スバルから手を離したレムは、すこしだけ腰を浮かせて、途中まで下ろされていた下着をするりと脱いだ。そしてゆっくりと体を起こしながら、白い肌に放たれた煮凝りのような白濁を、薄青色の布できれいに拭った。
青い布に包まれたすばるの初めてを、改めて確認する。禁欲明けの彼の時よりは少ないが、それでもかなりの量が放たれている。決していい匂いとは言い難い、けれども熱を持ったままの、香り高いすばるの初めて——。
「ぼ、ぼく……」
泣きそうな顔ですばるが口を開いた。おそらく、さっきとは比べ物にならない、尋常ではない快感に驚き、そして小水とは違う何か得体の知れないものが自分の下半身から放出されたことに、戸惑っているに違いない。
「おめでとうございます、すばるくん! すばるくんはもう立派な大人です!」
絶妙なタイミングだった。すばるが、自慰に伴う罪悪感にも似た虚無の感情に包まれるより先に、レムはその小さな体をぎゅっと抱きしめた。すばるはレムの胸の中で抵抗せずに、じっと体を預けている。今はもう、レムの裸身に悪戯をしていたことも頭から消え去っているだろう。そしてレムがその一部始終を盗み見していたこともこのままうやむやにできそうだった。
「ぼ、ぼく、どうしたの? ううっ……」
時おり体がびくんと震える。それにもびっくりしているのだろう。困惑気味のすばるを抱き抱えたままで、レムが優しく言った。
「すばるくん、すばるくんはたった今、大人になったんですよ」
「おと……な?」
「そうです。立派な大人になりました」
「——あ、あのね、さっきお姉ちゃんがしてくれたみたくおちんちん自分でいじってたら、ね……」
レムの言った意味がわかるのか、それともわからないのか、彼女の胸に顔を埋めたすばるが、辿々しく告白し始める。
「はい」
「だんだんへんな気持ちになって……」
「はい」
「とまらなくて……」
「はい」
「なにかでそうになって……」
「はい」
「あ、あの……そしたら、おちんちんから白いのが出て……」
「はい」
「びっくりして……」
「はい」
「びくんびくんってなって……」
「はい」
「……ぼ、ぼく、病気になったの?」
レムは胸に抱えているすばるをぎゅっと抱きしめた。
「いいえ。違いますよ。あれは大人になった証拠なんです」
不安がっている小さなすばるに、レムが優しく包み込むように言葉を続ける。
「……おとな……」
「そうですよ、すばるくん。さっきすばるくんのおちんちんから出たのは精液っていうんです。男の子は大人になると精液が出るようになるんです」
「せーえき?」
「そうです。さっきレムが言った通り、おちんちんには大切な役目があるんです」
レムの胸の中で顔を上げたすばるは、目をぱちくりとさせながら彼女の顔を見上げた。
自分と姉が初めての出血を迎えたのは、ちょうどこのすばると同じ歳の頃だっただろうか。あの時はそばにフレデリカがいてくれた。そしてそれがなんなのか、なんの意味があるのかをきちんと教えてくれた。もしその場に彼女がいなかったら、少なくとも自分はショックと不安で押しつぶされそうになったに違いない。
この小さいすばるには、そんな不安を感じてもらいたくなかった。今の自分はあの時のフレデリカと同じ立場だ。だから今すばるに起こったこのことが、どれだけ大切で、どれだけ素敵なことなのかを伝えたかった。
「すばるくんは、おちんちんが大きくなるのは何のためだと思いますか?」
「何のためって……」
「ちょっと考えてみてください。どうしてでしょうね?」
「ううん。わかんない……」
「知りたいですか?」
「……うん」
「それはですね、大好きな女の子と一つになるためなんです」
「ひとつ?」
「そうです。すばるくんがもう少し大人になったとき、大好きな女の子とつながるために大切な役割をするんです」
「ぼ、ぼく……もう子供じゃないよ!」
「そうでした……すばるくんはもう大人でしたね」
自分が始めて性知識を享受された時、これほど興味津々に聞き入っただろうか。それは男女の差なのか、それともこのすばるが特別なのか——。
「赤ちゃんがお母さんから生まれるのは知ってますよね?」
「うん」
「すばるくんは、どうやったら赤ちゃんができるか知ってますか?」
「え?」
「誰かに教えてもらったこと、ありますか?」
「えっと、チューしたら赤ちゃんができるんじゃないの?」
——なんてかわいい答えなんでしょう! でもレムがきちんと教えてあげます!
「すばるくん、あかちゃんはちゅーしただけじゃ生まれませんよ」
「そうなの?」
「そうですよ」
「もしかして、せーえきがいるの?」
「はい、そうです。お母さんはお父さんから精液をもらって、それでようやく赤ちゃんができるんですよ」
「そうなんだ……」
しばらく考えてから、すばるが続ける。
「でも、どうやってせーえきをあげるの?」
「すばるくん、すばるくんの精液はどこから出ましたか?」
「え、と……お、おちんちんから……でた」
「そうですね。女の子には、それを入れる場所があるんです」
「おちんちんを入れるの? 女の子に?」
「——そうですよ」
「そうなんだ……女の子に入れるんだ……」
「そして、そこに精液をもらうんです。それで赤ちゃんがお腹の中にできるんですよ」
「ぼく、知らなかった……」
「でも、もっと大切なことがあります」
「なあに?」
「女の人は、大好きな男の子からしか、精液をもらわないんです」
「そう……なの?」
「そうですよ、すばるくん。だから、男の子も、大好きな女の子にしか精液をあげてはいけません。これはとっても大切で、特別なことなんです」
「そっか……」
——こんな感じでいいでしょうか……。でも、やっぱり男の子は説明の仕方もむずかしいです。
「おねえちゃんは、おちんちん入れたことあるの?」
ここからどう話を進めようと考えていた矢先に、いきなり直球が来た。
「え、えっと……」
「おねえちゃんも、せーえきもらったことある?」
——ここは本当のことを話した方がいいですね。
「ありますよ」
「そ、そうなんだ……」
「レムにも大好きな人がいるんです」
「そ、そう……じゃ、赤ちゃんがいるの?」
——そ、そうなりますよね、それは。
「い、いえ。まだ子供はいません。精液をもらっても必ずできるわけではないんです。でもそれは、もう少ししたらまたお勉強しましょう」
「うん……でも、好きな人がいるんだ……」
そう小さくつぶやくすばるが一体何を言いたいのか、もう既にわかっている。さっきの快楽を知ってしまった今となっては尚更だ。
「すばるくん、すばるくんには好きな人はいないんですか?」
「え?」
「すばるくんの好きな人、レムに教えてください」
「え、えっと……ぼく、おねえちゃんのこと好き!」
待っていたひと言が返って来た。だが、ここで浮かれていてはいけない。レムは今できる限りの平然を装った。
「そ、そうですか」
「でも、おねえちゃんは好きな人がいるんだよね……」
その言葉を受けて、レムはにっこりと微笑んだ。
「もしその好きな人がすばるくんだったら、すばるくんはどうしますか?」
「え?」
「どうしますか? すばるくん?」
レムの胸の中のすばるは、途端に顔を輝かせた。そして小さくなりかけていたものが、不意にピンと立ち上がった。
「あ、あの……ぼく、おちんちんをおねえちゃんに入れてみたい……」
——なんて素直な言葉なんでしょう!
「んー、どうしましょう……」
「だ、だめ?」
男の子の機能に目覚めたばかりの部分を力一杯大きくして、上目遣いにそう聞いてくるすばるに、レムはすぐに撃沈した。
——かわいい! 可愛すぎです! 反則です、これは!
「すばるくん、すばるくんはおちんちんをどこに入れるのか、わかりますか?」
レムは今一番興味のあることを聞いてみることにした。すばるはそれを知っているのだろうか。何と答えるのだろうか。
その質問に対してすばるは、少し考えて、小さい声でこう答えた。
「もしかして……お、おまん——」
それを聞いた途端、レムの顔はかっと赤くなった。その言葉はあまりにも直接すぎだ。安易に口にしてはいけない言葉という認識があったのだろう。そう答えたすばる自身の顔も赤くなっている。
「す、すばるくん、その言葉はあんまり使ってはいけない言葉ですね。もう少し違う言い方にしましょう」
「えっ? だっておちんちんはおちんちんなのに、なんで——」
「違う言い方だと、レムは嬉しいです」
「でも——」
「レムが大好きなすばるくんは、そんな言い方しないはずです」
それを聞いたすばるは一度口を閉じた。実のところ大きなスバルもその言葉を直接口にはしない。彼はその部分をなんと言っていただろうか——。
「お、おまた……?」
小さなすばるが恐る恐る答えた。
——なんってかわいい! すばるくん、大好きですよ!
「はい、それでいいとレムも思います」
自身の性器を挿入する場所がどこなのか、彼がもともと知っていたとは思えない。おそらくそれは本能で、そして直感的に察したに違いない。
「ぼく、れむおねえちゃんのおまたに入れてみたい!」
すばるが改めてレムに至願する。男の子特有の性欲、というよりも「性」そのものに対する興味が湧いているのだろう。
「わかりました。でも、もうちょっとだけレムのお話を聞いてくださいね」
「……うん」
「おちんちんがどうして硬くなるのか、もうすばるくんは分かってますよね?」
「おまたに入れるため? だよね?」
「そうですね。それは好きな女の子と一つになる大切な準備です。でも、女の子にも準備が必要なんですよ」
「女の子もおっきくなるの?」
「い、いえ……そうじゃなくって——」
頓珍漢な会話になってしまっているのが、妙に可笑しいのだが、本人は至って真面目に答えているのだ。レムは思わず吹き出しそうになった。
「女の子は、大好きな男の子にたくさん優しくされないとだめなんですよ」
「そうなんだ……」
「だからすばるくん、レムに優しくしてくれますか?」
「うん。ぼく、やさしくするよ!」
黒い瞳をキラキラさせながら、懸命に頷くすばる。
「じゃあ、そうですね……、じゃあ、まず最初は——キスしてください」
「キス……えっと、おねえちゃんにちゅーしていいの?」
「はい、お願いします!」
腕の中のすばるが、体を伸ばしてレムに顔を近づけた。その黒い目はしっかりと閉じられ、唇も同様に一文字にきつく結ばれていて、緊張しているのが手に取るようにわかる。
そのすばるの様子に、レムの胸はキュンとなった。優しくしてくれる、という言葉とは裏腹に、自ら口づけをせがんでいるようだった。
——かっわいい!
レムはすばるに顔を近づけると、その閉じた口に唇を重ねた。
ちゅっ。
だが当のすばるは、唇を固く閉じたままじっとしている。
「すばるくん、力を抜いて、少し口を開けてください」
一度顔を離してから、囁くように優しく伝える。
「え?」
その瞬間、再びレムの唇がすばるの唇を塞いだ。そして自らの舌を素早くすばるの口の中に忍ばせた。
「んっ……んんーっ……」
突然の出来事に、すばるのまぶたが大きく見開いた。それを目にしたレムは、今度は自身の瞳をそっと閉じて、すばるとのキスに集中する。
小さな口の中でレムの舌が踊った。口腔を撫でまわし、小さな舌を絡め取り、そして吸いだして——それはあの時の姉と、あの、姉の初めての時と同じ光景だった。
「ぷはぁぁっ」
ずっと息を止めていたのだろう。唇が離れた瞬間、すばるは大きく息を吐いた。
「これが大人のキスですよ。すばるくん」
「う、うん……」
「おっぱいにも優しくキスしてください」
「うん」
さっきまでそうしていたように、すばるが桜色の突起を口に含む。キスとは舌を使うものなのだと、たった今知ったばかりだ。すばるはさっきレムがしてくれたように、彼女の乳首を吸い、撫で回し、そして絡めとった。
さらに、さっきよりも随分と大胆に、空いている手をつかってレムの乳房全体を愛撫する。それ呼応するようにどんどんレムの先端が硬くなる。
レムは乳首に吸い付いているすばるの頭を抱えたまま、そっと体を横たえた。
「素敵ですよ、すばるくん。レムはとっても気持ちがいいです」
しばらくすると、乳房から離れたすばるの手が、何か別のものを探すように下に降り始めた。レムはその手を優しくとって、指を絡ませた。
「一つ、大切なお約束があります」
「なあに?」
「おへそに触ってはいけません」
「うん。おへそは触っちゃダメなんだね」
どうして? とは聞いてこないところも好印象だ。
——素直でいい感じですよ、すばるくん!
レムの指から解放されたすばるの手が、柔らかな下腹部と、その先のなだらかな丘ににたどり着く。小さな手のひらでレムの滑らかな肌の質感を確かめるように、その場所を何度も往復する。もう少しだけ下に降りれば、女の子の割れた部分に指先が振れるはずなのに、そのぎりぎりのところで小さな手が戻っていく。
その動きは、まるでレムを焦らしているようで——。
「そうしたら、そう、もう少しだけ下……、そう。そこです。そこを優しく撫でるんです」
指先が割れ目の先端にかすかに触れる。だが、女の子の禁断の場所を目前にして、すばるがその手をふと止めた。
「さわって……いいの?」
「はい。触ってもいいんですよ」
おそるおそる、細い指先が女の子の筋に沿って上下する。そのたどたどしい動きがさらにレムを焦らした。先ほどから滲み出ていたレムの蜜が、さらに量を増やして、じわりと外に滲み出る。一本線から滲み出ているその蜜に気づいたすばるは、一瞬動きを止めた。
「おねえちゃん……おしっこ漏らしちゃったの?」
そこが排尿のための部分だということは知っているのだろう。すばるは目にしたことを素直に口にしただけだったが、そのひと言はレムの顔を真っ赤に染めさせた。
「そ、それは……すばるくん、それは違うんです。えっと、それは……そう、おちんちんが大きくなるのと同じように、女の子はそうやって男の子と繋がる準備をするんです」
「そうなんだ。おしっこじゃないんだ、これ……」
「そう……そうですよ、すばるくん。よく見てください」
すばるの指先が蜜を掬い取った。一瞬、レムの綺麗な線にキュッと力が入る。それには気づかないまま、すばるはその感触を確かめた。
「なんか、ぬるぬるしてる……」
「そ、そうです。痛くならないようにレムの体がいろいろな準備を始めているんです」
そのぬめりの効果を確かめるように、すばるの指が再びレムをなぞり始める。滑りの良くなった指先が柔らかな一本線にそって上下するたびに、ゾクゾクした気持ちよさが、体全体に広がっていく。
「れむおねえちゃん、気持ち……いいの?」
レムの様子を見てそう思ったのか、すばるがそう口にする。
「は、はい。とっても素敵ですよ、すばるくん」
その一言ですばるの指の動きが速くなった。だがしばらくしても、それ以上のことが起こる様子がない。
小さいすばるは女の子の構造を知らないのだ。その扉の奥に、その禁断の場所に女の子のとびきりの部分が隠れているのを教えてあげたくて。
自身のそこがしっかりと見えるように、レムは両足を大きく広げた。