ベアトリスと入れ違いに、レムが食事を乗せたワゴンを押して、スバルの寝ている部屋に入ってきた。顔が赤い。その顔を見て、昨日のことを思い出したスバルもまた、顔を赤らめた。
「お、おはようございます。スバルくん。気分はどうですか?」
「お、おはよう。いいよ、うん。気分はいい、すごくいいよ」
お互いに見つめ合って、
「あ、あの昨日は……」
「あの……昨日の……」
完全にシンクロした。
——昨日のことには触れないほうがいいのか。と、とりあえずは、何も無かったことにして。いや、流石に、あれを無かったことにってのは無理がありすぎるっ! 俺、知らないうちに寝落ちしてたし! ほんと、最低なやつじゃないか? 男として、どうなんだ、おい!
そんなことを考えていると、
「ま、窓は誰が開けたんですか? ベアトリス様が?」
窓の方を向いて、レムが言った。
「そ、そう。ベア子が開けてったよ。く、薬の話もしてったっけ。新しい薬がどうのって」
「そ、そうですか」
向こうを向いたまま、レムは新しく調合された薬をグラスに注ぎながら、そう言った。
「スバルくん、朝ごはんにしましょう。その前にこのお薬を飲ませなさい、って」
「あぁ、薬、薬、ね。わかった、うん」
「あ、あの今日は、グラスで……」
どんどん尻すぼみになってゆくレムの声。
「ベアトリス様が……」
そう言って、スバルの口元に、薬の入ったグラスを寄せた。
顔はたった今走ってきたばかりのように上気し、グラスを持った手が震えている。
「お、ああ、うん。うんそのままで」
動く左手をグラスに添えて、液体の入ったグラスに口をつける。
——なんだ。今までは口移しだったのに、なんで今日は違うんだ? やっぱり昨日のことで、ちょっと嫌われたのか。何かフォローしないと! フォロー、フォロー。
スバルが薬を飲み干すと、すかさず
「スバルくん、朝食にしましょう。何から食べますか?」
レムはそう言ってくるっと背を向けると、朝食の乗ったワゴンに向かった。
——こ、これは、落ち込む。嫌われたー。絶対嫌われたー。
スバルの表情が暗くなる。心臓の鼓動が早まり、妙な汗が吹き出し始めた。
——どうする、どうする、どうする?
どきどきが止まらない。カッと顔が火照る。体も熱い。いや、暑い! だいたいこの部屋は暑すぎる! 気づくとスバルは自分にかかっていたタオルケットをはだけ、上半身を起こしていた。
「あ、あれ?」
体にいきなり力が入る。上半身を起こしたスバルは、両腕を自分の顔の前に持ち上げて手のひらを握り込んだ。
「お、おい、レム」
思わずレムに声をかけた。その声に振り返ったレムは、目を丸くし、次いで、驚きと嬉しさとが入り混じった表情で、
「す、スバルくん! スバルくん!」
そう泣き叫ぶと、半身を起こしていたスバルに抱きついた。
「どわっ! お、おい、ちょ、落ち着けって!」
「スバルくん! スバルくん! スバルくん!」
半泣きになりながらスバルの頭を抱え込む、レム。
「く、苦しいっ!」
「い、いぎが、でぎない」
その言葉で我に返った彼女は、パッとスバルの頭を抱えていた手を離した。
「うううう。死ぬかと思った」
解放されたスバルのすぐ目の前に、二つの柔らかい膨らみがある。
「え? ええええ?」
——レムのおっぱいで、窒息しそうになってたのか? 俺。
気づくと、半身を起こしたスバルに、レムがまたがって座っていた。
「ご、ごめんなさいっ」
やや見下ろすように、スバルの顔を覗き込むレム。その頬は涙で濡れている。
「もう一度、確かめてください。もう一度腕を、手を動かしてみてください」
そう言われたスバルは、レムを自分にまたがらせたまま、もう一度、今度はレムの顔の前に手をかざして、その手でグーパーを繰り返した。
「ほれ」
「ああ、スバルくん!」
レムは目の前にかざされたスバルの手を取り、その指に自分の指を絡めた。しばらく愛おしそうにその手を見つめてから、
「スバルくん、レムのことをぎゅっとしてください!」
「ぎゅっと、って」
「ぎゅっとです!」
そう言って、スバルの手を、自分の腰に回す。
「わ、わかった。わかったよ、レム」
最初は恐る恐る、ついで、ほんの少しだけ強い力で、レムを抱き寄せる。思っていたよりも、ずいぶん細くて華奢な腰回りに、ドキドキする。
レムの顔がスバルの正面に引き寄せられると、レムはスバルの頬に両手を当てて、貪るようにキスをした。
何か暖かいものが、スバルの頬を濡らす。唇と唇が離れると、それはレムの涙だったとわかった。
ちょっとの間見つめ合うと、レムはスバルの頭を抱きかかえて、ゆっくりと自分の胸元に引き寄せた。
ふんわりとした二つのふくらみが、スバルの顔に押し付けられる。前にも嗅いだことのあるレムのいい匂いが、スバルの鼻をくすぐる。
——れ、レムの匂いが……レムのおっぱいが……
そう思った瞬間、スバルのそこがむっくりと膨らんだ。
「ひやっ!」
今度はレムが、スバルの変化に過敏に反応した。
思わず腰を浮かすレム。大きくなったスバルのそこが、またがっていたレムの一番敏感なところを直撃した。
レムの体から力が抜ける。そのままスバルにもたれかかってくる。
スバルはスバルで、レムの反応に驚き、レムから逃げようとして仰向けになってベッドに倒れた。力の抜けたレムが、そのまま仰向けになったスバルの胸に顔を埋める形になった。
そのままの格好で沈黙が続く。スバルはレムの腰に回した腕に力を入れ、まるで思ったように動くかどうか確認する様に抱きしめた。
華奢な肩と、背中。そこからスッと細くなっているウエスト。力を入れると、ガラス細工のように粉々に割れそうな気がする。重さが全部かかっているはずなのに、羽のように軽い。レムの髪からいい匂いがする。
スバルの股間はさらに上に突き上げるように大きくなった。
顔を真っ赤にして、上目遣いでスバルの顔を覗き見るレム。スバルもまた、顔を赤くしていた。
レムの動揺とスバルのそれは、若干意味が違ったのだが、スバルはそれに気づかなかった。ただ、自分の股間が急に大きくなったことにレムが驚いたのだと思っていた。
顔を赤らめながら、お互いに見つめ合う。
レムはゆっくりと顔を近づけて、自分の唇をスバルの唇に重ねた。今度は本物の、恋人同士がするような、キスになった。