※この作品はR-18です。

愛され過ぎた少女達   作:ウルハーツ

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【プラエデ】 ショウ

 ある日の昼下がり。特にする事の無かったハクは適当に陽の差した場所で日向ぼっこする事を目的に、人の姿でちょうど良い場所を探し回っていた。

 

 日差しと日陰がちょうど良い場所は簡単には見つからない。余り長い時間を探し回り続ければ、その内に日も暮れてしまうだろう。ハクが場所に悩んでいた時、そんな彼女の背後に突然1人のレッドが現れた。

 

「何をしているでござるか?」

 

「っ! ……ショウ」

 

 頭に三度笠を被ったその人物……ショウは手に刀を持ったまま、不思議そうにハクへ声を掛ける。ショウは背後に現れるまで気配を消していたため、ハクからすれば突然現れた様なもの。驚きながらもショウだと分かったハクは安堵して、日向ぼっこに適した場所を探している事を説明した。すると、少し考える様な仕草をしてから頷いたショウはハクの数歩前へ。

 

「良い場所を知ってるでござるよ。案内するでござる」

 

「ん」

 

 彼女の言葉にハクは頷いて、その後ろを着いて行く事にした。そうして辿り着いたのは、街から出て少し離れた外にある草原。日陰になる様な場所は何も無い草原だが、構わず進んだ先にあったのは1本の大樹とも言える大きな樹であった。広い世界に唯一あるその樹の存在感は大きく、ショウはその傍で足を止める。

 

「一度、猫になるでござるよ」

 

「?」

 

 ハクは言われるがまま、ショウの目の前で猫の姿に変わる。すると何も言われぬまま、腹部に手を回されて抱え上げられたハクは驚く間も無く地上から大きく離れてしまう。ただ持ち上げられただけでなく、ショウがその場から跳躍した事が主な原因であった。慣れた様子で樹の枝へ着地したショウは、枝から枝へ飛び移り続ける。やがて地上から遠く離れた樹の上部にある太い枝へ到着した時、そこは人1人が寝ても余裕がありそうな場所であった。

 

「ここでござる。中々良い眺めでござろう」

 

『……』

 

 満足気に声を掛けるショウだが、抱えられたハクは彼女の行動と自分へ襲い掛かった跳躍の負荷に反応する余裕が無かった。しかしショウは特に気にした様子も見せずに樹を背にして枝の上で座り込むと、ハクを膝の上へ座らせた。

 

「風も心地良い。眠るのには最適な場所でござる」

 

 樹の葉の隙間から吹き抜ける心地良い風が、2人の身体を撫でる。徐々に冷静さを取り戻したハクは文句を言いたげに目を細めてショウを見つめ、見られている事に気付いた彼女は軽く笑って返すだけ。その様子から察するに悪気は無いのだろう。ただ純粋に、良い場所を紹介しただけなのだ。

 

「っと。変わるなら変わると言って欲しいでござるよ」

 

「……ごめん」

 

 膝の上から飛び、太い枝の先側へ着地すると同時に人の姿に戻ったハク。突然の行動に一瞬焦って腰を浮かせたショウだが、すぐに安心した様子で再び腰を下ろす。太い枝は非常に丈夫で、子供とレッドが1人乗ったところで折れる気配は一切無かった。

 

「寝るならこっちに来るでござる」

 

「……」

 

 ショウが手招きをしながら告げる。猫とは違う人型になっても尚、膝の上に乗せるつもりなのだと気付いたハクは首を横に振って断ろうとする。しかし、一瞬の瞬きと共にハクは自分の身体が浮かんだ様な気がした。そして気付けばショウの膝の上で、彼女の身体を背凭れにする様に座らされていた。……ショウが行った事は至極単純。その場から動いてハクを抱え上げ、戻って座っただけである。ただそれを目にも留まらぬ速さで行っただけ。

 

「ふぅ……其方を抱えていると、不思議と心が落ち着くのだ。間違い無く安眠出来るでござるよ」

 

「……そう」

 

 腹部に手を回され、髪に顔を埋めてゆっくりと目を閉じたショウの言葉にハクは逃げる気も起きなかった。今まで下手に誰かと密着すれば襲われる事も多かったハクだが、相手が彼女の場合は安心出来る理由があった。ショウはレッドの特性上、常に重い睡眠欲に襲われているのだ。魅了の力が作用したとしても、睡眠欲の妨害で襲い掛かる程の暴走には至らない。つまりこのまま一緒に居ても、本当にショウは寝てお終いなのだ。

 

「お休み」

 

「お休み……で、ござる」

 

 既に眠気が襲っているのだろう。微かに船を漕ぎながらも、ハクの髪を撫でて答えたショウはゆっくりと目を閉じた。ハクも自ら彼女の身体へ身を預けて、静かに目を閉じる。そうしてそよ風が吹き抜ける枝の上で、2人は自然に目が覚めるその時まで眠り続けた。

 

 

 

 

 

 

「……ぅ、ん?」

 

 陽も沈み始めた頃。目を覚ましたショウの目に最初に映ったのは、茜色に染まった無数の葉だった。樹に背を預ける様にして眠っていたままなら、決して見る事の無い景色。寝起き特有の微睡みを感じながら、ふと感じた頭の柔らかさに気付いたショウはそこで全てを察する。

 

「ふふ、中々に良い眺めでござるな」

 

 少し視線を動かした時、その視界に映ったハクの寝顔を前にショウは静かに呟いた。

 

 現在ハクとショウの位置は眠る前と入れ替わり、樹に背を預けたハクの膝にショウが頭を乗せて枝へ横になっていた。ハクは身体を樹へ預ける様にして眠っていたため、目を開けた際に顔は映らなかったのだ。

 

 恐らく1度、ハクは眠った後に目を覚ましたのだろう。だがまだ深々と眠るショウを起こそうとは思わず、自然と膝を貸して……再び眠ってしまったのだ。茜色を背景に眠る幼き少女の姿は、ショウにとって幻想的とも言える光景であった。

 

「ん……ぅ、ん……」

 

「こうして其方と何時まで共に居られるのか。出会いがあれば別れがある様に、何時かそれぞれの道を行く時が来るかもしれないでござる……」

 

「……ショ、ウ……」

 

「っ! 寝言、でござるか。ふっ……せめて共に居る時は、拙者が必ず守るでござるよ」

 

 未だに眠るハクの頭へ手を置いて、その髪を撫でながら告げるショウの顔は慈愛に満ちていた。そして他の誰に言うでも無く、1人静かに誓いを立てる。

 

 それからハクが目覚める時まで、ショウは不思議と眠気に襲われる事は無かった。ただ優しくハクの様子を眺めながら、風を感じて心地良さそうに目を細めるばかり。そして陽が完全に沈み切った頃、微かに肌寒くなった事でハクは一時身体を震わせてから目を覚ました。

 

「おはよう、でござるよ」

 

「……ん。おはよう」

 

「もう夜になってしまったでござる。リーダー殿達に心配を掛ける前に、帰るでござるよ」

 

 ショウはそう言って借りていた膝から頭を上げると、枝の上で立ち上がってハクを見下ろしながら手を差し出した。ハクはそれに頷いて彼女の手を掴むと立ち上がり、言われる前に猫の姿へ変わる。そして枝の上へ落ちるよりも前に、ショウがそれを受け止めて……軽々と枝から枝へ飛び移りながら下へと降りて行った。

 

「あぁ、そう言えば言い忘れていたでござる」

 

「?」

 

 地上へ降りた時、ショウの腕から降りて人の姿に戻ったハクは突然言われた言葉に首を傾げる。すると、言葉を即座には続けずにハクの傍へ歩み寄ったショウ。やがて相手の温度が感じられる程に近くなった時、ショウはハクの頭に手を置いて優しく撫でながら口を開いた。

 

「其方の暖かく柔い膝の馳走、心地良かったでござる」

 

「……そう」

 

「また機会があれば、して欲しいでござるよ」

 

「別に……何時でも、出来る」

 

「ふっ。それは嬉しい事を聞いた。なら、これからも頼んで良いでござるな?」

 

「ん」

 

 ハクの頷きに始終微笑んでいたショウの表情が笑顔に変わる。

 

 既に陽が沈んだ事で、草原は薄暗くなっていた。危険な魔物も徘徊する為、逸れない様にハクとショウは手を繋いで街に向かって歩き始める。

 

 後日、再びハクとショウは樹の元へ訪れた。そして共に樹の上で昼寝をしてから、帰還する。……そこは互いに約束した訳でも無いのに、自然と他の誰にも教えない2人だけの秘密の場所となっていた。




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