「そこを通してはいただけませんか?」
「駄目。そいつ、置いて行って」
「……」
第二区画の最奥にて、正気に戻ったワルキューレはハクと共に管理者である青肌の少女と相対していた。この場所の管理者、サハギンのカリプソは最初に遭遇した時と同様にハクを見た瞬間から連れ去ろうとしていた。しかしワルキューレは即座にハクを守りつつ、奥に続く第三区画へ入ろうとする。当然、管理者のカリプソが許さない限り奥へは進めない。
第5話・半魚人は逃がさない……カリプソ編
「貴女もですか……」
ワルキューレは自分に起きた出来事、おかしくなっていた自覚とその間にハクを見て欲した事をしっかり覚えている。故にカリプソが全く同じ状況にある事を即座に察した。自身に起きた事を考えれば、ハクを渡してそれなりの事をさせれば自然と元に戻るだろう。それも1つの手ではあるが、幼気な少女を差し出す事はワルキューレにとって気が引ける事でもあった。
「ここは穏便にと行きたかったのですが、仕方ありませんね。封印された彼女たちの為にも、押し通ります……っ!」
「邪魔者は……消す!」
互いに装飾などが違う三俣の槍を構える。ハクは疲労してしまっている事もあり、ワルキューレの後ろでその様子を見守っていた。……すると戦いが始まろうとする正にその瞬間、ワルキューレの身体が透け始める。それは封印区から離れた彼女の時間がもう終わりだという証。
「迂闊でした……。この先にも沢山のモンスター娘が居ます。その中には封印区と呼ばれる場所で封印されていた者も。彼女達は普段温厚ですが、今は危険な存在になっている筈です」
「……ん」
「嫌かもしれません。辛いかもしれません……ですが、彼女達を戻せるのは貴女しかいないのです。お願いします、彼女達を…………」
「ぁ……」
ワルキューレはそのまま薄れ行き、やがて完全に消えてしまう。恐らく先の区画で封印されたモンスター娘も同じ様に封印が弱まった時を狙って徘徊しているのだろう。イオ達では絶対に敵わない強敵となる可能性が高く、平和的に正気を取り戻させる方法はハクが身を差し出す他にない。
「……」
「邪魔は消えた」
「!」
ワルキューレが消えた事でハクとの間を邪魔する存在は無くなった。カリプソはハクの元へ辿り着くと、その腕を掴んでから後ろに回って両腕ごと抱きしめる事で捕獲する。
「言った通り、犯す」
「っ!」
ハクは自分を抱きしめるサハギンの拘束から逃れようと暴れ始めたが、モンスター娘の力には全く敵わない。軽々と押さえつけられた挙句に陸地から水辺へと場所を移されてしまう。そして気付けば肩辺りまで浸かってしまう水場に引きずり込まれていた。
「私は半魚人」
「!?」
「ここは私の領域」
人間とモンスター娘の差以上の違いが出てしまう水の中で、ハクはもう何も出来なかった。カリプソはハクの目の前に現れて強引に唇を奪いながら水中へと引きずり込む。当然ハクは水中で呼吸出来ないが、カリプソは徐々に深い場所へとハクを押す様に泳いで潜り始めた。
『苦しい? 死にたくない?』
水の中でカリプソはハクに問い掛ける。徐々に苦しくなる中、ハクはその言葉に頷く事しか出来なかった。すると再びカリプソは口付けをして、同時に空気をハクの中へと送り込む。苦しさから解放されるものの、地上へ上げてくれる様子は一切無い。……つまりカリプソと口付けをしなければ、息をする事が出来ないのだ。
『鼻では吸えない様にする……私を求めて』
カリプソの魔法によって鼻は見た目変わらないままに塞がれる。水の中を優雅に泳ぐカリプソは口付けをしたまま、その手でハクの身体を愛撫し始めた。当然感じてしまえば自然と喘ぐ事になるが、鼻で呼吸が出来ない上に口付けをされている事で水を吸う危険性は殆ど無い。カリプソと口付けを続ける事が、苦しまない絶対条件だが。
もう誰も助けに来れない程の深さまで2人は沈んでいる。例えカリプソから逃れる事が出来たとしても、地上に戻るまでに息は続かないだろう。
『気持ち良くする』
愛撫するカリプソの手がハクの秘部に触れる。突然の刺激に目を見開いて大きな空気の塊がハクの口から溢れるが、カリプソが空気を送り込みながら膣内へ指を入れ始めた。水とは違う滑り気を感じて、ハクと同じ様に感情が見えにくいカリプソは微かに微笑む。何方が優位かは火を見るよりも明らかであり、ハクの全てを握っている状況に笑いが抑えられないのだろう。
カリプソは決して口付けをする間、目を閉じない。ジッとハクの感じる様子を観察しており、自分の姿を見られているという事実がハクの精神的にも追い詰めていた。胸に触れる手と膣内を優しく解す様な指先の刺激に何度も声が出そうになり、空気を吐いては新しい空気をカリプソから受け取る。
『もう限界?』
ハクの反応を見て絶頂が近い事に気付いたカリプソ。返事も出来ず、身動きも出来ないハクの様子に攻める手は止まらない。やがてハクが絶頂の寸前まで近づいた時、カリプソは一瞬だけ口付けをやめて告げる。
『イケ。んっ』
抑揚のない静かな言葉。だがそれが引き金の様に、ハクは絶頂を迎えた。即座に口付けは再開されて溺れる事はない。だがこの日だけで何度も絶頂しているハクの体力はもう限界であった。ゆっくりと身体から力が抜けて、ハクはそのまま意識を失ってしまう。……そんな彼女の中から出てきた光は水の中でカリプソを包み込んだ。
最奥へ到着したイオ達。しかしその場に第二区画の管理者であるカリプソの姿は何処にもなかった。何処を探すべきなのかと頭を悩ませる一行。すると突然、周辺の水が眩い光を放ち始めた事で一斉に周囲を警戒。だが光はやがて収まり、何も起こりはしなかった。
「今の光、見覚えがあるのぅ」
「私もです。もしかして……ハクちゃん、この中に?」
「いや、でもハクは水の中で呼吸出来ない訳で……」
水面を覗き込みながら話をしていた時、突然少し離れた位置の水面から何かが飛び出す。それは探していたカリプソであり、最初は警戒した全員。しかし彼女の腕に横抱きにされて眠るハクの姿を見て即座に警戒は解けた。攫いに来た際にあった頭の刻印も無い事から、正気を取り戻しているのも間違いない。
「……」
「え? あの」
無言で傍に居たレーチェへハクを差し出したカリプソ。サハギンの彼女が水中に居て寒がる筈も無いのに、その姿は少しプルプルと震えていた。そしてレーチェがハクを同じ様に横抱きで受け取れば、一瞬でカリプソは水の中へと戻る。全員が戸惑うも、全てを察した様子のラテがレーチェの傍に肩に手を置きながらハクの無事を確認する。
「無事の様じゃな。奴は正気に戻った。つまり、自分のした事に気付いたという事じゃ」
「恥ずかしかったのね」
「あの、あの子が居ないと奥に進めないんだけど……」
「流石に一度宿へ戻った方が良いんじゃない? 大分この子も疲れちゃってるわ」
「私達のせいでもありますが……賛成です。明日になれば、彼女もまた姿を見せるでしょう」
一度ダンジョンを出て街に戻る事が決まった一行。ハクはレーチェが抱えたまま、時折その様子を心配する様にラテやインプ達が声を掛けつつ、翌日まで身体を休めるのだった。