……のおまけのお話
いつもなら朝一番で——いや、正確にいうと二番目なのだが、それはまあ、良しとしよう——優しく起こしにくるはずの妹が、今朝に限ってなかなかドアをノックしない。
——まあ、まだ寝ていろってことね……。
自分に都合のいい、そんな言い訳を思い浮かべて二度寝を決めてから、かなり時間が過ぎていた。陽もかなり高く昇って、いい加減お腹も減ってきた。
——なにかあったのかしらね。というか、どうせバルスがらみね。
ようやくベッドから抜け出したラムは、ネグリジェ姿のまま、妹の部屋へ足を運んだ。足を運ぶと言っても、部屋は自室の隣。歩数を数えられるほどの距離だ。
その、妹の部屋のドアの前に立ってノックをしようとした時だった。かすか声が聞こえてきた。レムと誰かと喋っているような、そんな感じだ。
——珍しいこともあるわね、レムの部屋でなんて。それにしても……。
このロズワール邸は、別邸でありながら、ルグニカ王国の中でもトップクラスの大豪邸だ。その作りは豪華絢爛にして堅牢。話し声はもちろんのこと、歌を歌っていたところで、隣の部屋にその気配すら伝わることはない。
だから、レムとスバルが例のことをしていたとしても、それに伴う歓喜の声が、隣で眠っているラムの耳に入ってくることはない。
だが、自分に気を遣っているのか、通常、それが行われるのは階の違うスバルの部屋——浴場でのことは特例——だった。例のあのマッサージュを最初に行ったのが彼の部屋だったことも、その理由の一つだろう。
そもそも、いつそれが営まれているのかは、共感覚によってバレバレなのだが、わざわざそれを伝えるような無粋なことは、もちろんしていない。傲岸不遜なイメージのあるラムだが、必要以上に思慮深かったし、自分がされて嫌なことは絶対に人にもしない。彼女はそんな性格だった。
だが、今日に限ってはなぜか
彼女はドアを叩くのをやめて、ドアにそっと耳を当てた。
幼少の頃から精神年齢がかなり高かったラムだが、その年齢相応の性に対する興味はしっかりと持っている。あの強烈な感覚を知ってしまった今となっては、なおさらだ。そういう意味で、彼女は一人の普通の女の子だった。
「——すばるくん、上手ですよ……」
いくらドアも厚いとはいえ、耳を当てればある程度の物音は聞こえてくる。そして聞こえてきた妹の声は、どう考えてもアレをしている最中としか思えない。
——ラムを起こすのも忘れて朝からせっくすをしているなんて、バルスは一体どういうつもりかしらね……。
怒り、というよりも、呆れの方が強い。彼女はため息を一つついて、そっとノブを回した。場合によっては、デリカシーを捨てなければならない時もある。今がその時だった。
——な!
部屋に一歩入った瞬間、妹のベッドで繰り広げられている光景にラムは愕然とした。
素っ裸の妹が、両足を大きく広げて息を荒くしていた。その股の間で、黒い髪が絶え間なく動き、妹の喘ぎ声がそれと連動している。
途端に鼓動が速くなる。
遮断されていた共感覚がいきなり戻ってきたように、妹がなにをされて、何を欲しているのか、それが手に取るようにわかる。体の一部分が熱を帯び始める。何かが“じゅん”としみ出す感覚があって、思わずそれを強く拭ってしまいたい衝動に駆られる。
それを我慢しながら、ラムは後ろ手に扉をそっと閉めた。ベッドの上の二人は、そんなラムに気づくこともなく、その行為に夢中になっているようだった。
だが、驚いた理由は二人の行為そのものではなかった。裸のレムの股ぐらに頭を突っ込んでいたのが、自分の知らない子供だったのだ。
——あれは、だれ? あれはまさか……まさか、バルス?
少しだけ癖のある黒い髪。レムの太ももの影に見え隠れしている、お世辞にもいいとは言えない目鼻立ち。年齢はかなり幼いが、どうみてもあのナツキスバルだった。
そのスバルと思わしき男の子が、レムの間でしきりに頭を動かしている。当のレムは口元を抑えたまま、むーむーと、悶え苦しんでいる。このままだと、それほど時間を置かずに、例のあの瞬間が妹を襲うだろう。
「いいの? もう……いいの?」
二人の会話が——それが会話と言えるかどうかは別として——聞こえてくる。
「はい。もう十分ですよ」
「だったら、あの……おねえちゃん、ぼく……ぼく、おねえちゃんに……」
「はい……すばるくん、レムと繋がって……ひとつになりましょうね」
少年が妹に覆いかぶさっていくのが見える。だが、なにやらもたもたとしていて、その先に進む気配がない。
「れむおねえちゃん……ぼく、わかんない……」
レムがそっと男の子の股間に手を伸ばした。
「だいじょうぶですよ、ゆっくり……そう、そのままゆっくり……」
ここが分水陵だった。これを逃せば、ふたりの結合がなされてしまう。
ラムはさっとベッドに走り寄ると、覆いかぶさっていた少年の脇に手をかけて、レムから引き離した。
「ひゃっ! ね、ね、ねえさま!」
「えっ? えっ?」
羽交い締めに近い格好で後ろにひっくり返った少年は、股間を震い立たせたまま、何が起こったのかを理解できずに驚いている。
「一体何をしているの?」
「い、いえ、こ、これは……」
「どう言うことか説明してちょうだい——」
ラムが手を離しながら、その少年をじっと見つめた。
「そもそも、あなたはだれ?」
「お、おねえちゃんが……ふたりいる……」
少年もまた、ラムの顔を見上げて目を見開いている。髪と瞳の色は違うものの、瓜二つの別の女の子の登場に困惑しているのだろう。
「ね、姉様……あの、す、すばるくんです……すばるくんなんです!」
「バルス? これが?」
ベッドの上で後ろに手をついているその男の子を、まじまじと見る。
低い背丈。薄い胸。華奢な手足。骨張った腰。そしてその無毛の中心部に生えているものは、目にしたことのあるそれとは、大きさも太さも、その形すら、全く異なっている。唯一同じなのは、それが精一杯上を向いてキャンキャン吠えていると言うことだけ。
「あなた、名前は?」
「な、なつきすばる……」
赤くて鋭い眼光に、その男の子は文字通り小さくなった。そして股間のものもまた、すごすごと小さく萎んでいった。
「——なるほどね」
アッパーシーツで体を隠しているレムが、今までの経緯を——簡単に——説明した。ベッドの上で正座したまま話を聞いていたすばるは、納得のいかない様子で二人の顔を見比べている。
彼にしてみれば、綺麗に皿に盛られた新鮮な果物を、目の前に差し出された状態で、さらにはそれを口に入れようとした瞬間にさっと取り上げられたようなものだ。この不満げな顔は、まあ致し方ない。その点に関しては同情する。
だが、ならぬものはならぬ、だ。
「それで、ばるす、あなたはもう精通はすんでいるの?」
「バルス? なんでそんなこと——」
すばるが、ギョッとした様相でラムを見返した。何か変なことを言ったかしら、そう考えてから——思い出した。
——ああ、バルスって、目潰しする時の合図だったかしらね……。
「女の子の——レムの大切な秘密の場所を見てしまったからって、別にその目を潰そうってわけじゃないわ」
——そうされても仕方のない状況だけどね。
「あなたのことをばるす、と呼ぶことにした。ただそれだけ」
「ばるすぅ?」
さらに納得いかないような口調。
「ついでに言っておくわ。ラムのことは、これから“ラムお姉様”と呼びなさい」
すばるは上目遣いのままでかすかに頷いた。
「あ、あの、姉様。すばるくんのことなんですけど……」
「ん? ああ、精通のこと? それとも——」
「あ、その、それです。そのことなんですけど……実は、さっきあったばかりなんです」
アッパーシーツで体を隠しているレムが、恥ずかしそうに言った。
「さっきあったって一体……レムがしてあげたの? まさかレムの中で?」
「い、いえ、そうじゃなくって……」
「ぼく……あの、あのね、いじってたら……出たの……」
自分の射精のことが議論されていることがわかって、すばるはレムの代わりにそう答えた。そのすばるをラムが一瞥する。
「いじってたって……どういうことかしら?」
「あ、あの……」
だが、それを言うと、レムの裸を見ながら自分でしていたのがバレてしまう。小さなすばるは言葉に詰まって沈黙した。その一部始終をこっそり盗み見ていたレムが、慌てて答える。
「あ、あの、姉様。レムが最初に教えたんです。そ、その……お、おなにーのやり方を教えたのはレムなんです!」
「レム……あなた、やり方って……ま、いいわ。とにかくもう精通はあるのね? だったら尚更。これ以上はダメ」
「だ、だめって……」
「聞いてなかったの? この先は禁止よ」
「ええー」
すばるが、ぷ、とむくれる。
「ばるす、あなたはレムにおなにーを教わったのでしょう? だったらしばらくは、それでいいはずよ」
「姉様、そ、それは……」
「あなたにせっくすはまだ早いわ。そもそもおなにーだって早いくらいよ」
「せっく?」
「……ああ、そう。そこから、なのね」
その言葉すら知らない子供が妹に挿入など、もってのほかだ。
「せっくすっていうのは、あなたのそれを女の子の中に入れることよ」
「せっくす、っていうんだ……」
「それがどういうことかは、レムから聞いているはずよね?」
「……うん」
「ならそういうことよ」
「じゃあ、いつになったらいいの?」
本当に直前に阻止されたのを根に持っているのか、頬を膨らませて、むくれるすばる。
我慢しきれないほどの性欲がこのすばるを支配している、というよりも、覚えたての快楽によって目覚めてしまった、性自体に対する強い興味、と言ったところだ。
「そうね……」
ラムはいきなり股間に手を伸ばしてすばるを握ると、もう片方の手で、レムからシーツを奪い取った。
「ひゃっ!」
レムの裸が目の前に現れ、そしてラムの綺麗な手が股間のものをさすっているこの状況に、すばるのそれは瞬く間に大きく、そして硬くなっていく。
レムの裸に目を奪われているすばるをよそに、ラムはすばるのその部分を検分するように見つめていた。そしてそのラムだけでなく、咄嗟に両手でそのふくよかな胸を隠したレムの目も、そのちいさなすばるを注視した。
「ふうん……」
触られる気持ちよさは既に知っているのだろう。すばるは嫌がることなく、ラムにされるがまま、可能な限りに股間を膨らませた。
「ばるすあなた、いつもこんな感じなの?」
「え? いつも……って、なにが?」
「勃起しても皮を被ったままなのか、って聞いているの」
「ぼっき?」
聞き返すすばるを無視したまま、ラムが幹の部分を掴んで皮を捲った。そのとたんに、薄桃色をした新鮮な実が、表に姿を現した。
「わわわっ!」
「あ、そ、それは!」
二人の叫び声が重なる。
外に出たすばるの先端は、外気に触れただけでビクビクしている。ラムはその桃色の敏感な部分を、上からきゅっと握り込んだ。その瞬間、
「だ、だめです! ねえさま!」
「あ、ああっ!」
すばるが苦悶の表情を浮かべて悲痛な叫び声を上げた。だが、そこから逃げようにも、動くに動けない。少しでも動くと、快感とは程遠い、強烈な刺激がすばるの股間から体全体に駆け抜けていく。
そしてレムも、すばるから共感覚が届けられたような、そんな顔をしている。
「ひ、ひりひりする……ひりひりするっ! お、おねがい! やめて! おねがい!」
「姉様! もっとやさしく……あの、手を……手を離してあげてください!」
ラムがそこからそっと手を離す。それだけで痛烈な感覚がすばるに襲い掛かっているのがわかる。ラムはやさしく根本を握り直して、ゆっくりと包皮を元に戻した。
「わかった? すくなくとも、あなたのそこがすっかりむけて、普通に触れるようになるまでは、あなたにせっくすは……」
そう言いかけて股間から視線を上げる。涙目のすばるは、はあはあと肩で息をしたまま、そこをさっと手で隠した。
「……ばるす、あなた歳はいくつなの?」
「じゅ、十一才……」
「そう。じゃあ、まだ五年は早いわ。それに……」
自分の掌を見つめて、ラムが続ける。
「そもそも、まだぜんぜんじゃない……。まずは、そこがちゃんと剥けて、触られても大丈夫になること。そうなったらレムとせっくすしていいかどうか、考えてあげる。それまでは我慢なさい」
そう言われたすばるは、自身の股間に手を添えて包皮をひいた。だが、頭が少し見えた瞬間、すぐに皮をかぶせてそれを元に戻した。
「とにかく……そうね、とりあえずお風呂に入った時に、そこを剥いて綺麗にするところから始めなさい」
「そしたら、ここ……これに触れるように……なるの?」
「なるわよ。普段から綺麗にする習慣をつけて、それで五年もすれば大きくなった時に自然とむけるようになるわ……たぶんね」
「五年もかかるの?」
「そうね、そのくらいかしら。もしかしたらもう少し早いかもしれない。でもそんなのあっという間よ。その間に背丈も大きくなるし、あなたのそれも、今よりもっともっと……その、立派になるわ」
「う、うん。わかった……」
「
「わ、わかりました……らむおねえさま」
「そう。それが一皮剥けた大人になるって言うことよ」
「姉様……」
「それまで、これ、どうしたらいいの?」
「さっき覚えたでしょう?」
「……お、おな、にー?」
「そうね。それまでおなにーで我慢して」
「自分でいじって、おなにーしていい、の?」
「していいわ。男の子が自分でするのは自然なことよ。でも……」
「でも?」
「人前でしてはいけないことだから、するなら一人の時にしてちょうだい」
「うん……」
「毎日はダメよ」
「毎日はだめなんだね?」
「そうね。もししたくなっても、三日に一回だけ。そう約束してちょうだい」
「うん。わかった……わかりました、らむおねえさま。ぼく、三日に一回にする!」
——バルスと違って、素直でいい感じだわ……。
「あと、した時はちゃんと報告すること。いい?」
「ね、姉様、それはさすがに——」
赤い顔をして話を聞いていたレムをよそに、すばるはうんうんと可愛く頷いている。
「いい子ね。その約束の代わり……」
「そのかわり?」
「ご褒美として、レムの下着を貸してあげる。嬉しいでしょう?」
その言葉にレムの顔がカッと赤くなる。だが当の本人は、それには全く興味はない様子だ。
「ぱ、ぱんつ? れむおねえちゃんの? でも、そんなのもらっても、ちっともうれしく——」
「なにかしら?」
「ううん。れむおねえちゃんのパンツ、ください……」
「そう。それでいいのよ。そうね、そのまま三年、いいえ、二年我慢できたら——」
「できたら?」
「ラムの下着もつけてあげる」
「あ、ありがとう……」
「——
「ありがとうございます、らむおねえさま」
「じゃ、とりあえず二人とも服を着なさい。朝食に——いえ、もう昼食かしらね。とにかく厨房へ行きましょう。ラムはお腹が減ったわ」
下着が、二人のパンツが自分にとって何の意味があるのか、今のすばるには全く理解できなかったが、お姉様がそういうのならきっといいことがあるのだろう。
すばるは素直に、二年間頑張ろうと思った。そして元気よく「うん!」と頷いた。
「——と、まあ、もしラムがその場にいたのなら、きっとこんな感じかしら」
湯船に浸かったラムが話を終えた。
「ね、姉様……その、お話が……お話の内容が具体的すぎます……」
「そう? でも、さっき聞いたレムの話の足元にも及ばないわよ、きっと」
「う……」
顔を真っ赤にして、ブクブクとお湯に顔を沈めるレム。そこにラムが追い打ちをかけた。
「それにしても……バルスがさっき言っていた通り、レムは小さい男の子に興味があるの?」
「え……ち、ちがいます! ちがいます! 夢です。ただの夢です!」
「そうかしらね。その割には事細かにいろいろと……」
「そ、そ、そうですよ! だって、レムが好きなのは今のスバルくんですから……ち、小さな男の子に……なんて……」
最後は若干小さめにレムが反論した。
「ま、そういうことにしておいてあげる」
「あ、あと——」
「分かっているわ。バルスにはその夢の話は絶対に内緒、ね?」
顔を真っ赤にして頷いている妹をみて、やっぱり自分の妹はかわいい、と思った。そしてスバルの言う通り、“しおた”という、そう言う願望があってもおかしくない、とも思っていた。
ずっと自分の庇護の元に育ってきた彼女が、逆に誰かを庇護してみたい、誰かに頼られてみたい、そう思うのはある意味自然なことかもしれない。そしてそれは、例のあの贖罪から、ようやく解放された証なのだろう。
そう、夢は夢だが、人が見る夢には意味があるのだ。スバルがレムの手を正しい方向へとひいてくれているなら、それはそれで何よりなことだ。
赤い顔をしている妹をよそに、ふうっと一息ついて、浴室の高い天井を見上げる。そして、たった今聞いたばかりのその夢について、ふと、考えた。
あり得ないことだけれど、でも、もし。もしも、本当にそんなことが現実になったら——。
「姉様? お顔がすこし赤いですよ?」
「そ、そう? きっとお湯が熱いから——。いえ、ちがうわね。そう……少しだけ想像してしまったの。もし本当にそんなことが起こったら、まっさらなバルスに色々……あんなことやこんなことを、レムと二人で一から教えるのも悪くないかも、って」
そんな姉に、レムは一瞬驚いた表情を見せた。
「だからレム、独り占めはダメよ」
そう言ってしまってから、ラムはぽっと頬を染めた。そして二人は顔を見合わせて、くすくすと笑い合った。
いただいた感想にヒントをもらって、おまけショートをこっそり書いてみました。姉様だったらきっとこんな感じでしょうか(笑)
P.S. 狙ったわけではありませんが、ラストがまた12月になってしましました……w ちょっと早いですが、皆様メリークリスマス&どうぞ、良いお年をお迎えください!