チ、チ、チ、チと、鳥の鳴き声が聞こえる。屋敷を取り囲む森からだろうか、それとも庭園に降り立った小鳥たちのさえずりだろうか。カーテンを引いて窓を開ける。その途端、少しだけ湿った冷たい空気が部屋に流れ込む。
「今日もいい天気になりそうですね」
誰に言うわけでもなく、自然と口に出る。
鳥と共に目覚め、誰よりも遅く眠りにつく。それはもう何年も変わらない彼女の日常。そんな彼女の口からこぼれる最初の一言。
大きく伸びを一つして、体全体を目覚めさせる。少しだけひんやりとした空気を身に纏い、自室のドアを開けていつものように洗面所に足を向ける。
小用を済ませた後、冷たい水で顔を洗って前髪を片方だけピンで留めると、姉と瓜二つの顔がそこに現れる。
鏡に映っているのはそれほど高くない背丈と、薄水色の寝巻きに隠された起伏に富んだ体型。さらにじっと鏡を覗き込んで、そのまま視線を胸元に送るのもいつものルーティン。
「また少し、大きくなってる気がします……」
いつの頃からか、姉よりも大きく成長し始めてしまった二つの膨らみ。女性としてそれが良いのか悪いのか、そんなことはよくわからない。だが、主人と王都へ出かける機会があるたびに、いや、領地であるアーラムの村へ足を運ぶたびに、男性の視線が自分の胸に向けられるのには、当然気付いていた。
だが、それをいやらしいとか、気持ち悪いとか、そんなふうにも思っていなかった。あてがわれた装いは主人が用意したものだったし、それを身に纏うことを否定する理由がなかった。そもそもそれ以前に、彼女はそんなことを考える感情すらもっていなかった。
そう、あの事件があるまでは。
寝巻きの上から、その大きさを確かめるように両手でそっと包みこむ。下着をつけていないので、ふんわりと柔らかな感触を直に感じる。彼がそうしてくれるように、そのままそっと持ち上げるように動かしてみる。その途端、先端部分にジンとしたむず痒さが走り、先端部分がキュッと固くなっていくのが、薄い布越しに伝わってくる。
「ふうっ……」
ため息にも似た息を一つ大きく吐き出して、そっとそこから手を離す。再び鏡を見ると、隆起し始めた部分が寝巻き越しにもはっきりとわかる。慌てて腕を組むようにして胸元を隠してから、急足で洗面所を後にする。
部屋に戻って寝衣を脱ぐと、もう『少女』ではない肢体がさらけ出される。姿見に映るその裸身を横目で見ながら、クローゼットから取り出した、洗いたての下着を身につける。
「今日はこれでいいでしょうか……」
最近になって、実用一辺倒だった下着にも変化があった。地元の村で購入できるものは限られていたが、手先が器用な彼女は、自身で飾り布を縫い付けたりして、可愛らしく細工を施した。これは姉にも概ね評判が良かった。
脱いだ寝巻きと下着を洗濯物入れに放り込む。その際、ショーツの
その部分には何かの液体が乾いたようなシミがついていた。それを確認した途端、頬がぽっと熱くなる。
その理由はわかっている。おそらく眠っている間に、決して人には言えないような内容の夢を見ていたのだ。
「スバルくんは一体どうして我慢できるんですか——」
最後に体を重ねてから、五日も過ぎていた。
主人であるロズワール、そして王選候補者であるエミリアが王都から戻って十日ほどが経つ。二人が戻ってきたその直後、姉と主人との間に
もちろん、それ以前に似たような感じが全くなかったわけではない。そんな時には、下着の上から彼女自身にそっと触れ、ほんの少しだけのふんわりとした心地よさと、決して小さくない罪悪感に包まれたまま眠りにつくのが常だった。
だがあの日の夜に限っては別だった。今までにない強烈な感覚が突然彼女を包み込んだのだ。最初、何故いきなりそんな感覚が体の奥から湧き上がってきたのか、その理由がわからなかった。そのまま放っておけば自然と消える、そうも思っていた。だが、それが強くなるにつれ、読んでいた本に集中するどころか、本を投げ出して、手をその部分に伸ばしそうになってしまうのを必死で堪えることになってしまった。
そして、この如何ともし難い疼きを解決するには、彼に甘えるしかない、と、素直にそう思った。
——そして、二人のそれは深夜まで営まれた。
翌日、厨房で姉にそれとなく問うと、姉は顔を真っ赤に染めて言葉を濁した。その顔を見て、素直に可愛いと思った。普段とは全く違うその姿が新鮮だった。その後、厨房に顔を出した彼に、姉は顔を赤らめたまま踵を返してこう言った。
「バルス、昨夜レムと……その……し、したのかしら?」
「な、なんだよ、急に……」
「あ、いえ……。その、ふ、二人がアレをするのは、い、いいのよ。ただ……」
「ただ?」
「そ、その、気をつけてくれた?」
「あ……」
「はあっ……。気をつけてって、お願いしたわよね?」
「ご、ごめん……。その、つい……」
二人が何のことを言っているのか、すぐに気付いた彼女はすかさず彼をフォローした。
「ね、姉様。その、た、多分、大丈夫な日だと思うんです……」
「だめよ、レム。さっきも言ったけど、するのは構わない。でも、二人がちゃんとするまでは気をつけて欲しいの」
「ちゃんとって——」
「何を言っているの。ちゃんとって言うのは、きちんと正式な関係を結んで、それから、ってことよ」
それを聞いた途端、今度は彼女が顔を赤くし、チラリと見た彼の顔もまた、真っ赤に染まっていた。
「二人とも、わかった?」
今、この場での主導権がはっきりと自身に移り変わったことを認識した姉が、腰に手を当ててさらに続けた。
「そう言うのは自然の成り行きだ、ってこともわかるけど、ラムもレムも、そしてバルス、あなたも今はロズワール様の使用人。前にも言ったけど、そう言う立場である以上きちんとケジメはつけたいの」
「う……、ご、ごめん……」
「は、はい……すみません、姉様」
「わかってもらえればそれでいいの。じゃ、この話はもうおしまい。さ、仕事に取り掛かるとしましょう」
そんなことがあってから、彼は一度も彼女の中で果てていない。二人だけの秘密の営みがある時には、決まって彼はその最中に動きを止め、震える下半身をどうにか抑え込もうとした。
「ぐっ……」
「いいんですよ、スバルくん。そのまま出してしまっても」
「だ、だめだって……。ちゃんと気をつけ……あ、あ……」
上に重なっていた彼は、堪えきれない震えが始まると同時に彼女から自身を抜きさった。その途端、大量の白濁が先端から彼女の下腹部から胸の辺りまで飛び散った。
「あ……ぐぅっ!」
食いしばった歯のすき間から漏れる小さな叫び声と共に、熱い体液が白い素肌に放たれていく。本当は彼だってそのまま出してしまいたかったに違いないのに、姉との約束をきちんと守ろうとしている。ひいてはそれが自分のためだということも、十分すぎるほどわかってしまう。そんな彼の優しさと心遣いを嬉しく思うと同時に、少しだけ寂しい気持ちにもなる。
「ごめん……」
「スバルくん……」
「レム、その、まだだよな」
「え……は、はい……」
自分から出たものを綺麗に拭き取ると、彼が太ももにそっと手を当てる。
「あ……」
彼女の綺麗な両足が大きく広げられ、さっきまで彼を包み込んでいた部分が改めてさらけ出される。
「す、スバルくん……ちょっと……恥ずかしいです……」
そんな彼女の恥じらいをよそに、彼の唇が、彼女の一番敏感な場所に触れる。
「……あっ」
すぐに躰全体に震えが走る。思わず口に手を当てて、溢れる声を堪える。そして程なくあの、とろけるような、めくるめく瞬間がやってくる——。
互いに口を使って、時には手と指で満足しあい、お互いの温もりを感じながら目を閉じる。しばらくして目を覚まし、再度快感を与え合いながら再び眠りにつく。
だが、彼が自分の中で果てるあの瞬間。あの時のあの感覚を思い出しながら、彼のその熱いものを直接躰で受け止めたいと、彼女はそう思ってしまう。
「朝から一体何を考えているのでしょう……」
二人だけの大切な秘密の記憶を一旦頭から追い出して、少しだけ複雑な作りの制服を身に纏う。そして自身の頬を軽く叩いて、気持ちを切り替える。
「さあ、今日も一日がんばりましょう」
最初に彼女が向かう先は、階の違う彼の部屋だ。これもいつものルーティン。小さなノックを二度ほどして、そっとドアを開ける。
「おはようございます」
ささやきとも取れる小さな掛け声と同時に、愛する彼の部屋に滑り込む。頭までかぶった布団から、クセのある黒髪が少しだけ覗いている。
この毎朝の訪問で、一度だけ彼に悪戯をしたことがあった。
毎日するのはやめたほうがいい。突然彼が言い出した。もちろん自分は毎日でも全く構わないし、体調の悪い例の一週間は別にしても、彼が満足したいだけしてもらいたい、と食い下がったが、逆に毎日するよりも日数を空けた方がより気持ちがいい、の一言で話の決着がついた。
そう言われると納得せざるを得ない。もちろんそれは本当のことなのだろう。だが、本当は毎日したいと言っていたのも忘れてはいなかった。おそらく自分のために我慢してくれているに違いない。そう思った彼女は、その翌朝、眠っている彼の布団をそっとめくった。
聞いていた通り、目覚める前のその部分は大きく膨らんでいて、寝巻きがわりのじゃーじを下から苦しそうに突き上げていた。彼女はそっとじゃーじと下着を膝まで下ろして、彼を解放した。
「眠ったままでも出るんですか?」
そう小さく問いかけて、手を添える。どの部分が一番気持ちがいいのかは、もうすでに知っていた。先端の裏の部分に指を当てて、そっと上下に手を動かすと、その途端、幹の部分全体がグッと力強く起き上がってくる。目が覚めているのかと思い、慌てて彼の顔を覗き込む。だが、先ほどと変わらずぐっすりの眠っているのがわかって、ちょっとだけほっとする。
起こさないように、ゆっくりと、優しく、再び手を動かし始める。先端から溢れ始めた透明な滑りを使って裏の筋の部分に刺激を与えながら、もう一方の手で二つの小さなものが入っている柔らかな部分をそっと揉み上げる。
しばらくそうしていると、それはさらに大きく傘を広げるように赤く膨らみ、それとは逆に、下の袋の部分は小さく硬く縮んでいく。
「そろそろ出そうですか?」
スカートの中に手を伸ばしながら、眠っている彼に優しくそう問いかける。そして体温で温められた例の小さな
「ああ……」
思わず感嘆の声が漏れる。どくどくという痙攣と共に放出される白い体液が、手の中の布を濡らしていく。栗の花の匂いが彼女の鼻を掠め、少しずつ脈動が小さくなっていく。最後の一雫まで出し切れるように、握る手の力を加減しながら、優しく丁寧に液体を搾り取っていく。
布に包まれている下半身から枕元に視線を送ると、そこには先ほどと変わらずぐっすりと眠っている彼の顔が見えた。
「眠ったままでもちゃんと出るんですね……気持ちよかったですか?」
彼女は念のために持ってきた洗ったばかりのほうの
「レムは朝のお仕事に戻ります。いつものお時間にちゃんと起きてくださいね、スバルくん」
そして白濁で濡れた二枚のハンカチを軽く洗ってから、彼女は毎朝の仕事に戻った。
そのことが、あまりよろしくない結果を招いたとわかったのは、彼が思い切り寝坊をして、姉に叱られている時だった。
「——だから、あんなことがあって、でも公私混同はしないで、って言ったはずだわ。忘れたの?」
「いや、ほんとごめん! 何だか気だるくって、つい二度寝しちゃったんだって……」
「二度寝って……。そもそも気だるいって何? 昨日は二人とも普通に寝たんじゃなかった?」
「いや、普通に寝たんだけど……って、何でそんなことまで知ってんだよ!」
「ハッ! バルスの顔を見たらそんなことくらいすぐにわかるわ。まあ、毎日したいのを我慢してることは褒めてあげてもいいけど……。でも、どっちにしても寝坊するのはたるんでいる証拠じゃない?」
「う……。こ、今度から気をつけます。申し訳ありません」
「ね、姉様、もうそのくらいで……。スバルくんも、大丈夫ですよ。スバルくんが寝坊して特に困ることはなかったので……」
「ぐっ……。微妙にフォローになってない気がする……」
そんなことがあって、朝に『お手伝い』をするのは、彼女の中で封印したのだった。
「大丈夫です、スバルくん。もう悪戯はしませんから……」
彼のベッドにそっと腰掛ける。今朝はそれほど寒くはなかったが、それでも布団に潜るようにして体を小さくして眠っている姿が、何とも微笑ましい。
「……で、でも……その、さ、触ってみるだけならいいですか? す、スバルくんの体調を知っておくのも大切なお仕事ですし……」
訳のわからない言い訳をしながら、布団の裾から手をそっと差し入れて、お目当ての部分を探り当て——
「え?」
違和感があった。探り当てたそれは、いつもの場所よりも少し上の方で天幕を張っていた。さらに、その大きさが変だ。彼女はそっと布団を捲ると、その光景に唖然となった。サイズがぴったりなはずのじゃーじはブカブカになっていて、下着もろとも脱げかけている。そのジャージと下着を恐る恐る下ろしてみる。
と、そこにはいつもの見慣れた彼のものではなく、二回りか、もしかしたらそれ以上小さい可愛らしいものが、ピンと上を向いていた。
「す、スバルくん?」
思わず声をあげ、布団を捲る。
「——ん、なに? 寒いよ……」
いつもとは全く違う、やや高めの声が彼女の耳に届く。
「な……!」
そこに横たわっていたのは、下半身を丸出しにした、黒髪の男の子の姿だった。
えっと、みなさま、お久しぶりです。初めましての方は初めまして! 完結詐欺の黒丸ですw おおよそ一年と九ヶ月ぶりの投稿です。
活動報告にもちょっと書いたのですが、前回の最終投稿後からちょぼちょぼ書いていたお話が、とあるものとネタ被りしてしまい、仕切り直しで違うの(これです)書いてたら、今度はまさかの本家丸パクリ……と、目も当てられない状況になってしまいまして(苦笑)。
あらためて各位に謝罪しておきます。繰り返しになりますが本当に申し訳ありません。ただまあ、自分は素人枠なので、笑って見逃してもらえるかなぁ、と密かに思っていたりもします……。
あと、
ではどうぞよろしくお願いします!