怪獣娘~ウルトラ怪獣ハーレム計画~外伝:例えばのこんな話 作:バガン
「あぁ・・・。」
「どったのシンちゃん?」
くそみそな結果に終わった北海道出張から早1か月が過ぎようとし、世間はすっかりクリスマスムードに浮かれているが、ここに浮かない人が一人。
「むしろミカは浮かれすぎだと思うんだけど。」
「そう?これぐらいいつも通りじゃない?」
「日がな一日サンタ服着てる人なんて見たことないよ。」
「えへへ、似合う?」
「似合う。」
「それで、何ため息ついてんの?」
「いやさ・・・この前の出張以来、なんか距離が出来ちゃって。」
「エレちゃんと?」
「うん、一緒に仕事行く頻度も減ったし、一緒に出掛けることもなくなっちゃった。」
「なになに、倦怠期?」
「別に付き合ってるわけじゃ・・・。」
いや、付き合ってないのああゆうことするのはおかしいのかな?でもミカとも特別付き合ってるわけじゃないけど『する』しなぁ。
「まあまあ生きてりゃ別れる時だってくるよ。いい出会いがあるって。」
「そんな人生達観できるほど十分に生きちゃいないから。」
「ところでシンちゃん、クリスマスは予定ある?っていうか、予定空けてる?空いてるよね?」
「んまぁ無いけど、なに?」
「なに?ってそりゃないでしょー?このこの。」
「どこかに出かけるような気分でもないと思うけどなー、当日混んでるだろうし。」
「だからこそ出かけたいんじゃん!特別な気分を味わおうよー!」
「どっか静かなところならなー。」
でもまあ、せっかく誘ってくれたんだから乗るべきだよな。
「よーし決定!当日はアーッと驚かせちゃうから覚悟しといてよね!」
「はいはい、仕事仕事。」
根本的な解決にはならないだろうけど、少しは気が楽になるだろう。思いなおして仕事にとりかかろうとするが、
「あっ・・・。」
「・・・こんにちは。」
件の人と目があってしまった。ろくに会話も交わさずにすれ違ったけど、後ろ髪を引かれるように振り返るが、そこにはもういない。
「・・・エレキングさん。」
一杯になった胸の内から漏れ出すように、その名を呼ぶ。
~数日後~
「渋谷に着いたぞ。」
待ち合わせはハチ公像前。忠犬のシンボルが待ち合わせ場所のシンボルになるなんて当時の人が聞いたらどう思うだろう。むしろ待ち人来ずのシンボルじゃないのかとかくだらない考え事はさておき。
「さすがに人が多いなぁ・・・早く来すぎたかもしれない。」
常に30分前行動を心掛けているが、この日は45分前に着いた。そしてミカは大体時間ギリギリにやってくる。
(座る場所も無い。立ちんぼか。)
見ればどこもカップルだらけ。数年前のシンジにはとてもとても居辛い場所だったに違いない。ひょっとしたら泣いていたかもしれない。
『お姉さんーん、一人?一緒に遊ばなーい?』
うーわナンパだよ。ありえねーわ。
『間に合っているわ。』
『そんなこと言わずにー、お姉さん芸能人?美人だねー。』
うーわ食い下がってるよ。ありえねーわ。
「って、今の声って?」
犬だったら耳がピンと立つような、ときめきにも似た衝撃を喉で飲み込みつつ、声のした方向へと足を進める。
「構わないで、大声出すわよ。」
「チッ、アバズレが。」
「エレキングさん?!」
そこには、意中の人がいた。そして珍しいことに、いつものスーツ姿ではなく、とてもシックで落ち着いたコート姿であった。
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「はぁ・・・。」
「どうしましたぁ、エレエレ?」
散々な結果となった北海道出張、いや、出張そのものはおおよそ滞りなく終わったが、心にしこりが残っていた。
「むしろあなたがどうたのよ?」
「えへへ~、ピグモンサンタですぅ!似合いますかぁ?」
「似合ってるわ。」
「そういえば、最近シンシンと一緒にお仕事することなくなりましたねぇ?以前は毎回と言っていいほどシンシンを連れ立ってたのにぃ?」
「・・・考え直したのよ。」
「それでエレエレはいいんですかぁ?」
「いいのよ。」
「むー、エレエレとシンシンはもっと仲良くしてほしいってピグモンは思うですぅ。」
むしろ仲良くなりすぎたせいでギクシャクしているのだけれど。抱きしめたいわねピグモン。
「ところで、エレエレはクリスマスに予定はありますかぁ?」
「仕事よ。」
「仕事の予定はまだ入ってませんよねー?」
「仕事を入れる予定なの。」
「じゃあピグモンと一緒に遊びに行くのがお仕事でーす。今から遊びに行くための服を選びに行きましょー!」
「それを遊びに行くというのんじゃないかしら?」
気遣いはありがたいけど、正直そっとしておいてほしいわ。
「あっ・・・。」
「・・・こんにちは。」
出来るだけ接触しないように、とは思っていてもこうした不可抗力はあるし、なによりつい目線で追ってしまう。これは本当に、病気ね。
~数日後~
「遅いわね、ピグモン。」
私が早すぎるだけなのだが、こうも人が多いとなんだか落ち着かない。
「遊ぶとはいっても、何をすればいいのかしら。」
今まで出かける用事と言えば大抵アニメストア巡りと、スイーツを食べることぐらいだった。それ以外の予定といえば・・・いつも彼が立てていたかしら。
(いけないわね、いない人のことを考えてしまうなんて。)
別に死んだわけではないけど。二度と会えないのと、死別したのとはどう違うのかしら。
「お姉さんーん、一人?一緒に遊ばなーい?」
生まれて初めてナンパされたかもしれない。全ッッ然ッッ嬉しくないけど。
「間に合っているわ。」
「そんなこと言わずにー、お姉さん芸能人?美人だねー。」
今までこんな風に声をかけられたことが無かったのは、スーツ姿だったせいかしら?やはり私にはスーツの方が気楽ね。
それより、この軽薄男はなんとかならないものかしら。こんな責任の『せ』の字も無さそうな男に興味も関心もないわ。
「構わないで、大声出すわよ。」
「チッ、アバズレが。」
わー、さぞかしモテるんでしょうね。
「エレキングさん?!」
どうしてこう、一番会いたくない人に会ってしまうのかしら。
おかげですごく幸せな気分よ。
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ダブルショーック!ミカを待っていると思っていたら、エレキングさんと待ち合わせしていた!エレキングさんがスーツ以外の姿でそこにいた!
「あなた・・・何故ここに?」
「エレキングさんこそ・・・。」
「私はピグモンと遊ぶ予定で。」
「僕もミカと遊ぶ予定で・・・まさか。」
2人は同時に携帯を取り出すと、同時にチャットを確認した。
『じゃああとはお若い二人にお任せして!』
『エレエレと~~~ってもかわいいですよぉ!がんばってくださぁい☆』
「「だって。」」
2人してハメられたというわけだ。
「その・・・エレキングさん・・・今日素敵ですね。いつも素敵だけど・・・。」
「そう・・・ありがとう。」
さて、何を話せばいいのやら。言いたいことがいっぱいあったはずなのに、今は見つからない。
「えっと・・・それから、その・・・。」
「・・・。」
エレキングさんもそわそわと落ち着かなさそうにしている。
「あなた、今日はゴモラとデートだったのよね?」
「はい、そうですけど・・・。」
「じゃあ、私にそのデートプランを見せてちょうだい?」
「え?それってどうゆう?」
「私をエスコートしてくださる?ジェントルマン。」
少しの皮肉と、大きな好奇心の籠った声でエレキングさんはデートを申し出る。
「お、お願いしましゅっ!」
「それは私が言う台詞じゃないかしら?」
「え、えーとじゃあ、こちらこそよろしくお願いします!」
「ええ、よろしく。」
周囲の生暖かい視線に送り出されて、2人は待ち合わせスポットを後にする。
「ふっふーん、どうやらうまくいったみたいだね?」
「エレエレもシンシンも、初々しいですねぇ☆」
なんか怪しい二人組が隠れながらついていっているのも目撃されていた。
「でも、本当にミカとの予定を辿るだけでいいんですか?ミカとじゃ好み合わないんじゃ?」
「いいの、あなたが他の女の子にどんなことをするのか、私が知りたいだけだから。」
「ふーん。」
エレキングさんが相手ならエレキングさん用のデートプランを用意するんだが、それはお望みではないらしい。
「まいっか、じゃあさっそく行きましょうか。まずはんまーいタコ焼き屋さんに。」
「タコ焼き・・・『鈍たこ』とかかしら?」
「んにゃ、そんなお高そうなチェーンじゃなくて、もっと普通の屋台のやつです。」
まず粉もん。ミカとのデートはこれがないと始まらない。
「いらっしゃーい!お?シンちゃんやん?今日はゴモたんと一緒ちゃうん?」
「チブルさんちーっす。」
そして彼女はタコ焼き屋でバイトしているタコ・・・じゃなくてチブル星人さん。
「ほーん?へー?はーん?」
「・・・何かしら?」
「いやー?シンちゃんがゴモたん以外と一緒にいるのが珍しゅーてな。」
「そうかしら?」
「チブルさんが見てないだけだよ。」
「あそっか!あんさんがシンちゃんがいっつもやらしー目で見てるっちゅーエレちゃんやな!」
「やめて!!」
腰かけて出されたホカホカのタコ焼きを頂く。外が柔らかくてタネに出汁の効いた関西風だ。
「どうですか?」
「・・・なかなかおいしいわ。」
熱々の中身を割ってふーふーしながら頬張る姿はかわいい。
「ほら、ソースついてる・・・。あっ。」
「んっ・・・。 」
ついいつもの癖で、ミカにやっているように口の周りについたソースを指で拭ってしまった。
「おやおや~?シンちゃんエレちゃんにもそんなことしちゃうんだぁ?」
「うっせうっせ!!黙って店番してろい!!」
「へ~へ~。」
外野は黙っとれ!!
「それ、どうするの?」
「え?えーっと・・・。」
「あの子には、いつもどうしてるの?」
「あの子と同じことを、やってちょうだい?」
「うぅ・・・。」
純粋な子供のみたいに興味深そうに、それとも見定める大人のみたいに真剣にじっと見つめられる。そんなに見られてると恥ずかしいんですけど?
「あむ・・・。」
意を決するようにその指を自分の口に突っ込んで舐めとる。以前にも同じようなシチュエーションがあったと思うけど、あの時はどうしてたっけ・・・。
「他には?」
「他?」
「・・・食べさせあいっことか。」
「しません。」
本当はする。けどそんなこと口が裂けても言えない。
「あれ~シンちゃんゴモたんとは食べさせあいっこしてなかったっけ?」
「お願いだから黙ってて!!」
「・・・ほら。」
「ほらって?」
「あーんして?」
いや何あなたも突き出してきてるんですか。食べろと?あいわかった。
「熱ゥい!!」
「そりゃ丸々一個は自殺行為やで。」
「!・・・ごめんなさい。あっ!」
慌てて手が滑ったのか、バシャァッと氷水をぶっかけられた。
「さすがにミカにもここまでされませんよ?」
「・・・ごめんなさい。」
フキフキとハンカチで拭われるが、珍しく慌てているエレキングさんを見れたので儲け儲け。
「見てたらなんか食べたくなってきちゃった。」
「後で買いましょうね~☆」
「次はどこへ行くのかしら?」
「映画館です。」
食べ終わったカラをゴミ箱に捨てて、次に足を運んだのは静かで薄暗くい場所。クリスマスなだけあってカップルが多い。
「一応、今日見る予定だったのは・・・どうしました?」
「・・・懐かしアニメのリバイバルやってる。」
どうやらエレキングさんもリサーチしていなかった、アニメのイベント上映会があったらしい。運よく当日券もあるらしい。
「そっちにします?」
「いえ・・・あの子と見る予定だったものを・・・。」
「そっちにしましょうか。当日になって急に予定変更してくるのもよくありますし。」
ウズウズと見たそうにしているのがよく見なくてもわかる。あの大物声優のデビュー作、あるいは出世作とあってゲストも豪華だし、見なくちゃ損だ。
「ちょっと後ろの方ですけど・・・壇上は見えますね。」
「そうね、でもちょっと暑いわね。」
「そうですね、暖房ちょっと効きすぎかな?」
先ほど熱い物を食べたせいか、少し汗ばんできていた。コートを畳んで膝の上に置く。
「あっ、エレキングさん、その服って・・・。」
「ピグモンと一緒に選んだのよ。どう、かしら?」
生地の厚い灰色のロングコートの下には、雪の様に白いシャツと黒いスカートを着ていた。スカートと同じ色のストッキングが艶めかしい。特にメガネがいい。メガネが。
「すごく・・・似合ってます。」
「そう・・・よかったわ。」
思わず見とれていると、恥ずかしそうにエレキングさんは手を突き出してシンジの顔を逸らさせた。
「でも、勿体ないな。」
「何が?」
「こんなに、お洒落に着こなせるのに、普段はスーツだけなんて。」
「スーツでないと、さっきみたいに声かけられて鬱陶しいから。」
「そう・・・ですか。」
それは確かに問題だ。エレキングさんに悪い虫が寄ってくるなんて考えたくもない。
「じゃあ・・・。」
「?」
「今度からは・・・。」
またクサイ台詞を吐こうとしたその時、ちょうどステージが始まった。
「何?」
「いえ、なんでも・・・なんでもないです。」
「そう。」
さて、肝心の劇場アニメの方はというと、その内容でイベントの趣旨を理解した。
舞台は宇宙開拓の進んだ未来の世界。その覇権を賭けて二つの勢力がぶつかり合う。だが主人公たちはそのどちらにも属さず、争いを止めるために奔走するというストーリーだ。そのラスト、主人公はヒロインに、全宇宙に響き渡るほどの大告白をかまし、戦闘を止めた。その劇中の日付がクリスマスというわけなのだ。
「いいストーリーでしたね。」
「出来のいい作画だったわ。」
戦闘シーンのド派手さや、心に響く演出、愛は全てに勝るというメッセージ、どれひとつとっても色褪せない感動の数々を味わった。他にも出演者たちのトークショーで、当時の裏話や感想を聞いた。本当に貴重な体験になったと思う。
「来てよかったわ、今日は。」
「なら、よかったです。」
「ええ、それでこれからどうするのかしら?」
「実は何も決めてないんです。タコ焼き食べて映画見て、それから先はなんにも。まだ日没には時間がありますし、カラオケでも行きますか。」
「ええ、よくってよ。」
あっ、エレキングさんったらさっそくさっきの映画の台詞を使ってる。
「お前が好きだ!お前が欲しいぃいいいい!!」
「ゴモゴモったら大興奮ですねー☆」
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「今日はありがとう。楽しかったわ。」
6時を周ってとっぷり日は暮れて。家の最寄り駅まで帰ってきた。
「ほんと、朝はどうしたものかと思いましたけど、楽しんでくれてよかったです。」
「あなたは、どうなの?」
「僕?僕も楽しかったです、エレキングさんと一緒で。」
「そう、よかったわ。」
「でも、最初っからエレキングさんと一緒に出掛けるんだってわかってたら、そのためのプランだって考えてたのになー。」
「あら、私だってタコ焼きも好きだし、ラブロマンスだって見るわよ?」
「へー、ちょっと意外。」
「あなたが知らないだけよ。」
「でも、それは私も同じね。あなたと一緒にいるのが、こんなに楽しいなんて思ってなかった。」
「いつもは、楽しくなかったですか?」
「そうじゃないわ。ただ、今日はちょっと違うものが見れたから、それが新鮮だったの。」
「ちょっと嫉妬してるわ。あの子に。」
「ミカに?」
「そう・・・それだけじゃなくって、他の子とも。」
「他の子って?」
「知ってるわよ、ゴモラ以外の子ともデートしてるんでしょう?」
「ぬっ、まあ付き合い程度には・・・。」
「その子たち一人一人と、あなたは違う接し方をしているのね。デートプランが違うように。」
「だから、ミカのデートプランが知りたかったんですか?」
「ええ、けど本当はそうじゃなくて、本当は・・・あなたの事が知りたかった。」
丁字路に立ち止まって、エレキングさんは意を決したように話し始めた。
「私、あなたのことを何でも知っているつもりだったけど、本当は全然知らなかったんだって、この前思ったわ。」
「この前・・・。」
思い当たるフシは・・・ある。
「あなたの事も、自分の気持ちもよくわからなくなって、ずっと悩んでいたわ。」
街灯のスポットライトを浴びて、エレキングはシンジに向き直る。
「今日わかったわ。ただ私は嫉妬していたのよ。ゴモラや、他の子たちに。私の知らないあなたを知っている皆が。」
「ああ、こんな簡単なことだったんだって、それで今は納得してるわ。」
「だから、黙って聞いて欲しいの。これは私の独り言だから。」
「私、あなたが好きよ。私だけのものにしたいぐらい。」
「それじゃあ、また明日。」
地球の重力を振り切ってそのまま月にまで突き刺さりそうなほど舞い上がる心をなんとか肉体に繋ぎ留められたと思ったその時、既にエレキングさんは背を向けて自分の家の方向へ歩き出そうとしていた。
「待っ・・・!!??」
絞り出した言葉が喉を出切るよりも先に体は動いていた。
「・・・なにかしら?」
パニックを起こしてなにがなにやらわからぬまま、その手をとって引き留める。
「えっと、その・・・もう少し・・・今日は一緒にいませんか?家来ませんか?」
鳩が豆鉄砲を食ったようにしばし目を丸くしてから、エレキングさんは呆れたように応えた。
「・・・反応が遅いわ。」
「え?」
「なんでも。ならお言葉に甘えさせてもらうわ。」
その口元が普段見せないぐらいに緩んでいたのが、遠巻きにいるギャラリー2名にもよく見えていた。