レムの暖かくて小さな手が、スバルの背中に香油を広げてゆく。甘くて爽やかな香りが、スバルの鼻腔をくすぐった。
「ああ、いい匂いだ……」
「どうですか? スバルくん。この香り、好きですか?」
「うん。これ、結構好み」
「嬉しいです! レムもこの香りがスバルくんにぴったりだって思って」
スバルの背中を見つめるレムが本当に嬉しそうだ。ラムはそんな妹の様子に優しく微笑むと、後ろ手にドアのノブに手をかけた。
「姉様?」
一瞬、スバルの背中に触れている手が止まる。
「必要なものは全部用意してあるわ、レム。じゃ、ラムは部屋に戻るから、夕食の支度を始める頃になったら、厨房にきて頂戴」
「姉——」
「おいおい、今日は二人で色々してくれるんじゃなかったのかよ? ラムもレムと一緒に頼むぜ」
ドアの方に首を回したスバルが、レムの言葉を遮った。
「えっ……でも……」
「遠慮はいらないぜ。さ、ニュータイプ姉妹で息のあったところを見せてくれ」
「スバルくん……」
いつもの調子でそう言ったあと、スバルは再び目を瞑った。
「わ、わかったわ、バルス」
ラムが回しかけたドアノブから手を離す。少しだけ俯いて、そして小さく微笑んで。
「スバルくん……大好き……」
スバルの耳にしか届かないくらいの小さな声で、レムがそっとささやく。当のスバルは目を瞑ったまま無言のままだ。だが、頬が少しだけ赤くなっている。彼女は体をかがめて、その赤くなった頬に軽くキスをしてから、改めてラムに手を差し伸べた。
「姉様、スバルくんの上半身と下半身と、どちらにしますか?」
「その二択だったら、下半身はレムに任せるわ、レム。でも、どちらかと言うとこの場合、左右で受け持った方がいいんじゃないかしら?」
「あ、そうですね! じゃあ、姉様はこちら側を!」
ラムは手渡された小瓶から香油を手に取ると、レムとは反対側の手をスバルの背中に当てた。
「じゃあ始めますね!」
二人の小さな手が、スバルの背中を滑り始める。
「ああ、気持ちいいもんだな、これ」
「力加減はいかがですか?」
「うん、ちょうどいいぜ——うん?」
ラムの手がふと止まる。
「姉様?」
その赤い瞳が、しみじみとスバルの傷だらけの背中を見つめていた。
「つくづく思うけど、あの時……」
言いかけて言葉を切る。
「なんだよ?」
「——あの時、ウルガルムにバルスの大事な部分を噛みちぎられなくて、本当に良かったわね……」
その言葉で、レムが体をびくりと震わせた。
「う……恐ろしい事言うなよな」
「あ、あの……」
レムが何を言おうとしているのか、スバルにはすぐに判って。
「レム。それ、もういいから。もう終わったことを思い出さないでも! そんなことよりほら、手が止まってるって!」
スバルが目を瞑ったまま呟く。ラムも、一瞬『しまった』という表情を浮かべ、すぐに話題を変えた。
「ところでレム、これ……この香油は何の香り?」
「ま、マグノーラです、姉様」
「マグノーラ、ね」
「スバルくんも気に入ってくれたみたいです」
「バルスにはちょっと甘すぎる匂いのような気もするけれど」
「そうでしょうか……」
レムの言葉が尻すぼみになり、そのままなんとなく無言になる。やや気まずい空気の中、二人の掌だけがスバルの上を滑っていく。しばらくして、ラムが口を開いた。
「バルス、どうなの? こんな感じでいいの? ……バルス?」
返事がない。
「姉様、スバルくん、眠っちゃったみたいですよ」
それを聞いたラムは、体をかがめてスバルの顔を覗き込んだ。スバルは組んだ腕におでこを乗せたまま、目を瞑っていた。軽く寝息を立ているので、寝ているフリではなく本当に眠ってしまったのだろう。
「眠ってしまうのも仕方がないわね。だって、射精って体力を使うのでしょう?」
「そ、そうですね。そう書いてありました」
「朝から、何回出したか、レム、わかる?」
「えーっと……ムセイを入れると、五……いえ、六回でしょうか」
「例の実の効果もあるとはいえ、すごいわね」
「すごいです」
「それにしても、男の子も大変ね」
「え?」
「だってそうでしょう? 性欲の強弱はともかく、自分の意思とは関係なくアレの形は変わるらしいし、精液も出さなければ溜まる一方で、放っておけば勝手に漏れ出てしまうんだもの」
「そうですよね。あまり我慢するのも体に悪そうですし。レムが毎日お手伝いしてあげようとは思っているのですが……」
「レムレム、そのことなんだけど……毎日はやめにしてもらえるかしら?」
「どうしてですか?」
「そ、それは……」
再び手を止めたラムの顔が少しだけ赤い。
「姉様?」
「あ、あのね、レム」
「はい」
「その……大きくなったおちんちんを見て、レムはなんとも思わないの?」
「え? あ!」
途端にレムの頬が染まった。
「でしょう? それ、ラムにもわかるもの。ああ、そうじゃなくて——」
レムはラムが何を言わんとしているのかがわかって、さらに顔を赤くした。
「レムがそういう気分になると、ラムもそうなってしまうもの」
「うう……」
「それに関して言えば、共感覚を遮断する練習をしないとダメね」
「そ、そうですね……」
「まあ、レムがそういう気持ちになるのはともかく、あの……最後のあれは……」
そう言いかけたラムの体に、一瞬震えが走った。
「……レム、今そうなっているのね?」
赤い顔のまま黙って頷く、レム。
「ご、ごめんなさい、姉様。レムは自分ではどうにもならなくて……」
「女の子にも性欲があるのは自然なことだと思うけれど、あれを知ってしまうと特に、ね。あの強烈な快感は、おそらく自分の意思でどうこうできることじゃないわ」
「は、恥ずかしいですけど……でも、あれは凄すぎます……」
二人は、顔を赤くしたまま一瞬見つめ合い、そして小さく笑った。
「あと、レムは普段の時に……急にその……そうなる時があるでしょう? あれはなんなの?」
「う……そ、それは……」
「大丈夫よ。バルスは寝ちゃってるし、今言ってもバレないわ」
「そ、その……スバルくんのお尻が……」
「お尻?」
「スバルくんの、その、お尻が目に入ると、キュンってなっちゃうんです……」
「バルスのお尻で?」
「はい。実はさっき、スバルくんにもそのお話をしたんですけど、わかってもらえませんでした」
レムはそう言って、一人でくすりと笑った。
「スバルくんのお尻、かっこいいと思いませんか?」
「え? そう? ちょっとわからないけれど……」
「小さくて引き締まっていて、形がいいと思うんです」
「んー。そうかもしれないけれど……ちゃんと見たことないわね、そういえば」
そう言ってスバルのパンツに手をのばすと、ラムはゴムの部分に手をかけて一気に引き下ろそうとした。その途端、
「ぐわっ! な、なに? 痛い痛い!」
突然、スバルが声を上げた。
「引っかかってる! 引っかかってる!」
「あ……」
慌てて手を離す、ラム。
「なに? どしたの、いきなり!」
起き上がろうとするスバルの背中を、レムが優しく押し戻した。
「背中が全部終わったので、おし……下半身をマッサージュしようかと思って」
「え? そうなの? 終わったの? 知らんうちに寝ちまってた……」
口元のよだれを拭いながら、再びうつ伏せるスバル。
「寝ててもいいのよ。それだけ気持ちよかったってことだわ」
「う、うん。気持ちよかった。でもさ、寝ちゃうのって、もったいなくないか?」
「もったいない?」
「もったいない?」
「だってさ、せっかく二人でしてくれてんのに、それ覚えてないんだぜ?」
それを聞いた二人の顔に笑みが浮かぶ。
「大丈夫ですよ、スバルくん。何度でもして差し上げますから!」
レムはそう言いながら、スバルのパンツに手をかけた。
「ちょっと腰を浮かせてもらえますか?」
言われるがまま、腰を浮かせるスバル。レムは『引っかかり』を上手に回避すると、足からパンツを抜き取った。
「ラムにはまだわからないけど、これが魅力的なのね?」
素っ裸にされたスバルの尻を見つめながら、ラムが呟く。
「えっ? なに? なんのこと?」
「ああ、バルスのお尻が魅力的だって、レムが」
「あー、それ。俺にはわかんねぇけど」
「スバルくんのお尻、かっこいいですよ!」
「んー、そうかしら?」
「そうですよ、姉様! とっても魅力的です!」
「まあ、レムがそう思うのなら、そうなんでしょう」
「ってか、俺のケツで談議するのやめて! 恥ずかしだろ!」
そう訴えるスバルに、レムが優しくタオルをかけた。
「とりあえず、お尻、隠しておきますね」
「バルスはまた眠ってしまいなさい」
「は、はい……わかりました、お姉さま」
スバルはその言葉に反論することもなく、再び顔を伏せて目を閉じた。二人はスバルの足をそっと左右に開くと、改めて香油を手にとって、足首から腿までゆっくりと手を滑らせた。二人の手が適度にツボを押し込むたびに「ふううっ」っと、スバルの口から声が漏れる。
しばらくして、十二分に足のマッサージをし終えた二人の手がタオルの下に伸びた。その途端、スバルの体がびくっと反応した。
「うっ……」
二人が思わず顔を見合わせる。そして何やら意味深に微笑むと同時に、大きくスバルの足を左右に広げた。
「え? あ?」
スバルが何か言う前に、二人の掌が優しく撫でるようにスバルの尻肉の上で動き始める。
「ちょ、ちょっ……」
二人はスバルの抗議を無視したまま空いている手を足の付け根に伸ばすと、鼠蹊部に指先をあてて、なぞるように動かした。敏感な袋の部分を避けるようなその指の動きに、スバルの腰が絶えずひくつく。そよそよと動きまわったその指先が、今度は尻の割れ目にある窄んだ部分に移動し、触れそうで触れない、きわどい動きをする。
「あ……くっ……」
二人の指先が、焦らすように股間をくすぐるたび、スバルは呻き声を上げながら下半身をびくつかせ、身悶えた。
「気持ちいいですか?」
レムの問いかけに、うつ伏せのままコクコクと頷くスバル。
「もっと感じていいのよ」
ようやく二人の指がスバルの袋に伸び、中身を左右それぞれに指先でつまむようにしてくすぐった瞬間、
「ああっ! そ、それ、気持ちいい!」
歓喜の言葉がスバルの口から漏れた。
「はぁっ……くっ、ううっ……」
スバルの反応と、袋の感触を楽しむように二人の指が動く。自然とスバルの腰も前後に動き始める。
「あ……」
その動きに気づいたレムが手を止めた。合わせてラムも手を離す。レムはスバルの腰骨のあたりに優しく手を添え腰を浮かせると、股間から手を差し込んで、スバルの大きくなっている部分を包み込むようにして握った。
「すごい……。スバルくん、その、すごく濡れてます……」
「本当?」
「はい、姉様」
今度はラムが確かめるようにして、スバルに手を伸ばした。
「本当ね、レム。男の子も女の子みたいに濡れるのね……」
そう言いながら前後に手を動かすと、スバルが体全体に力を入れて呻き声を上げた。
「んんっ!」
いったん動きを止めたラムは、大きくなったものを握ったままでスバルの腰を浮かせた。
「バルス、ちょっと力を抜きなさい」
黙って力を抜くスバル。次の瞬間、ラムの手がスバルのそれをそのまま後ろに引っ張った。
「な!」
強引に向きを変えようとするラムに、スバルが叫ぶ。
「ば、ばか! 折れる! 折れるって!」
そんなスバルを無視したまま力を加えたラムは、スバルのそれを折り曲げるようにして下向きにし、自分とレムの目に入るように引っ張り出した。
うつ伏せのまま大きく開かれた両足の間からそれが見えているやや不自然な光景に、レムの顔が赤くなる。
「折れなかったわね」
その言葉に、スバルは全く反応できないでいた。強引なラムに対して呆れていたのではない。初めて経験した自身の角度に、痛いとも苦しいともつかない、なんとも言い難い言い感覚があったからだった。レムはそんなスバルを見て心配そうに一言。
「だ、大丈夫なんでしょうか?」
「下が柔らかいから大丈夫なんじゃない?」
そう言いながら、姿を見せている裏筋に指を触れる。途端に、
「あああっ!」
スバルが声を上げて体を震わせた。大きくなっている部分が元の位置に戻ろうとして、ベッドマットを強く下に押し込んでいる。
「スバルくん、その、続けて大丈夫ですか?」
「……」
返事を言葉にできないまま、微かに頷く。
二人の指先が再びスバルの敏感な部分に伸びる。尻をくすぐり、鼠蹊部を行き来し、そうかと思えば思い出したように、尻の中心部分を軽く押し込む。ラムの指が袋の部分に伸び、同時にレムが中指の腹で優しく裏筋に振動を与えるように細かく動く。その度に怒張したものがマットを押し込もうとし、それができない分、スバルの腰が震え、ひくついた。やがて、袋の部分が収縮し硬くなってくると、
「あ、で、でそう……」
スバルが苦しそうに訴える。
「いいですよ。いっぱい出してください!」
レムがさらに指の動きを速くする。ラムは指先を少しだけスバルに差しこむと、細かく手を動かして、スバルに快楽を付け足した。
「ああっ! ぐっ!」
くぐもった声と同時に、スバルの体に痙攣が走った。開かれた両足がピンと伸び切り、力が入る。同時に両方の尻肉がラムの指を挟み込む。さらに大きく体を震わせると同時に、下向きになったままの先端から、びゅるっびゅるっと、あの白濁したものが吐き出され、その度にスバルの中のラムの指が締め付けられた。
「ああっ……」
感嘆の声を上げたのはレムだ。その瞬間、ぐっと太くなった先端部分から勢いよく吐き出された白い体液は、シーツがわりに敷かれていたタオルにいったん堰き止められ、そしてダムが崩壊するように、スバルの膝のあたりまで飛び散った。
とくんとくん。ようやくスバルの痙攣が小さくなる。そしてその体全体から力が抜ける。レムはスバルから指を離すと、ラムに代わって揉み込んでいた袋の部分からも手を離した。同時にラムもスバルの体から指を抜く。その瞬間、スバルがブルっと体を震わせた。
「どうでしたか? 気持ちよかったですか?」
「どう? 気持ちよかった?」
無言のまま頷くスバル。その様子を見た二人は、顔を上げてにっこりと微笑みあった。