指揮官の居ない港。艦船少女達が徐々に増え続ける中、唯一艦船とは別の存在であるハクは指揮官の代わりとして熟すべき事が多々あった。艦隊を運営する事に関しては派遣という形で港にやって来たプリンツ・オイゲンに任せて、ハクが主に考えるべき事は資源などについて。……その更に主だった内容といえば、商売人との交渉であった。
「まずは頭を撫でさせてもらうにゃ。そうしたら、5ダイヤ分は譲っても良いにゃ」
「……ん」
港である以上、物資を購入する事を期待した商人の様に現れる艦船……明石。彼女は始めこの港に指揮官が居ない事を知り、用無しと考えていた。しかし今もこうして訪れてはハクと話をしており、ハクが何かをする事で物資を融通する様になったのは彼女自身がハクを気に入ったからに他ならなかった。
艦船少女はその1人1人に個性の差が多少はあるが、殆ど同じ姿をした者達が各港に存在している。だが各港で必ず違う事の1つが指揮官の存在だ。男性、女性。大人からまだ若い者まで、明石は彼方此方を回って様々な指揮官と出会った。自分に危険な目をする指揮官の居る港は立ち寄らない様に気を配る事も多かった。
そんな中、訪れた指揮官不在の港に代わりとして存在したのは小さな白猫に成れる女の子。指揮官としての能力は持たず、だが艦船達を放っておけないのか何か出来る事をしようとする女の子の健気な姿に明石は心打たれた。物資を売りにやって来た自分を出迎えて、不慣れにダイヤの価値等を勉強して、頭を悩ませながらも買い物をして。
『……また……来て』
それが物資の為の言葉と分かっていても、明石は絶対に来ようと決意する。そして殆ど毎日の様にハクの元を訪れるが、残念な事にダイヤの価値等を知る事は出来ても元手は無限に生まれる訳ではない。豊富な物資を目の前に何も買えないハクの姿を見た時、明石は無意識に提案をしてしまった。
『ダイヤが無いなら、身体で払っても良いにゃ』
『……身体? …………』
『はっ!? 違うにゃ! そういう意味じゃ無いにゃ!』
言い方のせいで向けられた視線は明石の心を抉った。だがすぐに訂正した上で、彼女は頭を撫でる事を要求。猫の姿と人の姿を別物として、どっちかで愛でる事を許せば提示したダイヤ分を唯で譲るという契約を交わした。結果、明石はハクの身体を物資と引き換えに好きなだけ愛でられる様になったのだ。
「(売人としては失格にゃ。でも可愛いハクを触れると幸せな気分になれるから、問題ないにゃ!)」
ハクの頭を撫でながら幸福を感じている明石。当然、5ダイヤで買える物資は微々たるものだ。他にも手を握る、抱きしめる等を交渉の材料にしてハクを愛でる明石だが、それも数ヵ月の間繰り返した事で徐々に欲求不満になり始める。有体にいえば、物足りなくなって来たのだ。
「……ハク、今日は明石。新しい取引に来たにゃ」
「?」
「はっきり言うにゃ。ハクとスキンシップを超えた凄い事をしたいにゃ」
「……えっちな、事……?」
「っ! ……そうにゃ。えっちな事で間違いない、にゃ」
余りにも自然と言われたハクの言葉に一瞬たじろいだ明石だが、慌てず照れずに真剣な様子でハクに答える。下手な部分を見せてしまえば、それはハクの内心に抵抗や不安を生んでしまう。最悪、嫌がられてしまえば明石の心は木端微塵だ。だからこそ、これは大事な取引であると分かってもらうために。ハクが受け入れる事で更に港が潤う『良い提案』であると分かってもらう必要があった。
「明石はハクが大好きにゃ。それはもう、当然気付いてるにゃ?」
「……ん」
「んにゃ……なら、ハクともっと色々シタイと思う理由は分かってもらえる筈にゃ」
「……私を……買うって、こと?」
「む……確かにそんな感じになってしまうにゃ。でも大好きなハクといえど、唯で譲れるほど商売は甘くないにゃ」
「……分かってる」
「結構今までも無理はしていたにゃ。ハクには大分譲ったからにゃ。でも明石はハクをもっと助けたいにゃ。その為には、相応の見返りを要求するにゃ!」
勇気を振り絞って言い切った明石はハクの答えを待つ。その瞳は不安気で、ハクは彼女の言葉を聞いて悩んでいる様子を見せていた。
彼女の目的はこの世界で出会う存在の欲望を満たす事。まだ欲望の相手は全員見つけられておらず、だからこそ今居る港で過ごす必要があった。働かざる者食うべからずであり、自分に出来る事をしながら欲望を満たす相手……恐らく艦船であろう者達を探すか待つか。どちらにしろ、港に居る以上物資は必要だ。多くあっても困らない。明石自身も対象であり、何よりも彼女は真っ直ぐに好意を伝えて来たのだ。
「っ!」
「……」
ハクは下げていた顔を上げる。その仕草に明石はドキッとした様子でハクの答えを待つ。
「……
「無理矢理はしないにゃ。でも何時かハクからあげたくなる様にするにゃ」
「…………ん」
必ず守り切ると誓った処女は譲らず、だがそれ以外の全てを明石が求める事をハクは許した。
新たな契約が交わされてから、明石は今まで以上に港へ。ハクの元へ訪れる様になった。沢山の物資を集めて現れれば、必ずハクと共に港にある個室へ。誰も使わないそこでなら、『気持ちの良い取引』が出来るのだ。
「キスは絶対にゃ。後は耳かきとかしてほしいにゃ」
「ん……他には?」
「お、おっぱいを触りたいにゃ。出来れば吸ったり舐めたりしたい……にゃ」
「……」
「こ、これぐらいのダイヤ分でどうにゃ!?」
まず最初に『何をするか』を決める。その後に対価を提示して、お互いが納得出来れば交渉終了。そのまま契約した内容を行うのが何時もの流れである。明石が恥ずかしさを誤魔化し、ハクからの若干冷めた様な目からも逃れる様に提示したダイヤ分は過去の愛でる行為で譲っていた分とは比べ物にならない額であり、ハクはやがて静かに頷いた。
「それじゃあ、キスするにゃ……んっ」
「んっ……はむっ、ちゅ……んむっ」
「ん、はぁ……幸せ、にゃ……」
2人は自然と舌を絡め合う深いキスを行っていた。明石が息継ぎをするためか顔を離せば、ハクとの間に唾液で出来た橋が生まれて落ちる。明石の頭の中はその気持ち良さからハクへの思いで満ちてしまい、もう彼女は商売やダイヤの事が頭から消え去っていた。恐らくこの日、彼女は商売人として全く使いモノにならないのだろう。
「ハク、好きにゃ。大好きにゃ」
「…………私、も」
「っ! 本当かにゃ!?」
「……ん。明石は……私を、助けてくれた……」
溢れる想いを明石が口にした時、ハクも同じ様に明石への好意を告げる。それは彼女を悦ばせる為のリップサービスではない。彼女は自分の居る港を支えてくれた明石の存在を心から感謝すると同時に、真っ直ぐな好意を向けられた事で少なからず自身も好意を抱き始めていたのだ。まだ元の世界へ戻る事を諦めた訳ではないが、好きな人となりつつあるのは本当の事であった。
「嬉しいにゃ……何時か明石はこの港に着任してもいいかもにゃ」
「……待ってる」
その口約束が本当になるとは知らず、だがそうなる事を信じ合いながら2人は再びキスをする。
その後、明石の求めた耳かきをする事にしたハクは同時進行で彼女に胸を触られる事に。頭は動かさずに手だけでその柔らかさを堪能する明石は、相思相愛になれた事実を内心で喜ぶと共に今以上の行為を次はすると決める。主に裸になって出来る様な事を……。