「はっ! せいっ!」
額に流れる汗を感じる。刃の柄を力強く握り、空を斬る。全てはマスターとなった1人の少女を守る為に。私は誰にも負ける訳にはいかない。
初めて対面した時、余りの幼さに私は驚いてしまった。だが人は見た目だけで判断出来ない。マスターとなるに足る人物なのか、願いを叶える為に背中を預けるに相応しい人物なのか、私は自身の目で見極める事にした。
彼女との時間を最初は退屈だと感じた。だが決して悪い気はせず、戦いとはとても程遠い時間。しかし彼女が望まずとも争いの火種はやって来る。
「はぁ! でやぁ!」
初めての戦いで見た彼女の戦闘は未熟の一言。私の力を引き出せる程の魔力も持たず、一時的に他人の力を頼っての戦いは素晴らしかったですが……長くは続かない。結局戦いは殆ど敗北に近い形で決着し、だがこうして無事に居られるのはその相手が彼女の事を知る女性だったから。
彼女は決して鍛錬を怠っていた訳では無かった。彼女なりの方法で自分の身を守ろうと剣を握る姿を見て、私は共に並んで強くなろうとした。
それから彼女の為に戦おうと思う様になり、彼女を守る為に剣を握ると私は決めた。願いは今も変わらない。だが彼女を守り切る事がそれに繋がると信じて。
「回避能力については申し分ないです」
「……ん。ありがとう」
私は剣を降ろす。今の今まで私の振るう剣を
「マスターは何を不安に感じているのですか?」
「!……分かる、の?」
「えぇ。何となくですけど」
「……貴女は、叶えたい望みがある」
「そうですね。その為の戦いですから」
「私が、消えたら……どうなる?」
「消える……?」
そして語られたのはマスターがこの世界の存在ではないと言う話。私も似た様な存在ですが、マスターの場合は数々の世界を巡るというもの。正直信じられない部分もある。ですが嘘をつく理由も無ければ、嘘でないと伝わって来る感情が私に
彼女は言う。この世界の使命は果たし終わったと。だからこそ、数日後にはこの世界から消えてしまうと。その時、彼女に召喚された私はどうなるのか……。そんな事、考えるまでも無い。
私は決めたのだ。マスターを守ると。共に戦い、共に過ごす中でマスターの存在は私の中で確実に大きくなっていった。願いを放棄する事はしない。だが今こうして彼女と共に居られる間は、彼女の傍に居続けたい。それが私の嘘偽りない想いだった。
「ついて行きますよ、何処までも。貴女は私のマスターですから」
世界を巡るというのは大変な事だと知った。私と出会うよりもずっと前から、マスターはそれを熟していた事も。時には迫られる事もあり、マスターは自ら身体を差し出す事は無かったが、求められてしまえば使命の為に断れないと言う。
「……今日も、ですか」
「ん……後、少し……だから」
相手の欲望を満たす為に、性欲を満たす為にマスターは求められれば応じるしかない。女性ばかりの世界では何度も迫られて疲弊する姿を私は見守る事しか出来ない。
「そこまでして、元の世界に帰りたいのですか?」
「……うん。私は、帰りたい。……貴女にも、見て欲しい、から……私の、世界を」
それが彼女の願いなら、私に止める事は難しい。ですがこんなに疲れ切った自分のマスターを前に何もしないで居られる程、薄情にもなれない。共に世界を渡る中で確かに出来た私達の絆が、私の心を締め付ける。
私はどうするべきなのか。彼女の為に私が出来る事は何か。また自分のマスターが身体を弄ばれると知って送り出さなければいけない。彼女の傍に居続けるという事がこんなにも辛い事だと、最初は思いもしなかった。
マスターを送り出した私は彼女とは別で時間を過ごす。そんなある日、私はある女性達の会話を耳にする。
『彼女、何処かへ行こうとしてるみたいよ』
『えぇ。逃げられない様に手は打ってあるわ』
『早いわね。でも、大事な事よ。……あの傍に居る騎士はどうするつもり?』
『問題無いわ。そっちも既に……。必ず、あの子は私達のモノにするのよ』
それはマスターを可愛がる者達の会話。しかしその内容は決して聞き流せるものでは無かった。
様々な世界があり、平和な世界もあれば危険な世界もある。この世界は比較的後者であり、彼女達がマスターに危害を加える事は間違いない。そしてその為に私に対して何かをしようとしている事も。
「させません。マスターは、私が守ります」
マスターが抱える願いを、あの女達は踏みにじろうとしている。私のマスターに危害を加えようとしている。なら、私がすべき事は1つだけ。
私は剣を抜いて、歩き出した。
「……ぇ……」
マスターが帰還する。その目は見開かれ、驚きを露わにしていた。
「な、に……してる、の?」
「貴女に害を成そうとした者達が居たので、始末しておきました」
血溜まりに沈む女達。私自身も返り血を浴びたせいで、汚れてしまっている事だろう。剣の先から滴る赤が床に落ちる中、私は改めて誓う為に剣を地面に突き刺して跪く。
「我が名はアルトリア・ペンドラゴン。私は貴女の剣となり、貴女を守ると誓います」
「ぁ……」
繋がりが強くなるのを感じる。それと同時に何かが弾ける様に壊れた感覚。やがてゆっくりと倒れ始めてしまったマスターの身体を受け止めて、私はこの場から立ち去る為に行動する。
それから私はマスターを追う様な人物が居ると予想して、匿う様に場所を転々とする。そして眠ってしまったマスターが次に目を覚ましたのは3日程経ってから。誰も居ない空き家でだった。
「……私は、もう……」
そして私は自分がした事で招いてしまった事実を知った。
マスターはもう、元の世界には戻れない。欲望を満たす対象が死んでしまった事で、使命を果たせなくなってしまった……と。あの時倒れてしまったのは使命から切り離された影響なのか、それはマスター自身も分かっていない様子。ですが、私は取り返しのつかない事をしてしまった。
「私のせい、なのですね……」
守りたかった。でも私のした行為がマスターを傷つける事になってしまった。もうマスターの傍に居る資格が、私には……。
「……ありがとう」
「ぇ……」
「私の、ため……分かってる、から……ありがとう」
「マスター」
「ごめん、ね……アルトリア」
「っ! マスター」
マスターは私の頬に手を当てて、そう告げる。自分の願いが適わないと分かっても、私を責めようとはしない。
共に居続けた時間が長いのも影響しているのか、そんなマスターが愛おしく感じて堪らない。私は自分よりも小さな身体を抱きしめて、今一度その存在を全身で感じる。……やっと、理解した。私がここまでマスターの為になりたいと思う理由が。
「好きです、マスター。……ハク」
「ん……私、も……」
両想い、だったんですね。
自然と求め合う様にした口付けはとても甘く、私はそのままハクと共に横になる。これから先、何があっても私は守り続ける。私の大事な、愛しい人を。
私達は追われる身となった。人の命を奪った騎士と、欲望の対象とされていたマスター。捕まれば最後、私達はきっと引き裂かれる事になる。
「……来て」
「はい。んっ」
だからこそ、私達は逃げ続ける。そしてその時が来ない様に願いながら、身体を重ねる。マスターの唇はとても柔らかくて、重ねる度に心の中が満たされている様に感じる。世界から逃げる事も出来ない以上、何時まで逃げ切る事が出来るのか……。例え追い詰められたとしても、私達は決して離れません。
『……もし、その時が来たら……』
『……分かりました』
マスターの言葉が頭の中に蘇る。そんな時は来ないで欲しいと願いながらも、必ずやって来る。その時、私は出来るのだろうか。マスターがサーヴァントである私に令呪を使って命令すれば、それも不可能では無い……でもそんな事、私は望まない。
「んっ、ぁ……」
「マスター」
「……名前で、呼んで……」
「っ! ハク……!」
唇を重ねる度に溢れる想い。マスター……ハクが受け入れている事もあり、私は思うままに手を伸ばす。彼女の着る服は何時でも綺麗で、でも彼女の意思で今は何も纏わぬ姿となっている。その胸にある確かな膨らみの感触。柔い肌の感触。聞こえる息遣い。私を見つめる真っ赤な瞳。そのどれもが、私を魅了する。
「触りますよ」
「ぅ、ん……っ!」
乳房に手を這わせて揉み始めると、可愛らしく身動ぎをしてハクは反応を示す。何度か身体を重ねた経験によって、彼女の弱点は既に把握出来ている。乳房を全体的に揉む様にして責めると同時に、乳首に指を伸ばして弾く様に弄る。それだけでハクの身体は跳ねる様な反応を見せた。
「ぁ! ひぁ!」
「可愛いですよ、ハク」
私もまた着ていた装いを外して生まれたままの姿となり、ハクの上へ覆い被さる。私よりも小さな身体は簡単に私の下敷きとなり、潰れない様に気を付けながら私は自分の胸とハクの胸を触れ合わせた。柔い肌の感触を胸で感じて、もどかしい快感が私の身体を走り抜けるのが分かる。
もう一度口付けをする。今度は身体を動かして胸を擦れる様に動かしながら。時折漏れるハクの吐息を全て私が受け入れて、反対に私が漏らした吐息もハクが飲み込む。お互いの全てを受け入れ、与える様なこの行為がとても幸せに感じる。
「ぁ……ここも、もう受け入れる準備が出来ている様ですね」
「っ! ……ん」
ハクと身体を擦れ合わせていた時、腹部に僅かながら感じる滑り。確認すれば、ハクの下腹部から流れる愛液が私の腹部を濡らしていた。もし私に
ゆっくりとそこへ手を伸ばす。暖かい空気がそこから感じられる中、指先を入り口に這わせる。跳ねる様な反応を見せるハクの身体を口付けと胸を使って押さえつける様にしながら、私は這わせた指を徐々に
「ひっ、ぁ……んっ!」
身体の中に私の指が入るのをしっかり感じているのだろう。ハクの目は見開かれると同時に頬が更に染まり、身体を震わせる。
「動かしますよ。存分に、乱れてください」
正直に言えば、私も我慢が出来なかった。ハクの身体を全身で感じて、大事な部分に指を入れて……優しく出来る程、理性は保てない。ハクの匂いや姿は魔性の媚薬であり、魅了の力があるのだろう。私は思うままに責めたい衝動に駆られ、ハクの身体を弄る為に指を動かす。
まずは入れた指を動かして膣壁を擦る様に時折指を曲げる。跳ねる身体を全身で押さえつけて胸を擦らせながら、今度は指を出し入れする。クチュクチュと聞こえる卑猥な水音とハクの喘ぎ声が聞こえる度、私は彼女を支配している様な気分になった。
「あ、あっ! 気持ち、良いっ……!」
「そう、ですか……っ! なら、もっと……気持ち良くしてあげますっ!」
最初は自分から快感を認める事に恥ずかしがっていたハク。だが何度も身体を重ね合わせる度、彼女は素直になっていった。今ではこうして快感に身を任せて全てを受け入れ、自分が感じている事も自ら認める様にまでなった。その事実が益々私を興奮させる。
指の動きが無意識に激しくなる。お互いを求める口付けも気付けば私がハクを貪る様なものへと変わる。間違い無く、私はもう彼女という存在に溺れてしまっている。ならハクも私に溺れて欲しいと思うのは自然な事だろう。私だけを見て、私だけの為に生きる。……そして、私と共に死ぬ。
「来、る……来ちゃ、う……っ!」
「良いですよ。イってください!」
「っ! ひっ、あぁぁぁぁ!」
ハクの絶頂。その声を聞いて動かしていた手が止まる。頭が一瞬真っ白になり、すぐに冷静になる事が出来た。私自身は絶頂をした訳では無いが、似た様な気分にはなれる。ハクを絶頂させた事実が私を満たすこの瞬間が、堪らなく好きだ。
『……』
「……どうやら、夢中になり過ぎたみたいですね」
落ち着いて来た瞬間、外に感じる人間の気配。それが私達に差し向けられた追手だと即座に分かる。出入り口に数人の気配が並んだ途端、強引に開かれたその場所から武装した女達が入り込んで来る。
「大人しく投降……ぇ?」
「無粋、ですね」
もう少し余韻を味わっていたかったと思うのは別に悪い事ではない。だからこそ、それを邪魔する女達が邪魔に感じる。乱れたハクの倒れた姿を見て呆気に取られているのは、彼女達がハクを知っているからなのだろう。それはハクも同じ筈だが、彼女は絶頂と共に意識を失っている。
醜い光景は今の内に終わらせるべきだ。
「っ!」
「遅い」
呆気に取られていた女が動くよりも早く、私は手に持った剣を振るう。そして多量の返り血を浴びながら、仲間の死に動揺する女達を……。
「ぅ、ん……? ここ、は?」
「おはようございます、ハク」
横抱きに抱えたハクが目を覚ます。穢れの無い私の顔を見て、安心した様に私へ身を預けるその姿はやはり愛らしい。
また安全にお互いを感じ合える場所を探して、私達はこの世界を旅する。
例え何時の日か私の剣がハクを斬る事になるとしても、その時までは愛し合い続けよう。
そして死んだ後も共に居られる事を、願おう。それが今の私の願いなのだから……。