黒舘 ハルナにはお気に入りの食事がある。それは食べる物に拘ったモノでもなく、サービスが最高に行き届いたモノでもない。普段の彼女ならば、そんな不満を感じるであろう場所など即座に消し去ってしまうべきと判断するだろう。しかし彼女がそんな不十分な食事を気に入っている理由はただ一つ。
「美味しく出来たかな?」
「ふふ、えぇ。勿論ですわ」
カナデという名の少女自体がハルナにとってのお気に入りだったから。
その美しさと育ちの良さから、黒舘 ハルナがお嬢様として生まれて来たのは誰にでも分かる。そんな彼女の周りに集まる者にどんな存在が多いのか、想像するのは難くない。聡明だった彼女は相手の悪意や思惑に気付く事も多く、中々心を許せる相手は多くなかった。
『これ、食べる?』
『えっ?』
そんな彼女に悪意も思惑も全くない、純粋な優しさを示しながらアイスを差し出したのが幼い頃のカナデだった。純粋だったモノが、何かの拍子に染まってしまう事もあった。だからこそ、最初はそんなカナデでも警戒していたハルナ。突き放す様にしながらも、その表情はカナデにとって暗いものに見えたのだろう。だからこそ、カナデはそれを見過ごせなかった。
『美味しいものは誰かと一緒に食べると、もっと美味しいんだよ。だから、私と一緒に食べよ? 美味しいものを食べたら、きっと貴女も笑えるから!』
ハルナはそう言って渡されたアイスの味を忘れた事がない。美食研究会の会長として活動する今でも、その味は彼女にとって正しく思い出の味だった。そしてそれを作り出したのはアイスを作った人でもなく、それを共に食したカナデの存在が大きかったと確信していた。
サービスが行き届いた店でも、料理の腕がプロ並みでもない。作っているのは純粋無垢な信じられる大切な友達。それだけで、ハルナにとってその料理は特別な味になる。美味しい料理は沢山ある。サービスで気分を満たす料理も。だが自分の心までもを満たす料理を作れるのはカナデだけだった。つまり分かり易く表現すれば……ハルナの胃袋はカナデに掴まれてしまったのである。
「それでは、いただきます」
「いただきます!」
美食研究会での活動を終えて、ハルナは当たり前の様にカナデの元へとやって来た。一日一食、カナデの食事を必ず食べる様にしてたハルナ。踏み台を使って一生懸命に作るその姿を愛らしく見つめながら、嬉しそうに出して来る食事を口に含む。良い店には分かり易く味が劣っていて、あくまでも民家の一室なので清掃もそれなり。だが満たされる何かがハルナを幸せにする。
「あぁ、とても尊くて、幸せな……」
「はむっ。むぐむぐ、ゴクッ。美味しい?」
「当然ですわ。貴女と一緒に食しているのですから」
「えへへ」
実際には存在しない筈の調味料、『愛情』と『誰かと共に食事を取る』という行為で増す美味しさをハルナは幾度となく味わってきた。だが美食研究会の仲間や自分の周りに居るカナデ以外の存在だと、こうはいかない事も。
「きっと、貴女だから。私の大切な、貴女だから」
「んー?」
小さな呟きはカナデに届きはしない。元々ハルナの口から思わず漏れ出た言葉であって、聞かせるつもりは本人に一切無かった。
ハルナは改めて口に入れたモノを味わう。カナデと共に食べれる食事の美味しさを、何時までもこうして居たいと思う幸せを噛み締めながら。
毎日の様にハルナへ食事を振る舞うカナデは、普段何も考えずに作っている訳ではない。自分自身が美味しさの一部になっている事等知りもしない彼女は、もっと美味しくハルナにご飯を食べてもらいたい一心で料理を勉強していた。だがそんなことは今までもやって来た事。美味しさの追求だけでは駄目だと調べる中で、カナデはある話を聞いてしまう。
「好きな人とえっちな事をするのは、幸せな事?」
どこで聞いてしまったのか。そんな事を知ってしまったカナデは決める。ハルナが幸せになってくれるのなら、えっちな事をしようと。
「ハルナ! えっちしよ!」
「…………はい?」
カナデの元へたい焼きをお土産に持って来たハルナは、先に銜えていたそれを思わず落として聞き返してしまう。流石美食研究会の会長を務めるだけあり、落としたたい焼きは床へ落ちる前に袋の上で回収しながら。
「えっちをするとね、幸せになれるんだって!」
「か、カナデさん? 念のためお聞きしますが、えっちとは何か分かっていますか?」
「? ……??? えっちって、何をすればいいんだろう? 好きな人とすれば、幸せになれるって聞いたんだけど」
「えぇそうです。好きな人と……!!!???」
えっちの意味を理解出来ていない事に気付いて色々な意味で安心したのもつかの間、カナデの言った言葉にハルナは再び動揺してしまう。ハルナにとってカナデが特別に大事な存在である事は言わずもがな。だがそれがカナデにとって自分も同じな可能性を知ってしまったのだ。両想いの可能性がある事に驚きながらも、ハルナは一度自分で自分を落ち着かせる。
「(もしかすると、友達としてって事も……きっとそうですわ)」
「良いですか、カナデさん。えっちとは本当に好きな相手と、全てを許し合える様な相手とするとても特別な行為なのですわ」
「? なら、ハルナだよ?」
「……」
「えっちって、何すれば良いの? ハルナは知ってる?」
「え、えぇ。知識だけなら、ある程度ですけれど」
「じゃあ教えて! 一緒にしようよ!」
それを説明するのはうら若き乙女に酷な事。何とかしなければいけないと思う反面、ハルナは今の状況に少し期待を抱き始めてしまう。お互いが両思いなのなら、しても良いのでは? と。好きな相手とする行為なら、何も問題はないのかもしれないと。
「本当に、後悔しませんわね?」
「
「分かりました。そこまで仰るのなら、私も覚悟を決めますわ」
一度芽生えた感情はもう、ハルナにも抑えられなかった。カナデとえっちな事をすると決めれば、その心は急かし始める。それを表情には出さない様にしつつ、優雅にお土産のたい焼きを置いて……カナデを横抱きに抱える。
「へ?」
「ベッドへ参りましょう。とても激しくなりますわ」
カナデは知る事になる。えっちの意味を、ハルナとの関係が友達を超える瞬間を。
ベッドへ連れて来られるや否や、カナデは服を脱がされる。急な事に驚き戸惑いながらも、カナデは決してハルナに抵抗しなかった。好きな人と行う行為である事は忘れておらず、それがどんな事なのかを分からない今。彼女に全てを任せようと思ったのだろう。
「触りますわよ」
「う、うん」
だが知識は無くとも羞恥心はある。誰かに触られる事ない身体を、その乳房を触れられてカナデは頬を赤く染める。普段は見ないその顔にハルナは思わず息を呑んだ。天真爛漫な姿が一転して見せる恥ずかしがる表情に、ハルナの加虐心が煽られる。
「顔を上げてください」
「こ、こう? はむっ!?」
「ん、ちゅ……ふふ。これがキス、ですわ」
「キス……ねぇ、ハルナ」
「おかわり、ですわね」
カナデにとっても、ハルナにとってもそれは初めてのキス。その感触を知ったカナデは恥ずかしそうに言おうとして、それを察したハルナが唇に人差し指を当てる。そしてもう一度二人が唇を重ねれば、ハルナが今度は舌を入れて更に深いモノに種類を変えた。突然の事に戸惑い、背筋を伸ばして口内に入って来る舌の感触に驚きながらも、カナデはそれをゆっくりと受け入れる。
「は、むっ。じゅる……
「う、ん……ちゅ、んぶっ。
口内を掻き回されると同時に、思考までもを掻き回されている様な錯覚に陥りながら、それでもカナデはハルナを求めて言われた通り自ら舌を絡めに行く。そこへ追撃を仕掛ける様に、ハルナの手がカナデの乳首に触れる。キスが引き金となってしっかりカナデも興奮し始めているのか、少し固くなった乳首は摘み易くなっていた。
「んふぁ!」
「んふ……ふぅ。気持ち良いですか?」
「分かん、ない……ひぁ!」
ハルナはキスを止めて、カナデの反応をしっかり見ながら指先で刺激を与え続ける。痛くしない様に気を付けながらも、執拗に指先で乳首を捏ね続けるだけで分かり易い反応を見せるカナデの姿にハルナ自身も着々と昂っていた。
「ふふ。あら? もう、染みが」
「ふぇ? お、お漏らし……?」
「違いますわ。これはカナデさんが
ゲヘナ学園の一般生徒が着ている制服。ハルナの傍で過ごしているカナデも当然ゲヘナであり、その制服はゲヘナの物。そんな彼女のスカートを不意に捲り上げたハルナは、真っ白なカナデの
「ふぁ!!」
「ふふ。……さっきより、幸せにして差し上げますわ」
乳首に触れるよりも強く、明確な刺激が齎す快感にカナデは思わず大きな声を出してしまう。そんな姿を正面から抱きしめながら、ハルナは手を止めずに下着越しで指を揺らす。震える様に与えられる刺激と連動するかの様に、カナデの身体も震え続ける。
「ハル、ナぁ……なにか、来ちゃう……!」
「恐れる必要はありませんわ。それに身を委ねて、私の手で……っ!」
「ひっ、あ……ぅぅああぁぁぁぁ!!」
思わずハルナへしがみ付きながら、一際大きく身体を痙攣させるカナデの姿にハルナは絶頂したのだと確信する。好きな相手を気持ち良くさせる事が出来た事実に込み上げる感情を必死に抑えながら、ハルナはまだ終わる気がなかった。
「次は、私も幸せになる番ですわ」
「ぅ、ん。私、頑張るよ」
弱ったカナデは、それでも倒れはしない。初めての絶頂で飛びそうな意識を、何とか逃がさない様に必死で耐えていた。全てはハルナを幸せにするため。えっちな事が幸せになる方法であり、自分が幸せにされたのなら、今度はハルナが幸せになる番だと信じて疑っていないからである。
ハルナが着ていた服を脱いで裸になると、カナデの下着も脱がせた後にベッドの上で抱き合いながら転がる。そしてお互いに肌の感触を全身で感じ合ってから、ハルナはカナデを下にしてその片足を持ち上げた。子供の様な見た目で良く動いているカナデは関節が柔らかく、片足をそのままに持ち上げた事で大きく開脚した姿勢になる。そして持ち上げた足をハルナは自らの肩に乗せれば、自らを動かしてその秘部とカナデの秘部を合わせ始めた。
「んっ、凄い刺激ですわね」
「なに、するの?」
「とても幸せになれる事ですわ。変わらず私に身を委ねて、一緒に幸せになりましょうね」
「ハルナ……うん。一緒に幸せになろう」
「それでは……くっ、あっ! んんっ!」
カナデを刺激する間に自らも愛液を流していたハルナは、秘部を擦り合わせる事でお互いの愛液を混ぜ合いながら敏感の部分を刺激し合う。ハルナが腰を揺する様に動かすだけで擦れ合う秘部から響き渡る卑猥な音と、後頭部にまで電気が走り抜ける様な快感に身体へ入れていた力が弱まる。だが刺激とカナデを求める強い思いだけで、ハルナは自らを動かし続けた。
「はぁ、はぁ……んんっ!」
「あたま、おかしく、なっちゃうぅ……!」
「良いですわ、よっ! 幸せの絶頂とは、正しくそういうものですわ!」
刺激が刺激を求め続ける様に、ハルナの身体は止まらない。流れ出す愛液の量は徐々に増え、二人の太腿を伝ってベッドのシーツを濡らしてゆく。ベッドへ両腕を突いて身体を支えながら、刺激を続けるハルナの視界が快感で真っ白に染まり始めた時。カナデもまた同じ様にその時を迎えようとしていた。
「また、来ちゃう! ハルナぁ!」
「今度は、私も……カナデさんと、一緒に! イっクうぅぅっ!」
二人が大きく身体を仰け反らせる。二つの穴から愛液が多量に溢れてベッドが吸収出来る限界を超えても、二人は震えながら流し続けた。そしてしばらく震えた後、ハルナがカナデの片足を下すと同時にその身体へ覆い被さる様に倒れ込む。
「幸せに、なれた……?」
「……えぇ。……とっても」
「えへ、へ……良かっ、た」
その言葉を最後に目を閉じてしまうカナデ。やがて聞こえて来る穏やかな寝息は、二度の絶頂による疲労から完全に意識を失って眠った証拠だった。
ハルナは怠い身体を何とか動かし、カナデと添い寝する様な姿勢になる。足元の愛液に濡れたシーツが少々不快感を齎すが、それ以上の幸せな余韻が彼女の思考を包み込んでいた。そして眠るカナデの唇にキスを落とすと、その身体を抱いてゆっくりと目を閉じる。
お土産にハルナが買って来たリビングに置かれたままのたい焼きは、既に冷め切っていた。二人が目を覚ました時、初えっち後の怠さは一眠りした程度では抜けず、真面に料理は出来ないだろう。よってそれが彼女達のご飯代わりになるのは必然だった。
後日。
「ハルナ。また、幸せになろう?」
「ふふ。良いですわよ」