※この作品はR-18です。

愛され過ぎた少女達   作:ウルハーツ

207 / 222
※既読推奨
【スターレイル】 銀狼


【スターレイル】 ホタル

 銀狼に誘拐されて知らない場所で彼女とゲーム三昧の日々を送っていた久遠。外に出る事は出来ず、部屋の中での軟禁状態であるものの、久遠自身はそれを苦と感じてすらいなかった。大事な友達と一緒にゲームが出来るなら、それだけで彼女は満足していたのだ。

 

「あ、ドロップした。そっちは?」

 

「ん。これで素材、揃った」

 

 今日も今日とて久遠は生身でここを訪れた銀狼と共にゲームを協力プレイしていた。目当ての物が手に入って満足気な二人。同じベッドで仰向けになりながら、並んでゲームをする光景はまるで姉妹の様である。

 

「ん?」

 

「? 何かの、連絡?」

 

「みたい。ホタルからか……。まぁ、後でいいや」

 

「良いの?」

 

「大丈夫大丈夫。それより、次のクエストを始めよう」

 

 連絡を始めとした様々な事が出来る銀狼の端末。そこに届いたメッセージを持ち主である彼女は確認しようとすらしなかった。端末を目に映らないベッドの端へと放り、再びゲームを再開する姿に久遠は本人が言うならと同じ様に再開。それからしばらくの間、二人は遊び続けた。

 

 集中の糸が切れたのは数時間後。久遠はゲームを止めて一旦休憩する事にしたが、銀狼は遊び足りなかったのかゲームを続行。久遠がやらないならと、ベッドで横になったまま耳にヘッドホンを付けて更に深くゲームの世界へと潜り込んでしまう。

 

 

「!?」

 

 それは突然だった。久遠が居る部屋まで聞こえる謎のインターホン。しかしこの場所でインターホンが鳴ったのは初めての事でもあった。久遠は銀狼に連れて来られたこの家から外に出た事が無く、やって来るのは銀狼のみ。そんな銀狼は自分が用意した家だからか、いつの間にか居る事が殆どだった。出る時は久遠に一言告げるが、帰って来る時は何も言わずに現れるのだ。

 

 久遠はインターホンを聞いて銀狼へ視線を向ける。ヘッドホンを付けて世界に入ってしまっている彼女には聞こえていない様で、久遠は出るべきか悩み始めた。だがもう一度、更にもう一度とインターホンは鳴り止まない。留守と思って去るならそれでも良かったが、来訪者は一向に諦める様子が無かった。

 

「……」

 

「?」

 

 鳴り続けるインターホンにやがて久遠は立ち上がる。当然それに銀狼も気付きはするが、ヘッドホンをしたまま視線を向けた事でトイレだと勝手に察してしまった。久遠をここに連れてきて閉じ込めている事実は変わらないが、長い時間で彼女も油断してしまったのだろう。

 

 家にある玄関。久遠がそこから外へ出た事は無い。窓から見える景色は銀狼の手に寄って常に変わっており、実際にはどんな場所に居るのか知らずに居た。銀狼以外の誰かが外に居り、更に見た事のない外を見れるかもしれない事に不安と期待を同時に抱きながら、久遠はその玄関を開ける。

 

「あ、えっと……」

 

「……誰?」

 

 インターホンをまだ押そうとしていたのか、人差し指を壁に突き出した状態で空いた扉の隙間から久遠を見つめる少女。二人は目を合わせるが、久遠はそんな彼女の存在と後ろの景色を見つめる。不思議な事に、久遠は少女を見る事は出来たものの、その背景を判別する事が出来ずにいた。まるでゲームの中でバグが起きる様に、その光景を理解する事が出来ない。

 

「大丈夫?」

 

「……目が、変」

 

「……銀狼の仕業だね。家の中に入ろう」

 

「まだ、聞いてない。……誰?」

 

「私はホタル。銀狼の……仲間、かな」

 

 目がおかしくなりそうな状態からまずは復帰する為に、久遠はホタルと共に家の中へ戻る。そして少しずつ目の調子が戻るまで、久遠はホタルからここへ来た経緯などを聞く事にした。彼女は銀狼の関係者であり、連絡をしても返事すら返って来ない銀狼を探してここへやって来たのだ。

 

「ここに居るよね?」

 

「ん……ゲームしてる」

 

「はぁ、やっぱり。ごめんね。案内してもらえるかな?」

 

「……分かった」

 

 久遠はホタルを連れて、先程まで一緒に居た銀狼の居る部屋へと向かう。ノックもせずにその扉を開ければ、ベッドでうつ伏せになって肘を立てながら端末でゲームをする銀狼の後ろ姿が。気配で戻って来た事が分かったのか、「おかえりー」と寛ぎながら視線を向けずに返した銀狼だが、やがて気配が二つある事に気付いて振り返り……怒った様子のホタルと目が合った。

 

「え、何でいるの?」

 

「いくら連絡しても来ないから、迎えに来たの! 全く、メッセージは送ってたでしょ?」

 

「あ、うるさいからミュートにしてた。……これか」

 

 特に謝る事も無く、怒るホタルを前に銀郎は呑気にメッセージを確認する。それはホタルの言う通り呼び出しの内容であり、銀狼はため息をついて立ち上がった。

 

「仕方ない。久遠、行って来るね」

 

「ん……行ってらっしゃい」

 

「あ、突然ごめんね? お邪魔しました」

 

 ホタルと銀狼はそのまま家を出てしまい、一人になった久遠はまたゲームを始める。次に銀狼が来た時、ゲームの前に何を食べるか適当に考えながら……。

 

 

 

 

「前に来たから知ってると思うけど」

 

「ホタルだよ。その、よろしくね?」

 

「ん……ゲーム、する?」

 

「あ、うん。二人みたいに上手くないかもしれないけど」

 

「大丈夫。一緒に出来れば、大体楽しい」

 

「まぁ、それには同意かな。それにホタルは私とゲームした事あるから、言う程下手って訳じゃ無いと思うし」

 

 数日後。久遠は遊ぶ友達が銀狼以外に一人、増える事になった。それは以前、銀狼を訪ねて現れたホタルだ。彼女も銀狼程では無いにしても、ゲームを触った経験がある様子。そこで二人以上の複数人で遊べるゲームをやっていた銀狼は、どうせこの場所がバレてしまったのだからと開き直って彼女をこの空間へ招待したのだ。

 

 銀狼以外の存在が一緒に居る。それは久遠にとってとても新鮮な事だった。一緒に遊べる『友達』が増えるかもしれない事への期待もある。一方、ホタルも久遠の事は気になっていた。銀狼が時間あれば姿を消してここへ来ている事は知っており、その相手が久遠である事は言われずとも察しがつく。銀狼が囲い、閉じ込めて一緒に過ごそうとする相手は果たしてどんな存在なのかと。

 

 二人だけで遊んでいたゲームが三人で出来る様になれば、その内容も盛り上がりも全く違う。銀狼の言う通り、ホタルもそれなりにゲームをやって来た事もあってゲームは上手い方だった。

 

「ふぅ。そろそろ休憩しない?」

 

「もう疲れたの? 久遠は?」

 

「ん……お腹空いた」

 

「そうだね。この家に食べ物はあるの?」

 

「キッチンの冷蔵庫に食材も惣菜も適当に入ってるよ。じゃ、用意はよろしくー」

 

「……」

 

「あはは……」

 

 全く動く気のない銀狼の様子に苦笑いしたホタルは、何も言わずに立ち上がった久遠へついて行く。そしてキッチンの端にあった冷蔵庫を開けた久遠は中にある物を漁り始めた。

 

「君は、銀狼に攫われてここに来たんだよね?」

 

「ん」

 

「帰りたいとは、思わないの?」

 

「……思った事は、ある。でも……今のままで良い。友達が、居るから」

 

「……」

 

 友達。それが銀狼の事なのをホタルは聞かずとも分かる。そして同時に久遠が家族よりも友達(銀狼)を選んだ事で、元々の繋がりが薄かったのだと察してしまった。つまり久遠にとって、家族はそんなに大切じゃ無かったのだろう。ゲームで知り合い、ホログラムで顔を合わせた銀狼へホイホイとついて来てしまう程に。それは悲しく、危うい事。

 

「食べたい料理、ある?」

 

「え? もしかして、君が作るの?」

 

「簡単なのは、出来る。例えば……春巻き」

 

「春巻きって、もしかして包むところから?」

 

「? うん」

 

「それは簡単とは言わない気がするけど……手伝うね」

 

 久遠が取り出したのは春巻きを作る材料一式だった。皮で餡を包むところからであり、まずは中身の餡を作るところから始める必要がある。ホタルは久遠が本格的に料理を始めようとする姿に気合を入れて手伝う事にした。

 

 

 

 

 

 初めてホタルが家へやって来てから長い月日が経った。尚、久遠には朝と夜の概念は残っているものの、日の感覚は殆どなくなっている。

 

 銀狼に連れられて再び家へやって来てから、度々顔を出す様になったホタルは何度目かも分からない来訪をする。その日銀狼の姿は無く、ゲームをする久遠に声を掛けたホタルはそのまま久遠と二人で遊ぶ事に。

 

「せっかくだから、この二人プレイ専用のをやってみようよ」

 

「分かった。でもこれ……画面分割」

 

「うーん。あ、それじゃあ……ここにおいで」

 

「……」

 

 ホタルの提案で二人で遊ぶ専用のゲームをする事にした久遠。それは一つの画面を真ん中で分割する様なゲームであり、不便になるとただ教えるつもりで言った久遠だが、ホタルはそれを今のままではやり難いと勘違いする。そして何を思ったのか自分の足を真っ直ぐ伸ばしてからスカートの部分を軽く叩き、両手を広げながら迎える様な姿勢を取り始めた。久遠を膝の上へ座らせようと考えたのだ。

 

 久遠は銀狼よりも少し小さい。だが銀狼はホタルよりも更に小さく、久遠からすればホタルは体格的に大きな存在だった。彼女の思い通り、膝へ座ればきっと簡単に収まる事だろう。もしそれが何か下心のある行為なら、久遠は無視していた。しかしホタルの様子を見て久遠は分かる。彼女は純粋に、そうすれば見やすいと思ったのだろう。

 

「……ん」

 

「あ……ふふ。それじゃあ、始めよっか?」

 

 少しの間を置いて、久遠はホタルの膝上へ。久遠の暖かさを感じたホタルは嬉しそうにコントローラーを久遠の前で持ち直す。膝に座った久遠のお腹周りにコントローラーを持った両手を置き、久遠はそんなホタルの腕を肘掛けの様にして背中を彼女に預けながら膝上に両手を置き、正に密着した二人はその姿勢でゲームを始める。

 

 

「ふぅ。やっと来れた。久遠、ゲーム……あれ?」

 

 しばらくして現れた銀狼はゲーム画面を前に、重なった姿勢で互いの人肌に安心してしまったのか眠る久遠とホタルの姿を見つけるのだった。

 

 

 

 

 

「銀狼があの子に執着する理由、少し分かったよ」

 

「別に、執着はしてないけど」

 

「そうかな? 時間があれば、あの子のところへ行ってるでしょ? ……一緒に居ると、安心するんだ。癒されるって言った方が正しいかな」

 

「ふぅん」

 

「また、行っても良いよね?」

 

「勝手にすれば? ていうか、もう何度も来てるじゃん」

 

 




常時掲載

【Fantia】にも過去作を含めた作品を公開中。
没や話数のある新作等は、全話一括で読む事が出来ます。
https://fantia.jp/594910de58
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。