新たなる世界へと渡ったハクが最初に姿を現したのは、とある学校の屋上であった。猫の姿のまま新しい景色を眺めていたハクは突然唯一あった扉が開いた事に驚き、振り返る。そこには1人の少女が立っており、彼女は何かを探している様子で屋上を回り……猫の姿だったハクを見つける。
「猫? ……妙な力を感じて来て見たけど、気の所為だったのかしら?」
徐に見つけた
「何でこんな場所に猫が居るの? 普通、屋上に迷い込む?」
『……』
普通の人であれば何も違和感を感じずに終わるだろう。だが聡明だった少女は猫が屋上に居るという事実に違和感を感じた。例え身体能力が高くとも、屋上まで跳躍して来れる猫など居ない。もし校舎の中に紛れ込んだとしても、必ず誰かに見られる事だろう。学校という空間で猫と触れ合える時は一般生徒達には特別な時間になるだろう。故に小さくとも騒ぎが起きる。しかし少女はそんな騒ぎを聞いた覚えが一切無かった。
「逃げようともしないし……考え過ぎかしら?」
野良猫なら普通は逃げる筈なのに、目の前に居る猫は捕まった上に何も抵抗しようとすらしない。その事実がまた少女に違和感を感じさせ、だが結局は確かめる手段も無い為に少女はハクを降ろした。と同時に校舎の中に響き渡る音楽。恐らくまだこれから授業があるのだろう。少女は猫をそのままに屋上を後にし、1人残ったハクは誰も居ない屋上で人の姿になる。
「……見つけた」
そう呟いたハクはもう1度新しい景色を眺める。降り立って数分、ハクは欲望を満たす対象を早々に見つけたのだった。
その日、授業を受けていた少女……遠坂 凛は休み時間に謎の力を感じて屋上へ向かった。だがそこに特別な物は何も無く、唯一あったのは迷い込んだらしい1匹の猫。理由は分からないが、何故か凛はその猫の事が気になって仕方が無かった。故に授業を終えた後、放課後を迎えた彼女は再び屋上へ赴く。何時までもそこに居る筈が無いと思いながらもその扉を開け、その先には最初と同じ様に1匹の猫が存在していた。
「貴女、まだ居たのね」
何故かその姿に凛は安心しながら、声を掛けて近づき始める。猫は凛の姿に逃げる事無くその場に座り続けるが、突然力無さげにその身体を横にした。……実はハク、この世界へ来る前に食事をしていなかった。新しい場所に到着してからも当然食事は出来ず、故に現在のハクは空腹状態。突然弱々しく倒れる姿に凛は慌てて駆け寄り、軽くその姿を見て状態を確認する。
「お腹が空いてるの?」
『……』
「!? 貴女、私の言葉が分かるの?」
凛の言葉に頷いて答えるハク。当然猫が言った言葉に肯定する等普通では無く、彼女は驚きながらも少し困った末に「少し待ってなさい」とだけ告げてその場を一時的に離れる。そして数分後、再び現れた彼女の手には牛乳と猫缶。ついでにおにぎりもあり、凛はハクに近づいてまず最初におにぎりの袋を開ける。そして中身を出して袋を残し、それを皿代わりに猫缶の中身を乗せた後に猫缶の中へ牛乳を入れた。器の無い状態で簡単に用意出来る方法はこれだけだったのだ。
「食べなさい」
『……』
「お腹、空いてるんでしょ?」
『……』
ハクは凛に用意された牛乳を飲み始めるが、猫缶へは口を付けない。そんな光景に凛が首を傾げる中、ハクはジッと凛の手元に視線を向ける。そこにあるのは先程猫缶の中身を出すために取り出したおにぎりであり、凛はハクの視線に気付くとまさかと思いながらもそれをハクの元に近づける。途端にハクはそれを齧り始めた。
「いや、猫がご飯って聞いた事無いわよ」
人の言葉が理解出来てお米を食べる猫。明らかに可笑しな光景に凛は食事を続けるハクの姿を眺め続ける。意思疎通が出来るのならば、分からない事を本人へ聞く事も可能の筈。故に彼女はハクが落ち着くのを待ってから声を掛け始める。……当然、凛は知る由も無かった。この出会いが自分にとって途轍もなく大きなものになる事を。
淡い紫色の光を発する宝石が凛の手の平の上で浮かび続けていた。彼女の前にはその光に魅せられる様にジッと見続けているハクの姿があり、彼女の瞳が一瞬だけ宝石と同色に光る。やがて光が一際輝いた後、まるで力を失う様にその宝石は色を失った。
「……成功ね」
凛は手の平に残った宝石のカスを握る。既に脆くなっていたそれは彼女の手によって粉々となり、手を開くと同時に風に晒されて宙へ飛散する。そうして残ったのは、ジッと見つめるハクと満足げに頷く凛の2人だけ。微かにあった距離を埋める様に凛はハクの前へ一歩近寄ると、膝を曲げてハクと視線を同じ高さに合わせる。
「一応、確認をしないと……貴女の主人は?」
「……凛」
「そう。それじゃあ、貴女の使命は?」
「……凛の傍に、居る」
「……貴女と私の関係が何か、言ってみなさい」
「私は……凛の、お嫁さん」
「…………よし」
複数の質問を終えて、凛は満足した様子でハクの頭を撫でてから立ち上がる。そして何も言わずに手を差し出せば、ハクはそれを握った。
凛とハクが出会ったのは学校の屋上。それから不思議な猫として興味を持った彼女はハクを世話する様になった。そして遂にはハクが人に成れる事実も知る事となり、長い時の中でハクという存在の在り方をも知る事になる。
自分の住む世界とは全く違う世界があり、それを飛び越えて人の欲を満たす使命をハクは負っている。自分もその対象であり、自分が満足した時。ハクはこの世界から別の何処か違う世界へ旅立ってしまう。彼女の目的は本来居た世界へ帰る事。……だが元の世界へ帰りたいだけで、その世界に大事な何かがある訳では無い。
「なら、ずっとここに居ても問題無いわ」
凛は自分の中でそう結論付けた。しかしハクの元居た世界へ帰りたいという思いは凛の予想以上に強く、簡単に心を変える事は難しかった。ハクと居られる時間が楽しいと思い、満たされていると感じる度に別れが近くなる事に気付いて怖くなってしまう。それが嫌だった凛は到頭強引な手を使う。……この世界に存在する力を使って、ハクの意識を塗り替えるという行為をしたのだ。
「これから、ずっと一緒よ」
「ん……」
自分へ寄り添い、身体を預けるハクの身体を抱きながら凛は笑みを浮かべる。彼女のした行為は決して許されるものでは無いが、ハクの正体を知るのは彼女だけ。故にそれを咎める者は誰も居ない。ハク自身も既に凛への想いを強くしたことにより、彼女と居られるという事実を幸せに感じていた。
ハクと自分を特別な関係にした事で、凛は今まで堪えていたハクへの情欲を解放する。家で済ませなければいけない用事を早急に済ませた彼女は、ハクを連れて寝室へ入った。……今までは一緒に寝るだけだったが、今日からは違うと少々興奮気味に凛が緊張を解す様な息を吐き出すその横で、ハクは徐に服を脱ぎ始めていた。
「ハク?」
「? ……しないの?」
「す、するわ」
『何を?』と聞く程に野暮な者は居ない。凛はハクの言葉に少々動揺しながらも同じ様に服を脱ぎ始め、その間に脱ぎ終わったハクがベッドへ。やがて凛も脱ぎ終わった時、ベッドへ乗ろうとした彼女は自分を迎える様に両手を伸ばすハクの姿を見て心の赴くままに抱き着いた。小さく柔いハクの身体を抱きしめて堪能する凛の表情は、他の誰にも見せられない程にだらしなかった。
「ハク」
「ん……」
お互いの表情を見合い、やがて名前を呼ばれたハクは目を閉じる。凛はその姿にゆっくりと唇を近づけ、2人は口付けを交わした。最初は触れる様な優しい口付けだった。しかし間髪入れずに2度目を始めた時、凛はハクの口内へ舌を入れる。そしてそのまま貪る様に口付けを続け、体重を掛けてベッドへ押し倒してからもそれを続ける。
「んっ、ぁ……はむっ」
「ふふ。んじゅ、ちゅ」
両手の指を絡める様に握り合い、ベッドへ押し付ける様に口付けを続けていた凛は少し微笑んでから身体を動かす。それだけで素肌が擦れ合い、胸がぶつかり合う。微かな身動ぎもまるで自分のものと言い張る様に体重を掛けて、ハクの全てを感じながら凛は快楽を楽しんでいた。
満足した様に凛が口付けを止めた時、2人の間に出来た唾液の橋が伸びきった後にハクの胸へ落ちる。それを眺めた凛は視線を向けた先へ再び顔を近づけた。決して握り合った手は離さず、顔でハクの乳房の堪能してから舌を這わし始める。
「んぁ!」
「遠慮なく喘ぎなさい」
「り、ん……ひぁ!」
心を染めたとしても、ハクの中で喘ぐ事に関する抵抗が僅かにあった。しかしそれも消し去る様に凛が告げた時、ハクは我慢する事を止める。普段は聞けないハクの大きな嬌声を聞き、気を良くした凛は乳首に赤ん坊の如くむしゃぶりつく。少し固くなっていたそこを吸い、甘噛みし、舐め転がすだけで面白い様に喘ぐハクの姿に凛の笑みは止まらない。
「うあぁ! あ、ひっ……あぁぁぁ!」
「はむっ、ふふ。乳首だけで、イきそうね? ……それじゃあ……ちゅ」
「!? あ、ふあぁぁぁ!」
ハクの絶頂が近い事を覚った凛が本格的にイかせる為に、片乳首へ一点集中して吸い始める。舌も使い、歯も触れさせ、吸い上げる。3種の快感を同時に与えられたハクの身体は耐えられず、凛の思い通りに絶頂へと至る。震える身体は凛に押さえつけられ、全てが自分の思うがままである事が凛にもまた堪らない快感だった。
ふと、凛は下半身に滑り気を感じる。それは自分が出していた愛液とハクの流した愛液が混ざって出来た水溜りがお互いの下半身に広がったものであり、凛はそれに気付いてハクの手を変わらず握ったまま身体を起こす。自然とハクの身体を起き上がり、力無いハクの身体を凛は抱きしめながら体勢を変える。
「これで、良いわね」
ハクの足と自分の足を交差させた凛は、ハクを自分に乗せた状態でハクの身体を動かし始める。自分よりも遥かに小さな身体は軽々と動かす事が出来、上げて下ろすを繰り返す度に交差した足の付け根……互いの秘部が擦れる事となる。
「ひぁ!」
「あ、ん! 今度は、一緒にイクのよ?」
その言葉が果たして快感に乱れるハクへ届いているのか、分からない。だが凛はそれでも良いとばかりにハクの身体を何度も、何度も自分へ落とし続けた。まるで道具を使うかの様な行為だが、決して彼女を苦しめない様に配慮はしっかりとされている。ぶつかる度に響く水音は回数を重ねる毎に大きくなっていき、やがて凛は下ろしたハクの身体を一際強く自分の秘部へ押し付け始める。
「り、ん……来ちゃ、う……!」
「私も、イク……から……一緒に! んっ!」
「んっ!? ん、ちゅ……! ~~~~~っ!」
絶頂の間際、口付けをされたハクはそのまま凛と共に2度目の絶頂を迎える。強く抱きしめられたハクは身体が震える中、何かが切れた様な感覚に襲われた。……そして自分を抱く凛を前に、弱々しくも戸惑いの表情を見せる。
「り……ん……? なん、で……」
「!?」
絶頂の余韻に浸っていた凛は明らかに正気を取り戻したハクの様子に焦る。しかしハクはそのまま気を失い、後に何も語らない。
凛は気絶したハクをベッドへ寝かせて、道具を取る為に部屋を後にする。……やがて戻って来た彼女の手にはハクに使った淡く光る紫色の宝石。
「思ったより弱かったって事ね。流石に焦ったわ。でも今の内にもう1度、今度はもっと強く掛ければ……問題無いわ」
1人呟きながら、ハクの上に凛は宝石を掲げる。やがてその光はハクの身体を包み、一瞬だけ紫色に光った身体を最後に宝石は脆い物となってしまった。
次に目を覚ましたハクは隣で眠る凛の姿を見て……優しく寄り添い、再び瞳を閉じる。彼女と共に居られる事に幸福を感じ、彼女の傍で生き続けたいと願う彼女の旅は、ここで終わった。