石になったハクと石にした下手人である愛莉を捕まえて宿へと帰還したイオ達。メデューサ娘としての力を使った愛莉は自分のした事を正気に戻った事で理解して取り乱していたが、何とか落ち着いた事でハクを元に戻す事が出来る様になる。
「それじゃあ、アンタが第四区画の管理者なのね」
「その通りでありんす」
区画の管理者を元に戻せば、その場所を探索するのは簡単になる。偶然とはいえど、ハクが愛莉を元に戻せたのはイオ達にとって幸運とも言えた。石にされたのはその代償なのだと無理矢理受け入れて、第四区画の案内を約束させる。第五区画への入り口の場所も把握したところで、イオは思い出した様にある話を切り出した。
「そういえば、まだ清浄なる布を見つけられていない」
「?」
それは今回の事態を収めるのに必要な道具。その詳細を知る者は数少ないが、イオはとある少女からその存在を聞かされていた。伝説のモンスター娘と呼ばれる存在がこの世界には居り、彼女を元に戻すには今までのやり方ではどうにもならないとの事。清浄なる布と呼ばれるものを使って初めて正気に戻せるという話である。
『イスターシャ様は巷じゃ伝説のモンスター娘って呼ばれてるのよ!』
「……」
伝説のモンスター娘。その言葉で思い浮かぶ存在がハクには1人居た。イオ達は現状、その存在がおかしくなった事で全てのモンスター娘がおかしくなってしまったと考えている。それを否定する情報は無いが、ハクは信じたくなかった。……だからこそ、次の第五区画が彼女の管理する場所であると知るハクは先を進みたいと考える。
「……手分け、する」
「なるほど。清浄なる布を探すチームと、第五区画を探索するチームじゃな?」
「ん……私は、探索」
「ハクちゃん……?」
いつにも増してハッキリとやる事を決めているハクの姿にレーチェは違和感を感じて首を傾げる。だがその提案自体は決しておかしなものではない。第五区画の管理者を見つけ出し、清浄なる布を使う。どちらも場所の居所と道具を探す必要があるのだ。
イオ達は清浄なる布を探す事に決める。何処にあるかはまだ分からず、ハクも同じ様に第五区画で探しながら管理者の居場所を見つける事に。
「ハクちゃんは私が守ります!」
「わしも行こう」
「私も」
「アタシも行くわ」
「私も行きましょう」
ハクと共に行くのはレーチェ、ラテ、カリプソ、インプ、エルフの5人。ティピカは殆ど初対面であり、愛莉はまだ会わせる顔が無いとイオ達の編成に加わる事になった。
「ところで、わしらがおかしくなったモンスター娘に遭遇したらどうするのじゃ?」
「それは……」
「方法は、1つしかない」
「……」
イオが居ないハク達の中で、元に戻す手段を持つのは1人だけ。それを理解した5人で共通して思う。『出来る限りモンスター娘に遭遇しない様に気を付けよう』と。
第8話・伝説のモンスター娘。その側近達との再会。
第五区画。そこはまるで全てがあべこべになった様な、上下左右が滅茶苦茶になった世界であった。徘徊するモンスターも一様にその力は強く、油断すれば命は無い。そんな中、進むハク達の目の前に2人の少女が立ち塞がった。
「誰よアンタ達……って、ハク!?」
「……久し、ぶり……」
「……モカ。マタリ」
「知り合いかのぅ?」
現れたのモンスター娘。だがその頭にあの刻印は存在しない。そして2人はハクと顔見知りでもあった。……彼女達はハクが依然過ごしていた場所で、その飼い主ともいえる存在の側近である。故にその顔は知っており、顔見知りどころか仲が良かった相手でもあった。サキュバスのモカ。ゴーレムのマタリ。どちらも強力な力を持ち、敵に回れば勝てる可能性は低い。だが正気であり、ハクの存在を喜ぶその様子から敵にはならない様子で全員は一安心する。
「……イスターシャ、は?」
「イスターシャ様なら奥に居るよ。なんか、変な奴が来てから頭に変なの付いちゃったけど」
「……会う?」
「ん……でも、まだ」
「えっと、ハクちゃんとはどういったご関係なのですか?」
「それはアタシの方も聞きたいけど。そうね、簡単に言うとハクはイスターシャ様。伝説のモンスター娘でここの管理者でもあるお方のペットよ!」
モカの言葉にその場にいた仲間達は凍り付いた。ハクがそんな大きな存在と関りがあるなど、想像もしていなかったのだ。特に街で長年一緒に遊んだりして仲良くしていたレーチェは誰よりも驚いてハクを見つめる。
「……でも、家出……」
「いきなり外に行きたいなんて言うから、イスターシャ様が怒るのも当然ね。それで吹っ飛ばされてそのまま。探さなくて良いって言われたけど、しばらくイスターシャ様は不機嫌で怖かったんだから!」
「吹き飛ばされて……それで、街の外に?」
「ん……」
ハクとイオ達の出会い。それは倒れていたハクをレーチェが見つけて、イオとリリアも呼んで介抱したのが始まりであった。それ以前の事を全く知らなかったレーチェは初めてここでハクの過去を知る。
「ふむ。色々驚く事はあったが、今は伝説のモンスター娘じゃ。頭の上に刻印があるのじゃな?」
「えぇ。あれ、何なのよ?」
「あれのせいで……色んなモンスター娘。おかしくなってる」
モカとマタリに他の区画で起きている現象についての説明をする事になり、イスターシャも同じ状況にある事を説明する。イスターシャを心から尊敬するモカはおかしくなる訳が無いと最初は否定するが、ハクも同じ様に話をする事で徐々に受け入れ始めていた。彼女にとってイスターシャが大切にしていたハクはそれなりに信頼できる相手だったのだろう。
「その話が本当なら、清浄なる布ってのを見つけてイスターシャ様に使わないと駄目なのね」
「今わしらの仲間が探しておる。だが、何処にあるのか見当もつかないのじゃ」
「……この区画……調べる?」
「そうですね。やって損は無いと思います。やるのなら、徹底的にですよ」
「面倒だけど、仕方ないわね。それじゃあ、お宝探しをするわよ」
モカとマタリが居れば、管理者であり伝説のモンスター娘であるイスターシャの場所はすぐに分かるだろう。だが会いに行く前に必要なものを手に入れるため、ハク達は一斉に第五区画を調べ始める事にするのだった。