【デレマス】 鷺沢 文香
美城プロダクションにある特別な条件を満たした者のみが訪れる事を許される場所……ハクの部屋。今日もそこに1人のアイドルが訪問していた。
「……」
「う~ん、ハスハス……はふぅ~」
自分の身体を背後から抱きしめ、後ろ首に髪を巻き込みながら顔を突っ込んで匂いを堪能する少女。ハクはそんな彼女の行動にくすぐったさと危うさを感じていた。過去の出来事で完璧ではなくとも自分の体質について知っている為、その行為から暴走が起こらないかと心配で仕方ないのだ。
「はぁ~、良い匂い。クンクン……」
「……しつこい」
「もう二月近くお預けだった訳だし、君の匂い大好きなんだから仕方ないよねー♪ もう嗅ぎたくて嗅ぎたくて、可笑しくなっちゃう寸前だったんだから」
その言葉に偽りは無いと、ハクは彼女がここへやって来た時の様子から確信する。ノックも無しに開かれた扉から、まるで幽霊の如くユラユラと身体を左右を揺らして入室した彼女はハクの姿を捉えるや否や、目にも止まらぬ速度で接近したのだ。そして出来上がったのがこの状態。明らかにハクの匂いをキメている彼女の様子にハクはやはり危機感を感じずにはいられなかった。
「……志希」
「ん~?」
「離れて」
「う~ん……もう、仕方ないなぁ~」
既に身動き出来なくなって長い時間が経過しており、ハクも限界だった。故に直球でぶつけた言葉に少女……一ノ瀬 志希は渋々といった様子でハクを解放する。志希の抱擁から脱したハクは立ち上がって少し乱れた髪を手櫛で治してから、彼女へ振り返った。
「嗅ぎ過ぎ」
「だってあたしは匂いフェチだからね~。最初だってプロデューサーから良い匂いがしたからついて来た訳だし? まぁ、その匂いも君のが移ってただけだったんだけどね~」
「……」
ハクは楽しそうに笑みを浮かべて告げる志希の言葉に、嘗て始めて彼女と出会った時の事を思い出した。大概のアイドル達は最初、興味本位でここへ来る権利を得た上で訪れる。それが最初の出会いであり、数少ない他の出会いと言えばこの部屋が出来る前に知り合った者達ぐらいだろう。だが、志希はそのどちらにも属さなかった。
『ここからプロデューサーからしてた良い匂いがすっごくするな~!』
そう言って他のアイドルが居てもお構いなしに突撃して来た志希。その時訪れていたアイドルが彼女よりも年上で非常に温厚な優しい人物だった事もあって、大事になる事は無かった。が、その日は殆ど志希の時間となってしまった為、後日その日のアイドルがもう1度訪れたのは仕方の無い事である。
一ノ瀬 志希は最初、今では彼女をプロデュースするプロデューサーの匂いに誘われてついて来たという驚愕の理由からアイドルへとなった。プロデューサーの匂いと言われて何となくハクも想像する事は出来るが、彼女が気になった匂いの大本はハクであった。志希のプロデューサーとハクはこの部屋が出来る前から接触が多く、その経緯で匂いが移ったのだろう。それを辿って部屋を訪れた志希はハクの匂いを嗅いで以降、今の様に依存と言っても過言ではない程に嗅ぎに来る様になった。当然、彼女だけを特別扱いする訳にもいかず、今では条件を満たさなければ訪れないが……それに関して志希は大層不満を抱いている様子である。
「むぅ……やっぱりもう少し嗅がせて? 今日が終わっちゃったら次に何時嗅げるか分かんないんだもん」
「……はぁ」
両手を広げて迎える様に告げる志希の姿に、ハクは無理矢理よりは良いと仕方無さげに溜息をついてから近づき始めた。そして再び始まるのは、自分の匂いを嗅がれる時間。放っておけば何をするのか分からず、かといって匂いを嗅がせていても何時魅了の効果で暴走するか分からない。ハクにとって彼女との時間は余り心安らぐ時間とは言えなかった。
「この匂いが何時でも堪能出来たら最高なんだけどな~。いくら天才のあたしでも、出来ないんだよねぇ……いっそ、連れて帰れないかな」
「……無理」
ハクの部屋へ訪れるアイドルは数多く居る。その一部の人間に満たさなければいけない欲望があり、ハクはそれを叶える必要がある。故に志希の元へ完全に行く訳にはいかなかった。因みに志希は欲望を満たす使命の対象外である。が、それを彼女が知ったところで何も状況は変わらないだろう。当然、ハク自身も自らの使命を誰かへ告げるつもりは現在無かった。
ハクの言葉に残念そうな声を出す志希。だがその時、彼女の中で常人には成し得ない速度でハクを家へ連れて帰る為の考えが思考されていた事等、ハクは知る由も無い。
「そう言えば、色んなアイドルの家にお泊りってしてるの~?」
「……偶に」
「ふ~ん。じゃあじゃあ、あたしのところにも泊まろう? うん、そうしよ~!」
「勝手には……無理」
以前、文香の家へ泊まりに行ったのを皮切りに始まったアイドルの自宅への外泊。まだ公言されている訳ではない知る人ぞ知る試みは志希の耳にも届いていた。一部の多分に信頼出来るアイドルの家へのみ、泊まる事を許されている現状。……志希はその対象外である。が、本人は常に家へ泊めたいと言い続けていた。
「君が泊まりたいって言えば、プロデューサー達も許してくれると思うんだけどな~」
「……」
ハクにとって志希は使命の対象外。となれば、彼女の家にまで赴いて泊まるメリットがハクには無かった。志希が満足する程度であり、だが今までの出来事からその満足も時間が経てば不満へ変わる。なら対象となった他のアイドルの元へ泊まりに行く方が、ハクにとって都合が良かった。しかし、今回の志希は過去に無い程に自分の家へ泊めたいと駄々をこね始める。明らかに放っておけば良くない事が起こると察せる程に。
志希の行動は不可解な事が多い。何か起こってからでは遅いと、ハクは彼女の言葉に少し悩んだ末に「話してみる」と答える事で返事を返した。するとハクを抱き締めたまま、「なら行ってみよ~!」と部屋を飛び出した志希。その後、美城プロダクション内で仕事をしていたプロデューサーが志希の腕に抱えられたハクの言葉を聞いて悩む様に頭を抱えたのは分かり切っていた事である。
「ようこそ、あたしの部屋へ~ってね♪」
後日。ハクはプロデューサーからの許しを得た事で志希が普段寝泊りをする場所へ訪れていた。今までに訪れた部屋と比べてかなり荒れたそこは、怪しい薬の様な物も棚やテーブルに並べられている。寝る場所はあるものの、殆どが薬の研究所状態であった。志希が化学における天才である事は知っていたものの、泊まりを誘った部屋がここまで酷いとは思わなかったハク。自分を招き入れた志希へ、思わず目を細めた視線を送ってしまう。
「ジト目頂き~。っと、それじゃあどうしよっかな~」
ハクの視線を嬉しそうに感じた志希は薬品の並んだ棚の傍へ近づき始める。自宅でも抱擁等によって拘束されると思っていたハクはそんな彼女の行動に首を傾げると共に、並んだ薬品の色合いやそれを持つ志希の姿に一瞬寒気を感じた。手に持つ注射器やその中へ入れる薬品の色合いは彼女の様子と相まってまるでマッドサイエンティストの部屋へ訪れてしまった様にも思える。……今まで心許していた相手に対して、本能が警戒する様に告げていた。が、気付いたところで既に手遅れである。もう小さな白猫は狂気を孕んだ狼の巣へ入ってしまったのだから。
「にゃは。それじゃあ、始めよっか……あたしの事しか見れなくなる身体にしてあげる♪」
そう言って注射器を片手に笑みを浮かべる志希の姿を前に、ハクは逃げ出した。
一ノ瀬 志希は化学に関するギフテッドの持ち主、つまり天才である。彼女の手に掛かれば危険な薬を作る事もお手の物。惚れ薬などの想像する事はあれど、実在するかは不確かな物も彼女には容易に作る事が出来た。
注射器を手に近寄る志希の姿に嫌な予感を感じたハクは、思わず後退りをした。だが散らかった部屋の足場は非常に悪く、ハクは足元に転がっていた試験管を踏んでしまう。自分の重みを上手く支えられなくなってしまった足は試験官が転がる方向へ勢いよく出てしまい、身体は後方へ。幸いにもそこには何時でも寝れる様に常に敷いてあるのか、布団があった事でハクは鈍い痛みを感じながらも、怪我はせずに済む。
「少しチクっとするよ~。極細の針だから、そんなに痛くは無いと思うけどね」
「ぃや……志希……やめ、て」
しかし志希から逃げるという目的は果たせなくなってしまう。転んでしまったハクの傍に近づいた志希は、ハクの二の腕を掴んで注射器を近づける。恐怖を感じて嫌がるハクだが、彼女は笑顔を浮かべて容赦無くその針を二の腕に刺した。針が入ってしまえば最後、暴れると危険であるが故にハクは強く目を瞑った。
志希の手にあった注射器の中には薄桃色の液体が入っていた。それがハクの身体の中へとゆっくり入っていき、やがて全てが彼女の中へ。
「即効性だから、すぐに来ると思うよー♪」
「……っ!」
空になった注射器を抜いて傍へ置いた志希はハクの肩に手を置いてジッとその顔を見つめ始める。一体何を入れられたのかと恐怖しながらも、自分を見つめる青い瞳と目を合わせたハク。その途端、彼女は自分の心臓が大きく鼓動した様な錯覚を覚える。……そして急激に身体に熱を感じると共に、志希の目から視線を外せなくなってしまった。
「私は君の匂いが。ううん、君の事が大好きだよ。君は、どうかな?」
「私、は……志希が…………好き」
ハクの思考は何かに塗り替えられる様にして変わり、まるでずっと前から一ノ瀬 志希という存在を好きだった様に感じ始める。そしてそれを可笑しいと感じる思考すらも失ったハクは、志希からの告白を受け入れた。了承したハクの言葉に「にゃはは~」と満足そうに笑った志希は、ハクの身体を抱き締める。
「これで君は私のもの。他の子達も、プロデューサーだって、結ばれた二人を引き剥がす様な事はしないよね~♪」
思春期真っ盛りの少女が結ばれた者と同じ屋根の下、同じ布団で眠るとなれば何もしない事の方が少ないだろう。初心な者ならあり得る話だが、そう言った事にも興味津々の志希はする気満々であった。
「はふぅ~、やっぱり君って良い匂い。ハスハス」
「んっ……そう。……良かった」
一糸まとわぬ姿で布団に入った志希は同じく何も着ていないハクの胸に顔を埋めて大きく息を吸い込んでいた。自他共に認める匂いフェチの彼女にとってハクの匂いは特別。出会いの切っ掛けにもなったそれを直接吸い込んだ志希は恍惚とした表情を浮かべる。そして彼女を薬の効果で受け入れたハクは、それを受け入れる様に志希の頭を両腕で包み込んだ。
「ねぇ、舐めて良いかな?」
「……ん」
ハクの匂いを堪能していた志希は、味を知りたいとばかりにハクへ許可を求める。しかしそれは形だけであり、志希はハクが許可する事を分かり切った上での問いであった。案の定頷いてハクが受け入れれば、意気揚々と志希はハクの胸元に舌を這わせ始める。……多少の汗によるしょっぱさと、肌から伝わる甘さに志希は幸せそうに笑みを浮かべる。そしてもう一度、もう一度とそれは幾度となく繰り返された。
「ぁ……志、希……んっ」
「んむっ? あ、ごめんねー。……って、ハクも結構乗り気だね~」
「……」
ハクの身体は志希の告白を受け入れたその時から、準備を始めていた。志希の作った薬には催淫効果もあったのだ。しかしそんな事を知らないハクは恥ずかしさと自分が求めている事実から目を逸らす様に顔を反らした。そしてそんなハクの姿を愛しく感じながら、志希はハクの身体に覆い被さる様にして全身で密着する。
「あたしもする気だったし、シヨっか♪」
「……」
志希の言葉にハクは何も言わず、だが頷いて答えた。
ハクの身体を這う様にして、志希の手が動き回り始める。右腕がハクの首の後ろに回り、志希はハクと至近距離で目を合わせると……笑みを浮かべてからキスをした。ただ触れ合うだけの軽いものでは無い。舌と舌を絡め、音を立てながらも愛し合うディープなキス。ハクも目を閉じてそれを受け入れる中、志希の左手がハクの胸や腹部を撫でながら下へ。遂に到達したその場所は既に水気を帯びていた。
「んちゅ、レロッ……ふぅ。それじゃあ、触るからね」
「はむっ、んぐっ……ぅ、ん……優しく、して」
「勿論♪」
優しく触れる志希の手から伝わった暖かい人肌にハクは身を震わせた。何処よりも敏感で、誰よりも感じ易いハクはただ手を添えられただけでも感じてしまう。しかしそれは大して強い快感では無いが故に、疼きの様な物を抱える事となってしまった。そしてそんなハクの身体をまるで手に取る様に理解していた志希は、ハクが欲しいと一番に思ったタイミングで触れる。途端、ハクの身体は大きく震えた。
「んぁ!」
「んっ、はぁ~、良い匂い」
ハクの秘部から溢れる愛液と、感じる度に広がる匂いに志希は嬉しそうに嗅ぎながらも攻めを激しくする。完全に準備が整ったハクの身体は多少強い刺激を与えたところで痛みよりも快感を感じる様になり、志希はハクの膣内に指を入れて容赦無く指でかき回す様にしてハクに快感を与える。当然、弄っている間にもキスは止めない。お互いに目が合えばキスをして、呼吸する為に顔を離してもすぐにまたキスを再開し続けた。
「志、希……もう……っ!」
「イク? イッちゃう? にゃはは、良いよ。でもイク時はちゅーしながらが良いな~」
絶頂の予感を感じたハクの言葉に志希は嬉しそうに告げると、秘部をかき回すその手を更に激しくしながら、ハクの後ろに回した手でその顔を近づけてキスをする。まるでハクの口内を支配する様に舌が蹂躙する中、到頭限界を迎えたハクの身体は大きく痙攣し始めた。
「んっ、ぁ! ん~~~~っ!」
口を塞がれていた事で、ハクが上げた声は抑え込まれたものだった。秘部から多量の愛液が流れる中、何度かの痙攣を経て静かになったハク。志希は疲れ切った様子で自分へ視線を向けるその姿に更なる興奮を覚えると、絶頂したばかりのハクに再び攻めを開始した。ハクはそれに驚き目を見開きながらも、決して拒む様な事はしない。
「あたしが満足するまで、いっぱい楽しもうね♪」
それから数時間。ハクは気絶するその時まで、志希の攻めを受け入れ続けた。ハクが意識を失った頃、最高に心の満たされた志希は気絶したハクに最後のキスをして、その身体を抱きながら眠りにつく。……その頭は後日、どうやって薬を盛った事実を知られずにプロデューサー達を説得してハクを自分の傍に居させるか考え続けていた。