伝説のモンスター娘と呼ばれる存在、フェンリルロードのイスターシャは目の前に居る小さな弱き存在を前に余裕綽々の様子で笑みを浮かべていた。片手で顎に触れて見つめるその視線はどこか厭らしく、見つめられた本人はボロボロの姿で手に握る剣を落とさぬ様に必死で握りなおす。
「そろそろ観念したらどうじゃ?」
「……」
「何も酷い事はせん。ただ、我のペットとして生きれば良いのじゃ」
「……断る」
「ふむ、分からず屋じゃな」
弱き存在……ハクは剣をイスターシャへ向けてきっぱりと拒否する。彼女はこの世界で対象の欲望を満たす為に半年近くの期間を過ごしていた。対象だったのはイスターシャ本人と、彼女の側近である2人のモンスター娘。3人の欲望を無事に満たす事は出来たものの、まだこの世界には満たすべき存在が居る。指名を果たすために、元の世界へ帰るためには住んでいる場所を離れて旅立つ必要があった。しかしそれを相談した結果、旅に必要な力を見せる様に言われた後にその弱さを思い知らされて旅立ちを許されない。
イスターシャはハクを手放す気が全くなかった。彼女にとってハクは拾った言葉の通りペットの様な存在であり、世話をして可愛がった生き物。自身は人であると言い張りながら、猫になる事の出来るちぐはぐでどこか不安定な彼女を気に入っていた。……だからこそ、旅立ちをする目的も吐かせた事で許そうとはしない。自身の傍を離れるなど、絶対に認めはしない。
「その様な強さで旅をする? 愚かにも程があるの。……我はかなり温厚な方じゃ。もしどこかでモンスター娘に気に入られて強引に巣へ連れ込まれれば最後、逃げられぬのじゃ。分かっておるのか?」
「……」
だがイスターシャはハクの覚悟を戦いの最中に目の当たりにした事で、強引に引き留める事が寧ろ
「この一撃を受けて耐えられたら、何処へでも行くがいい。……はぁ!」
「!?」
手の平から放たれた攻撃はハクを完全に包んでしまう。そして大きな爆発と共に、ハクの身体は宙を舞った。遥か上空へと飛び、そのままイスターシャの前から消えてしまう。
「……これで良いのじゃ」
戦いの後が残る場を前にして、イスターシャは自身へ言い聞かせる様に呟いた。
こうしてイスターシャの元に居たハクは彼女の傍から離れて人間とモンスター娘の住む街へ流れつく事になる。そして数年の時が経った頃、モンスター娘達が人間を襲う謎の現象が発生。事態を収拾するために人々が奮闘する中、1人の青年が旅立つ傍に1匹のモンスター娘とハクが付いていく事になる。
第一話・旅の始まりと謎の匂い……レーチェ編
青年イオと幼馴染のモンスター娘リリアは住んでいた街を追い出される形で世界を救って来いと言われてしまう。そこで彼女たちの知り合いの元へ行くために訪れたダンジョン、キノコの沢山生えた森で街の知り合いであるハクと出会う。
「どうしてここに?」
「……レーチェの様子……見に来た」
2人と共通の知り合いである猫又のモンスター娘、レーチェ。ハクと通じるところがある故か特に仲の良かった2人はある日を境に合わなくなってしまった。そしてその境となったのは、モンスター娘がおかしくなった日。2人も友達であるレーチェに会いに来た事で、ハクは彼女たちと共に森の中を進む事にした。……そして進んだ先でヘンテコでパンツを集めている変態的な生き物のオットンと出会い、3人と1匹が更に進んだ先で目的であるレーチェと出会う。
「……?」
レーチェの頭上には謎の紋章があった。そして彼女の様子は話に聞くモンスター娘がおかしくなった状態と酷似しており、友達だった筈のイオやリリアに敵意を向ける。そしてハクにもその敵意が向きそうになった時、彼女の様子がまた変化した。睨む様な形相が一変、蕩けた様な目をしてゆっくりと近づき始めるレーチェ。
「可愛いですぅ……っ!」
「!?」
先程までの敵意はもう無かった。だがハクの傍へ近づくや否や、彼女の身体を軽々と抱えてその場を猛スピードで後にしてしまう。友達が敵意を向けて来た事に戸惑っていた2人はハクが連れ去られた事に反応できず、我に返った時にはもうどこにもレーチェの姿は無かった。
一方、レーチェに抱えられたハクは余りに突然の出来事で硬直していた。しかし我に返ってすぐに離れようとするが、モンスター娘の力には敵わない。森の中を疾走した挙句に辿りついた少し狭くもあけた場所で、ハクは興奮気味に息を荒くしたレーチェに押し倒される。
「はぁはぁ……」
「レーチェ……?」
「会う度に思ってたんですよ? 滅茶苦茶にしたいって……もう、我慢しません」
両腕をレーチェに押さえつけられて、濁った様な瞳がハクを見下ろしていた。今のモンスター娘は全員、人間を敵視する様になっている。それは人間と仲良くする者なら、同胞であろうと例外ではない。ハクも人間であるイオの傍に居た事で敵視されてもおかしくないのだが、明らかにその様子は敵意と違う。
「んっ……ちゅっ!」
「んんっ!?」
強引にされる口づけからは逃れられない。モンスター娘の力にはいくら抵抗しても敵う訳がない。ハクの脳裏にイスターシャの告げた言葉が蘇る。レーチェはこの森で過ごしてはいるものの、街に顔を出す程度には外界との関りがある故に巣と呼べる場所が存在しない。そのためにこうして他の存在が訪れそうにない場所で、行為に及び始める。
「動かないでくださいね? 怪我しちゃいますよ」
「何を……っ!」
レーチェは鋭い爪でハクの服を引き裂き始める。瞬く間に上下純白の下着姿にされて、ハクは怯える事しか出来なかった。
「? クンクン、変な匂いがします。何時もこの匂いがしてました……上書きしないと」
「ひぁ!」
首元に顔を埋めて舐め始めるレーチェ。猫特有の舌はざらざらとしており、ハクの身体を舐めまわす度にその身体が快感に震える。首から顔に掛けて舐め回せば、今度は胸元に舌が這い始めた。暴れる身体はレーチェの片手で押さえつけられたまま、マーキングの様な行為が一転。今度はハクを感じさせるために本格的な舌遣いが始まる。
「あ。乳首、固くなってきましたぁ」
「止めっ、んぁ!」
逃れる術がない以上、ハクに出来るのはレーチェが止めるのを待つか助けが来るかの二択しかない。感じやすいハクの受ける快感はとても強く、胸を舐められるだけでもしっかり身体は昂ぶり始めていた。
「イっちゃいますか? はむっ」
「ひっ、あぁ! 駄、目……来ちゃう……~~~~っ!」
ひたすら胸を攻めるレーチェの舌に、ハクの身体は限界を迎える。刺激の強い彼女の舌によって、胸だけで絶頂。意図も容易く絶頂させられた事実にハクが呆然として空を見つめた時、そんな彼女の周りに蛍の様な光が無数に生まれ始める。それはハクに覆いかぶさるレーチェを包み……やがて眩い程の光を放った。
「え? きゃぁぁぁ!」
「……今、のは……?」
「ハクっ! 大丈夫!?」
レーチェが光に包まれる中、ようやく追いついたリリア達がハクの傍へ駆け寄った。そして全員でレーチェの様子を伺っていると、やがて光の中から頭に紋章の無いレーチェが姿を見せる。
「あ、れ……何が……っ~~~~~っ! 私、ハクちゃんに酷い事を!」
もう彼女が敵意を向ける事はなかった。そしてハクに対しても元通り。だが何があったかは覚えている様で、ハクにした事を思い出した様子の彼女は膝から崩れ落ちてしまう。強引に迫った事実は例えおかしくなっていたとしても消えない。嫌われたと思っている様で、かなりショックを受けているようだ。
「戻った、みたいだな」
「ハク、何かしたの?」
「……された」
「う、うぅ……」
レーチェが戻った事に対する心当たりなど、ハクには無い。だが泣き崩れる姿を放っておくことも出来ず、ハクはゆっくりとレーチェに近づいた。気にしていない訳ではないが、おかしかった事実を分かっていたハクは慰める事にするのだった。
しばらくして何とかレーチェは持ち直した。おかしくなったモンスター娘を元に戻す手段はイオ達にもある様で、その方法は何方も破廉恥なもの。ハクも襲われたために、共通しているのは『モンスター娘が破廉恥な目に遭うか、もしくは破廉恥な事をする』と結論付ける。光の正体については分からないままだ。
「そういえば、あの光に包まれた時匂いがしたんです」
「匂い?」
「はい。その……ハクちゃん、前々から偶に違う誰かの匂いがして……今回それが強くなったみたいな匂いでした」
「あぁ、確かにハクって誰かの匂いがするよね。誰かは分からないけど」
「ちゃんとお風呂、入ってるんだじぇ?」
「入ってる」
自分の腕に鼻を近づけて匂いを嗅ぐが、ハクには言われた匂いが分からない。
分からない事は後回しにして、まずは森の管理者であるモンスター娘の元へ向かう事にした一行。既に一度イオ達は顔を合わせており、可笑しくなっているのを確認している。ハクはまだ出会っていないが、彼女達と共に森を進むのであった。……一部のモンスター娘同様、下着姿で。