普段ならとっくに毎日の仕事に取り掛かっている時間だった。だが、今のレムにはそれ以上に大切なことがあった。それは自分勝手な言い訳だったが、今この瞬間、それが何よりも優先されるべき事案だった。
彼女の部屋は再びカーテンが閉じられていたが、陽の光がベッドに腰掛ける二人の姿をカーテン越しに浮き上がらせていた。一人はやや緊張気味に、もう一人はその顔に笑顔を浮かべて、小さな体に寄り添うように座っている。
少しだけ湯船で温まっている時も、もちろん体を拭いている最中も、すばるは股間を大きくさせたままだった。おそらく男の子としての
そして、ショーツの上にバスタオルを巻いただけのこの今のレム姿も、経験のない彼にはほぼ裸同然に見えるのだろう。下を向いたままのすばるとは真逆に、彼の可愛らしいその部分は、まるで意志を持ったように腰のタオルを突き上げていた。
「すばるくん、そんなに緊張しないでください……。レムは痛いことも怖いこともしませんよ?」
「う、うん……」
「すばるくんは自分でしたことはありますか?」
「自分で、って、なにをするの?」
「そ、その……おちんちんをさわったり……」
「え……お、おしっこするときにさわる、よ……」
「そのほかには?」
「そのほかって?」
「今みたいに大きくなったら、どうしてるんですか?」
「どうって……ほっといたら小さくなるもん」
「そ、そうですね……でも、今はなかなか小さくなりませんね」
「だ、だって……」
「だって?」
「れ、れむおねえちゃんが……」
すばるが言葉を飲み込む。バスタオル一枚の——一応下にショーツは履いているが——その姿のせいだ、と言いたいのだろう。
「すばるくんは自分でしたこと……ないんですね?」
「だから、するって何をするの?」
「そ、その……お、おなにーはしないんですか?」
自室のベッドに並んで腰掛けたまま、レムは今一番興味があったことを聞いた。
「おなにー? なにそれ?」
「そ、そうなんですね……」
——自分でまだしていないんですね……。じゃ、じゃあ——
「夢精は……経験ありますか?」
「……」
沈黙が答えだった。この小さなすばるは自慰行為の経験はもちろん、精通もまだ来ていないに違いない。
いつものレムなら、冷静な判断ができたはずだった。だが、その理性を妙な責任感が抑え込んだ。少なくとも彼女はそう思っていた。だがそれは、何も知らないこの小さなすばるの『初めて』を知りたいという、そして一から教えてみたいという、無意識の願望だった。さらに、罪悪感とは違う、少しだけゾクゾクするような、背徳感に近い感覚も少なからずあった。
「すばるくんはどうしておちんちんが大きくなるか、知ってますか?」
「……お、女の子の裸みたらおっきく……なるよ」
「そうですね」
「あ、あと、エッチなこと考えたりしたら……」
「はい。そうですね」
「ご、ごめんなさい……」
「あやまらなくていいんですよ。それはとっても普通のことで、男の子にとって自然なことですから」
「うん……」
「すばるくんは、大きくなったおちんちんをどうするか知ってますか?」
「どうって、どう?」
「そう。どうしたらいいのかわかりますか?」
「ううん。わからない」
「知りたいですか?」
「……うん」
「すばるくん、こっちに来てください」
レムの手がすばる背中に回った。彼女は彼の両脇に優しく手を差し込んで細い体を抱きかかえ、自身の腿の間に彼を座らせた。すばるはレムにされるがまま、まるで借りてきた猫のようにおとなしくじっとしていた。
肩越しに見下ろすと、愛おしいものがタオルの下で、一生懸命背伸びを続けているのがわかった。レムは後ろから手を伸ばして、そのタオルをそっと取りさった。
「恥ずかしい……」
消えいるような声が漏れる。
「大丈夫ですよ、すばるくん。こうなるのは男の子にとって自然なことなんです」
レムは手を伸ばすと、包み込むようにそっとかわいいそれを握り込んだ。あと五、六年もすれば立派に成長するだろう。それがどんなふうになるのか、レムは既に知っている。今はまだ小さな手にすっぽりと収まるほどの大きさだが、帯びている熱はいつもと変わらない。少しだけ力を入れて握り込んでみると、ぐっと固くなって、懸命に返事を返してくるのも、いつものスバルと全く同じだ。
——なんて可愛いんでしょう!
レムは指先でそっとくびれた部分をつまみなおすと、今度はゆるゆるとさするように指先を上下に動かした。
「すばるくん、何のためにおちんちんは大きくなるんでしょう?」
「え……なん……って……んんっ……」
「どうして大きく、固くなるか、考えたことありますか?」
「わか……んな……い」
「これはとっても大切なことなんです」
レムの指はゆっくりと動き続けている。その状態で、すばるがまともに受け答えができるはずがなかった。それを知ってか知らずか、レムが続ける。
「そう……とってもとっても大切なことなんです。すばるくんがもっと大人になったら——すばるくん?」
気づくと、すばるは上半身をレムに預けるようにしてのけぞらせ、目を閉じて震えていた。
「えっと……ですね……」
いつもの癖で、自然と刺激を与えてしまっていた。おそらくすばるにはレムの言葉は耳に入っていない。もしかしたらいろいろと早急すぎたのかも知れない。
そう思ったレムがゆっくりとそこから手を離すと、すばるの口から残念そうな声が漏れる。
「あっ……」
預けていた体を起こして、すばるがレムの顔を見上げる。少し怒っているような、それでいて泣き出しそうな、複雑な表情を浮かべながら、彼女を見つめている。
「大丈夫ですよ、すばるくん。今からレムがいろいろ教えてあげますからね」
レムはすばるの体を横向きにそっと倒すと、今度は自分の膝の上に小さな体を乗せた。左手は後ろから上半身を抱き抱えて、すばるが両足を楽に体を伸ばせるように、体勢を作り直す。
あらためてそこに手を伸ばすと、途端にすばるの口から声が漏れる。
「んっ……」
「すばるくん、気持ちいいですか?」
「よ、よくわかんない……」
「そうですね……今はまだよくわからないかも知れません……」
ゆっくりと手を動かしながらレムが続けた。
「でも、こうしているとだんだんとっても気持ち良くなってきて、最後に射精するんですよ」
「しゃせい?」
「はい、すばるくんはまだ射精したことがないんですね?」
「ぼく、わかんない……」
「そうなんですね……」
レムは、この一連の作業をこのまま続けていいものかどうか迷っていた。やはり、この小さいすばるはまだ精通を迎えていない。だがその場合、このまま続けて「いく」ことができるのだろうか。精液が出ないとなると、もしかしたら最後まで達することはないのかもしれない。
「も、もうやめちゃうの?」
いつの間にか手が止まっていた。気づくと上気した黒い瞳が、訴えるようにレムを見上げている。
「どうして欲しいですか?」
どうして欲しいかなどわざわざ聞くまでもないのだが、すばるの口から直接その言葉を言ってほしかった。
「も、もっとして欲しい……」
「わかりました。もっとしましょうね」
ふたたびレムの綺麗な指先が動き出すと、それにあわせて、ふぅ、ふぅ、とすばるが息を漏らし始める。
そしてお茶を淹れるより、お湯が沸くよりも、少しだけ長い時間が過ぎると、
「お、お……なんか、おしっこでそう……」
すばるが素直に今の気分を表現する。
「大丈夫ですよ、すばるくん。そのまま集中してください」
すでにレムの手の中のものは、現時点での最大値まで膨れ上がっていた。それほど大きくない傘も表皮の下で精一杯エラを張り、端を結えられた腸詰肉のような先端部分からは、すこしだけ鮮やかな色を伴った内部が見え隠れしている。
——ひゃっ!
突然、すばるの手がレムの体に伸び、体に巻かれたタオルを下にずり下ろした。途端に大きな膨らみがその弾力を伴って顕になる。
「す、すばるくん⁉」
すばるは半身をひねると、その目の前の果実にむしゃぶりついた。
——すばるくん、赤ちゃんみたいです!
自身の二つの膨らみが、すばるを誘惑していたのはわかっていた。レムは赤ん坊に乳を授ける母のように、すばるをしっかりと抱き抱えながら、右手を動かし続けた。すばるは時折体をびくつかせながら、夢中で乳首に吸い付いていた。
——すばるくん、ほんとうにかわいい!
しばらくそのままでいると、すばるがレムの乳房から口を離して、
「あ、あ、あ……でそう……でそう!」
体を震わせながら叫んだ。
「いいんですよ、すばるくん。そのまま、出しちゃいましょうね」
レムの指の動きが早まり、それに合わせるようにすばるの細い腰の震えも大きくなり始める。
「あ、でる! でる!」
ようやくその時が来た。すばるの両足がピンと伸び切り、体が硬直する。レムにつままれた硬い部分がぐっと太くなり、大きく一つしゃっくりをする。
「あ! あ! ああっ!」
すばるが叫び声を上げた。
「すばるくん、いったんですね」
レムの手が優しく動き続ける。抱き抱えられたすばるが、びくんびくんと腰を跳ね上げて、懸命に何かを外に出そうと試みている。だが手の中のものは、可愛らしくびくつくだけで、その先端からは何も放出される様子がない。
——やっぱりまだ何も出ないんですね……。でもちゃんと最後までいけてよかったです!
レムの手の動きがゆっくりと、そして優しく変化した。すばるはレムの豊満な二つの膨らみに顔を埋めたまま、はあはあと息を荒くしていた。
「すばるくん、気持ちよかったですか?」
すばるからは何も返事がない。おそらく、今の衝撃的な瞬間に頭が追いついていないのだろう。
自分が初めてあの瞬間を経験した時は、ある程度知識があった。そもそもこのスバルよりも六歳も年上だ。あれが一体なんなのか、あの初めての時には十分理解できた。
だがこのすばるは——いや、スバルに関して言えば、その綺麗な指先や体つきなどを鑑みて、どこか良いところの生まれなのだろう、というのは想像に難くなかった。十一、二歳といえば、男の子ならもう外に働きに出るだろうし、女の子なら、場合によってはどこかに嫁いでいてもおかしくない年齢だ。だが、おそらく良家出身であろうすばるは、そのような教育をまだされていないのだろう。
そんな彼に、最初に、そして最初の悦びの経験を呈することができた。もしかしたら、これ以上喜ばしいことはないかも知れない。
緊張から解放されたすばるの体を抱きしめたまま、その嬉しさで自分の顔がにやけてしまうのを、レムは止められないでいた。