レムの息がようやく落ち着き始める。
「おい……レム? 大丈夫か?」
「は、はい……」
「よかった……。いきなり突っ伏して倒れるからびっくりしたぜ……」
「す、ばるく、ん……」
「本当に大丈夫か?」
「は、はい……でも、レムは……レムはどうしてしまったんでしょう? あの……ものすごく、その……気持ち良くなってしまって……ご、ごめんなさい……」
「な、なんであやまるんだよ? そんなん、謝らなくていいんだよ! その、レムがそうなったら、俺もめちゃめちゃ嬉しいし……」
「はい……スバルくん……あの、とっても気持ちよかったです……」
レムは再び枕に顔を埋めて、恥ずかしそうに言う。同時に少し緩み始めていたその部分が、再びきゅっとスバルを締め付けた。それに呼応して、スバルもぐっと力を入れる。
「あっ……」
スバルは両手をレムの脇について上半身を起こすと、レムに掴まれたままの腰をそっと動かし始めた。スバルがどうするつもりなのかすぐに理解したレムは、うつ伏せたまま少しだけ腰を浮かして、スバルの動きを受け入れた。
体を動かしやすいのか、先ほどと同じく、もしかしたら、もっと深く、そして圧迫するように、レムに出し入れを繰り返すスバル。
「あ……あ……」
その腰の動きが大きく、激しくなるにつれ、レムの声も少しずつ大きくなり始める。
「んんっ……あんっ……あああんッ!」
半ば泣いているような、切ない声がレムの口から漏れる。スバルはスバルで、動くたびにレムのお尻の柔らかさを直接感じて、その新鮮な感触に酔い始めていた。二人の交合部分から聞こえる淫靡な音と、レムの喘ぎ声だけが部屋の中に響き渡る。
それほどの時間が過ぎないうちに、レムの声がさらに大きく、そして切なく変わり始めた。
「ああんっ! いやああん! あっ! あっ! はあっ……はあっ……んんっ!」
一度絶頂に達すると女の子の身体はいきやすくなるのか、再び頂点に近づき始めるレム。だが、それよりも先に、スバルに限界が来た。
「あ……れ、れむ……いきそうだ……あ、あ、い、いくっ!」
大きく腰をびくつかせ、ぐうっと呻き声をあげるスバル。が、例によって不完全燃焼気味の、やや気持ち悪い感覚だけが腰から先端に伝わるだけで、レムの中には何一つ、一滴も注がれない。
「ん……んんっ……」
中でひくついているものの、スバルの先端から注がれる、例の熱い液体の勢いを感じないレムは、
「い、いったんですか? スバルくん? あの……なにもでてないですよ、ね?」
自分もあの瞬間に向かっていたにもかかわらず、息を切らしながら、心配そうにスバルを案じている。
「だ、大丈夫だ、レム……。お、俺のことは心配しなくて……くっ……い、いいから……」
「でも……」
自分の中のスバルは、熱を持ったまま大きさを保っている。何も出ていない理由は、ラムの例の施術のせいだろう。そこまでして、スバルは、そして姉は、自分のことだけを考えて、一生懸命してくれている。レムはそんな二人の思いに少しだけ甘えることにした。
「スバルくん、あの……もし嫌じゃなかったら、今度はスバルくんが上になってもらえますか?」
「うん?」
「レムは、スバルくんが上になってくれるの、好きです。スバルくんの顔を見ながら、その……い、いかせてもらえたら、とってもうれしい……です……」
「わ、わかった……」
そう言って、ゆっくりと体を外す。と、最後の最後で、離れないようにきゅっと力を入れるレム。
「うっ……れ、れむ……」
一瞬たりとも離れたくないのはスバルも一緒だが、このままではレムが望んでいる体勢になれない。意を決してレムから自身を抜き去る。
——ちゅっ
と言う音とともに、ようやく体が二つに分かれると、スバルはそっとレムの背中にキスをした。
「レム? 上を向いて……くれるか?」
その優しい言葉に、レムはそっと頷くと、ゆっくりと体を反転させ、覆いかぶさっているスバルの瞳をじっと見つめた。
「スバルくん……」
「レム……」
二人の言葉が
レムがその瞬間を待って、大きな背中に手を回す。それに応えるように、スバルは自身に手を添えてレムの入り口に先端をあてがった。
「レムに入れてください……スバルくん……」
「うん。入れるよ、レム……んんっ!」
さっきまで自分のものが収まっていたはずの場所。それなのに、何年も——もしかしたら何百年も求め続け恋焦がれていた、そしてその旅路の果てにようやく見つけた、幻の泉。
ようやくそこに体を沈め、その泉と一体になる——そんな感覚がスバルを襲った。
「ああっ!」
レムもまた、初めてスバル を迎え入れたあの時を思い出し、、さらに、スバルが感じているのと同じように、心から求めて止まなかったものにようやく出会えた、そんな声をあげてスバルを迎え入れた。
「レム、レム……好きだ。大好きだ、レム……」
「スバルくん、レムも大好きです。レムはスバルくんを……愛しています……」
「……はあン……はんん……ああうっ、んっっ……スバルくん、スバルくん……ふあああっ!」
「レム! レム! おうっ! んっ、んッ、くはっ……」
二人の喘ぎ声が響く。それはまるで姉妹の共感覚のように二人に共鳴し、そしてその感覚を共有した。スバルとレムは、欲するがままに体を揺らし、求め、そして与えあった。
それを少し離れて見つめていたラムは、口元を両手で押さえながら、徐々に目頭が熱くなっていくのを感じて困惑していた。
先ほどから繰り広げられているその行為——特に後ろから繋がっている姿——は、とても動物的で、そして肉感的で、どう見ても肉欲をぶつけ合っているようにしか思えない、そんな一端が見え隠れしていた。
だが、いまの、この瞬間の二人の姿はどうだ。お互いに好き合って、愛し合い、そして求め合う姿は、美しい以外の何物でもないではないか。
愛するもの同士が自然と一つになる。神々しさすら感じるその二人の様子に、気づくと、その赤い瞳から涙がこぼれ落ちそうになっていた。
スバルがゆっくりと体を揺らす。それに合わせてレムの体もゆっくりと揺れている。遥か昔から脈々と続く、命を紡ぐ営み。だが、おそらく二人の間に新たな命の誕生はない。自分たちの境遇を鑑みれば、その行為によって誕生するはずの新しい命で、その生を繋いでいく可能性は無いに等しい。
それは滅びゆく鬼族の宿命。それは二人に与えられた、悲しい試練。
それゆえに、レムはスバルを切に求め、スバルもまたレムに求められるがまま、自身を与え、そしてレムの全てを与えられている。
あの夜、あの炎の中、命をかけて守り抜いた愛する妹と、ツノを失いながらも生き延びた自分。あのとき、何一つの策略がなかったとしても、おそらく滅びゆく運命にあった同胞たち。それなのに、二人はこうして生きている。そして妹は、生きている喜びを、今まさに体全体を使って感じている。もちろん自分も、妹とスバルのおかげで、その一端を知ることができた。自身の叶わぬ想いはともかく、それを知れたことはとてもとても幸せなことだった。
だからこそ、妹にはその先にあるはずの幸せも知って欲しかった。与えてあげたかった。そしてそれができない自分が、自分達の運命が悔しかった。
二人の姿を目にしてなぜ涙がこぼれ落ちそうになっているのか、その理由に思い当たって、彼女は声をあげて泣き叫びたくなった。
——泣いてはダメ。それは初めからわかっていたこと。レムにも、そして自分にも、そういう未来はやってこない。でも、だからこそ、涙を流してはダメよ、ラム……。
いつしか二人の動きが早まり、発する声一段と大きく、荒くなっていた。
「はあっ……はあっ……」
「レム……お、俺、も、もう、いきそうだ!」
「スバルくん、レムも! レムもいきそうです! スバルくん、いっしょ……一緒に、一緒にいきた……い、あ、あ、いきそう……」
「ああっ!」
「あっ、いく! いくっ!」
あわてて瞳を拭いながら、指先に力を込める。魔力を高めると感じると同時に、それをスバルの股間から見えている紐に集中する。
「あああっ! んんっ!」
レムが体を震わせ、ビクンビクンと痙攣すると同時だった。小さな旋風が赤い紐の端に絡み、そのまま一気にスバルを制していた全ての結びを解き放った。
「うわっ! ああああっ! ぐっ! ぐうっ!」
水門のかんぬきが抜かれるように、限界に達したダムが決壊するかのように、長く堰き止められていたものが、スバルの先端から一気に放出される。歯を食いしばり、腰を震わせ、レムの中に思いの丈の全てを注ぎ込んでいく。
「ああっ! スバルくん! スバルくん! ああっ……」
「れむ! れむ! れむっ!」
スバルから迸った大量の精液を体の一番奥で受け止めたレムは、その熱さと勢いに気を失いそうになった。スバルもまた、かつて経験したことのない、終わりの見えない放出感とそれに伴う快感に脳髄を痺れさせたまま、体をビクビクと震わせているレムの上で、ぐったりとなった。
どのくらいの間、そうしていただろう。どのくらい意識が飛んでいたのか全然時間の感覚がない。気がついたときには、下敷きになっているレムが、やさしく微笑みながら自分の頭をそっと撫でていた。
「あっ!」
慌てて体を起こそうとするスバルを、レムは優しく下から抱きしめた。
「もうちょっとだけ、このままで……このままレムを抱いていてください」
「う、うん。重く……ないか?」
「大丈夫ですよ、スバルくん。スバルくんは、その……全部出せましたか?」
そう言って、スバルをきゅっと締め付けるレム。そのレムの動作に、スバルは自分がようやく緊張から解放されていることに気付いた。
「そ、そうみたいだ……レム……あ、その……あ、愛してる……レム……」
スバルが今、やっと口にできる精一杯の言葉。そんな歯の浮くような言葉一つでレムのそこがキュッとなる。
「レムも……レムもスバルくんを愛しています……」
そのままの体制で、熱い口づけをかわす。お互いの舌が、まるでさっきまでの二人のように二人の間を行き来し、蜜の代わりに、甘い唾液の交換を行う。やがてレムに優しく包まれていたものが、力を使い果たしたようにぬるりとレムから抜け落ちて、二人の長くて熱い営みに終わりを告げた。
「スバルくん……あの、とっても素敵でした。レムは、その……本当は何度もいってしまって……」
「え? そうなのか?」
「は、はい……実は。でも、恥ずかしくて声を我慢してました……」
「そんなの、我慢しなくてもいいんだよ。でも、レムが気持ちよかったんなら、俺もすっげー嬉しいよ」
恥ずかしいけれど、とっても嬉しい。そんな表情を浮かべて、顔を赤くしながら告白するレムに、スバルは優しく微笑んだ。
「ん……?」
そんな優しい空気がふたりを暖かく包み込んでいたはずなのに、ふと、濡れた感触を感じて、スバルが股間を覗き込む。レムもつられて下半身を覗き込む。
「あ……」
そこに大量の——本当に大量の白濁が、透明な蜜と混じり合い、レムの体内から敷いてあったタオルに流れ出していた。
「あ! だめです! みちゃだめです! スバルくんは目を瞑ってください!」
レムが慌てて起き上がろうとした、その時。
「バルス、目を閉じてこっちにきなさい」
「いや、でも……」
「いいから」
「わ、わかった……」
スバルはそっとレムから離れると、膝立ちのまま声のする方へ移動した。
「目を開けていいわ。はい、これ」
スバルの目の前で、ラムがにっこりと微笑みながら絞ったタオルを差しだしていた。
「あ、あの、さ、サンキュ……」
「何よ、そのちょっとがっかりしたような口調は。バルスをきれいにしてあげたいのは山々だけど、レムの方が大変なことになっているわ。申し訳ないけれど、自分できれいにしてくれる?」
「あ、うん。わかった……わかってる」
そう言ってレムを振り返ろうとするスバルを、ラムが制した。
「振り向いてはダメ! ラムがいいって言うまで、そっちを向いていて」
ラムはそう言うと、お湯を張った桶とタオルを持って枕元の方へ移動した。
「ね、姉様?」
ラムが何をしようとしているのかに気付いたレムは、慌てて体を起こそうとした。
「大丈夫よ、レム。ラムに任せて。ううん。ラムにやらせて頂戴」
「で、でも、ちょっと恥ずかし——」
「レム、レムだってこの間ラムのことを綺麗にしてくれたでしょう? ラムはレムの姉様だもの。恥ずかしがることなんて何もないわ。それに……」
いったん言葉を切って、ラムはこう続けた。
「それに、今、レムはとても眠いんじゃない?」
レムはラムの顔をみあげたまま、顔を赤くして、素直にうなずいた。
EX.21話です。 楽しんでいただけると嬉しいです!