二度目の——正確には三度目の結合が果たされた。レムの上になっているすばるは、その柔らかで暖かな感触を敏感な部分で味わうように、ぎゅっと下半身を押し付けていた。
レムは、すばるがこのままどうするか、最後まで見守るつもりだった。だからそれ以上何も言わずに、じっと待った。
「おねえちゃん、ぼく、ぜんぜんいたくないよ」
「はい、すばるくん」
「れむおねえちゃんのおまたの中、あったかくて気持いいよ!」
「そう言ってもらえて、とってもうれしいです!」
「ぼく、やさしくするね!」
さっきのことが、まだ頭に残っているのだろう。いちいち報告する、そんなすばるがとてもかわいい。
そのすばるはレムの脇に両手をついたまま、なるべくレムに体重をかけないように体勢を整えた。そして、ゆっくりと、今度は上手に腰だけを動かし始めた。
ゆっくりとそれが後退し、そしてまたゆっくりと入り込む。
もちろん
「れむおねえちゃん、ぼく、どう? あの、ぼく、あってる?」
「はい、すばるくん、とっても上手ですよ! とっても素敵です、すばるくん!」
そのレムの言葉が、すばるを励ました。少しずつ腰の動きが滑らかになって、レムの動きと同調し始める。引く時はゆっくりと、慎重に。押し込む時はやや勢いよく、そして、最後まで入りきった時にはグッと力を入れて、最後まで入り切るように。
レムに導かれながら、精一杯に優しく、そしてゆっくりと、すばるは動きつづけた。
最初の抱合の時よりも少しだけ時間が過ぎた頃、レムに包まれているものが膨らみを大きくして、最終準備を始めたのがわかった。
普段なら、そうなると同時に出し入れがもっと早く、もっともっとリズミカルになるはずだった。そして最後には激しくなるのが常だった。だが、すばるはそうせずに、ゆっくりと、まるでレムを労わるように、優しく動きつづけていた。
——ああ、すばるくん! すばるくん!
レムはそんなすばるに応えようと、リズムに合わせて自身の締め付けを積極的に行った。
入り込む時は緩く、抜き去る時は軽く握り込んで、そしてふたたび奥まで来た時にはぎゅっと力強く。
レムの内緒の動作が、すばるをあの場所へと押し上げていく。
「お、おねえちゃん、僕、も、もう……あの、出そうな感じ、してきた……」
その素直な表現もとてもいい。だが、それには一つ決められたことがある。それはスバル本人に教えてもらったこと。そしてそれはとても重要なこと——の、はずだ。
「いくって言うんですよ、すばるくん」
「い、いく?」
「そうです。出そうになったら、いくって言うんです」
「いく……んんっ……え、どこに……行くの?」
その疑問には答えないで——もとより、レムもその答えは知らない——続ける。
「出す時に、いくって言うのは、その、決まりで……えっと、それが合図なんです」
そうしているうちにも、どんどんと放出感が近づいているのだろう。少しずつ、そして遠慮がちにすばるの動きが速くなってくる。すでに額は汗で濡れ、息もかなり荒くなっている。
レムは、懸命に動き続ける小さな体にうまく呼吸を合わせながら、あの瞬間へと彼を導いた。
「う、うん。あの、ぼく……いく……いきそう……」
最終段階に入ったすばるが、大きく前後に腰を動かしながら叫んだ。
「あ、れ、れむおねえちゃん、ぼくいきそう! いってもいい? ぼく、いってもいい?」
「はい、すばるくん! いっていいんですよ! いっぱい……いっぱい出してくださいね!」
「あ、あ、でる……いく……いく、いく! いくっ! あああっ!」
今日の、そしてこの小さなすばるにとって、数えて三回目の射精が始まった。震えと同時に精一杯レムに抱きついた小さな体を、あの特別な苦しみが支配する。全身が跳ねるように動き、腰が力の限り突きに出される。より深く、そしてよりたくさんの量を注ぎ込もうと、レムの中のすばるが、声のかぎりに叫ぶ。
「んっ! んんっ! んっ!」
同時に、目と口を固く閉じたすばるから声が漏れた。
三度目とは思えないほどの量がレムの体内に迸った。初めはびゅっ、びゅーっと、そして、どくっ、どくっ、と、まるで音が聞こえているような、そんな感覚をレムに与えながら、脈動に合わせて、すばるの先端から暖かな体内へと精液が注がれていく。
「ああ……すばるくん……」
ようやく最後の射出を終えたすばるが、ブルっと大きく体を震わせて、糸が切れた操り人形のようにレムの上でくたりとなった。
下になっているレムは、心地の良い重さを感じながら、その喜びを噛み締めていた。
レムの願い通り、ゆっくりと優しく——そして激しく——すばるは動いてくれた。その営みには思いやりと愛情があった。
初めてのすばるにとって、気持ちを抑えながら自身の出し入れをするのは、とても難しいことだっただろう。だが彼は、一生懸命レムの言葉に応えてくれた。
そのすばるの思いが嬉しい。そんなすばるが心から愛おしい。
レムの肌に雫が垂れた。上になっているすばるは、その額はもちろん、背中やお尻の辺りまで、汗でびっしょりと濡れていた。その小さな体で、力の限りの動きで“大好き”を表現してくれたのだろう。汗だくになるまで懸命にこの愛の営みをこなした彼には、おそらくもう体力がほとんど残っていないはずだ。
しばらくして、力を使い果たしたすばるが、自然と自分から抜け落ちたのがわかった。レムはしっとりと濡れたすばるをそっと自分の上から下ろすと、その体にタオルを当てた。すばるは満足げに、そして気持よさそうに、レムのされるままになっていた。
すばるの体を拭き終えたレムは、自身も手早く綺麗にしてから、小さな体に寄り添うように、体を横たえた。
「がんばりましたね、すばるくん」
「うん……おねえちゃんも……あの、気持ちよかったの?」
「はい。すばるくんがとっても優しくしてくれたおかげで、レムも気持ち良くなれました」
「よかった!」
「すばるくんが精液をたくさん出してくれたの、とっても嬉しかったですよ!」
「うん! ぼくもいっぱい出せてうれしかった!」
「はい。ありがとうございます」
「ぼく……ぼくね、今日のこと忘れないよ! れむおねえちゃんとはじめてせっくすしたこと、一生忘れない! ぜったいぜったい、忘れない!」
裸のレムに抱きつきながらすばるが言ったこの言葉に、レムは涙が出そうになった。
自身に関して言えば、身も心も溶けてしまう、あの瞬間を迎えることはできなかった。だが、それに勝るとも劣らない心地よさが、そこにあった。
すばるの熱いものが体内に注がれたのはもちろんだが、それよりも、すばるがあの素敵な瞬間を、二度も自分の体の中で迎えたのが嬉しかった。そのめくるめく輝きを、自分の躰の中で経験してもらえたことがなによりも嬉しかった。
そしてこの一言。この言葉だけでもう十分だった。このたった一言で、心が、胸が、体全体が温かくなった。彼が言っていた通りの幸せな気持、それがこの二人のセックスに確かに存在した。
その気だるい幸福感の中、枕を抱えるようにレムに抱きついてたすばるの手が、腹部に伸びた。そして、さっきまで入り込んでいた場所を確かめるように、そっとレムのお腹を撫でていく。
「ねえ……レムおねえちゃん……、せっくすは好きな女の子としかしちゃいけないんだよ、ね……」
「そうですよ。それはとっても大切なことです」
「ぼく、れむおねえちゃんがすき……大好き。でも……」
レムはお腹の上のすばるの手をそっと握った。
「……おねえちゃんは今日……はじめて会ったのに……なんでぼくのことが……好きなの?」
「そ、そうですね。今日は……いえ、すばるくんは特別だからです」
そう。特別だ。このすばるも、この関係も。全てが特別なのだ。
「特別……好きな人……だめって……」
——だって、レムはスバルくんが、そしてすばるくんのことが……。
「レムはすばるくんのことが大好きなので、いいんです」
「……」
「問題ありません。レムはすばるくんのこと、愛してますから——」
レムが
「……すばるくん?」
レムに寄り添っているすばるから、いつの間にか寝息が聞こえていた。
射精を伴わない絶頂から始まって、自慰による精通、そして結合によってもたらされた、二度の放出。いつものスバルでさえ、かなりの体力を使うだろう回数を、この小さなすばるは初体験でこなしたのだ。レムの胸に抱かれて眠ってしまうのは当然のことだった。
おそらくレムの言葉はすばるには届かなかっただろう。
——心から、心から愛していますよ、すばるくん……。
さっきまで懸命に頑張っていたその部分に手を伸ばす。いまはもうレムの親指とそれほど変わらない大きさに戻っていて、先端も表皮にすっかりと覆われている。
自分の躰がそうだったように、もう少ししたら急激に成長を遂げるはずの、可愛らしい男の子の部分。
その成長過程を見守りながら、心と体を重ねていけることに、どこかしらワクワクしている自分がいる。きっとそれはとても素敵で、とても楽しい日々になるだろう。
そして。
安全な時期とはいえ、こんなにいっぱい注がれてしまったら、本当に子供ができるかも知れない。いや、今回は出来なくても、この愛の行為を続けていけば、いずれは妊娠する可能性は高い。でも、それ以上に幸せなことが他にあるだろうか——。
——だいじょうぶですよ、すばるくん。レムは赤ちゃんを大切に育てます。もちろんすばるくんも、立派な大人にしてあげます! だから安心してくださいね……。
隣で寝息を立てている男の子を眺めながら、レムは二人の未来のことを想った。そしてその小さな体を胸の中に抱き寄せて、自分もその青い瞳をそっと閉じた。
「レムいるかー?」
「しーっ」
「ん? なに?」
彼の目に入ったのは、テーブルに頬杖をついて目を閉じている青髪のメイドの姿だった。
「寝てんのか?」
「そう。だから静かにしてあげて」
きれいな桃色の髪をした少女が、テーブルに寄りかかったまま小さな声で答えた。その様子をみた彼は、ドアをそっと閉じてゆっくりとそのテーブルに歩み寄った。
「レムが居眠りなんて珍しいこともあるもんだな。姉様なら納得だけど」
「それ、どういう意味かしら」
「な、なんでもないです——あ、ありがとうございます……」
既に用意してあったのだろう。彼女から差し出されたティーカップを受け取りながら、黒髪の彼が口ごもった。
「まさかレムのこと、朝まで寝かさなかったんじゃないでしょうね?」
彼女は鋭い視線に小言を乗せてから、彼に向かって投げつけた。
「し、してない! 昨夜はしてない!」
「そんなにあわてて、一体何をしてないのかしらね」
飲みかけたお茶を吹き出しそうになる彼の顔を一瞥する。
「なにって……わかってておま……と、とにかく、し、してないし! いや、ほ、ほんとだって。 ——ってか、しばらくしてない」
「バルスのしばらくが、どの程度なのかはわからないけど……ま、いいわ」
彼は焦った様子のまま、青髪の少女の顔が良く見える位置に腰を下ろした。
「でも、本当に珍しいな。俺、レムが居眠りしてるとこ初めて見た……」
とりあえず彼女は、
「……そう?」
「うん。まあ、レムだってそんなこともあるかもだけどさ、少なくとも俺の前では、居眠りなんてしたことなかったからな」
「まあ確かに、あまり見ない光景ね」
彼は体を少しだけ乗り出すと、あらためてその可愛らしい寝顔を覗き見た。
「それにしても……」
「それにしても、なに?」
「なんでこんなに、にやけて寝てんだ?」
「バルスもそう思う? さっきからずっとこうよ。いったいどんな夢を見ているのやら」
小声のやりとりに目を覚ますこともなく、青髪の女の子は、テーブルに頬杖をついたまま、満面の笑みにも似た楽しそうな寝顔を浮かべている。
「ところでバルス、あなたはいつどうやってリュ——いえ、なんでもない」
ニコニコしながら青髪の少女の寝顔を眺めている彼をみて、彼女は言葉を飲み込んだ。そして、厨房の窓に顔を向けた。
窓外に、妹の髪と同じ色をした空が広がっている。その青い絵紙に、白い雲がゆっくりと流れていく。
この黒髪の彼の存在が、妹に良い影響を与えているのは明白だ。そしてそれは、良くも悪くも、自分を含めたこの屋敷で暮らす存在すべてに言えることだろう。
先のことは何一つわからない。
少なくとも自分自身ではこの先を見通すことなどできない。だがこの存在が、この彼の行動が、きっと全ての道筋を良い方向に持っていってくれる、そんな予感がする。
その選択がたとえ苦渋に満ちたものだったとしても、最後に笑っていられるのなら、それでいい。
そう。あの存在を打ち負かす、その力になるのなら——。
しばらくそのまま外を眺めていた彼女は、再び妹の幸せそうな寝顔を覗き込んで、優しく微笑んだ。窓から吹き込む気持ちのいい風が、桃色と青色の髪をそよがせていた。
そんな、とある昼下がりの厨房での一幕——。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
次回エピローグです。