※この作品はR-18です。

紫紺の夢   作:Kuro Maru

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——これはいつかどこかで、

あったかもしれないしなかったかもしれない、
黒色にほど近い濃い紫色(ダークパープル)の夢の中のお話——




閑話「しおた」その10・とくべつ

 二度目の——正確には三度目の結合が果たされた。レムの上になっているすばるは、その柔らかで暖かな感触を敏感な部分で味わうように、ぎゅっと下半身を押し付けていた。

 

 レムは、すばるがこのままどうするか、最後まで見守るつもりだった。だからそれ以上何も言わずに、じっと待った。

 

「おねえちゃん、ぼく、ぜんぜんいたくないよ」

 

「はい、すばるくん」

 

「れむおねえちゃんのおまたの中、あったかくて気持いいよ!」

 

「そう言ってもらえて、とってもうれしいです!」

 

「ぼく、やさしくするね!」

 

 さっきのことが、まだ頭に残っているのだろう。いちいち報告する、そんなすばるがとてもかわいい。

 そのすばるはレムの脇に両手をついたまま、なるべくレムに体重をかけないように体勢を整えた。そして、ゆっくりと、今度は上手に腰だけを動かし始めた。

 

 ゆっくりとそれが後退し、そしてまたゆっくりと入り込む。

 

 もちろん経(・)験(・)の(・)あ(・)る(・)レムが、すばるを上手にフォローしていた。まだ大きさも十分ではないすばるは、ともすればぽろりと抜け落ちそうになってしまう。レムは中ですっかり剥けているはずの先端部分をそっと握り込みながら、それが抜けてしまわないように、腰を押し出し、そして引いていた。

 

「れむおねえちゃん、ぼく、どう? あの、ぼく、あってる?」

 

「はい、すばるくん、とっても上手ですよ! とっても素敵です、すばるくん!」

 

 そのレムの言葉が、すばるを励ました。少しずつ腰の動きが滑らかになって、レムの動きと同調し始める。引く時はゆっくりと、慎重に。押し込む時はやや勢いよく、そして、最後まで入りきった時にはグッと力を入れて、最後まで入り切るように。

 レムに導かれながら、精一杯に優しく、そしてゆっくりと、すばるは動きつづけた。

 

 最初の抱合の時よりも少しだけ時間が過ぎた頃、レムに包まれているものが膨らみを大きくして、最終準備を始めたのがわかった。

 

 普段なら、そうなると同時に出し入れがもっと早く、もっともっとリズミカルになるはずだった。そして最後には激しくなるのが常だった。だが、すばるはそうせずに、ゆっくりと、まるでレムを労わるように、優しく動きつづけていた。

 

——ああ、すばるくん! すばるくん!

 

 レムはそんなすばるに応えようと、リズムに合わせて自身の締め付けを積極的に行った。

入り込む時は緩く、抜き去る時は軽く握り込んで、そしてふたたび奥まで来た時にはぎゅっと力強く。

 

 レムの内緒の動作が、すばるをあの場所へと押し上げていく。

 

「お、おねえちゃん、僕、も、もう……あの、出そうな感じ、してきた……」

 

 その素直な表現もとてもいい。だが、それには一つ決められたことがある。それはスバル本人に教えてもらったこと。そしてそれはとても重要なこと——の、はずだ。

 

「いくって言うんですよ、すばるくん」

 

「い、いく?」

 

「そうです。出そうになったら、いくって言うんです」

 

「いく……んんっ……え、どこに……行くの?」

 

 その疑問には答えないで——もとより、レムもその答えは知らない——続ける。

 

「出す時に、いくって言うのは、その、決まりで……えっと、それが合図なんです」

 

 そうしているうちにも、どんどんと放出感が近づいているのだろう。少しずつ、そして遠慮がちにすばるの動きが速くなってくる。すでに額は汗で濡れ、息もかなり荒くなっている。

 

 レムは、懸命に動き続ける小さな体にうまく呼吸を合わせながら、あの瞬間へと彼を導いた。

 

「う、うん。あの、ぼく……いく……いきそう……」

 

 最終段階に入ったすばるが、大きく前後に腰を動かしながら叫んだ。

 

「あ、れ、れむおねえちゃん、ぼくいきそう! いってもいい? ぼく、いってもいい?」

 

「はい、すばるくん! いっていいんですよ! いっぱい……いっぱい出してくださいね!」

 

「あ、あ、でる……いく……いく、いく! いくっ! あああっ!」

 

 今日の、そしてこの小さなすばるにとって、数えて三回目の射精が始まった。震えと同時に精一杯レムに抱きついた小さな体を、あの特別な苦しみが支配する。全身が跳ねるように動き、腰が力の限り突きに出される。より深く、そしてよりたくさんの量を注ぎ込もうと、レムの中のすばるが、声のかぎりに叫ぶ。

 

「んっ! んんっ! んっ!」

 

 同時に、目と口を固く閉じたすばるから声が漏れた。

 

 三度目とは思えないほどの量がレムの体内に迸った。初めはびゅっ、びゅーっと、そして、どくっ、どくっ、と、まるで音が聞こえているような、そんな感覚をレムに与えながら、脈動に合わせて、すばるの先端から暖かな体内へと精液が注がれていく。

 

「ああ……すばるくん……」

 

 ようやく最後の射出を終えたすばるが、ブルっと大きく体を震わせて、糸が切れた操り人形のようにレムの上でくたりとなった。

 

 

 下になっているレムは、心地の良い重さを感じながら、その喜びを噛み締めていた。

 

 レムの願い通り、ゆっくりと優しく——そして激しく——すばるは動いてくれた。その営みには思いやりと愛情があった。

 初めてのすばるにとって、気持ちを抑えながら自身の出し入れをするのは、とても難しいことだっただろう。だが彼は、一生懸命レムの言葉に応えてくれた。

 

 そのすばるの思いが嬉しい。そんなすばるが心から愛おしい。

 

 レムの肌に雫が垂れた。上になっているすばるは、その額はもちろん、背中やお尻の辺りまで、汗でびっしょりと濡れていた。その小さな体で、力の限りの動きで“大好き”を表現してくれたのだろう。汗だくになるまで懸命にこの愛の営みをこなした彼には、おそらくもう体力がほとんど残っていないはずだ。

 

 しばらくして、力を使い果たしたすばるが、自然と自分から抜け落ちたのがわかった。レムはしっとりと濡れたすばるをそっと自分の上から下ろすと、その体にタオルを当てた。すばるは満足げに、そして気持よさそうに、レムのされるままになっていた。

 

 

 すばるの体を拭き終えたレムは、自身も手早く綺麗にしてから、小さな体に寄り添うように、体を横たえた。

 

「がんばりましたね、すばるくん」

 

「うん……おねえちゃんも……あの、気持ちよかったの?」

 

「はい。すばるくんがとっても優しくしてくれたおかげで、レムも気持ち良くなれました」

 

「よかった!」

 

「すばるくんが精液をたくさん出してくれたの、とっても嬉しかったですよ!」

 

「うん! ぼくもいっぱい出せてうれしかった!」

 

「はい。ありがとうございます」

 

「ぼく……ぼくね、今日のこと忘れないよ! れむおねえちゃんとはじめてせっくすしたこと、一生忘れない! ぜったいぜったい、忘れない!」 

 

 

 裸のレムに抱きつきながらすばるが言ったこの言葉に、レムは涙が出そうになった。

 

 自身に関して言えば、身も心も溶けてしまう、あの瞬間を迎えることはできなかった。だが、それに勝るとも劣らない心地よさが、そこにあった。

 すばるの熱いものが体内に注がれたのはもちろんだが、それよりも、すばるがあの素敵な瞬間を、二度も自分の体の中で迎えたのが嬉しかった。そのめくるめく輝きを、自分の躰の中で経験してもらえたことがなによりも嬉しかった。

 

 そしてこの一言。この言葉だけでもう十分だった。このたった一言で、心が、胸が、体全体が温かくなった。彼が言っていた通りの幸せな気持、それがこの二人のセックスに確かに存在した。

 

 

 その気だるい幸福感の中、枕を抱えるようにレムに抱きついてたすばるの手が、腹部に伸びた。そして、さっきまで入り込んでいた場所を確かめるように、そっとレムのお腹を撫でていく。

 

「ねえ……レムおねえちゃん……、せっくすは好きな女の子としかしちゃいけないんだよ、ね……」

 

「そうですよ。それはとっても大切なことです」

 

「ぼく、れむおねえちゃんがすき……大好き。でも……」

 

 レムはお腹の上のすばるの手をそっと握った。

 

「……おねえちゃんは今日……はじめて会ったのに……なんでぼくのことが……好きなの?」

 

「そ、そうですね。今日は……いえ、すばるくんは特別だからです」

 

 そう。特別だ。このすばるも、この関係も。全てが特別なのだ。

 

「特別……好きな人……だめって……」

 

——だって、レムはスバルくんが、そしてすばるくんのことが……。

 

「レムはすばるくんのことが大好きなので、いいんです」

 

「……」

 

「問題ありません。レムはすばるくんのこと、愛してますから——」

 

 レムが別の世界のヒロイン(ハツコイ少女)のようなセリフを、さらりと口にする。

 

「……すばるくん?」

 

 レムに寄り添っているすばるから、いつの間にか寝息が聞こえていた。

 

 

 射精を伴わない絶頂から始まって、自慰による精通、そして結合によってもたらされた、二度の放出。いつものスバルでさえ、かなりの体力を使うだろう回数を、この小さなすばるは初体験でこなしたのだ。レムの胸に抱かれて眠ってしまうのは当然のことだった。

 

 おそらくレムの言葉はすばるには届かなかっただろう。

 

——心から、心から愛していますよ、すばるくん……。

 

 

 さっきまで懸命に頑張っていたその部分に手を伸ばす。いまはもうレムの親指とそれほど変わらない大きさに戻っていて、先端も表皮にすっかりと覆われている。

 自分の躰がそうだったように、もう少ししたら急激に成長を遂げるはずの、可愛らしい男の子の部分。

 その成長過程を見守りながら、心と体を重ねていけることに、どこかしらワクワクしている自分がいる。きっとそれはとても素敵で、とても楽しい日々になるだろう。

 

 そして。

 

 安全な時期とはいえ、こんなにいっぱい注がれてしまったら、本当に子供ができるかも知れない。いや、今回は出来なくても、この愛の行為を続けていけば、いずれは妊娠する可能性は高い。でも、それ以上に幸せなことが他にあるだろうか——。

 

——だいじょうぶですよ、すばるくん。レムは赤ちゃんを大切に育てます。もちろんすばるくんも、立派な大人にしてあげます! だから安心してくださいね……。

 

 

 隣で寝息を立てている男の子を眺めながら、レムは二人の未来のことを想った。そしてその小さな体を胸の中に抱き寄せて、自分もその青い瞳をそっと閉じた。

 

 

 

※ ※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

「レムいるかー?」

 

「しーっ」

 

「ん? なに?」

 

 彼の目に入ったのは、テーブルに頬杖をついて目を閉じている青髪のメイドの姿だった。

 

「寝てんのか?」

 

「そう。だから静かにしてあげて」

 

 きれいな桃色の髪をした少女が、テーブルに寄りかかったまま小さな声で答えた。その様子をみた彼は、ドアをそっと閉じてゆっくりとそのテーブルに歩み寄った。

 

「レムが居眠りなんて珍しいこともあるもんだな。姉様なら納得だけど」

 

「それ、どういう意味かしら」

 

「な、なんでもないです——あ、ありがとうございます……」

 

 既に用意してあったのだろう。彼女から差し出されたティーカップを受け取りながら、黒髪の彼が口ごもった。

 

「まさかレムのこと、朝まで寝かさなかったんじゃないでしょうね?」

 

 彼女は鋭い視線に小言を乗せてから、彼に向かって投げつけた。

 

「し、してない! 昨夜はしてない!」

 

「そんなにあわてて、一体何をしてないのかしらね」

 

 飲みかけたお茶を吹き出しそうになる彼の顔を一瞥する。

 

「なにって……わかってておま……と、とにかく、し、してないし! いや、ほ、ほんとだって。 ——ってか、しばらくしてない」

 

「バルスのしばらくが、どの程度なのかはわからないけど……ま、いいわ」

 

 彼は焦った様子のまま、青髪の少女の顔が良く見える位置に腰を下ろした。 

 

「でも、本当に珍しいな。俺、レムが居眠りしてるとこ初めて見た……」

 

 とりあえず彼女は、そ(・)の(・)こ(・)と(・)から話題を変えたい彼に同調することにした。

 

「……そう?」

 

「うん。まあ、レムだってそんなこともあるかもだけどさ、少なくとも俺の前では、居眠りなんてしたことなかったからな」

 

「まあ確かに、あまり見ない光景ね」

 

 彼は体を少しだけ乗り出すと、あらためてその可愛らしい寝顔を覗き見た。

 

「それにしても……」

 

「それにしても、なに?」

 

「なんでこんなに、にやけて寝てんだ?」

 

「バルスもそう思う? さっきからずっとこうよ。いったいどんな夢を見ているのやら」

 

 小声のやりとりに目を覚ますこともなく、青髪の女の子は、テーブルに頬杖をついたまま、満面の笑みにも似た楽しそうな寝顔を浮かべている。

 

 

「ところでバルス、あなたはいつどうやってリュ——いえ、なんでもない」

 

 ニコニコしながら青髪の少女の寝顔を眺めている彼をみて、彼女は言葉を飲み込んだ。そして、厨房の窓に顔を向けた。

 

 窓外に、妹の髪と同じ色をした空が広がっている。その青い絵紙に、白い雲がゆっくりと流れていく。

 

 

 この黒髪の彼の存在が、妹に良い影響を与えているのは明白だ。そしてそれは、良くも悪くも、自分を含めたこの屋敷で暮らす存在すべてに言えることだろう。

 

 先のことは何一つわからない。

 

 少なくとも自分自身ではこの先を見通すことなどできない。だがこの存在が、この彼の行動が、きっと全ての道筋を良い方向に持っていってくれる、そんな予感がする。

 その選択がたとえ苦渋に満ちたものだったとしても、最後に笑っていられるのなら、それでいい。

 

 そう。あの存在を打ち負かす、その力になるのなら——。

 

 

 しばらくそのまま外を眺めていた彼女は、再び妹の幸せそうな寝顔を覗き込んで、優しく微笑んだ。窓から吹き込む気持ちのいい風が、桃色と青色の髪をそよがせていた。

 

 

 そんな、とある昼下がりの厨房での一幕——。

 

 

〈紫紺の夢・閑話「しおた」了〉

 




ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
次回エピローグです。
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