「聖女様、そろそろそいつを解放しても良いと思いますけど?」
「ふふ……はぁ……ふふふ」
『……』
現在その場所には2人の女性と1匹の猫の姿があった。膝に白い翼猫を乗せてその毛並みを撫で、微笑んでは熱い吐息を吐いてまた微笑む……を延々と繰り返し続ける女性、ジャンヌ・ダルク。そしてそんな彼女の姿に額へ青筋を浮かべて苛々した様子で告げるのはジャンヌ・オルタ。髪色や目の色、雰囲気は違えど姿形の似た2人の関係については各々調べて欲しい。
様々な世界を渡って来たハクにとって、今の世界は非常に危険な事が多い場所であった。何度命の危険に晒されたかも分からない。しかしその度にマスターと呼ばれる少女や彼女を助けるサーヴァントと呼ばれる存在達に救われ、また自分も力を使って助ける事を繰り返した。……その末にハクを待っていたのは数え切れない程の存在と、その存在1人1人に生じた欲望を満たす使命。途方も無い時間が掛かると理解しながらも、ハクはそれを果たす為に日々を送っていた。
「あぁ、どうして貴女はこんなにも愛らしいのでしょうか?」
「お~い、セイジョサマ~? 人の話は聞いた方が良いですよー」
「はぁ……」
「良いかしら? もう良いわよね? 燃やしても」
自分を撫で続けるジャンヌにオルタの声は届かず、苛々が増した事で身体を震わせ始めるその姿にハクが必死で首を横に振って宥めようとする。すると突然2人と1匹が居た部屋の扉がノックされ、オルタとハクは同時に扉へ視線を向けた。やって来たのは2人のマスター兼ハクの保護者でもある、藤丸 立香。彼女の用事はオルタの方であり、内容を聞いた彼女はだらしない顔をしたジャンヌと彼女の膝に半ば囚われていると言っても過言では無いハクを見た後に立香と共に部屋を後にしてしまう。その時、一瞬見られたハクは彼女から目で『後は任せたわよ』と言われた気がして肩を落とした。
「……? あの子は何処に行ったのでしょう?」
『……』
しばらくの時間を置いて、愛でる行為を止めたジャンヌはようやくオルタが何処にもいない事に気が付いた。彼女が使っていたティーカップ等はあるが、本人の姿は無い。そんな状況に首を傾げるジャンヌの姿を見て、ハクは猫のまま目を細めるとその膝から降りて人の姿へと変わり始めた。
「……立香と……行った」
「何時の間に……夢中になり過ぎてしまいましたね」
「……疲れた」
オルタが部屋から出た事を伝え、反省するジャンヌの姿を眺めながらハクは自分用に用意された少々背の高い椅子に座るとテーブルに置かれていたお菓子を手に取る。元々ハクが2人としていたのは所謂ティータイムであり、その途中でジャンヌに猫の姿になって撫でさせて欲しいと言われた為になったのが囚われる切っ掛けであった。故にハクはもう今日はならないと心に決めて、冷めてしまった紅茶に口を付ける。
「あの……差し出がましいのは重々承知しているのですが、もう1つお願いを聞いては貰えないでしょうか?」
「……何?」
膝元に手を合わせて擦り合わせながら不安そうに口を開いたジャンヌの姿にハクはティーカップを置いて視線を向ける。恥ずかしそうに、言い難そうに時間を掛けた後に意を決した様子で顔を上げたジャンヌは椅子から立ち上がるとハクの両手を掴んで告げる。
「わ、私とキスして下さいませんか!?」
「……キス?」
マスターである藤丸 立香がサーヴァント達と過ごす場所、カルデア。そこでは今、一部のサーヴァント達にある話題が持ち切りとなっていた。
『マスターとハクが一線を超えたらしい』
サーヴァント達の殆どがマスターを自分の主として相応しい、素晴らしい人間であると感じている。時折人か疑う行動や力を見せるが、それでも命を掛けるに値する存在であると。だがそんな彼女への思いとはまた別に、彼女の周りに居る存在へ各々が何かを感じるのは当然の事。立香の傍には基本2匹の小動物と彼女を補佐する少女がおり、その内の1匹はハクである。そしてハクは自分の使命を果たす為に、絆を深めようとする立香と共に色々なサーヴァントと時間を過ごす事が多かった。
ジャンヌ・ダルクはある日、その噂を耳にした。彼女は立香の事を尊敬しているし、信頼もしている。だからその噂を聞いた時、彼女はショックを感じる事は無かった。寧ろ立香の幸せと共にハクの幸せを心の底から願った。……願った筈だった。
『ちょっと聖女様? 何て顔してるのよ?』
それは今日、オルタと鉢合わせになった時に突然言われた言葉だった。自分ではどんな顔をしているか等分からず、彼女の言葉に首を傾げたジャンヌ。溜息をつかれ、あっと言う間に彼女に寄ってセッティングされたティータイムに呼ばれたジャンヌはそこでハクと出会う。それは約1週間ぶりの再会であった。
『そう言えばあんた、あいつとしたらしいわね』
『……』
オルタはジャンヌが聞ける状態でハクへ話し掛ける。驚きながらも返答を待つ彼女にハクが見せたのは……肯定。ジャンヌはそれを見て頭が真っ白になった様な気がして固まるが、続け様にオルタはハクへある質問をした。
『終わった後、何か言われたんじゃないの? 例えば……他の奴ともして良い、とか?』
『……ん……言われた』
『……ぇ……』
それは思いもしなかった質問と回答。オルタは何となく分かっていた様で、『やっぱりね』と1人納得した様に呟いていた。立香は確かにハクと飼い主や友達、家族とも違う一線を超えた。だが自分以外にもハクに何かを抱く者達を知っていた彼女は所謂1人占めをしようとは思わなかったのだ。故にもし自分以外にも自分の様に想う者が現れた時、受け入れて上げて欲しい。そうハクに伝えていた。
全ての話を聞き、ジャンヌは心の底から安心すると共に初めて自分がハクと立香の関係に祝福する感情とは別の何かを抱いていた事に気付いた。そしてその理由を考えれば、彼女は理解する。立香が言う、他にハクを想う存在。その1人が自分であると。……それに気付いてから、彼女の行動は早かった。ハクにお願いをして自らの膝に彼女を招き、猫の姿を堪能。周りも見えぬ程に楽しんだ後、他に誰もいないこの場所で彼女は更なるお願いをした。
時は戻り、ハクはジャンヌからのお願いに首を傾げた。それがどんな物であるのか分からない程、経験は浅く無い。故にジャンヌが立香の言う存在である可能性を考えた時、それを裏付ける様に彼女は言い切った。
「私、ジャンヌ・ダルクは貴女を……ハクを、お慕いしています」
「もし嫌なら、私を拒絶しても構いません」
ジャンヌはそう言うと、掴んでいたハクの手を離して今度はその身体を抱きしめる。そして容易く抱え上げると、部屋にあったベッドへ向かい始めた。彼女の言う通りにハクが拒否と捉えられる行動をすれば、彼女は今からしようとしている事を止めるだろう。だがハクは運ばれる間、唯ジッとジャンヌの腕の中に収まり続けていた。それは受け入れようとする心の現れであり、ジャンヌは優しくベッドへハクを座らせると同時にその唇を奪った。
「んっ、ぁ……はぁ……甘い、ですね」
「……お菓子」
ジャンヌはハクとのキスに得も言われぬ甘さを感じる。それを聞いたハクはつい先程までお菓子を食べていた事を思い出し、テーブルに乗ったお菓子へ視線を向け乍ら告げた。ジャンヌはそれに納得した様に微笑んで、キスして尚逃げないハクの姿に確信する。『彼女は私を受け入れてくれる』と。
もう1度唇を近づけたジャンヌはそのままハクの身体を自らの身体で押して仰向けに寝かせ、再びキスをすると同時にハクの衣類へ手を伸ばし始めた。ジャンヌを始め、ハクとの付き合いが長いサーヴァント達は何人も居る。それ故なのか、見慣れたハクの服を前にジャンヌはそれをどうすれば脱がす事が出来るのかを理解していた。徐々に薄着になり、やがて何も纏わぬ姿となったハクは両手で胸と下を隠しながら見下げるジャンヌを見つめる。それがジャンヌにはとても官能的に見えて、内側から込み上げる劣情を溢れさせない様に必死で留め続けるので精一杯だった。
「落ち着いて、ゆっくりと……焦っては駄目です」
気を抜けば容赦無く襲い掛かってしまいそうで、ジャンヌは深呼吸を数回行ってから自分も衣類を脱いでハクの肩へ触れ始める。人肌の暖かさとこそばゆさに僅か乍ら反応を示す幼い少女。ジャンヌは優しく微笑んで、その身体を上だけ起こすと自分の身体へ寄り掛からせる様に座らせる。そして後ろから胸を隠す手を掴んで退かせると、出来るだけ優しくを心がけ乍らその乳房へ手を伸ばす。
「んっ……」
まるでふにょんとでも言うかの様に柔らかく指を受け入れる乳房の感触に、突く度に微かな声を漏らすハクの姿にジャンヌは内側から震える。はしたなくむしゃぶりつきたいとすら思いながら、それでは自分だけが満たされると浮かんだ誘惑を振り払う様に頭を振ったジャンヌは考えた末に妥協する。
「耳にしましょう。はむっ」
「ひっ!? んっんぁ!」
乳房に手を添えたままその柔らかさを堪能し、それと同時にジャンヌは視界に映っていた小さな耳を舐める。生暖かく滑る下に舐められ、思わず声を上げ乍ら前屈みになるハクの身体に乳房へ添えていた手が挟まれた事でジャンヌは思わぬ幸福感を感じ乍ら舌を動かし続ける。十分にはしたない行為だが、夢中になってしまっているジャンヌがそれに気付く事は無い。そして注意する者もいない為、彼女がそれを止める事は無かった。
少しの間、耳を舐め続けていたジャンヌは徐に乳房に触れていた片手を下へ。快感に悶えていた事で隠す様に押さえる事をしていなかったハクのそこは意図も容易くジャンヌの手を受け入れた。既に濡れ始めていた為、入り口を撫でるだけで背筋に走るゾワゾワとした感覚と快感にハクは身体を震わせる。
「安心してください。優しくしますから」
「……ん……」
「ふふ」
ここまで来て尚、受け入れる姿を嬉しく思いながらジャンヌはゆっくりとハクの
「んっ……ぁあ! ジャン、ヌ……!」
「大丈夫です。大丈夫ですよ。力を抜いて下さい」
顔半分で振り返りながら蕩けた様な瞳で名前を呼ぶハクの姿に内心で悶え乍ら、ジャンヌは攻めを続ける。気付けば挿入し始めていた指は第2関節辺りまで入っており、もう少しで根元まで入り切る事だろう。どうせなら最後まで。そんな事を思いながら入れ続けていた時、ジャンヌの腕の中でハクが一際大きく震えた。強く指が締め付けられ、揺れる頭に耳を舐める事も中断。やがて力無く自らの身体へ寄り掛かるその姿を前にジャンヌは理解する。
「絶頂、したんですね」
「はぁ……はぁ……」
「そうですか。私の手で……一度、抜きますよ」
ジャンヌはそう言ってハクの膣内から入れていた指をなるべく刺激が無い様に気を付け乍ら抜いた。そして力無く寄り掛かるハクをベッドへ寝かせると、その横に添い寝する様に横になったジャンヌが潰さない様に配慮しながらもハクの身体へ覆い被さった。仰向けでも形の崩れないハクの乳房にジャンヌは自分の胸を当てて、足の間に膝を入れながらその身体を全身で感じ始める。
「あぁ……ハク。ハク!」
「んっ……ジャンヌ……」
上で動くジャンヌの呼び声へ答える様に、ハクはその名を呼んで両腕を子供が抱擁を要求する様に。または母が子供を迎える様に広げた。ジャンヌはそれへ飛びつく様にハクの身体を抱きしめると、三度キスをし乍ら身体を前屈みになる様に縮める。それは丁度キスをし乍ら自らの秘部とハクの秘部が同じ高さになる様にする為の行為だった。過去に恋をした事も無いジャンヌにとって、その場所から受ける快感は未知のもの。恐怖と期待を半々に、ジャンヌはハクと自分を触れ合わせた。
「んっ!」
「あっ!」
同時に漏らした声を互いの口で塞ぎながら、ジャンヌは徐々に戸惑い無く擦り合わせる行為……貝合わせを激しくし始める。嘗て聖女と呼ばれた彼女は今、1人の幼い少女との行為に誰がどう見ても溺れていた。
「来ますっ! ハクも、一緒に……一緒にイってくださいっ!!」
「ひっ、あっ! ジャン、ヌ……っ! イ、クっ!」
互いに両手の指を絡め合いながら繋いだまま、同時に絶頂を迎える。ハクは唯只管身体を震わせ、ジャンヌは彼女の上で大きく身体を反らせて。そのまま倒れれば身長差故にハクへ胸を押し付ける事になるだろう。それもまた良いと思いながらも、顔を見たかった彼女は絶頂の余韻に力の入らない身体を強引に動かしてハクの隣に倒れ込む。何度かの絶頂を迎えたハクは力の無い目で、自分の隣で横になるジャンヌを見つめる。結果、2人は互いに見つめ合った。そして何も言わずに数秒して、ジャンヌはハクに四度目のキスをする。
「ぁ……もう、こんな時間なんですね」
「……」
気付けば行為を始めてから数時間が経過していた。未だに立香と部屋を後にしたオルタの姿は無く、ジャンヌはそろそろ潮時だと考えて身体を起こした。互いに汗と唾液と愛液に塗れており、流石にお風呂へ入らなければ匂ってしまうだろう。……そこでジャンヌは気付いた。
「シャワーを借りるとしても、ベッドのシーツやこの匂いはどうにかしないと行けませんね」
「……だね」
元々ハクとジャンヌがこの部屋に居た理由はオルタにティータイムと称して呼ばれたから。つまりこの部屋はジャンヌの部屋でもハクの部屋でも無く、オルタの部屋だったのだ。全く違う人物の部屋でしてしまった事に今更ながら気付いたジャンヌは証拠隠滅をする様に行動を開始する。当然シャワーもハクと2人で浴びる事にし、そこでもう1度互いに絶頂を迎えたのは余談である。
「それじゃあ、私は部屋に戻りますね。ハクはどうしますか?」
「……オルタ……待ってる」
「分かりました。……また、して下さいますか?」
「……したいなら……良い」
「! その時はお願いします。それでは、おやすみなさい」
嬉しそうに微笑んで部屋を後にしたジャンヌを見送り、ハクはこの部屋の主を待ち続ける。実はジャンヌが必死にベッドのシーツや部屋の匂いをどうにかしようとしていた時、ハクも協力はしていたが彼女程必死では無かった。何故ならそれは……。
「やっと終わったみたいね」
「ん……お疲れ」
「私よりあんたの方が疲れてそうだけど……まぁ良いわ」
部屋に戻って来たジャンヌ・ダルク・オルタ。彼女は既にこの部屋で何が起きていたか知っていたからである。そして彼女が知っている事をハクは知っていた。そう、全ては彼女によって仕組まれた事であった。
「これであの辛気臭い顔を見なくて済むと思うと清々するわね」
「……素直じゃ無い」
「聞こえてるわよ。誰が素直じゃないですって?」
「……心配なら……言えば良い」
立香とハクの噂が原因でジャンヌの元気が無くなった事を知り、彼女が仕組んだ内容。それはハクと立香の約束を知らせると同時にハクと関係を持つ様に場の御膳立てを済ませて置いた事であった。思惑通りジャンヌは思いを告げてハクと関係を持ち、清々しい顔で部屋を後にした。オルタの計画通りであり、これにて一件落着……。
「はぁ……疲れてるだろうから今日はしないで上げるつもりだったけど、気が変わった」
「!?」
「イかせまくってやるわ。覚悟しなさい」
とはいかなかった。ジャンヌの件は確かに一件落着したが、ハクは自らの言葉によって彼女に火を付けてしまった事を悟る。実は既に彼女とした過去があるハク。それは最初半ば無理矢理でもあったが、今ではジャンヌの様に望まれればする関係性であった。ジャンヌよりも荒々しく、シーツの変えられたベッドへ放られたハクは彼女に一瞬で距離を詰められて悟る。今日の彼女は激しくなると。