リ【アズレン】 ラフィー&ユニコーン
「……」
「……」
ある日の港にて、江風は趣味の釣りをしていた。無心になれるという理由から好きだった釣りだが、彼女は今目の前で釣り上げられたこの港の重心とも言える存在に言葉が出ない。無心どころか、彼女の心は困惑に満たされ続ける。が、そんな事を気にした様子も無く釣り上げられた者は地に足を着けようと降ろして欲しい事を伝えた。
「何をどうしたら、釣られる事になるんだ。ハク」
「……逃げて……落ちた」
「逃げる? 何から……いや、止めておこう。変なのに関わりたくはない」
服に染み込んでしまった海水を少しでも減らそうと、服の裾を掴んで絞るハクの姿を前に江風は頭を抱える。ハクが海に落ちていた理由を少ない彼女の言葉から色々察してしまった江風は、それ以上深く聞こうとはしなかった。港には様々な艦船が居り、中には少々危ない者も確かに居る。指揮官と呼べる存在が居ないこの場所で、唯一艦船では無いハクに対して特別な目を向ける者も決して少なく無かった。
「……」
「そんな目で見ても、私は助けないぞ」
「……」
「…………」
このまま港へ戻っても、ハクはまた何かから逃げる事になるのだろう。江風は自分を見つめるその目に助けを求めていると理解した上で、一度は断る姿勢を見せる。だがジッと視線は向けられ続け、ハクがこの後も大変な目に遭う事を想像した彼女はやがて諦めた様に溜息をついた。
「分かった。私の部屋に行こう。服も変えるべきだろうからな」
「……ありがとう」
「言っておくが、安全とは言えない。相手が相手なら、手段は選ばないだろうからな」
パッと思い付いた危険な艦船を数人思い浮かべながら、江風は警告する様に告げる。ハクもそれが分かっていたのか、頷いてから二人は港の中へと向かい始めた。
道中、何人かの艦船とはすれ違う。濡れたハクの姿に驚きながらも、江風が傍に居て彼女の後を追う様に歩いている事から任せる様に去って行く艦船達。それだけ江風が信頼されている証拠であり、無事に到着した部屋でハクは江風の服を受け取る。それは江風が普段着る白い生地の多い服とは対照的に
『うふふ、みぃつけたぁ』
「!?」
「早いな。少しは休ませて欲しいものだ」
突如、部屋に響き渡る女性の声。それだけで相手が完全に分かった江風は再び頭を押さえながら頭を横に振る。そして怯えた様子で周囲を警戒するハクの姿に、再び溜息をついた江風は何かを決意した面持ちで愛用の武器である刀を手にした。
「奴に好き放題されたくないなら、抗え。手は貸してやる」
「……ん。……ありがとう」
相手は強大であり、抵抗しなければ大事なモノすら奪う可能性のある危険性を有している人物でもあった。江風の言葉に戦う事を決めたハクは迎え撃つつもりで改めて警戒を開始。
その後、江風の部屋はハクを奪おうとする者とそれを拒むハク。そしてそんなハクに力を貸す江風によって一種の戦場と化した。全てが終わった頃、息を切らして服もボロボロにした江風とハクが立ち残り、部屋は半壊。港を管理する艦船に怒られる事になるが、ハクは大事なモノを守る事に成功する。
後日、半壊した部屋で江風が過ごす事が難しいとなった時。ハクは修理が終わるまで、自分を助けてくれた彼女を自室へ招いた。基本的に過ごす部屋が使えなくなってしまった事や、その原因がハク本人にもあった事で江風は少し考えた末にそれを受け入れ、ハクと暫く同居する事になる。
「なるほど、好き放題されているみたいだな」
「?」
部屋で過ごす内、江風は違和感に気付いて部屋を物色。すると彼女は明らかにハクの知らない機械が至る所にあると気付いた。それは声を遠くで盗み聞き出来るものから、部屋の中を映し出す物まで様々。恐らく江風がこの部屋で過ごす事も、設置した者には筒抜けなのだろう。
「……」
江風は見つけ出したものを確認してから、ハクに視線を向ける。眠そうに欠伸をするその姿は余りにも無防備であり、江風はその姿に危機感を募らせる。先日は結果的に助ける事となったが、恐らく放って置けば近い内にハクは襲われる事になるだろう。本人の意思とは関係なく、重い愛を強制的に注がれる事になる。
「ハク、明日から鍛錬をする」
「……鍛錬」
「あぁ。どうやら事態が私が思う以上に不味い。奴らに抵抗する力を持たなければ、一方的に貪られるぞ。戦いが始まれば、勝った方が負けた方の生殺与奪の権利を有するのは当たり前の話だ」
ハクはその言葉に負けた後の事を想像して身体を震わせる。過去にも鍛錬といえる事はして来たが、それでも艦船を相手にするとなれば生半可の戦闘力で太刀打ちするのは不可能に近い。だからこそ、勝つ事は出来ずとも逃げる力を手に入れる為にも江風の提案を受け入れる。
その日から、ハクは江風の傍に居る事が多くなった。部屋に居る時は相部屋となった為に当然であり、その他の時間でも鍛錬やその後を共に過ごす様になる。
「いいか、奴らは物理的にハクを傷つけようとはしないだろう。だが油断すれば力尽くで組み伏してくる。その後は……分かるな?」
「……ん」
江風との鍛錬は主に危険な艦船と対峙した時にどう動くべきかを想定した実践形式の内容が多かった。江風は武器を持たずにハクへ近づいて捕まえようとする。それを回避して所定の位置まで逃げ切ればハクの勝ちとなる。
「っ!」
「遅い」
近づいて来る江風から距離を取ろうとした瞬間、一瞬で目の前に迫った彼女にハクは取り押さえられる。片手を掴まれて身体を一度引かれれば、そのまま後ろに回られて片腕を首の前へ回され、片足がハクの足を絡める様にして拘束。完全に背後から拘束されてしまい、ハクは逃れようとするも力では適わない。
「触れられたら負けだと思え…………くっ、なんだ……これ、は……」
「……江風?」
「っ! 何でも、ない。取り敢えず、もう一度だ」
ハクに背後から密着した江風はその感触や香りに包まれると同時に思考がぼやける様な感覚に襲われる。それが良くないと察した時、江風は急いでハクを解放して少し距離を取った。思考が元通りになって行く中、原因も分からぬままに同じ事を繰り返そうとした江風。ハクは捕まらない様に逃げようとするが、何度も江風に捕まり……その度に江風は自身に起きる現象を感じて別の危機感を募らせる。
「どういう、事だ……私は、一体……」
危険な艦船からハクを守る為にしている事で、ハクに対する邪な感情が生まれ始めた事実に江風は困惑する。だが彼女は強い理性でそれを抑え続けた。ミイラ取りがミイラになってしまっては意味が無いと、彼女は必死で耐え続けたのだ。
だが、そんな彼女を追い詰める様に鍛錬をしない日常でもハクと密着する機会は多くなる。元々ハク専用の部屋だった事もあり、寝るベッドは一緒。助けてくれた上に自分を鍛えてくれる江風に今まで以上の信頼と安心を感じ始めていたハクは、自ら彼女の傍へ近づく様になっていた。
「はぁ、はぁ……今日もやるぞ」
「……無理、しない」
「大丈夫だ。体調は、悪い訳ではない」
鍛錬の時間。普段冷静で表情の変化もハク程では無いが薄い江風が、明らかに息を切らして頬を微かに染める姿を前にハクは心配する。それが自身のせいである事に気付けず、江風もまだその原因を知らぬままに鍛錬を強行しようとした。……そして、遂に彼女は限界を迎える。
「駄目、だ……抑えきれない……っ!」
「っ!」
何時かの様にハクの片腕を掴み、後ろへ回って首を抱いた江風はそのままハクの項に顔を埋める。魅了に負けた江風の行為にハクは驚き動揺するが、もう江風は理性を失い止まれなかった。
一度魅了に負けて理性を失ってしまえば、危険な艦船達と江風はハクにとって変わらない危険性を秘めた存在になってしまう。片腕を拘束して首にまで回された手によって、ハクは殆ど身動きが出来ないままに髪や項を好き放題にされる。その匂いで更に深い魅了へ掛かる中、ハクは出来る限り振り返りながら江風を見る。
「頭が、ボーっとして……ハクの事で、頭が一杯になってしまうっ!」
「江、風……」
「ハク……っ!」
暴走する江風の姿を前に、ハクは抵抗する意思を見せなかった。言葉通り真面な思考が出来ないのか、江風が拘束する腕からは徐々に力が抜け始めており、再び顔を埋める江風を受け入れて彼女のされるがままになりながら、徐々に身体を反転させようとし続けるハク。やがて向かい合う様な姿勢になった時、ハクはゆっくりと江風の後首へ両手を伸ばした。
「……良い、よ」
「!? 何、を……」
「ん……好きに、して……いい」
江風はハクの言葉を聞いて目に見えて動揺する。今自分がハクに襲い掛かっている事は分かっており、自分を抑えられない事やハクの同意が無い事も理解していた彼女だが、その言葉は明らかに自分を受け入れているものであった。本の僅かに違うハクの表情も恐怖や拒絶ではなく、江風の全てを受け入れようとしている。
ハクは危険な艦船を相手にしてまで自分を助けてくれた江風に感謝していた。それからも自分の為に行動してくれる江風の存在に感謝を感じると同時に安心感も感じ始め、他の艦船と比べても安心出来る存在と思う様になる。それは徐々に彼女に対して特別な感情に変わり、ハクは江風に確かな好意を抱く様になっていたのだ。
自分を襲おうとする相手が好きといっても良い相手だった場合、拒絶する必要など無かったのだ。江風は自分のしている事、それを受け入れられた事に驚きを隠せないが、そんな彼女の困惑を払う様にハクは両腕に力を込めて近づき始める。……そして、二人の唇は重なり合った。
「んっ!?」
「……好き」
「っ! そう、か……なら、遠慮は要らないな」
襲い掛かってしまい、それをまさかの受け入れられた事実を前に江風は驚きから一周回って冷静になる。そして改めてハクへ感情の赴くままに江風は行動し始める。もう、二人は鍛錬の事など頭に残っていない。お互いを求める様に抱き合い、時折口付けを交わしながらも二人はなんとかその場では始めずに部屋へ戻る。
部屋へ戻るや否や、ハクの身体を江風はベッドへ押し倒した。既に部屋に仕掛けられた危ないものは回収の後に廃棄済みであり、これから始まる行為に気付いて邪魔をしようとする者はいないだろう。下から両腕を伸ばして受け入れる様な姿勢になるハクを前に、江風は覆い被さる。
お互いの服を脱がした後、江風はハクの身体を堪能する様に胸元へ顔を埋める。普段からクールな彼女を甘えさせる様に、ハクはその頭を抱きしめながら彼女の行為を受け入れていた。顔を動かす度に肌が擦れ、微かな声がハクの口から漏れる。ふと江風が顔を上げれば、まるで息継ぎをする様に再びハクと口付けを始めた。
「好きだ……ハクの全てを、私に委ねてくれ」
「ん……全部、あげる……だから、江風も……私に」
「あぁ、委ねよう。これからは何もかも、あなたの為に……」
出会った頃は冷静で物事に関して達観していた江風。常に戦場へ身を置いていたせいか、希望・愛・平和などと言った聞き心地の良い言葉を否定する事もあった彼女だが、一度愛を知ってしまった彼女は溺れる様にハクへ想いを向ける。
江風の僅かに膨らんだ胸とハクの少し大きな胸が触れ合えば、同時に二人は声を漏らす。それがお互いを感じ合っていると分かった時、江風は積極的に身体を擦れ合わせる様にして重ねていった。性的な快感など自ら感じた事が殆どない江風は、慣れない手つきでハクを気持ち良くさせようとする。
「はぁはぁ、もっと……もっとだ」
「……こっち、も……」
ハクを求めるも、その方法は貪る様に上半身を触るばかり。そんな彼女に痺れを切らした様にハクが右手を掴むと、そのまま自身の秘部へ持って行き始める。それが何を意味しているのか最初は分からなかったものの、江風は既に濡れていたハクの秘部に触れた事で理解した。
「触るぞ」
「……ん。……ひぁ!」
自ら求めたハクに江風は一言入れて、その入り口を指で一度なぞる様に触れる。明確で強い刺激を感じたハクは声を上げるが、江風の腕を掴んだ手は離さない。寧ろ押し付ける様に引き始め、それが余計に求めていると感じた江風はハクの秘部に今度は指を入れ始めた。
「熱い……それに、狭い」
「んっ……入って、る……江、風……の、が……」
入れた指は一本だけ。だがハクの膣内はそれを熱く強く締め付けており、江風はその感覚だけで身体に電気が走る様な快感を感じていた。江風の指が入っている事にハクは何処か嬉しそうにしながら感じており、そんな姿を前にした江風は入れた指を抽挿する様に動かし始める。
細い指一本で乱れるハクの姿は江風の興奮を煽る。そして気付けば江風はもう片方の手でハクの胸を揉み、身体は再び覆い被さって快感に蕩けそうになっていたハクの顔を至近距離で眺める様になっていた。ジッと見つめる江風の目が、ハクの羞恥心を刺激する。が、見られている事で余計にその身体は敏感にもなっていた。
「んぁ! キス、して……!」
「あぁ、いくらでもしてやる。……んっ」
「んっ、ぁ……~~~~っ!」
ハクの要求を受け入れて三度口付けをした瞬間、口・胸・秘部の三ヶ所を刺激される様になったハクの身体は震える様にして絶頂を迎えた。好きな相手に求めた口付けが引き金となった絶頂はハクにとって幸福な事であり、それと同時に絶頂させた事実を江風は嬉しく思う。
「満足……は、してないな?」
「……もっと、する?」
しかし一度ハクを絶頂させた程度で江風は満足しない。これまで溜まっていた劣情を発散する様に求める江風に、ハクは受け入れる姿勢を見せる。そしてその後もハクの部屋には彼女の嬌声と、楽しむ江風の姿があった。
港の端っこでハクは江風と共に並んで釣り竿から糸を垂らしながら釣りを楽しむ。二人の距離は肩が触れ合っている事から無いに等しく、適当に釣り上げる事の出来た魚を見せ合ってはリリースして楽しんでいた。
「釣りは好きだ。前までは無心になれるからだったが……今はハクとこうして楽しめるからな」
「ん……私も、楽しい」
適当にハクが食べる用の魚のみ確保して、釣りを楽しんだ二人は港の中へ戻り始める。すると、そんな彼女達の前に別の艦船が立ち塞がった。
「あぁ、見つけましたわ」
「またか……ハク、下がっていろ。何も心配は要らないからな」
「……ん。気を付けて」
「今度こそ、彼女を私のモノに……その為にも貴女には消えてもらいますわ!」
「悪いな。ハクはもう私の大事な人だ。それに、彼女をモノ扱いする奴に私は負けはしない」
江風は今にも自分を殺しに掛かって来そうな血走った目をする艦船を前に、武器を取り出して構える。相手が求めるのはハクであり、そんな彼女を守る為に江風は戦う。
愛を知り、守るべき存在を得た江風。ハクを奪おうとする敵が母港内で多少多くはなったが……それでも彼女が負ける事は無かった。