その少女は抜け殻の様に病院の一室で座ったまま、虚空を見つめていた。
この世界に存在する危険な荒魂。それを倒す事の出来る唯一の力を持つ刀を使う少女達。まだ中学生にもなっていない抜け殻の様な少女も、その1人だった。
少女は天才だった。神童と呼ばれる程に。しかし病を患い、真面に刀を握って戦場へ出る事が出来なくなってしまった。彼女を愛していた母親はショックで倒れてしまい、同じく愛していた父親も母親の心を支える為に時間を使い、少女自身は孤立してしまう。
毎日現れる看護師や医師によって体調を管理されつつ、少女は毎日を何も出来ないまま過ごし続ける。
やがて彼女の元に現れる存在が彼女を再び輝かせる。それがこの世界の正史。しかしそんな彼女の元に。彼女の病室に突如として現れた光輝く扉がその運命を違う方へと導き始める。
「……ぇ」
抜け殻の様になっていた少女といえど、目の前に輝く扉が現れれば驚きもするだろう。新手の荒魂が出現したのかと一瞬戦慄するも、生きているのかも分からない日々を送る少女は自分に訪れるかも知れない危機を葛藤も無く受け入れる気になっていた。
『……』
「……」
そして1人と1匹は邂逅する。扉から出て来た小さな羽の生えた白猫。その真っ赤な瞳が部屋を見回した後に少女を捉え、驚いた様に目を見開いた。全て少女に見られていたのだと気付いたのだ。そして少女の服装からここが病院である事を理解して、一瞬その身体がふらついた。それが何を意味するのか、猫は知っている。
荒魂でも無い猫が現れた事実に驚く少女を尻目に、猫は少女のベッドへ近づき始める。既に猫は見られてしまっている事を理解していた為、開き直っていた。そして、少女の目の前で身体が一瞬光り始め、その姿を人へと変える。
「っ!」
「……自由に、動きたい? 病気……治したい?」
「!?」
まずは人に成った事への動揺。続けて言われた言葉への反応。少女は声に出せないまま、それでも心から願う様に頷いた。
その日、その時間。少女の病室は輝かしい光に包まれる。やがて残っていたのは、床に落ちる無数の羽根。その翌日、少女の体調を確認しに来た医師と看護師は驚愕しながら彼女を両親を呼ぶ。『病気が治っている』と告げて。
しばらく動いていなかった少女は身体を元に戻す為、リハビリから始める必要があった。だがまだ身体が出来上がっていなかった年齢だった事もあり、成長過程でその身体能力はぐんぐんと回復と強化をされていく。一月もすれば、少女は入院する前の様に神童と言われる能力を取り戻していた。
「だから、今日が退院なんだって!」
「……そう」
医師も看護師も両親だって居ない病室で、少女は椅子に座る自分より小さな子供に嬉しそうな笑顔を向けて話をする。
「ぜ~んぶハクのお蔭! ありがとう!」
「……ん。良かった」
「うーん。でも納得いかなーい! だって、ハクが私の病気を治してくれたのに、なんであの医者が直した事になっちゃうの?」
「仕方ない……。誰も、知らないから」
頬を膨らませて『不満です』とでも言いたげな表情を浮かべる少女の姿にハクは安心する。嘗て抜け殻だった様な姿が嘘の様に年相応の様子を取り戻した少女。退院するともなれば、完全に治ったと見なされたのだろう。様子を見る為に通院はあるかもしれないが、ハク自身は自身の能力が効いた事を感じていたので心配していなかった。
「ねぇ、パパとママにやっぱり話したい」
「……」
「信じてくれないかもしれないけど、ハクの事を知って欲しい。それに、知ってくれたら一緒に過ごせるかもしれないもん」
少女はハクの存在を未だに誰にも話していない。それはハク自身が止めた事であり、ありえない事を起こした存在が果たして人の目にどう映るのか理解しての事であった。だが少女自身はハクの存在を自分の周りに居る人間へ周知させたがっている。そして全てを受け入れた両親がハクを引き取る事も希望であった。
「ここに用は無いって言ってたじゃん。でも私の傍に居てくれるって事は、私を助けに来たんでしょ?」
「少し、違う」
「じゃあ少しはそうなんだ! だったらもっと一緒に居ようよ! 私と一緒に!」
「……結芽」
少女、燕 結芽は自分の病気を治してくれたハクに恩を感じていた。だがそれ以上に出会ってから毎日の様に過ごす同年代かそれ以下のハクを気に入っていた。学校などで育む友情と違い、病院という余り同年代の居ない場所で自分を治してくれた少女。特別な存在と認識するのも無理は無い。
結芽はハクを退院時に連れて帰りたいと思っている。誰か来る度にベッドの下へ隠れてやり過ごし、お世辞にも美味しいとは言えない病院食を分け合う。それがハクの居場所の無さを物語っており、自分が居なくなった後にどうするか全く分からない。……もう二度と会えないかも知れない。結芽はそれが嫌だった。
「もうハクが嫌って言ってもパパとママに話すから! 絶対に認めさせてあげる!」
「……」
結果から記せば、結芽の目的は無事に達成された。彼女の両親は結芽の語る『自分の病気を治してくれた猫』の話を受け入れたのだ。
果たして彼女の語った内容を全て信じたのかは分からない。だが愛する娘が溺愛する様に自分の腕の中に抱きしめて必死に語る姿を前に、その猫を引き剥がす事がどれ程結芽を悲しませる事になるのか……何より長い入院期間を頑張って乗り越え、嘗ての笑顔を取り戻しながらした我儘を、彼女を愛する両親が受け入れない筈が無かった。
ハクは燕家のペットといった立ち位置になる。だがそれは表向きであり、唯の猫で無い事も結芽がその時に明かした事で実際は結芽の妹の様な立場となった。娘を救ってくれた恩人としてハクは受け入れられ、結芽は楽し気にハクと開いた時間は殆ど一緒に過ごす。……それは何時までも、変わらなかった。
「ハク~!」
『っ!』
燕家。結芽の自室で猫の姿に成りながら、窓際で陽の光に当たって気持ち良くなっていたハクはノックも無しに扉を開け放って入って来るランドセル姿の結芽に逃げる間も無く捕まった。ノックをしないのは自室なのだから当たり前であり、彼女の動きは天才と言われる程なのだから仕方が無い。
「……うーん?」
『?』
「ねぇハク、人に成って!」
『……』
ハクは言われるがまま、結芽の腕から離れて人の姿に変わる。真っ白なワンピースに下着は上下共に水玉。他に纏った物は無く、結芽はそんなハクの姿を前に頭を悩ませながら何度かその周囲を回り始める。
「……なに?」
「うーん、うーん……ねぇ。ハクって、えっちした事ある?」
「!?」
余りにも突拍子の無い言葉にハクは驚かずに居られない。そんな彼女を尻目に、結芽はランドセルを机に置いて物を出し始める。……その中にあった時間割表。この日、最後に行われた授業は『保健体育』だった。
燕 結芽は良くも悪くも純粋な少女だ。一度死ぬかもしれない経験をした事で、その恐怖を知っている彼女はそこから自分を救ってくれたハクの事が大好きだった。
何時までもハクと一緒に居たい。何時かその思いが変わるかもしれないとしても、今の彼女はそれが本心だった。だからこそ、好きな人とする行為を学校で初めて学んだ時。彼女は率先して行動に移そうとする。脇目も振らずに自宅へ帰り、ハクの元へ直行。そこで、自分は無くともハクには経験があるのか気になり……今に至る。
「えっちって男子とするんだって。でも同性愛? っていうのもあるんでしょ? 私、ハクの事大好きだからそれだと思うんだ」
「……」
「でもどうやって女の子同士でするんだろう? 授業だと男子との方法しか教えてくれなかったからな~。あんなの、私もハクも生えて無いもんね!」
「……」
止まらない結芽の言葉にハクは何と答えるべきか迷い続ける。だが結芽は止まらない。彼女なりに方法を考えて、それだと思えば即実行。……ハクは意図も簡単に結芽に押し倒されていた。
「取り敢えず、チューしよう!」
「結芽……んっ!」
結芽は心から信じていた。自分がハクを好きな様に、ハクも自分の事が大好きな筈だと。決してそれは間違いでは無かったが、その結果結芽はハクの同意を得ぬままにキスをする。余りに突然の事で身体を揺すって結芽を自分から押し退けようとするハクだが、そんな身体を押さえ込む様に結芽に腕を掴まれて床に押し付けられる。普段から荒魂と戦う為に鍛えている彼女の細腕から想像出来ない力に、ハクは何も出来なかった。そして、何よりも……。
「ん、ちゅ……はぁ、はぁ……あは♪ 美味しい~! はむっ」
「んぁ! はぁ、むっ……んんっ!」
初めてのキスとは思えないハクの口内を味わう様な結芽の舌使いに、その身体からは徐々に力が抜けていってしまう。刀を使う腕が神童と呼ばれる様に、その行為に対しての才能もあるのか……恐らく、ハクが快感に弱過ぎるだけである。
何度も響き渡る2人の口付けが齎す水の音と、荒い呼吸。やがて満足した様に結芽が顔を上げた時、既にハクは僅かに身体を痙攣させて微かに頬を染めながら弱々しい目で結芽を見つめていた。そんなハクの姿に結芽はゾクゾクとした不思議な感情に支配される。
「あっはは……もっと、とろっとろにしてあげる♪」
結芽が普段寝るベッドはハクも一緒になって寝る場所であり、だが今この時ハクは下着姿で仰向けに転がり、その上に結芽が裸で覆い被さっていた。
結芽の性知識はまだ浅い。だがキスの様に、裸でお互いを触り合う事がえっちの内容である事は子供ながらに分かっていた。特に胸を触る事がえっちである事も。
「も~みもみ! 凄ーい! ハクのおっぱい、柔らか~い!」
「んっ、ぁ!」
下着越しにハクの胸を左右同時に揉みながら、その感触に楽しそうな声を上げる結芽。そんな彼女を見上げながら、ハクは声を抑える様に自分の腕を口元に当てていた。
「不思議だなぁ。だって、私のおっぱいとかクラスメイトのおっぱいとか、全く興味無いんだもん。なのに、ハクは別。もっと触りたいし、ペロペロしてみたい。はむっ」
「ひぁ!」
結芽の手によってブラが上にずらされ、露わになった乳房の先端へ結芽は被りついた。噛まずに舌で舐め回す行為は必然的に先端を刺激して、ハクの声には甘いものがより混じる。それを聞いて気を良くした結芽は更に何度も、何度も繰り返し刺激を与え続けた。
ハクの身体が一際大きく震え始める。それが絶頂へ至った証である事を結芽は知らず、だが刺激を止めてハクを見下ろし始めた。絶頂の余韻で虚空を見つめたまま動けないハクの姿を見て、彼女はふと足元に水気を感じた事で下を見る。
「あ~! ハク、おもらししちゃったの?」
「っ! 違、う……」
「えぇ~、でもここビショビショ。って、あれ? 私も同じ場所が濡れてる?」
「これ、は……」
「ん? ハクは何か知ってるの? 教えて教えて!」
「こ……れ、は……」
あくまでも純粋な質問なのだろう。だがそれを答えるのは非常に恥ずかしい事であり、ハクは言い淀んでしまう。しかし結芽はまるで逃がさないとばかりにハクの答えを待ち続けており、黙っている訳にもいかない状況だった。故にハクは結芽からの無意識な恥辱を受けながら、口を開き始める。
「……愛、液」
「愛液? おしっこじゃないんだ。確かに透明だし、何かヌルヌルするよね。でも、どうしてハクは愛液を流してるの? もしかして、普段から出てるの?」
「違う……愛液、は…………」
「?」
「……気持ち、良いと……出て、来る」
「……へぇ~」
ハクの言葉を聞いて結芽は暫しの沈黙を経て、笑みを浮かべる。それはニヤリといった音の似合う笑みだった。
結芽は徐に片手をハクの股間へ近づけ始めた。愛液に濡れた下着は色を変えており、熱気が微かに放たれている。そこへ結芽はゆっくりと更に手を近づけると、濡れた下着越しにハクの秘部を弄り始めた。
「ふぁ!」
「あは♪ やっぱり、ここを触ると気持ち良いんだ」
結芽は下着越しに指先を使って秘部の入り口をなぞる様に擦り始める。今までにない程に身体を震わせるハクだが、片手を結芽に掴まれて快感から離れる事も出来なかった。そして、ハクは結芽と目が合う。結芽はハクの大事な部分を擦りながら、ジッと厭らしい笑みを浮かべてハクの姿を見続けていた。
「ぃ、や……見ない、で……っ!」
「なんで? 今のハク、すっごく可愛いのに。何時もと違って、凄い顔が蕩けてるよ」
「んぁ! 結、芽……!」
「ハク、またチューしよう? もっと、私とえっちな事しようよ」
そう言って顔を近づける結芽を前に、ハクは応じる様に自らも唇を近づけた。それは羞恥心から解放されるためだったのか、結芽とした先程キスの心地良さを感じたかったからなのか……どちらにしろ、ハクは既に結芽へ完全に心を許していた。
舌を絡め合うだけで口の中から走る優しい快感がハクの身体を刺激する。
秘部を擦る行為によって強い快感がハクの身体を刺激する。
結芽と求め合う事実がハクの心を刺激する。
彼女が再び絶頂するのはとても容易な事だった。
「んっ、ぁ、~~~~~っ!」
キスをしながらハクの震えを全身で感じた結芽は、それが絶頂であると知らないままにハクが気持ち良くなった事を悟った。そして同時に思う。自分も同じ様にその部分を擦れば、気持ち良くなれるのだろうか? と。それを考えた時、結芽は悩むよりも先に行動し始めていた。
「うわっ、重……愛液って凄い出るんだね」
ハクの濡れて重くなった下着を剥ぎ取り、露わになった秘部に結芽は自分の同じ場所を宛がい始める。既に微かだった結芽の愛液も擦り合うには十分な程に濡れており、宛がうだけで水音が部屋の中に響き渡る。
「んぁ、あはっ。ゾクってきたぁ!」
「結、芽……は、むっ!」
「ハクっ!」
お互いに求め合う様にキスを始めると、身体を抱き合い、宛がわれた秘部が擦れ始める。主に結芽がハクの身体を強く抱いて身体を擦りつけており、ハクは弱々しい力でキスを求めて舌を伸ばし続ける。まだ一度も性的な快感を真面に感じた事の無かった結芽の身体はハク同様に敏感であり、彼女も時間を掛けずして絶頂へ近づいて行った。
「ん、あっ! なんか、来ちゃうっ!」
「イ、ク……っ!」
「イクって、言うの? ふぁ! 私、も……イクっ!」
「結、芽……キス、して……!」
「うん! ……~~~~~っ!」
絶頂の間際、ハクの懇願を受け入れてキスをした結芽。その口から与えられた快感の刺激が引き金となり、2人は同時に絶頂を迎える。
「……ぁ……」
初めての絶頂を経験した結芽は余韻から放心状態になり、ハクの上に半身を乗せながら完全に倒れ込んでしまう。ハクも放心したまま、2人は荒い呼吸を互いに感じ合い続けていた。が、やがて我に返った結芽がハクの身体から降りて添い寝し合う様な体勢になる。
「はぁ……はぁ……凄かったぁ。ねぇ、またシようよ」
「……偶に、なら」
「あは♪ 約束だよ! ……ふぁ。何か、眠くなって来ちゃった。このまま少し寝ちゃお~」
「……宿題」
「今すぐは、無理……夕ご飯、食べて……から…………すぅ、すぅ」
「……」
例え戦い慣れた身体だとしても、初めての絶頂に対する疲労は大きかったのだろう。そのまま眠ってしまう結芽の姿を前に、ハクも意識が遠退きそうになる。
現在互いに裸でベッドの上に転がっており、このまま寝てしまえば結芽の母親が夕ご飯だと知らせに来るまで寝てしまう事だろう。それを考えたハクは残り微かな意識の中、ベッドの隅に追いやられていた掛け布団をお互いの身体に被せて隠し……倒れる様に眠りへと落ちた。