本がお屋敷に……一体誰がいつ……」
ラムは、思わず漏れた自身のつぶやきに、ちょっと可笑しくなった。その答えは、もちろん言うまでもない。
「それにしても、す、すごいわね、これ」
「そ、そうですね……」
男女がいろいろな格好で絡み合う絵と説明書き。数々の秘密の技巧。パラパラとページを捲り、ざっくりと目を通しただけなのに、物凄い内容だと言うことがわかる。
「れ、レム……、レムはこれを読んで、どのくらい……そ、その、バルスと試したの?」
「ね、姉様……、え……と……」
流石に答えに窮するレム。そんな彼女をよそに、ラムはページから目を離すと、レムを見て言った。
「ねえ、レム。ラムとバルスが最初にした時、その、バルスはすぐには行かなかったわよね?」
「え? あ、そ、そうですね」
「それに、バルスは……ラムのソコをみて、その……何か黙り込んでいたけれど、な、なにか、ラムは変だったりするのかしら……」
「ね、姉様……実は……」
「実は?」
「スバルくんがいきそうになった時、その……レムが手を伸ばして、スバルくんのおちんちんの根元を、こう、ぎゅっと握って……」
えーと、と言いながら、本のページをめくる、レム。
「こ、こんな風に……」
そこに書かれている絵と説明を読んで、ラムは納得した。そして同時に、
「レム……う、嬉しいけど、その、やっぱり大胆ね……」
「そ、そうでしょうか……」
「そう思うけれど……」
——女の子はこうも変わるものかしらね。それとも、これが本来のレムだったりするのかしら?
「じゃあ、ラムのそこが……その、変ってことではないのね?」
「そ、そう思いますよ? スバルくんが言っていたんですけど、姉様とレムのは、い、色も形もそっくりで、その、最初見たときにびっくりしたって……」
——あ、それで……。
「そう……。ちょっとホッとしたわ」
開いたページに目を落としたまま、つぶやくラム。レムは、そんな姉の表情を伺いながら、
「ね、姉様?」
その言葉で顔を上げたラムは、いきなりこう言った。
「こ、今度、レムとバルスが、その……つ、繋がって……しているところを見たい」
「え?」
レムが顔を真っ赤にして、ラムを見返す。
「だ、だって……。レムはラムとバルスが繋がって、その……しているところを見ているでしょう?」
自分がそう望んだのを棚に上げて、ラムが続ける。
「ら、ラムも、その……しているところを見てみたい……。そ、その、絵じゃなくて……。正直、とっても興味があるもの」
「で、でも……レムはちょっと恥ずかしいかもしれません……そ、それに、スバルくんは……」
「ば、バルスは大丈夫だと思うわ。一度レムに見られてるし……やっぱりダメ?」
「ね、姉様がどうしても、って言うなら……」
二人の間に、少しの沈黙が訪れて——。
「あの……」
「あの……」
二人の声がぴったりと重なる。自分自身とお互いの状態が、今一体何をしたいのか、手に取るようにわかる。
「ど、どうする?」
「ど、どうしましょう?」
赤い顔で見つめ合う二人。一瞬ためらって、レムが先に口を開いた。
「ね、姉様……あの、一緒に行きませんか?」
「レム……、嬉しいけど、その、ラムも一緒で本当にいいの?」
「レムはもちろん……。スバルくんもきっといいって言うと思います」
「そ、そうかしら……。じ、じゃあ、ちょっとだけ行ってみる?」
「そ、そうですね……。ちょっとだけ行ってみましょう……」
二人はベッドから降りると、ドアに向かった。
「そ、その前に一度お手洗いに……」
「そ、そうね。一度お手洗いに行っておいたほうがいいわね」
結晶灯が鈍く光る廊下を歩いて、二人はスバルの部屋の前にたどり着いた。ドアをノックする前に、そっと耳をそばだてて、中の様子を伺う。
「静かね……」
「静かですね」
「もう寝ているのかしらね……」
「もう寝ているのかもしれません……」
さらにドアに耳を寄せたラムは、ちょっと驚いた様子でレムに向き直った。
「レム……バルスがレムの名前を呼んでいるわ……」
「え?」
「本当よ。ほら」
レムもまた、ラムと向き合うように、ドアに耳を近づけた。そのレムの耳に、スバルの声が微かに聞こえてくる。
(れ……レム……レムっ!)
漏れ聞こえるスバルの声を耳にしたレムが、真顔でラムに向き直った。
「本当ですね。スバルくんが、レムの名前を呼んでいます……。何か用事があるのでしょうか……」
「どうかしら。もしかして寝言だったりするのかしらね?」
「どうしましょう、姉様。そっと中をのぞいて見ましょうか……」
「そうね。そっと様子を見るのがいいと、ラムも思うわ」
そう言って、ラムがドアノブに手をかけた。
と、その瞬間。
「あ……」
「あ……」
二人が同時に小さく声をあげた。
「ね、姉様……」
「れ、レム……」
お互いに何が起こったのか、瞬時に理解した。
「れ、レム……。き、今日は部屋に戻って、色々はこの次にしましょう……」
「ね、姉様……。れ、レムもその方がいいと思います……」
二人は顔を見合わせると、さっと踵を返して再びトイレに駆け込んだ。
——こうして偶然にも、スバルの尊厳はぎりぎり守られたのだった。
以上をもちまして、「紫紺の夢」完結です。本篇および番外篇ともにお読みいただいた皆様に、改めてご挨拶させていただきます。「紫紺の夢」に最後までお付き合いいただきまして、本当にありがとうございました! 以前と同様、番外篇の「解説」のようなものは、活動報告に書かせていただきます。ではそちらで!
※「紫紺の夢」はハーメルンの利用規約に基づいてアップロードされています。この作品に関しまして、サイト管理者及び著作権所有者による修正、削除要請等が出た場合、速やかにその指示に従います。蛇足ですが、「紫紺の夢」は無断転用を禁止とさせていただきます。