※この作品はR-18です。

紫紺の夢   作:Kuro Maru

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黒の章・7

 ベアトリスがスバルの寝ている部屋に姿を現したのは、翌日の早朝だった。

 

「なんだかこの部屋、魔女の悪臭とはまた違う匂いがするのよ」

 

 そういって鼻を摘んだベアトリスが手を振りかざすと、全てのカーテンと窓が、一気に開け放たれた。眩しい朝の光が、部屋の中に降り注ぐ。

 

 すでに目が覚めていたスバルは、動かせる左腕を使って体を起こしながら、

 

「よ、よっ、べ、ベアトリス。なんだか久しぶり! 元気だったか?」

 

 ――まさか、あれの匂いが残っているんじゃぁ。

 

 いきなりのセリフに焦りまくるスバル。

「まあまあかしら? いきなりベティの部屋に入ってくる失礼な奴がいないぶん、平穏で結構なのよ」

 

「ほおお。って、それ、もしかして、俺のこと?」

 

「お前以外の誰がいるというのかしら?」

 

「……ですよねぇ」

 

 いつものベアトリスだった。そのベアトリスは、怒っているような少しイライラしているような、よくわからない表情で、じっとスバルを見つめた。

 

「そういえば、お前が俺に薬を作ってくれてたのか?」

 

「ま、そうなるかしら?」

 

「そっか。あの、ありがとうな。お前がいなかったら死んでたかも、ってラムも言ってたし。って、結局何が原因だったんだ? 何か重病だったのか?」

 

「それは、双子の妹に聞いたらどうかしら? ベティはお前の病気が何なのかなんて興味はないのよ」

 

「ううう。冷たすぎる」

 

 ある程度予想はしていた返事とはいえ、ちょっと凹むスバル。気を取り直して、

 

「でもさ、お前が調合してくれる薬なら、一気に治せたんじゃないのか? いや、いろいろしてもらって感謝はしてるんだが」

 

 そう言うスバルに、

 

「それじゃ意味がないのよ。ま、今のところ効果はまずますってところかしら」

 

「うん? 意味? なんの? よくわからんが、ベア子もレムも、何か隠してねぇ?」

 

「やれやれ、なのよ」

 

 ベアトリスは首を振りながら、両方の手のひらを上に向けて、ため息をついた。そしてこう言った。

 

「お前、ベティが何を言っているのか、わかっているのかしら? ま、どうでもいいかしら。とにかく、今日はまた違う薬を作ってきてやったのよ」

 

「治りが早くなるのか?」

 

「意味は違うけれど、似たようなことになるのかしら。双子の妹に渡しておいたから、きっちり飲ませてもらうのよ。じゃ、おとなしく寝て妹の世話になっていやがればいいかしら」

 

 そういうや否や、ベアトリスはドアの方へと向かった。扉を開けると、今は廊下につながっていた。そのドアの脇にレムが控えていた。

 

 すれ違いざま、ベアトリスと目が合い、顔を赤らめるレム。

 

「本当にめんどくさい連中なのよ。ロズワールも、一体何を考えているのかしら。本当は自分たちでなんとかするのが普通かしら」

 

 ベアトリスはそう呟きながら、部屋のドアを閉めて出ていった。

 

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