「何だ、お前は?」
その出会いは余りにも唐突であった。とある家でお世話になりながら対象の欲を満たしていたハクが静寂の中に聞こえる何かを割る音に気付いて見に来れば、そこには裸で煎餅を食べる少女の姿があった。
「私はもう、誰も傷つけたくない」
共に過ごす様になってハクは少女の心を知る。それ以降、ハクにとって少女は欲を満たす対象であると同時に救われて欲しい存在となった。
「ほれほれ、ここが良いのか?」
『~♪』
少女との平和な時間、戯れる時間がハクには心地良かった。だがそれも何時か終わる日が来る。また新しい世界へ渡り、新しい誰かと出会って欲望を叶える……終わりの見えない使命がハクを待っている。
『……』
だからハクは世界を渡る為に、その家から姿を消した。欲望は全て満たし終え、次の世界へ繋がる扉が数十分後には開かれる。ハクは過去にお世話になっていた少年と初めて出会った時、何時か消える事を伝えてあった。故に消えてしまえば彼はその時が来たのだと悟ると、ハクには分かっていた。そして彼を通じて自分の事が他の者達へ伝わる事も。当然、その中には少女も含まれている。
既に空は暗くなり始め、日が変わる頃には世界から離れる事になる。そう感じ乍らハクは数々の世界で経験して来た別れの辛さと寂しさを感じて、闇の中に姿を消した。そして二度とこの世界で出来た大事な人達と会う事は無い……筈だった。
「待て!」
『!?』
闇の中にその身体が消える寸前、聞こえる筈の無い声にハクは振り返る。そこには肩で息をし乍らも大きな赤い目で自分を見つめる少女の姿があった。
「私に黙って勝手に何処へ行く気だ、ハク!」
『……』
驚き戸惑いながらもハクは掛けられた言葉に人の姿へ変わると、同じく赤い目で少女を見つめ乍ら口を開いた。
「……お別れ……だから」
「世界を渡る、か?」
「!? ……何、で」
「ついさっき、ハルアキとウシチチに聞いたのだ。お前が居なくなったと気付いてな。……あの家で知らなかったのは、私だけだった……!」
「……」
「何で言ってくれなかったのだ! 何で教えてくれなかった! 何で……何で!」
悲痛とも言える叫びを聞いてハクはその理由を察しているが故に口を閉ざしたままだった。……目の前に立つ少女、フィアは最初不安定とも言える状態だった。そんな中、始めて出会ったハクと仲良くなりながら様々な困難や問題を超えて来た彼女は強くなると同時に心の拠り所としてハクの存在を大きくしていった。他の誰よりもハクと仲が良く、他の誰よりもハクと一緒に居る彼女は結局周りから見れば依存している様に見えたのだ。
もしフィアが『何時かハクがこの世界から離れて消えてしまう』と知ったらどうなるのか? 思い付く限りその結末が碌な事にならないのは誰の目にも明らかだった。しかしハクが世界から消える運命は変わらない。フィアがハクの消える前にその事実を知れば、何かをする可能性も視野に入れたが故に彼女はその事実を知らされずに過ごして来たのだ。過ぎてしまった事は仕方の無い事であると、時間は掛かっても彼女が立ち直れると信じて。……だが、結局彼女は知ってしまった。ハクが完全に世界から離れる前に探し出し、この場に立ってしまった。
「私の事が、嫌いだったのか?」
「! 違う……!」
「ならどうして……!?」
首を強く横に振ってハクがフィアの言葉を否定した時、彼女は再び何かを言おうとして驚いた様に目を見開いた。気付けば闇の中には強い光が生まれ始め、ハクが振り返った先にあったのは何度も通った事のある扉。それは世界と世界を繋ぐ間の場所へ行ける扉であり、時間が来た事を知らせる物でもあった。
「……」
「ま、待て! 待ってくれ! くっ! ハ、クっ!」
「!」
扉を近づこうとするハクの姿にフィアが飛び出し、その腕を掴んで引き止めた。その世界の住人が世界を繋ぐ扉の傍に近づけば、途轍も無い強制力で意識を失う事を既に十六夜達の姿を見て知っていたハク。当然フィアもその強制力に意識を失い掛けるが、それでも彼女は必死にハクへ告げる為に自分を保ち続けた。
「お願い、だ! 行か、ないで、くれ! お前が居ないと、駄目なのだ!」
「……フィア」
「ずっと……傍に……私の、傍……に……」
ゆっくりと限界を迎えた意識が落ちて行き、やがてフィアはハクの腕から足へと掴む場所を変えた後に地面へ伏してしまう。それでもハクの足首を掴んだままなのはよっぽど強い気持ちがあった事の現れなのだろう。そんなフィアの姿をハクは見つめ、目の前で光を放つ扉を見る。放って置けば扉は勝手に閉じてしまい、その後はどうなるかハクにも分からなかった。二度と現れず、世界を渡る事が出来なくなって自分の世界へ帰れなくなる可能性もある。
「……」
ハクはフィアの目元に溜まっていた涙が目を閉じた事で零れていた事に気付き、その涙を指で拭う。そして自分の足を掴む彼女の手を剥がして……誰も居なくなった闇の中、光を放つ扉は徐々に閉まり始めるのだった。
フィアが目を覚まして最初に見たのは、見慣れた天井であった。普段寝起きを過ごしている部屋であり、どうして自分がそこで寝ていたのかを考えた彼女は全てを思い出して身体を震わせ始める。まるで自分の半分を失った様な損失感と共に溢れる涙は蟀谷を伝って頭を置いている枕へ零れ、その布を濡らして行く。絶望とも言える感情が押し寄せる中、フィアは唯々泣き続けた。……その声を聞くまで。
「……フィア」
「!?」
自分を呼ぶ聞き慣れた声にフィアは目を見開いて飛び起きる様に身体を起こした。涙で歪む視界の中には居なくなった筈のハクが自分の横になっていた布団の隣で座っており、フィアはその光景に困惑しながら目元を擦る、涙が拭われ良好になった視界には変わらずハクの姿があり、フィアは何度も眼元が赤くなる程それを繰り返した。が、結果は変わらない。無表情に、だが微かに心配そうな表情にも見えるハクの姿がそこにはあった。
「な。何で……この世界から消えてしまったんじゃ……」
「……フィアが、言った。……私が居ないと……駄目だ……って」
「あ、ぁあぁ! そうだ」
「……ずっと……傍に居て……そう、言った」
「そうだ、そう言った! ハクっ!」
「っ! ……よろしく」
ハクの言葉を聞いて徐々に彼女の思いを理解し始めたフィアは先程とは違う感情に涙を溢れさせてその身体を抱きしめた。失った半身が戻って来ただけに飽き足らず、それ以上の存在となってこれからも一緒に過ごせる事実に幸福としか言い様の無い感情で満たされるフィア。自分の世界と使命を捨てて、自分と共にこれからを生きる決意をしたハクの言葉に彼女は顔を見合わせる為に離して笑顔で告げた。
「これから一生、私達は一緒だ! 今度離れようとしたら、呪うぞ?」
「……ん」
本の僅かに微笑んで頷いたハクの姿にフィアは再び強くその身体を抱きしめる。それからしばらくの間、フィアが満足するまでハクを抱きしめられ続けた。そしてそんな2人を部屋の外から数人が優しく見守り、感動の余り涙を流す者も居たが……それは余談である。
ハクがその世界に、フィアの元に残ると決めてから数日。改めてこれからお世話になる事等を飼い主でもあった少年に伝えた時、フィアが続く様に堂々と言い放った言葉をハクは忘れる事は無いだろう。
『これからハクの飼い主は私だ! もしも手を出したりしたら、呪うぞ!』
その日からハクとフィアが一緒に居る時間は今までよりも更に長くなった。1日の9割近くは一緒に居る程に。寝る場所も同じ部屋になり、お風呂も学校での時間も全部一緒である。……因みにハクはフィアと一緒に同じ学校へ転入済みである。場所が高校故に見た目違和感が大きいものの、それはフィアも一緒なので問題は無かった。
そんな一心同体とも言える間柄になったハクとフィアが迎えた平和な休日。何に急かされる事も警戒することも無いその日、フィアは布団の中で最近感じる様になった温もりを享受しながら目を覚ました。微睡みながら目を開けたフィアの視界にまず映ったのは、真っ暗な闇。柔らかい何かに顔を挟まれ、手は何かと繋いだまま。フィアは少し考えてからそれが何かを理解する。
「あぁ、ハクのか。……これは、良いな」
それは紛れも無い、ハクの胸であった。幼い見た目の割にあるハクの胸をフィアは過去に羨ましいと思った事が何度かあった。だが今では互いの物が自分の物と言える間柄になった為、フィアは羨ましいとは思わない。何故ならその胸はハクの物であると同時に自分の物でもあるのだから。……暴論である。
「……もう少しこのまま……」
「んっ……フィア?」
「! お、起きたのか。これは、その……」
柔らかく安心する温もりと感覚に顔を擦りつけて更に堪能しようとした時、ハクの声が聞こえた事でフィアは胸に顔を挟んだまま目だけを合わせる。ハク本人に気付かれた事がとても恥ずかしかったフィアは顔を赤くしながら言い訳をしようとして……優しく頭を包まれた事に目を見開いた。
「……別に……良い」
「なっ! それは、つまり……!?」
フィアの頭は恥ずかしさから一転、ハクが自分を受け入れようとするその姿に今よりも更に深い行為を想像してしまう。結果顔は真っ赤になり、思考がオーバーヒートする様に熱さで冷静で居られなくなったフィアは逃げる様にハクから離れて部屋を飛び出してしまった。居なくなってしまったフィアの姿にハクが首を傾げる中、その日家の庭で「破廉恥だ!」と叫ぶフィアの姿が目撃されるのだった。
フィアが望むのなら、ハクは身体を許す覚悟が出来ていた。彼女の為に世界に残り、彼女の為に生きようと決意したのだから。だがそういった行為にまだ抵抗のある彼女が求めない限り、ハクが何かをする気は無かった。が、朝の出来事を経て意識し始めたフィアは朝昼夕を共に過ごしながらも何処か何時もと違って余所余所しい様子であった。……しかしそれも夜になれば覚悟が出来た様で、フィアは洗面所の前で頬を叩いて気合を入れる。
「ハク! え、ええ、え、えっちするぞ!」
「……」
部屋に入って来て早々告げるフィアの姿にパジャマ姿のハクは布団の上で何も答えなかった。同じくパジャマ姿だったフィアは両手と両足を同時に出しながら明らかに緊張した様子で布団近づくが、ハクの傍に座った後に……固まってしまう。いざ行動を開始しようとした時、何をして良いか分からなくなってしまったのだ。そんな彼女を見てハクは小さく溜息をつくと、僅かに距離を近づけて何も言わずにフィアに口付けを行った。
「っ!」
「……落ち着いて」
一切経験の無いフィアと違い、嘗て渡って来た世界の中で襲われたりした経験のあるハクは少なくとも彼女より知識がある。故に緊張を緩和させようと告げたが、フィアはその行為を受けて呆然とした様子を見せた後、徐にハクの肩を掴んでそのまま押し倒し始めた。その頬は先程まであった照れとは明らかに違う赤みを見せ、その目はハクだけを映して。
「もっと……もっとだ」
「……フィ、ア? んっ……!」
様子の変わったフィアの姿に困惑する中、今度は彼女からされた口付けに驚きながらもハクはそれを受け入れ始める。唯唇を合わせるだけの行為から一拍置いて始まる舌の絡め合い。互いを求める様に何度も息継ぎをし乍ら口付けを繰り返せば、それだけで身体に熱が生まれ始める。抵抗しないハクの身体を押さえる必要は無く、フィアの手は徐にハクの来ていたパジャマを脱がしに掛かり始めた。前開きでボタンを複数個所止めるタイプのパジャマは1ヶ所ずつ外されて行き、やがて下着も付けていなかった為に朝フィアが顔を埋めたハクの胸が露わになった。
「これがハクの……おぉ!」
「ん、ぁ……」
目の前にある2つの膨らみに少々興奮した様子でフィアが両手を伸ばせば、握る力の加減に寄って指が沈む事で形が変わる。そこで朝の出来事を思い出したフィアはあの時の感触を再び感じる為、両手で谷間を広げた後に自らの顔を挟み込んだ。柔らかく暖かい感触が顔を覆い、幸福感にも似た何かを得ずにはいられなかったフィア。思わず更に求めるかの様に彼女は顔を挟んだまま、舌で胸の間を舐め始める。
「ひぁ!」
「気持ち良いのか?」
「……ぅ、ん」
「そうか。ならもっと舐めてやろう! はむっ」
「っ! んあぁ!」
フィアの苦手な悲鳴とは似て異なる嬌声。ハクが感じている証明であり、気を良くした彼女は谷間を中心にハクの胸に舌を這わせ始める。当然受ける快感が強くなったハクの声は更に大きくなり、フィアは攻め続けている内にハクが股を擦る様な仕草をしている事に気が付いた。経験は無くても知識なら少々あるフィアはそれが何を示しているのか分かり、顔を離してハクの隣へ横になり始める。そして片手で乳房を掴んだまま、片手を下へ移動させ始めた。
「こっちも触って欲しいのだろう?」
「……」
フィアの言葉に頷いて肯定した時、ハクの来ていたパジャマの下にフィアの手が入り込み始める。下は下着を着けており、その中に入ったフィアの手がやがて優しくハクの秘部に触れれば、それだけでハクの身体を大きく跳ね上がった。既に口付けと胸への攻めで濡らし始めていた秘部は受け入れる準備が出来ており、フィアは秘部の周りを何度か撫でた後にハクと目を合わせる。言葉にせずともその目が告げていた。『入れるぞ』と。
「ぁ、あぁ……入って……来るっ……!」
「狭いな。指1本だけなのにキュウキュウと締め付けて来る。これ以上入れるのは止めて置こう」
挿入され始めた指を感じるハクと、挿入した指に締め付けを感じるフィア。その締め付け具合から指を増やす事を止めた彼女はハクの様子を伺いながらゆっくりと輸送を開始し始める。入れたのは中指であり、細い指は奥へ入ろうとも処女膜を破るには至らない。が、ハクへ快感を与えるには十分である。
「んぁ! あっ! あ! フィ、ア!」
「もっと感じて欲しいのだ。私の指で、私の手で!」
フィアの指による攻めが徐々に激しくなれば、それに伴ってハクの限界が近くなり始める。力の入らない身体で縋る様にフィアの着ていたパジャマを握り、その目で絶頂が近い事をハクが訴えた時。フィアはハクの身体に覆い被さって口付けをした。と同時に乳房を揉んでいた指が乳首を摘み上げ、秘部に挿入された指が届く限り最奥を突き上げる。それは途轍も無い快感をハクに与え、絶頂への引き金となるには十分であった。
「っ! んんんっ!!」
絶頂に震えるハクの身体を自らの身体で感じ乍ら、フィアはハクをイかせたと言う事実に満足感を得る。だが大きな絶頂を迎えて荒い呼吸をするハクの姿は更なる興奮を呼び、フィアは愛液に濡れた手を抜かずにそのまま輸送を再開し始めた。
「ひぅっ! フィ、ア……?」
「まだ私は満足して無いぞ。今夜は寝かせないからな」
長い月日で溜まりに溜まったハクへの劣情が解放され、フィアはその後も抑えが効かなくなった様にハクを絶頂させ続けた。そしてそれは日が変わっても尚、終わる事は無かった。
翌日。布団から起きれなかったハクに罪悪感を感じ乍ら助け起こしたフィアは、全てを同じ屋根の下で生活する者達に聞かれていた事実を知って今度は羞恥心に苛まれる事となる。が、それでも1週間に1回は必ずハクとする様になるのだった。