ハクがクラウディアと出会ったのは、ある人気の無い森の中。魔物も徘徊する安全とは言えないその場所で、行商人の父親と共に旅をするクラウディアは自ら旅団を離れて1人、父親に内緒でフルートの練習をする。そしてそんな彼女に忍び寄る魔物の影。彼女がそれに気付いた時、既に飛び掛かって来る瞬間だった魔物の脅威から救ったのがハクであった。
遠目で見えた少女の中に見えた欲望。彼女を救わなければならないと飛び出し、ハクは何とか少女を脅威から救う事に成功する。だがその際に憑依召還を使ってしまい、ハクは力が切れると同時に疲労で倒れてしまった。
クラウディアに自分を救い、倒れてしまった幼い子供を放って置く選択は元から無かった。力の無い自分でも持ち上げる事の出来たハクの身体に、守ってくれた際に感じた頼もしさはもう感じない。代わりに感じるのは、自分よりも幼い少女の可愛らしさと……異常さである。
旅団を離れていたクラウディアは自分を探していた父親と合流する。その際、彼女が抱えた少女に視線を向けた父親にクラウディアは命の恩人である事を説明した。どうして人気の無い森に居たのか? どうして倒れてしまったのか? 気になる事はあるが、それでも娘の恩人と聞いて放って置く事は絶対に出来ないと感じた父親はハクの介抱をクラウディアに任せて場所の用意をする。
その後、無事に目を覚ましたハクにお礼を言ったクラウディア。ハクが目覚めた事を伝えられた父親も再度姿を現し、どうして森に居たのかを質問されたハクは……自分に行く宛が無い事を告げた。使命を果たす為には、クラウディアと共に行動する他に無い。そして相手を探して実際に森を彷徨っていた為、あながち嘘という訳でも無かった。
行く宛の無い、不思議で不審な少女。クラウディアの「一緒に連れて行ってあげようよ」という提案に、父親は頭を悩ませる。大事な娘に危険が無いか警戒するのは親として当然の事。だがハク自身に危険性は見当たらず、悪意も感じなかった彼はやがて頷いてハクを旅団に同行させる事に決める。
「良かったね、ハクちゃん!」
「ん……よろしく」
嬉しそうにハクの手を取る娘の姿を見て、今だけでも判断は間違っていなかったと思った父親はクラウディアにハクの世話を任せる事にする。明らかに同年代とは思えない見た目の差に、クラウディアは妹が出来た様な思いで喜びながら了承。それからずっと、クラウディアとハクは一緒に行動する様になった。
「それじゃあ、始めるね」
「ん……」
再び旅団を離れ、人気の無い場所へやって来たクラウディアは一緒に連れて来たハクに告げてから手に持つフルートを口元へ近づける。
拾われてから、ハクとクラウディアは守り守られる関係となっていた。基本的な生活に関するお世話の様なものはクラウディアが先導し、魔物の徘徊する場所での危険に対しては戦えないクラウディアに代わってハクが出来る限り対処する。ハクも比較的非力ではあるが、羽の力を使う等してクラウディアを守る事だけは出来た。
響き渡るフルートの音色に、周囲が優しさで包み込まれた様な気がしたハクは自然と目を閉じて聴き入る。やがてクラウディアの響かせる音色がゆっくりと消えた時、静かに目を開いたハクは不安そうに自分を見つめる姿に気付いて頷いた。
「……綺麗、だった」
「本当? 良かった。でも、まだお父さんに聞かせる自信は無いかな……」
「練習……何時でも、付き合う」
「うん。これからもよろしくね、ハク」
クラウディアの目標は父親に自分のフルートの音色を聞いて貰う事。だが例えハクが下手に感じなかったとしても、彼女自身は未だ父親へ聞かせる勇気が出せない様子。本人が勇気を出せるその時まで、ハクは付き合うつもりでもう1度頷いて返した。
余り旅団から離れてしまえば、クラウディアの父親が気付いて探し始めてしまう。そうなれば迷惑が掛かってしまうため、クラウディアはハクの手を引いて戻る為に歩き始めた。……彼女達が次に目指す場所。そこはリュコの実と呼ばれる食べ物を王都へ輸出している島であった。
元々、ハクが最初にこの世界へやって来た時に降り立った場所はクーケン島と呼ばれる島だった。そこに住む夫婦に拾われたハクはその夫婦の間に生まれた女の子を見守りながらも、欲望の相手を探し続けた。だが欲望の対象を見つけられなかった事で痺れを切らして旅立ったのが、クラウディアと出会う前の経緯。故にクラウディアと共に訪れたその島が見覚えのある島だった事で、ハクは驚き目を見開いた。そして何よりも驚いたのは旅立った当時、まだ子供だった女の子が自分を覚えていた事である。
「ハ、ク……?」
「え……」
「っ!」
小妖精の森と呼ばれる場所で、襲い掛かる魔物からクラウディアを守りながら逃げていたハクは、自分を見て驚いた様に名前を呼ぶ少女……ライザリン・シュタウトを前に驚き固まってしまう。だが彼女の傍にいた幼馴染のレントとタオが話す前に魔物を倒すべきだと告げ、協力し合って何とか撃退に成功。やがて始まる沈黙の中、まずは安全な場所へ進む事になった。
それから起きた数々の出来事の中、真面に話をする事も無く島へ戻る事になったハクとクラウディアは心配していた父親に謝罪をしてからライザ達と相対する。そこでクラウディアはハクが嘗てこの島でライザの家で過ごしていた事や、何も告げずに居なくなってしまった事を。何より、彼女の父親も知らない秘密……ハクが猫と人、2つの姿を持つ特異な存在である事をライザは知っていた事実に驚愕した。
同年代の女の子同士で気が合った事もあり、2人は瞬く間に仲を深めていった。ハクという共通の話題もあった事で、親友と言えるまでの関係になった2人。クラウディアもフルートの事をライザにだけは打ち明けて、それからクーケン島で過ごす日々の殆どをクラウディアはライザとハクを含めた3人以上で過ごす様になった。
そんなある日、クラウディアはふと気になった事をライザへ質問する。それは、どうしてハクがこの島から出て行ってしまったのか? という疑問。しかしその質問にライザは答えられず、ハク本人へそれとなく聞いても明確な答えは返って来ない。……それが、クラウディアの中に小さな不安を生み出してしまう。
「ハクちゃんは……私と一緒に着いて来るよね?」
クーケン島、旧市街。父親が寝泊りする為に用意した自宅で1人、クラウディアは不安げに夜を迎えて暗くなった空を見上げながら呟いた。過去に住んでいた島へ帰って来たハクが、ライザの元でこれからも過ごす為に島へ残ってしまうかも知れない。例えそうならなくとも、何時かライザの傍から居なくなってしまった様に消えてしまうかも知れない。そんな不安は、クラウディアの中で日に日に大きくなってしまう。
やがて、クラウディアは不安を消す為に自ら動く事を決意した。ハクが自分の傍から消えてしまう事を恐れて、自分へ縛りつける為の方法を模索し始める。それが歪んだ愛情や想いであると自身で理解出来ていても、決意したクラウディアはもう止まる訳にはいかなかった。例えこの島で出来た大切な親友を利用する事になるとしても。
「ねぇ、ライザ」
「? どうしたの、クラウディア?」
「あのね、作って欲しいものがあるんだけど……」
「?」
まだ歪みの欠片も感じない純粋な笑みを見せるライザへ、クラウディアは自身の欲しい物を告げる。不思議そうな顔をしながらも、友達の頼みならと二つ返事で了承したライザ。それが再会出来たハクとの間を再び引き裂く切っ掛けになるなど、彼女は知る由も無かった。
旧市街にある、バレンツ邸にて。クラウディアの父親が商品のルート開拓をする為にクーケンを離れていたその日、外へ出ようと廊下を歩いていたハクの後ろにクラウディアが立つ。彼女の気配に気付いてハクが振り返れば、両手を後ろに回しながら優しい笑みを浮かべたクラウディア。しかし何処か違和感のある様子にハクが思わず首を傾げた時、ゆっくりと近づいた彼女は突然ハクの口元に何かを宛がい始めた。
「っ!? ……」
「……」
それは小さなハンカチ。驚き目を見開いたハクだが、やがてその目はゆっくりと閉じられていく。そして眠る様にクラウディアの身体へ凭れ掛かった時、それを受け止めた彼女の表情は一切変わらなかった。優しさの中に歪んだ愛情を紛れさせ、クラウディアはハクの身体を抱えて外へ出る玄関とは反対へ歩き始める。
バレンツ邸の地下。そこは冒険に出たがったクラウディアを守れると証明する為、海の水が入り込んでいた問題をライザが解決して以降、放置されていた。殆ど使用されていないそこは父親も余り入らず、誰かを隠すにはうってつけの場所と言える。……そんな場所に、眠るハクを連れたクラウディアが現れる。予め色々な用意をしてあったのだろう。以前は無かった壁から繋がる鎖を前に、クラウディアはハクの首に首輪を取りつけた。そしてそれを壁の鎖に繋げれば、ハクの自由は完全に奪われたも同然。
「これで、ずっと一緒に居られるよね?」
愛おしい者を見る様な濁った瞳で語り掛けたクラウディアは、ハクの頬に優しく触れた。
目を覚ましたハクがまず最初に目にしたのは、見慣れない壁。そこがバレンツ邸の地下であると気付くのには多少の時間が掛かり、ようやく気付いて身体を動かした時、初めてハクは自分の首に付けられた首輪の存在に気が付いた。……ハクの朧気な最後の記憶。それは何処か違和感のある笑みを浮かべたクラウディアの姿。
「……っ!」
そんな筈はないと思い、思わず身を震わせたハクは壁に繋がれた鎖を断ち切ろうと暴れる。だが物静かな地下に金属特有の甲高い音が響き渡るだけで、一向に切れる様子は見れなかった。元々非力な自分の力では無理だと思ったハクは、ならばと嘗て訪れた世界で結んだ絆の力を……憑依召還を使う。黒髪になり、黒いコートを着て。両手に持つ2本の剣を手にしたハクは、鎖へそれを振り下ろした。
「!?」
しかし、ハクの目の前に映るのは剣を振り下ろされて尚、傷一つ見せずに健在な鎖。余程の強度があるのか、絆の力を借りて強くなったハクの攻撃でも破壊する事は出来なかった。
何度も剣を振り下ろす内に、制限時間が終わりを迎えてしまう。憑依召還を使った反動で途轍もない疲労がハクに襲い掛かる中、倒れてしまったハクの耳に誰かの近づく足音が聞こえる。弱々しくも顔を上げた時、ハクが見たのは……最後の朧気な記憶と同様、違和感のある笑みを浮かべたクラウディアの姿だった。
「起きたんだね。おはよう、ハク」
「……クラ、ウ……ディ、ア」
「鎖、壊そうとしたんだ。でも駄目だったんだよね? やっぱり、ライザの錬金術は凄いんだね」
その言葉を聞いてもう、ハクに疑う余地は無かった。自分を眠らせてここへ連れて来た上にこうして鎖に繋げた張本人、それがクラウディアである事を。
「なん、で……」
「こうするしか私には思いつかなかったの。例えライザでも、ハクは渡したくないから」
ハクの問いに答えたクラウディアの濁った瞳に、光は無かった。そしてまるで何かに憑りつかれた様子で語り始めたクラウディアは、鎖や眠らせる際に使った道具全てをライザに作って貰った事を説明し始める。父親が欲しがっている、最近眠れなくて身体に優しい吸引系の眠り薬が欲しい、そんな嘘をライザについたと。普段の心優しいクラウディアがそこまでする様になってしまった理由……それが自身のせいであると、ハクは嫌でも理解した。
「ライザの前から消えてしまった様に、私の前から消えてしまうかも知れない。そう思うと胸が苦しくて、耐えられなかったの。だから……もう何処にも行かない様に、行けない様にしようって」
「……」
「そうしたらね? 私、自分の気持ちに気付いたの。初めて出会ってからずっと、妹みたいに思ってた。だけどライザと出会ってから、ハクがライザと仲良くしてるのを見ると胸が苦しくなって、それが嫉妬だって分かって……ハク。私は貴女の事が、好き」
倒れたままのハクの頬へ手を伸ばしたクラウディアは言い切ると、ゆっくり顔を近づけ始める。そしてハクが逸らす間も無く、その唇を奪った。驚き目を見開いたハクだが、力の出ない身体では何も出来ない。鎖の鳴らす甲高い音を聞きながら、身体を仰向けに転がされたハクはクラウディアの手で一枚ずつ着ていた衣服を脱がされ始める。
「ここなら、ライザはきっと気付かない。お父さんですら、あれから1度も入ってないから。……いつか島を離れる時が来るから。それまでは、ここで一緒に過ごそうね」
その言葉にハクの意見を求める様子は無かった。そして遂にハクの服が完全に脱がされ、その肌が晒された時。クラウディアは自分の頬を押さえてうっとりとした表情でそれを眺める。今まで一緒にお風呂に入った事もあったハクの裸体。だが自身の思いを自覚した今のクラウディアからすれば、以前とは全く違う魅力が感じられるのだろう。
「……止め、て……」
「止めない。例えライザやお父さんにばれても、ハクが嫌がっても……誰にも邪魔させない」
ハクの懇願に聞く耳も持たず、クラウディアはそう言って再び顔を近づけた。
その日からハクの日々の半日が、正に快楽漬けだった。ライザ達と共に行動したクラウディアが帰って来れば、そこから始まるのは淫らな時間。何度も繰り返しイき続ける事を余儀なくされ、最後には死んだ様に眠って半日が過ぎ、また半日がクラウディアのモノとなる。……そんな毎日。
「んちゅ……あむっ……ふふっ」
ハクの身体をクラウディアは自分と壁で挟みながらその唇を貪り、片手を下へ伸ばして秘部を撫でる様にして攻め続ける。ハクの喘ぎすらも自分のものにする様に、絶対に口付けを止めないで身体を堪能し続けていたクラウディア。だがこの日、彼女は珍しくハクの攻めを一時的に中断して顔を合わせた。
「ぅ……ぁ……クラ、ゥ……ディ……ァ」
「あのね、ここを出る日が決まったの。ライザ達にも伝えたよ。だから、もう少ししたら自由にしてあげる。……もう、逃げないよね?」
クラウディアの目標は、ハクが自分無しでは生きられない身体にする事。それが達成出来れば最後、永遠に自分の傍から離れないと考えたのだ。だからこそ、ハクに快楽漬けの日々を与え続けて来た。そして今こそがその結果を確認する時だと思ったクラウディアの質問に、ハクは弱々しい目を向けながらも言葉を返す。
「も、ぅ……止め、て……」
「……」
それを聞いたクラウディアの表情から笑みが消える。そして彼女が何処からともなく取り出したのは、イバラに包まれた丸い道具だった。ライザの傍で過ごしていたハクには、それが何か分かってしまう。魔物を相手に戦う前提で、ライザが作った戦闘用のアイテム。そしてその効果は……対象の感覚や精神、自由を奪うというもの。
「仕方ないよね。……もう、時間が無いの。だから、こうするしか無い」
「ぃ、ゃ……ゃめ……て……!」
魔物を相手に作られた物であり、当然人間を相手に使った事などある筈が無い。嘗て使われた魔物の弱った姿などを見た事があるハクは、それを自分に使おうとするクラウディアの姿に恐怖する。だが、もう彼女は止まらなかった。ゆっくりと近づいて来るそれが使用された時、ハクは自分の中にある何かが奪われ消えていく様な感覚に襲われる。
「これで本当にハクは私のモノ。私だけの、モノ……ふふっ」
やがて意識を失い、ハクは身体をクラウディアに預けた。そんな彼女を抱きしめて、クラウディアは1人笑みを浮かべ続けた。
父親と共にクーケン島を後にしたクラウディア。そして彼女の膝上には、猫の姿で眠るハクの姿があった。現在乗り物に乗っていたクラウディアの膝上は不定期に揺れ、一際大きな揺れが起こった衝撃でハクは目を覚ます。
「あ……ふふ。おはよう」
『……』
ハクが起きた事に気付いたクラウディアが優しく声を掛けると、膝上から飛び降りたハクが人の姿に変わる。そして何も言う事無く、クラウディアの隣へ座り込んだ。すると、ハクはゆっくり身体を傾けてクラウディアへ全身を預け始める。それが分かっていたかの様に受け入れたクラウディアは、ハクの身体に手を回して自分に預けられたハクの頭に自分の頭を乗せた。
「ハク、暖かい」
「?」
「ふぁ~……私も、眠くなって来ちゃったかな」
「……」
「まだ時間もあるみたいだから……お休み、ハク」
そう言って目を閉じたクラウディアは、ハクの暖かさを感じながら眠りについた。起きたばかりで目を開けていたハクは抱かれたまま不思議そうな顔をしながら、しかし動かなくなってしまったクラウディアに自分も動けないと分かって再び目を閉じる。……その光景は真実を知らないクラウディアの父親には、微笑ましく映った。