「ううう……」
肩までお湯に浸かったスバルが、うめいた。
「どうしたんですか? スバルくん」
「何よ、バルス」
対面で、同じく湯船に浸かっている二人が聞き返す。
「……俺、もう何を言っても説得力ゼロじゃないか?」
「え? なんのことですか?」
「え? 一体何のこと?」
「いやいや、恥ずかしすぎだろ。アレはさすがに」
男が女の子に色々してあげるのはいい。女の子にちょっとしてもらうのも、まあ、いい。だが、人には言えない恥ずかしい場所に指を入れられ、悶え苦しみ、挙げ句の果てに大量に出すっていうのは、どうなんだ? それは男としての尊厳が見事に吹き飛んでしまっているのではないか——。
「——と、バルスは思っているのね?」
「……姉様」
「それ、わざわざ言わないでほしい……って、ハイ、全くその通りです。お姉さま……」
返す言葉もない。
ほんの少し前、スバルはラムに刺激を与えられて大量に放出した後、ぐったりしたまま二人に体を洗われ、そのまま抱えられて湯船に運ばれた。自分で何とかしようにも、体に力が入らなかった。こんなことは初めてだった。
「大丈夫ですよ、スバルくん」
「ま、いいんじゃない?」
「レムはさっきから大丈夫しか言ってないけど、これ、大丈夫なのか? って、何が大丈夫なんだろ?」
「恥ずかしがるスバルくんも、素敵です!」
「いや、だから……」
「バルスは、さっきのは忘れて欲しいと思っているの?」
「そ、そりゃ……。無かった事にはなんないかもだけど、あんまり蒸し返して欲しくないって言うか、その……」
「じゃ、忘れてあげる。その代わり……」
一旦言葉を切るラム。そして、
「さっきバルスがラムにしたことも忘れなさい。交換条件よ」
スバルを正面から見据えて、いつもの強い口調。
「さっきしたこと?」
スバルはとっさに何のことか思い浮かばず、おうむ返しに聞き返した。
「それ、わざとなの? とにかく忘れなさい。さもないと、違う呼び方になるわよ」
ラムの目線が、スバルに突き刺さる。
「違う呼び方って、何だよ?」
「バルス改め、アヌス」
「あ、あぬ——って、お前……。ってか、そう言うのか?」
「言うわ」
即答するラムに、思わずスバルは顔をレムに向けた。
「……い、言います……」
消え入るような声で答えるレムが、赤い顔をしてスバルの視線から顔を背ける。そんな二人にため息をつきながら、スバルはボソッと呟いた。
「何でそんなことだけ、本当にひねりがないんだろな……」
「ひねり?」
「ひねり?」
「あ、いや、なんでもない……。と、とにかくわかった。もう忘れた! 全部忘れた!」
話の途中から、ラムが何のことを言っているのかに気がついたスバルは、焦りながら慌てて答えた。
——ふん。
その様子に満足したのか、ラムの表情がいつものすまし顔に戻る。
「で、何の話だったかしら?」
「さあ、何の話だったっけ?」
何ともwin-winな体験と関係。
「あ、でもでも」
突然、レムが口を開いた。何かに思い当たったような、そんな顔をしながら、
「どうしてもして欲しくなったら、いつでも言ってくださいね、スバルくん! レムは全然平気ですよ!」
本日三度目の、痛恨の一撃。
「……レム」
「……れむさん」
スバルを見つめてニコニコしているレムに、二人は大きくため息を一つ。
「あ、あのな、今の会話、聞いてなかった?」
答える代わりに、タオルを押し上げているスバルを探し出したレムの綺麗な爪先が、感触を確かめるように触れ、その部分を擦り上げた。その途端に、スバルの口から呻き声が漏れる。
「ううっ!」
「スバルくん、まだ小さくなっていませんよ?」
ふふふっ、と、いたずらっぽく笑いながら、つま先を動かすレム。
「もっとしたいですよね?」
「う、うん……」
あからさまなレムの言葉と足の動きに戸惑いながら、でも、スバルは素直になるしかなくて。
一度スバルから足を外したレムがゆっくりと正面に移動した。そして、そっとスバルの体を抱き起こして湯船の淵に座らせた。
「レム……」
レムはにっこりと微笑みながら、スバルの両足を大きく広げてその間に鎮座した。ついで、申し訳程度に股間を隠していたタオルを取り去り、スバルのいきり立っているものにそっと手を添えると、パクリとそれを口にした。
「あ……あ……」
とろけるような快感が体全体を包み込む。可愛らしいレムの舌が、膨れ上がっている先端部分をくるりと舐め回し、裏の筋をくすぐるたびに、スバルの体が大きくブルっと震える。
「あああっ!」
「これ、好きですよね?」
一度口からスバルを外して、上目遣いに可愛らしく尋ねるレム。スバルが返事をするまもなく、彼女は小さな口を目一杯大きく開けながら、再びけスバルを咥え込んだ。
濡れた青いボブヘアが前後に動く。喰むように少しずつ口の中に入れ、十分に奥まで入り込んだところで、きゅーっと吸い付きながら抜き去る。そしてどんな瞬間も一生懸命舌を動かし、スバルの快感をより強いものにすることを怠らない。
「う……ううっ……」
レムの舌が裏の筋をチロチロと刺激し、膨らみ切った艶やかな部分を円を描くように舐め回す。そして思い出したように、先端部分の割れ目に入り込もうとする。
レムの与えてくれるとびきりの快楽に、スバルは両手を後ろについて体をのけぞらせながら、呻き声しか出せずにいた。
「す、すごいわね、レム」
ラムが呟く。いつの間にそばに来たのか、感心半分、興味半分と言った様子で、妹の積極的なその技巧をすぐ横で見つめている。そうして程なく、あの瞬間がスバルに訪れた。
「レム……も、もう、イキそうだ!」
その言葉にレムは自身の動きを早めた。
「ああっ!」
最大限まで膨れ上がった部分が限界を迎えた。スバルの腰がビクンビクンと痙攣し、その度に自身の精を勢いよくレムの口腔に迸らせた。
「んーっ! ぐうっ!」
一番気持ちのいい瞬間にスバルが漏らすいつもの声を耳にしながら、自分の口が外れないようにしっかりとスバルの腰のあたりに手を添えたまま、最後の一滴まで吸い取ろうと頭を前後に動かし続けるレム。
「はあっ……はあっ……ううっ」
ようやく脈動が収まり、全てを出し切ったのを確認したレムが、スバルから口を外した。そして口をきゅっと閉じたまま、ちょっと困ったような表情でスバルを見上げた。
「れ、レム?」
スバルの腿に手を乗せたまま、レムの目が少しだけ涙目になっている。
「あ……! いい! いいから! そのまま吐き出していいから! 無理しなくていいから!」
レムが何を困っているのかすぐに理解したスバルが、慌てて手元のタオルを差し出そうとした。だが、それよりも早くラムが綺麗に畳まれたタオルをレムに差し出した。レムはそのタオルを手に取ると、くるりと後ろを向いて、そっとスバルのものをタオルに吐き出した。
「レム、これ」
いつの間に用意したのか、手桶に入った水を差し出すラム。レムはそのまま口を軽くゆすぐと、申し訳なさそうな表情でスバルの方へ向き直った。
「ごめんなさい、スバルくん。思ったより量が多くて……」
「ば……あ、いや……俺の方こそごめん……」
「レム、その、飲み込めないくらいの量だったの?」
「は、はい……あの、それに……まだちょっと濃くて……」
「う……」
穴があったら入りたい、まさにその言葉がぴったりなこの状況。スバルは真っ赤になった顔を両手で隠した。
「ご、ごめん」
「なんで謝るんですか? レムがスバルくんにしてあげたいんです。もっともっといろいろしてあげたいんです」
「なんでそんなに——あ、いや、ごめ……う、うれしい。めちゃめちゃ嬉しい」
スバルは、しどろもどろになりながらレムの体をそっと抱き寄せた。そしてレムのほうに体をかがめ、さっきまで一生懸命自分を加えてくれていた可愛らしい唇を自身の唇で塞いだ。
「んっ……んっ」
二人の舌が絡み合い、レムの喉の奥から声が漏れる。二人の唇がゆっくりと離れると、スバルもまた満足そうな「フゥッ」という声を漏らして、体を起こした。
「あ……」
スバルの正面に膝立ちをしていたレムが思わず声を上げた。
「すごいわね、バルス」
レムの肩越しからスバルの股間を眺めながら、ラムが続ける。
「あと何回くらい出せそうなの?」
「え?」
思わず自分を見下ろすスバル。たった今、レムの口に濃いものを大量に出したというのに、そこはまだ形を保ったままだった。
「あ……あの……」
とっさに股間を手で隠しながら、狼狽するスバル。そんなスバルにレムが優しく微笑む。
「まだし足りないんですよね? 大丈夫ですよ、スバルくん。今日はいっぱいしましょう!」
「う、うん……」
レムは立ち上がりながらスバルの股間にタオルをかけ、軽く唇にキスをした。
「とりあえず、お湯に浸かってくださいね。体が冷え始めてますよ」
「あ、うん……」
すでに曖昧な返事しかできないスバルは、レムに言われるがままに肩まで浸かると、ふーっ、と大きく息を吐きだした。もう何を言ってもほんとうに説得力ゼロ。大きいままのあの部分だけが、何をしたいのかという欲求を正直に訴えている。
その正面では双子の姉妹が、一人はニコニコしながら、もう一人は何やら興味津々と言った表情で、同じく湯船に体を沈めていた。
ほんの少しの間、三人の間に無言の時間が過ぎ、おずおずとレムが口を開いた。
「スバルくん、あの……温まったらお部屋に戻って、ゆっくりレムと……その……つなが……せ、せっくすしませんか?」
レムの口から出たセックスという言葉に、思わずスバルのそこが反応する。
「お、お前……せ、セックスって……」
「え? だって、スバルくんがその……二人が、あの、つ、つながることを、せっくすって言ってたような……」
「いや、そうだけど……そうなんだけど」
女の子の口から直接その言葉を聞くと、思っていた以上にそう言われた自分が恥ずかしいことがわかった。スバルの顔がカッと熱くなる。でも、勇気を出してそう言ってくれているレムが、やっぱり可愛い。
「うん……したい。レムとセックスしたい。レムのことも気持ちよくしたい。二人で一緒に気持ちよくなりたい」
「……はい、スバルくん」
「えへん、えへん」
わざとらしい咳払いが二人の甘い会話を断ち切った。
「今ここでそういう会話をされると、ラムの居場所がなくなるわ……。せめて、ラムのいないところでやってくれないかしら?」
「あ、いや……その……」
何と答えていいやら、スバルが困っているのをよそに、レムが嬉しそうにスバルの言葉を引き継ぐ。
「もちろん、姉様も一緒ですよ!」
「レム、ちょっとまって——」
「スバルくん、姉様ともせっくすしてくださいね!」
恥ずかしい言葉をあっけらかんと口にするレム。すぐ横でそれを聞いていたラムの顔が、珍しく赤くなっている。スバルはスバルで、やや困ったような嬉しいような表情。
「お、おう……。も、もちろん、す、する。うん。し、しよう。三人で」
「はい! そうしましょう! またいっぱい出してくださいね!」
レムの勢いに押されて、苦笑いしながら頷くことしかできない。
「そ、そうだな。いっぱい……いっぱい出過ぎじゃないか? すでに」
ふと気になっていたことが、口に出た。
「そもそもだ、さすがにここまで連続して何回もできないと思うんだけど」
そう言って首をかしげると、レムに顔を向けた。
「……」
スバルが何を言いたいのか、瞬時に理解したレムは、
「い、いえ、スバルくん、レムはあの時反省しましたから——」
スバルにあらぬ疑いをかけられて、慌てて両手を左右に振って否定する。
「あ、その……あの時は本当にごめんなさい」
「あ! ちがう! そういう意味じゃない! も、もう終わったことだから! それに……」
慌ててフォローする。
「それに、なに?」
ラムが口を挟んだ。
「前も言ったかもしれんけど、おかげで自分の気持ちに気づけたし、その……」
「その?」
「その?」
「レムと……一つになれたし……」
「何? その恥じらってるかのような言い方は」
「そ、そうですね。スバルくんらしくないです」
二人のツッコミに、ちょっとだけ困って言葉が途切れる。
「いや、そんな恥じらってるつもりじゃないんだけどな……それにしても、ちょっと変だ、これ」
夢精の事はいい。何日もしてなくて、しかも毎日あんな状況では仕方がないだろう。それは自分でもまあ、理解できる。その後、レムが手でしてくれて、二人いわく「たくさん出た」のも、そりゃそうだろう。だが、今のこの状態は一体なんだ? 朝から数えて何度射精している? これはいくら何でも出すぎだし、出しすぎだ。そしてちっとも柔らかくならない。
ここでふとある事に気付いた。今朝、ラムはなんて言ってた? 今日のスープは自分が作ったとか何とか言ってなかったか?
「まさかな……」
スバルがラムに目を向けた瞬間。いつもならキッと睨み返して来るはずのラムが、ふいと視線を外した。
「あ……」
「な、なによ?」
「レムレム、姉様が目を反らせた気がするんだが?」
「す、スバルくん、姉様が目をそらせましたね……」
「レムレム、姉様は俺に何か盛った、ってことなのか?」
「す、スバルくん、姉様が何かしたのかもしれませんね」
「——こほん」
ラムが咳払いを一つ。そしてちょっとだけ間を置いて。
「——レムレム。それはみんなのためよ」
「スバルくん、スバルくん、それはみんなのためなんです」
ラムはレムの言葉に強く頷くと、スバルを真剣な表情で見つめた。
「手のひら返し、早っ! お前、どっちの味方だよ!」
当の本人は、明後日の方を見て、すっとぼけている。
「おい、姉様。今朝、スープに一体何を入れた?」
「特に何も。強いて言えば愛情かしら」
「それ、絶対嘘だろ! そのセリフに説得力はゼロだっての!」
「愛情よ。我慢させてしまった分、たくさん出せるようにって——」
「姉様、さすがです!」
レムが掌を顔の前で合わせて、嬉しそうにしている。
「わかってくれるのはレムだけね」
「い、いや、まてまて! 何だか俺一人、いきなり悪者になってないか?」
二人に共闘されては、もう勝ち目はない。スバルは諦めたように首を横に振った。
「んで、その愛情の効果は後どのくらい続くんだ?」
「さあ? レムが使った残りを全部入れたから、どのくらいかしらね? さすがにそこまではわからないわ」
「あっさり吐いたな! お前、残り全部って……ってか、まだ残ってたのかよ!」
「レムのポケットから頂戴したわ」
「姉様、いつの間に……。あ、でもでも。レムはあれがまだ残っていることをすっかり忘れてました!」
レムはそう言ってから、んー、と首を傾げた。
「でも、消費期限があったと思うのですが……まだ効果はあったんですね」
「レムさん、レムさん。それって『惚れ薬』とか言ってなかったか? これ、まんま強精剤とか、媚薬とかってやつじゃん……」
「あ、あの……惚れ薬、って聞いたんですけど……」
「何を言っているの、バルス。レムの愛情を疑うの?」
「いや、だけど——」
「それ以上何かいうと、バラすわよ」
「え?」
スバルが一瞬キョトンとする。レムもなんのことでしょう? という表情で二人を見比べている。
「一体なんの——」
「レム。バルスはね、さっきレムの名前を呼びながら自分で——」
「わ! わー!」
慌てて大声を出すスバル。
「え? どうしたんですか? なんの事ですか?」
スバルの慌てぶりに驚きながら、でも二人の会話の内容がさっぱりわからないレム。
「あー、いや、あの、そ、そう、もう十分あったまったから、そろそろ出ないか?」
スバルが強引に話題を変えようとする。その様子に疑問を残しつつも、
「そうですね。そろそろお風呂から上がりましょうか?」
レムが素直にそう答えた。
「そうね、そろそろ出ましょう」
ラムは明後日の方向を見上げたまま、『ふふん』と鼻を鳴らして涼しい顔をしている。
「ううう……」
結局のところ、さっきと同じ呻き声しかあげられないスバルは、手のひらでお湯をバシャバシャと顔にかけながら、勝ち目のない勝負にこれ以上挑むことを諦めた。