※この作品はR-18です。

愛され過ぎた少女達   作:ウルハーツ

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2017年11月05日 投稿分


【英雄伝説】 ユウナ・クロフォード☆

 それはトールズ士官学院、第Ⅱ分校が出来るよりも遥か前。クロスベルの西通りに建つアパルトメント【ベルハイム】の奥に存在する部屋の中、ベッドの上で眠る猫を見ては欲を振り払う様に机へ向かうユウナの姿があった。勉強中であるユウナはまだ特務支援課と呼ばれる者達との運命的な出会いを果たす前であり、唯いつも通りの日常を謳歌する一般人。しかしそんな彼女にも少しだけ特別な事があった。……正確には彼女の側に、だが。

 

「あぁ~もう! もういいや! ハク~!」

 

 難しい課題を前に唸り続ける事数分。持っていたペンを机に投げ、ユウナはベッドで眠る猫……ハク目掛けて飛び付いた。目を閉じていても反射的に身の危険を感じたのか、その場から移動して直撃を免れたハク。少しだけ不満そうに声を出すが、すぐに両手を伸ばしてその身体を捕まえると、ユウナは膝の上にハクを座らせて撫で回し始める。

 

「はぁ~、癒される。ってもうこんな時間!? そろそろ寝なきゃ。ハクは明日、何処か行きたい所ある?」

 

『……』

 

 ユウナの質問にハクは首を横に振って答える。ユウナはそれを見て残念そうにしながらベットに横になると、やがて寝る準備をした後に自分が寝ている体勢で向かい合う様にハクを寝かせた。

 

「それじゃあ、明日は市立図書館にでも行こっか? 私も勉強しないと、将来は……まだ決めて無いけど、何かの役には立つと思うから!」

 

 ハクはその提案に頷いた後、少々強めにユウナに撫でられる。そしてユウナが静かに「おやすみ」と告げると、その目を閉じて眠りに付き始めた。その姿にハクもやがて目を閉じ、そして翌朝になるまで部屋の中には静寂が支配した。

 

 太陽が空に昇った頃、ユウナは人の姿を取っているハクと共にクロスベルの西通りを歩いていた。自宅から出てアパルトメントからも出た時、まず最初に鼻を刺激する香ばしく美味しそうな匂いに思わずその出所へ視線を向けたハク。予想していた様で、ユウナは笑みを浮かべながらハクの頭を撫でた。

 

「帰りに寄ろっか?」

 

「……ん」

 

 微笑ましい光景を見せながら歩く2人。やがて中央広場を通り、行政区へと辿り着いた事でユウナはハクの前を歩きながら市立図書館の扉を潜る。受付をしている者はユウナの姿に気づくと微笑みながらお辞儀をし、ユウナはそれに返してハクを連れながら中へと入った。そこに住む以上、普段から居る者とは顔見知りである確率が非常に高いのは当然の事。親しくは無くとも、見慣れた相手であることはよくある事であった。ユウナは市立図書館に複数回来ている為に、顔をお覚えられているのだ。幼げな子供を連れている事も覚えられる要因の1つである。

 

 様々な本が並ぶ市立図書館の中を2人は歩く。ユウナは勉強に使う本を集め、ハクは気になった小説を手にする。そして椅子に座り、2人は無言で読書を開始した。……が、早めに集中力が切れたユウナ。動く事を得意とする彼女には余り慣れない様であり、無表情で目だけを動かしながら本を読むハクの横顔を覗き込んだ。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……?……何?」

 

「え? あ、ううん。なんでも無い!」

 

「?……そう」

 

 長い間見つめ続けていた事で視線に気づき、本から視線をユウナに移して質問するハクを前に焦る様に答えたユウナ。ハクはそんな姿に少し首を傾げながらもやがて読書を再開する。疚しい事があった訳でも無いのに焦ってしまったユウナは少しだけ頬を掻きながら仕方なく勉強を再開した。……そして数時間後、微かに聞こえた音にユウナの集中力は再び途切れた。

 

「今の……何の音?」

 

「……」

 

「ハク? あ、そっか……もうお昼時になったのね。約束通り、帰りに寄って帰りましょ?」

 

「ん……」

 

 ユウナは顔を上げると同時にハクへ視線を向けた。するとそこには丁度本を読み終えたハクが自らのお腹を触っている光景が。時間を確かめればもうすぐ12時を回る頃であり、ユウナは使っていた本を閉じながらハクに告げる。何時もの様に物静かで、しかし強く頷いたハクは持っていた『赤い月のロゼ』を元あった場所に戻す為に動き始めた。表情は変わらずとも体で楽しみだと告げるハクの姿にユウナは笑みを浮かべながら、自分も片付けるために動き出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユウナ・クロフォードに取ってハクとは家族の中でも特別な存在であった。その正体を知るのは自分だけであり、不思議なぐらいに心安らぐ存在。だからこそ、ハクと別れなければならないとなった時のショックは計り知れないものであった。平和な日常から数年。第Ⅱ分校への入学を果たしたユウナは変わり続ける世界の中で翻弄される。そしてクロスベルへと一時的に帰郷した時、仲間達と共に実家へ行く事になったユウナは家族である母親、弟、妹の3人と無事に再会。しかしその場にハクは居らず、ユウナは急ぐ様に自分の部屋へと入った。そこは家を出た時のまま綺麗に掃除されており、だがハクの姿は何処にもなかった。

 

「お母さん、ハクは?」

 

 数ヶ月という短い時間の中でも感じていた心労を少しでも癒したいと求めていた為、居るべき場所に居ない事に思わず声が震えたユウナ。その変化には仲間達も気づき、ユウナの母親も当然気付く。猫が家に縛られることは無く、また帰ってくる時期などは分かっても時間までは分からない。だからこそ、何時もの様に何処かへと自由気ままに外出してしまったと聞いたユウナは崩れそうになった足を何とか立ち直して行き先を考える。思いつく場所は、2箇所しか無かった。

 

「その、我儘なのは分かってます、だけどどうしても会いたい子が居るんです」

 

 その言葉に拒否する者は居らず、ユウナは心当たりを順に回る事を決める。まず最初に向かったのはアパルトメントからもすぐに目の前に存在するベーカリーカフェ『モルジュ』。基本的にパンが置かれているその店に入り、ユウナはカウンターに立つ青年の側へと近づいた。オスカーと言う名の青年はユウナが一時的とはいえ帰ってきた事を喜び、そしてユウナの質問に答える。結果、猫も少女も見た覚えは無かった。

 

「ユウナ。君が探しているのは猫なのか?」

 

「えっと、猫の様なそうで無い様な……取り敢えずアルみたいな雰囲気の小さい子で、髪は白い子よ。何と無くすぐに見れば分かると思う」

 

「私が小さいかはさておき、他に思い当たる所があるのでは?」

 

「うん。行政区の方だから範囲外かも知れませんけど、良いですか?」

 

「あぁ、例え猫だとしても大事な家族だ。せめて顔ぐらいは見せてやらないとな」

 

 ユウナのした質問に気になった様で質問されれば、頬を掻きながら答え難そうにするユウナ。すぐに有耶無耶にしながらも説明すれば、少々冷たげに続けられた後に見透かす様にまた質問される。ユウナはそれに頷きながらも許可を貰う為に話しかければ、優しい笑みと共に許しを得た。ユウナ以外の全員も少しだけ気になっているのだ、ユウナが一瞬崩れそうになる程に会いたいと思っている人物がどんな存在なのかを。

 

 西通りから中央広場へ。そして行政区へと向かった一同がユウナによる先導の元に辿り着いたのは、市立図書館であった。何故ここなのかと質問されれば、探している相手の好きな事が読書で普段から此処によく来ていた事を説明したユウナ。中へと入り、未だに変わらない受付の人に話しかけたユウナは懐かしがられながらもハクが来ていないかを質問する。名前は知らない筈の為、前に自分と一緒に来ていた少女と言えばそれだけで受付の人には伝わった。そして答えられる。『2階に居る』と。

 

 それを聞いた時、ユウナは公共の場であるにも関わらず思わず走り出していた。仲間達が驚きながらも追い始めるのを後ろに、階段を駆け上がって2階へ。周りを見渡した時、2階で唯一建物左側に並んで存在する座席に座って本を捲るハクの姿があった。

 

「あ、あぁ……ハク……」

 

「?……ユウナ?」

 

「ハク!」

 

 仲間達が2階にたどり着くと同時にユウナはハクに話しかけた。ユウナの存在に気づいたハクは首を傾げながら目の前で立つユウナに視線を向け、静かにその名前を呼ぶと同時に問答無用で飛び込まれる。ユウナ程では無くともそこそこに大きなハクの胸に顔を埋めて離さないとばかりに抱きつくユウナを前に、ハクは少々困惑しながらもその頭を撫で続けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユウナの一時的な帰郷は第Ⅱ分校のカリキュラムの中で行われた事であり、ユウナが寝泊りを実家で過ごすことは出来ない。当然ハクを連れて行くことも不可能であり、そんな同日の夜。ユウナは恐ろしく残酷な現実を知る事となった。

 

 トールズ第Ⅱ分校専用車、デアフリンガー号。その4号車の一室にて、ユウナは知ってしまった現実を前に塞ぎ込んでしまっていた。2人の仲間達は何とか立ち直って貰う為、立ち上がって貰う為に話しかけ続ける。しかし今現在ユウナにその声が届く事は無かった。今まで抱えていた不満等が大きく弾け、誰の言葉にも耳を貸さなくなってしまったユウナ。余りにも酷い姿に一度視線を反らしながら、まずはどうにか話を聞いて貰える様にしなければいけないと思った2人。やがて考え続けていた時、昨日の記憶の中にそれを可能に出来そうな人物が思い浮かぶ。同時に思いついたのか、お互いに頷いた後にまずはクロスベルの中に入る為に行動を始めた2人。ユウナは唯1人、光を失った瞳で壁を見つめ続ける。

 

 結局外に出る事は叶わず、結果的に仲間達がユウナを救えるかも知れない相手を探すことは出来なかった。しかしユウナの家族に連絡を取る事は可能であり、ユウナを一時的に家へ帰す事で話は進み始める。今のままでは自分の事すらもままならず、慣れ親しんだ家でなら少しは元の彼女に戻るかも知れないと小さな期待を込めて。……そしてユウナは仲間達に連れられて、クロスベルに存在するアパルトメント『ベルハイム』の自宅を訪れた。何も言わずに唯優しく迎える母親と、姉の力無き姿に心配する弟妹達。ユウナは仲間達に返事を返すことは無かったが、弟妹達の心配には弱々しく「大丈夫だよ」と安心させる様に答えて自らの部屋へと吸い込まれる様に入って行ってしまう。明らかに大丈夫では無いその姿と、まだ完全には信頼されていないと言う事実に悔しく思う仲間達。母親が気に掛けて話し掛ける中、ユウナは部屋のベッドで倒れる様に横になった。

 

「特務支援課は、何時でも潰せる……? 何なの……何なのよ……。私の知ってるクロスベルは、もう……無いの……?」

 

 特務支援課と言う存在と出会い、それを目標としたユウナに取って昨日の夜に告げられた言葉は何よりも辛いものであった。街の中に住むだけじゃ分からない、外から見た事で知った故郷(クロスベル)の現状。心に罅が入ったと言っても過言では無い彼女に立ち上がる力はもう残っていなかった。手を伸ばした仲間達の声も聞こえず、唯絶望し続けるユウナ。自暴自棄にすらなり掛けていた彼女の傍に、やがて全てを曝け出す事の出来る存在が現れる。表情は変わらず、だが『心配』とでも書いているかの様な瞳を向ける少女の姿。既にユウナの家に仲間達は居らず、母親は弟妹達に1人にしてあげる様に告げていた為に部屋を訪れる者は居ない。ほぼ無意識に近い形でユウナは手を伸ばすと、その身体を弱い力で引き込んだ。

 

「私……もう、駄目かも知れない」

 

「……」

 

「特務支援課に憧れて、軍警学校に入って……帝国に行くことになっても、絶対に負けたく無くて……だけど」

 

 普段のユウナではきっと考えられない小さな弱音。だがそれは膨れ上がる様に言葉となり、徐々にその声の中に涙が混じり始める。この世界の住人ですら無いハクに、故郷を滅茶苦茶にされる辛さは分からない。だが目の前に存在する今の飼い主が苦しむ姿を黙って見ている事も出来ず、掛けられる言葉も見つからないが為に行ったのはその涙を受け止める事であった。自らの小さな身体でユウナを頭を抱きしめ、告げる。

 

「……我慢……しなくて、良い」

 

 その言葉を最後に我慢を止めたユウナは涙が枯れるまで泣き始めた。聞こえて来るユウナの声に弟妹達は再び心配そうに母親へ視線を向け、中で起きている事を全て理解しているかの様に首を横に振ってそっとして置く様に母親は告げる。長い時間を掛けて泣き続けたユウナはやがて目元を擦りながら顔を上げると、濡れてしまったハクのワンピースを見ながらもお礼を言った。

 

「ありがとう、ハク」

 

「ん……」

 

「御免ね、不甲斐ない飼い主で」

 

「……平気。……ユウナで、良かった」

 

「! ……そっか。ねぇ、ハク。1つだけ、お願いしても良い?」

 

 まだ元気が出たとは決して言えないが、それでも少しだけ取り戻した力。目の前で無表情に自分を見つめる姿にユウナはその頭を撫でながら謝った時、帰って来た言葉に衝撃に近いものを受ける。そして目を合わせ乍ら弱った心を奮い立たせ、告げる。それはユウナの中で賭けに近いものであった。罅の入った心がハクの返答次第では完全に砕けるかも知れないと、自分自身で理解しながら……それでもユウナは言葉を続けた。

 

「私、諦めたく無い。だけど、今のままじゃ立てないから……私を、支えて欲しいの。私の、特別になって欲しいの」

 

「……特……別?」

 

 それは告白と言っても間違い無いものであった。ハクは目を見開きながら言われた言葉を繰り返し、その姿に一瞬不安そうにしながらもユウナはハクの身体を抱きしめる。そして驚きまだ理解出来ていない様子のハクに理解してもらう為、勇気を持って行動する。引き寄せた身体を抱き、撫でていた手をそのままに近づける顔。そして行われた行為を前に、ハクは完全に理解した。

 

「んっ……こういう事!」

 

 それからユウナの部屋は物音1つ立てる事は無かった。だが母親が心配そうに見守り続けるその扉が開いた時、出て来たその姿は誰もが知る元気な少女であった。

 

 

 

 

 

 再び立ち上がったユウナは仲間達と合流。協力し合い、無事に目的を達成する。様々な謎を残しながらも一時的な帰郷は終了。弟妹達がお別れを告げに来る中、ユウナは優しく2人を抱きしめ返した。……そしてデアフリンガー号はトールズ第Ⅱ分校に向けて動き始め、ユウナは4号車の自分が眠る席に座りながら満面の笑みを浮かべ続ける。その理由は誰が見ても明白であった。

 

「本当に連れて来たんですね」

 

「当然! もうずっと一緒に居るつもりだから! ね?」

 

『……』

 

 ユウナの膝の上に乗る1匹の猫……ハクを見ながら話し掛けられたユウナは笑顔のまま答え、撫でる度に感じる毛並みを堪能しながらも同意を求めた。猫の姿であったハクは特に返事をする事も出来ず少しだけ明後日の方向を見て何処か諦めた様な仕草をし、その姿に見ていた仲間である少女はその猫が結構な苦労人であると理解した。

 

 本来、学生が自分の家からペットを連れて来るなど言語道断である。だがユウナを立ち上がらせたのはハクと言う存在であり、それを仲間達や教官は知っていた。そして何より、止めるべき教官の傍にはセリーヌと言う喋る事の出来る1匹の猫が存在した。友人から預けられた存在であり、正しくユウナと同じ様に連れて帰ろうとしている猫。訳ありなのは間違い無く、ユウナはハクの存在を自分の大きな支えであると説明して自分もまた訳ありである事を必死に伝えた。普通の猫と一緒にされて少しだけ不機嫌そうに話したセリーヌだが、傍に居た生徒の1人に撫でられて猫の様に鳴く姿にそれ以上何かを言う者は誰も居なかった。が、それでも中々許しを貰えなかった事にユウナは不満げにした後に奥の手を使う。それは、ハクの正体を晒す事であった。

 

 仲間達はずっと疑問に思っていた。ハクと呼ばれた存在を市立図書館で見ており、ユウナが連れて来た猫もまたハクと呼ばれている事に。だからこそ、ハクが人の姿になった事には驚かずにはいられなかった。そしてユウナは主張する。普通と違う猫だからこそ、自分の元に居て貰うと。それは自分の支えであると同時に、その猫を守るためでもあると。猫から変わった人の姿にユウナの支えである事は良く理解出来た仲間達。長い話し合いの後、多少強引ではあるが、ユウナはハクを身近に置いても良いという事になった。一度弱ったユウナを知っているが為に、元の彼女に戻した存在を蔑ろにも出来なかったのである。

 

 無事に帰宅したユウナはハクの場所を作る為にその日は真っ直ぐ寮へと戻る。既にハクが同じ部屋で過ごす事に同室の仲間である少女とは話を付けており、寝る場所はユウナのベッド。ハクの服はユウナの道具の中に一緒にする事で準備は完了する。そもそもハクは家具などを持って来る訳でも無い為、生活の必需品さえあれば問題無かったのだ。そしてその日から、街の中や第Ⅱ分校の何処かにハクの姿が見られる様になるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部活でテニスをやっているユウナは雨が降るグラウンドを前に同じテニス部であるゼシカ、ルイゼの2人と話をする。普段ならネットを出して着替えた後に行うが、天候の為その日は中止。放課後は自由となり、ユウナは真っ直ぐに寮へと帰宅した。外で活動している部活はテニス部と園芸部のみであり、園芸部は基本雨の日でも傘を差して作業をしている。故に部活が休みになったのはテニス部だけであり、寮の中に人の姿は少なかった。

 

「ただいま。ハク?」

 

「……お帰り」

 

 自分の部屋に入ると同時にハクが居るかを確認したユウナ。現在ハクはユウナのベッドに足だけ外に出して座り、『陽溜まりのアニエス』と書かれた表紙の本を読んでいる最中であった。帰って来たユウナの姿に本を閉じずに視線を向けて迎えたハクは、再び本に視線を戻して読書を再開。既に長い付き合いであるユウナにとっては当たり前の事であり、だがクロスベルでの一件で特別な関係になったにしては変わらぬ現状に不満を抱いた。

 

「今日は雨で部活は中止。アルは水泳部だから中止にならないと思うし、しばらく2人っきりね」

 

「……そう」

 

 言葉の真意に気付く事無く唯返事をするハク。その姿にユウナは肩を落とした後、1人覚悟を決めてハクの横に座り込む。開いたページに並ぶ文字列を一度覗き込み、その身体を抱きしめればハクは本からユウナへ視線を再び向ける。

 

「……ユウナ?」

 

「一応、さ? 私達、特別な関係になった訳で……その……し、したいの! そんな感じの事!」

 

 顔を真っ赤にしながらも告げるユウナの言葉に流石にどんな事と聞くのは野暮であった。ハクはユウナの言葉にしばらく黙り続けるが、やがて読んでいた本に用意していた栞を挟むとユウナの手を一度退けてベッドの上に横になる。既にこうなる事は予想していた為に、覚悟は当に出来ていたのだ。驚く様子も無く受け入れる様な体勢へと自然に移行したハクの姿に思わず呆気に取られたユウナだが、次に自分がするべき事を考えて生唾を飲む。

 

「えっと、して良い……のね?」

 

「……ん」

 

 恐る恐ると言った様に確認すれば、目を閉じて微かに頷き乍ら肯定するハク。ユウナはハクの横に座り込むと、身を乗り出してゆっくりとハクの上へ被さり始める。余りにも呆気なく出来る事に戸惑い、いざ本番になると何をして良いのか分からず困惑するユウナ。とりあえず触って見ようとその頬に触れて優しく撫でれば、人の姿をしていながらも猫の様に微かな声をハクは漏らした。そしてその一瞬の出来事がユウナを切り替えさせる。

 

「ハク。脱がすから手を上げて」

 

 ハクは言われた通り両手を上げる。するとユウナは太腿の下側辺りまで降りていたワンピースの生地を掴み、ゆっくりと持ちあげ始めた。まず最初に晒されたのは秘部を守る下着。次に白い柔肌の中に臍を見せ、膨らみを覆う下着を最後にハクの顔が一時隠れてしまう。だがすぐに両手を通して完全に脱がせてしまえば、自由になった両手で胸元や下着を無意識に隠し始めたハク。その仕草がユウナには妖艶に見え、まず最初に肩を優しく撫で始めた。それだけで擽ったそうに少しだけハクが身を捩れば、その姿にユウナは微笑みを浮かべて触るのではなくまず最初にハクの身体を目一杯抱きしめた。

 

「っ……ユウナ?」

 

「ハクの身体、暖かい。私、昔からこの温もりが好きだった。だから今、こうして私の腕の中にハクが居てくれる事が凄く嬉しいの」

 

 両腕も一緒に抱きしめられている為、抱きしめ返すことも出来ずにユウナの言葉をハクは聞き続けた。やがてユウナはハクから離れた後、制服を脱いでYシャツ姿になると、上のボタンから順番に両手で外し始める。身体は今現在もハクに被さったまま、上半身だけを浮かせてそれをするユウナの姿。制服越しにも見えていた女性特有の大きな膨らみが重力に従って落ちたままその姿を見せ、やがてハクと同じ様な姿になったユウナはハクの身体に再び身体をくっ付けた。

 

「流石に布団被っちゃうと暑いから、このまましよっか?」

 

「……」

 

「アルも皆も部活は夕方まですると思うし、早々気付かれる事も無い。それじゃあ、始めるわよ!」

 

 まだ本格的には始まっていないながらもこれから本番に入ろうとしている為、その頬は先程以上に赤く染まり続けるユウナ。もう暖かくなり始めた気候の中、布団を被りながら行為に及べば恐ろしい暑さになる為にユウナは布団をベッドの端に移動させる。もしもの際にはそれに隠れる事も可能だが、誰にも気付かれないとユウナは自信がある様であった。ハクはその言葉に少し間を置いて頷き、ユウナはそれを合図にハクに抱き着いたままその横へ身体を倒してお互いに向き合ったままベッドに倒れる。ユウナの前にはハクとその背後にあるもう1つのベッドが、ハクの前にはユウナとその背後にある壁がその視界に映り込んだ。

 

 何を言うでも無くユウナは顔を動かすと、ハクの唇をそのまま奪った。抱きしめていた手も動き始め、ハクの背中にあった下着のホックに手を掛けると慣れた手つきでそれを外す。

 

「んっ、ハクも、はむっ……外して」

 

 キスを続け乍らユウナが言えば、ハクはユウナの背中に手を回して同じ様に下着のホックにその指を掛ける。そしてそれを外した時、ハクよりも大きなその胸の影響で下着の布地は下敷きにされた部分をそのままに手前へ弾かれる様に倒れる。曝け出された片胸。ユウナはハクの下着を自分と同じ様に落とすと、同じ様に曝け出された胸へ手を伸ばす。その際、外す時同様にハクへ自分の胸を触る様に告げて。

 

「んっ!」

 

「ふっ、ぁ!」

 

 ベッドの上で上半身を完全に晒した2人がお互いの胸へ手を伸ばすと、同時に優しく撫でる様に愛撫を始める。それだけで高ぶりは増し、ユウナは無意識にハクとの距離を縮めてその肌の感触を求め始めた。手を入れる隙間を無くし、お互いの胸が触れ合えば気付かぬ内に固くなった先がお互いの胸を刺激する。何度か痺れる様な快感を味わった後、息を切らしながらユウナはようやくキスを中断した。

 

「はぁ……はぁ……これ、すごっ、い」

 

 狙わずして感じた快感にユウナは頬を上気させ、今度は狙う様に胸をハクの胸へと当て始めた。固く尖った突起が何処を刺激するのかはお互いに分からず、不規則に感じる痺れる様な快感が病みつきとでも言うかの様に繰り返す。やがてお互いの突起が同時に触れあった時、激しい快感と共にユウナはその動きを止めた。同じ刺激を感じていたが為に、微かに息を荒げて溶けそうな目をするハク。早々見る事の出来ないその姿にユウナは疲れで弱まるどころか、更に興奮してしまった。そしてふと、自分の太腿が濡れている事に気付いて下を見ればお互いにその下着に染みを作り始めていた事に気付く。ユウナの中で次にする事が決定した瞬間だった。

 

「下も脱がすからね。大丈夫、私も脱ぐから安心して?」

 

「……関係な、んんっ!」

 

 ユウナはハクの下着を脱がす為にその手を伸ばす。ユウナが一緒に脱ぐ事に安心出来る要素は余り無く、それを言おうとしたハクは下着が剥がれるその感触に最後まで続ける事が出来なかった。ユウナも先程の刺激で濡れ始めているが、人一倍感度の高いハクはそれ以上の愛液でその下着を濡らしていたのだ。重さすら感じる下着を片手を伸ばして脱がそうとするユウナだが、その膝辺りで手は届かなくなってしまう。先程の刺激で起き上がるのは気が引け、ユウナはやがて完全に脱がすのを諦めてそのままにする事で納得した。膝まで下着を降ろされている姿は、それはそれで来るものがあるのだ。ユウナはそのまま自分の下着にも手を掛け、今度はスムーズに脱ぐとハクに再び向き直る。

 

 既に濡れているハクの秘部は指で触れただけで水音が微かに聞こえる程であった。そしてユウナもそれに近い状態であり、優しく指で触れるだけで弾むハクの姿に嬉しく思うと同時に自分も気持ちよくなりたいとユウナは思う。そして目に映ったのは、ハクの白く細い足だった。ユウナはスタイルが非常に良い。身体だけで見ても胸は勿論、足や太腿等も彼女が持つ魅力の1つだろう。軍警学校にいた際にも胸や足に視線を向けられた記憶があったユウナ。そこでユウナはハクの足元に膝を降ろすと下着を足の下敷きにしてハクの秘部へその太腿を宛がった。そして自らの秘部はハクの足に触れさせ、乗ってしまえば折れても可笑しく無い故にその体重はハクの足を挟んで外に出ている片膝に掛ける。

 

「少し刺激が強いかも知れないけど……えい!」

 

「! ぅあぁ!」

 

「んっ! 良い、感じ……!」

 

 不安そうにしながらも止める気の無かったユウナはハクの頭の左右に手を突いて四つん這いの体勢になり、秘部に宛がった太腿を浮かせると同時に揺らして刺激を与え始めた。本来は足の裏で行われる電気あんまと呼ばれる行為だが、ユウナの魅力的な太腿は十分にそれ以上の快感を与えていた。胸が擦れるのとは比較にならない程の激しい快感は当然ハクの身体を動かし、自らも動いてハクの足に擦りつけるユウナの秘部へ更なる快感を齎す。ハクにそのつもりは無くとも、快感から逃げようとする身体がユウナを感じさせていた。

 

「あ、あぁ! 激、しい……! 壊、れ……る……!」

 

「もう少し! んんっ! もう少し、だからぁ!」

 

 普段は聞けない乱れ喘ぐ姿を前にもう止まる事の出来ないユウナは更に早く、更に激しく太腿を揺らした。強くすればする程にハクの乱れる姿は大きくなり、足が震える為に自分へ帰って来る快感も大きくなる。既に何かにしがみ付かなくては可笑しくなるとばかりに目の前で四つん這いになるユウナの首へ両手を掛けて痛い程に締め付けるハクだが、ユウナはその痛みすらも快感に近い感覚で感じていた。そしてハクが強く目を瞑って一瞬、ハクの身体が跳ね上がると同時にユウナの太腿は大量に水気を帯びる。そして跳ね上がった身体がユウナの秘部を同じ様に刺激し、ユウナもまた身体を落としてハクを抱きしめながら駆け巡る快感を受け入れると同時に身体を何度か痙攣させた。無事にお互い、絶頂を迎えた証拠である。

 

「ふぅ……さ、流石にやり過ぎたかも。ハク、大丈夫?」

 

「はぁ……はぁ……もう……駄、目」

 

 額から流れる汗を拭う余裕すら無く、何とか全体重が掛からない様にしてハクの真横に倒れたユウナ。心配する様にハクへ話しかければ、息も絶え絶えに天井を見上げて呟くその姿にユウナは少しだけ反省する。だがそれと同時に疲労困憊にも関わらず、ユウナの中には更に攻めて見たいという欲求が浮かび上がった。今まで何も出来なかった思いが大きく膨れ上がり、ユウナは1人頷いて先程同様にハクの上へ。目を丸くするその姿を前に、笑顔を見せた。

 

「もう1回……行くわよ!」

 

 その後、ハクが気絶するその瞬間までユウナはハクを攻め続けた。そしてその日以降、雨の日は毎日ハクと【特別な】時間を過ごす事を決めたユウナであった。




常時掲載

【Fantia】にも過去作を含めた作品を公開中。
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