その少女の生まれは特殊だった。その特殊性故に何処にでも転がっていそうな【普通】とは程遠い生活を送り続けていた彼女はある時、自分の運命を変える人物と出会う。彼女はその人物を尊敬し、憧れ、目標とする。……そしてそんな人物の傍に居た1匹の猫を最初は羨ましく思っていた。
尊敬する人物との日々。そんな相手の傍に居る猫と一緒に居る日々。それは彼女にとって初めて生き続けて良かったと思える時間となり、だが永遠には続かない。猫の存在を認め、愛でながらも日々を過ごして居た少女は尊敬する女性がその場を去ると知った時、絶望した。狼狽えた。もう会えなくなるのではと恐怖した。離れたく無いと心から思った。が、それは叶わない望みだった。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ」
「……あ、あの……それだけ、ですか?」
だから彼女は今目の前に広がる光景に。いや、自分の視界に映る1人の少女と女性の姿に歓喜していた。ドイツから離れてIS学園へとやって来た彼女の短い自己紹介に副担任である女性が狼狽える中、彼女の視界には全く別の人物が映り込む。女性しか居ない教室の中で唯一座っていた男子生徒に。……彼女は憎く思い、悔しく思う。尊敬する人物の汚点であり、傍に居たかった少女と自分よりも長く一緒に居たであろうその男子生徒を。そして気付けば彼女はその人物に近づき、その頬を叩いていた。
「ずっと会いたかった……ハク」
「……ラウラ。っ!?」
余りの出来事に静まり返る教室を気にも留めず、彼女はその足で女子生徒達に交じって座っていた明らかに幼い見た目の少女へ近づいた。そして相手に名前を呼ばれた時、彼女は……ラウラは大人数の目の前で堂々とハクの唇を奪っていた。
与えられた女子寮の部屋。目を覚ましたハクは何かに抱きしめられている様な感覚に戸惑い、視線を横へ向けた。すると最初に見えたのは銀色の綺麗な髪。少々下へ視線を動かせば、そこには教室で突然口付けをしたラウラの顔があり、ハクは困惑する。
『ハク。ラウラはお前と同室になる。それに伴い、今同室の生徒は部屋を移動する事になる。……あんな事の後で私も心配だが、決まった事だ』
それは自分の飼い主とも言える女性が自分へ昨日告げた言葉。1人の生徒を特別扱いするつもりは無いものの、根本的に考え方が違う人物と相部屋になってしまえば問題が起きるかも知れないと配慮した上で決まった事実。ハクはそれを驚きながらも受け入れ、改めて再会を喜んでお互いに別々のベッドで眠った筈だった。が、現状は何故か同じベッド。しかもラウラは何故か裸だった。
「……ラウラ」
「ぅん……? ハク。もう、朝か……?」
「ん……退いて」
「あぁ。だがその前に……ん」
「!?」
「ふぅ。おはようのキスだ」
「……」
仕方なくラウラを起こしたハクは彼女の行動に戸惑う。だがラウラは特に気にした様子も無く起き上がると、自らの裸体を恥ずかし気も無く晒しながら大きく伸びをする。そして時間を確認すれば、まだ朝食の時間には余裕がある。それが分かった時、ラウラは僅かに笑みを浮かべてハクへ振り返った。
「よし。ハク、イチャイチャするぞ」
「……何で……そうなるの?」
再会のキスに寝起きのキス。自らの布団へ潜り込み、今も尚好意を隠す気も無く見せるラウラの姿にハクは困惑していた。明らかに始めて出会った時、ハクは彼女に嫌われていると分かった。自分の飼い主である女性を尊敬する彼女はその人物の傍に居る自分を認めていなかったからだ。だが長い時間を経て仲良くなる事が出来、離れる時には涙すら流していたラウラ。今回の再会で見せるその想いは明らかに過去のものと質が違った。
「……何で……そんなに」
「好きだからだ」
ハクが質問をし終えるよりも早く、ラウラは直球に答える。その事にハクが驚き目を見開く中、ラウラは再び笑みを浮かべて言葉を続けた。
「教官とハクが居なくなって、私の心には穴が開いた様だった」
「……」
「教官に教えを請えない寂しさは分かる。だが、お前を思うと胸が締め付けられる様に痛かった。だから私はクラリッサに聞いたのだ。すると逆に聞かれてしまった。私はハクをどう思っているのか? と」
胸に手を当て乍ら思い出す様に告げるラウラはやがてその手をゆっくりとハクへ伸ばすと、優しくその頬に触れる。そして身体も徐々に近づけると、自分の胸にハクの顔を苦しくならない様に配慮しながらも埋めさせる様にして優しく抱きしめた。
「それでやっと分かった。私はハクが好きだったのだと。教官は師として尊敬している。そしてお前は友であり、癒しであり、私の大事な存在として
「……ラウラ」
「だからお前を私に惚れさせる。お前は、私の嫁だ」
そう言って再び口付けをした後、離れて服を着始めるラウラの姿をハクは黙って見続ける事しか出来なかった。そしてこの日から、彼女のスキンシップと言うには度を超えた接触が多くなる。時に違う生徒と揉め事を起こし、時に因縁の男子生徒と対立し、時にある出来事で自我を失っても、彼女の中でハクの存在は消えない。……そして日々が過ぎて行く中で、ハクの感情にも変化が生まれる事となる。
その日、早めに目を覚ましたハクは何時もの様に同じ布団で眠っていたラウラの姿に驚きもせずにジッとその寝顔を眺める。色々な出来事を経てクラスの面々とも打ち解ける様になったラウラ。複数人の生徒から応援を受け、より過激にスキンシップをするラウラの姿に最初困る事もあったハクだが……不思議と不快感は一切無かった。今もまた、抱かれて動けなくても嫌とは思わない。寧ろその心は何処か暖かかった。
「……」
それは殆ど無意識だった。ラウラの顔に自らの顔を近づけ、額を合わせる。静かな呼吸で動くラウラの息に触れ、暖かさを感じたハクは……始めて自ら唇を合わせた。途端、カッっと目を見開いたラウラに顔を突き出されて続け様に初めて彼女と深いキスをする事になった。驚き目を見開くハクの姿に笑みを浮かべながら、ラウラは舌を動かしてハクの口内を貪る。途中で何度か息継ぎをし乍らもやがて口を離した時、ハクは荒々しい呼吸で口元に唾液を付けたままラウラをジトっとした目で見始める。対するラウラの顔は頬を赤く染め、興奮した様子だった。
「ハクからのキス。合意のキス。つまり私を受け入れた証拠だ。ハク、結婚するぞ」
「……出来ない」
「むっ、確かに今すぐは無理だな。良し、卒業したら一緒にドイツへ帰ろう。あそこなら同性でも結婚出来るからな」
「……気が早い」
「たかが3年、あっと言う間だ。……だが私は正直我慢出来ない。しよう」
「……だから……んっ……」
もう暴走とも言える状態になったラウラを落ち着かせようとするハクだが、彼女はハクの肩を両手で掴むとその上に潰れない様に配慮しながらも覆い被さった。再び口付けを始め、それと同時にハクの着ていた寝間着を脱がせ始める。現在ハクは就寝用の服装であり、とある生徒から貰ったブカブカのパジャマであった。それは前をボタンで縦に数カ所留めており、ラウラは首元から順にそれを外して行く。
徐々に外気へ晒される肌。興奮した様子のラウラを止める術が無く、ハクは口付けをされながらも今の彼女を止める事は出来ないと諦める。このまま流れに身を任せれば待っているのは間違い無く淫らな時間。……だが彼女を受け入れ始めたハクにそれを拒絶する心はもう無かった。
「ハク、好きだ」
「ん……ラウラ」
胸が完全に解放された時、口付けを止めて告げるラウラの言葉に頷いてハクは両手を伸ばした。自分を受け入れるハクの姿が嬉しかったラウラは元から何も着ていなかった事もあり、ハクの胸と自分の胸を触れ合わせ乍ら三度キスを開始。だがその手はハクの脇腹を通って腰に回り、履いていた下のパジャマも脱がし始める。そうしてお互いが完全な裸になった時、ベッドの上で2人は文字通り絡み合い始めた。
「……ラウラ……」
「ハク。ハク……!」
抱き合い、口付けを交わし、胸を撫でて臀部にも手を伸ばす。互いに胸をぶつけ合えば心地良さと暖かさに幸福を感じて。ラウラが少し下がって胸に吸い付けば、ハクは強い刺激に頭を真っ白にする。そしてハクもまた、ラウラを心から受け入れる様に胸に吸い付くその顔を包み込む様に抱き締めた。顔全体に広がる柔らかな胸の感触と、好きな相手の胸の谷間に顔を埋める幸福感にラウラは歓喜した。
「ハク、気持ち良くなってくれ」
「ん……っ!」
自分が幸せを感じたなら、次はハクに気持ち良くなって貰いたい。そんな思いからラウラは胸に吸い付く力を強くすると共に、ハクの両足の間に自らの膝を入れて押し付け始める。最初は動かし難かった膝も徐々に水気を浴びる事で滑り易くなり、ハクの反応も大きくなる。そこでラウラは胸から顔を離すと、再び顔を同じ高さに合わせた。が、キスはしない。彼女が口を近づけたのはハクの耳だった。
「はむっ、んじゅ。耳を舐められると、ふぅ。感じる者も居ると聞いた。じゅるっ! 何処でも敏感なハクなら、んぐっ。気持ちよくなれる筈だ」
「ん、ぁあ! ぁ、たまの……なか……まっし、ろ……に、なる……!」
「胸も、擦り合わせながら……ここもグリグリと……気持ち、良い……!」
ハクは耳を舐められながら、ラウラと跳ねる胸をぶつけ合わせて秘部を攻められ続ける。そんな行為に当然耐えられる筈も無く、ハクはやがてラウラの手によって絶頂を迎えた。痙攣する身体に絶頂を感じたラウラは攻めを止めるが、彼女自身は胸や興奮から来る快感にまだ不完全燃焼状態だった。そしてそれを抱き合いながら感じたハクは自らラウラの首に両手を回すと、口付けをする。
「……ラウラも……イッて」
「ハク……んっ」
擦れ合っていた胸を正面からぶつけ合い、乾いた音を響かせながら濡れた自らの秘部をラウラの秘部へ擦れる様に合わせる。所謂貝合わせの体勢となり、ハクは下からラウラに気持ち良くなって貰う一心で動き始めた。力無き微弱な振動。それでもラウラに快感を与えるには十分だった。
「ぁあ! ぐっ……ハ、ク……私も……来るっ!」
「んあぁ!」
頭の中が真っ白になり、電気が走る様な快感を受けてハクの上へ完全に倒れ込んだラウラ。自分よりも大きなその身体に乗られながらも、相手を感じる様にハクはラウラの身体を抱きしめる。するとラウラも弱々しくハクの身体を抱き、2人は目を合わせた。……もう何度目かも分からない口付けを交わし、2人はまた互いを求める様に身体を動かし始める。気付けば朝食の時間は過ぎていた。
ハクとラウラは傍から見ても分かり易く結ばれた。今までラウラがハクへスキンシップの一環としてキスをする事が多かったが、ハクが受け入れて以降はラウラがキスを待ってハクが答える様に行う事も増える。ふと互いに目が合えば見つめ合い、ラウラがハクの名前を呼べばハクもラウラの名前を呼んで互いに手を繋ぐ。……そんな甘々過ぎる2人の姿は周りの人間を悶えさせた。IS学園は今年の例外はあれど基本女子の世界。故に同性愛は珍しい光景では無く、見た目的に幼げな2人が愛し合う姿は周りから見ても大変微笑ましいものだった。
「ハク、好きだ」
「ん……ラウラ……好き」
≪授業中は勘弁してください≫
だが余りにも場所を選ばず愛し合う2人に色々な意味で同じクラスの生徒達は声を揃える。甘さに悶え、羨ましがり、憧れ、呆れられる。何度注意しても治らない故にハクの飼い主兼ラウラの恩師である女性も頭を抱え、副担任の女性は何処か鼻息を荒くする。こうして2人はIS学園では有名なカップルとなり、何時でも何処でも一緒に過ごし続けるのだった。