ハクが普段過ごしているプライドには様々なレッドが所属している。そして当然の様に各々が所属する経緯を持っている。
アロエという名の女性もまた、ある経緯でハクがお世話になっているプライドへ在籍したレッドであった。リカオンの特性を発現した彼女の職業を一言で表すならば薬師である。彼女の手に掛かれば死に掛けた病人が翌日、スキップして動き回れる程度には回復する。そんな誰もが喉から手が出る程に求める薬を作る事の出来る彼女がプライドへ在籍する切っ掛けになったのは、同じ様に病人や怪我人を治す医者のレッドだった。
プライドの仕事に戦いは多い。怪我をする事も多々あり、医者は大忙しだ。そして戦う事が出来ても真面な戦力に数えられなかったハクは彼女の手伝いをしていた。その日は医者の知り合いである薬師に治癒薬を貰う為、ハクはお使いに出される事になる。……その相手こそが、アロエだった。
ハクの居るプライドに彼女と結ばれたくて入ったレッドは決して少なくない。人の姿で居る際のハクに動物の面影は無いが、何か共通するものがあるのか。それはレッド達にしか分からない事だ。だが彼女に惹かれる者は多く、アロエもその1人であった。いわば一目惚れ。何処かの元騎士団に居た愛が激しい女性と同じである。
お使いをした翌日。医者はアロエに呼び出された。そして昨日の使いが一体何処の誰なのかを問い質した。ハクが医者の所属するプライドの一員であると知った彼女はプライドのリーダーを探し出して自らプライドに入れて欲しいと直談判。医者を始めとした共通の知り合いも居た事で、アロエはそう時間を掛けずにプライドへ加入する事となった。
「……ふふ……ふふふ……」
「あれは、不味いかも知れないな」
部屋で巨大な釜を前に笑みを浮かべながら謎の液体を掻き混ぜるアロエの姿を扉の隙間から覗き込む様にして確認した医者は嫌な予感を感じて冷や汗を流す。伝えるべき相手なのはアロエが執着する少女、ハク。何とか気付かれない様にと離れようとした彼女は、不幸にも音を出してしまう。
「? そこに居るのは……ケイトですか? 私に何か用事があるのでしょうか?」
「い、いや。何でもない。ただ近くに来たから寄ってみただけだ」
「そうですか。ごめんなさい。今薬を作るのに忙しくて、歓迎は出来ないんです」
「大丈夫だ。もう私はプライドに帰るからな」
出来る限り顔には出さず、何でも無い会話をして医者はその場を立ち去ろうとする。しかし彼女がアロエへ背を向けた時、少し離れていた筈だった彼女の手が医者の肩を掴んだ。そこまで力の入っていない手だが、まるで金縛りの様に動けなくなってしまった医者へアロエは話し掛ける。
「まだ出来ていない薬に関しては、誰にも言わない様にお願いします……ね?」
「わ、分かった」
その声音は優しい筈なのに、背中に流れる汗が止まらない医者は頷いて約束する。下手に破れば自分が危ないと悟った彼女はハクへ告げる事を諦めた。
「ふふ、ふふふ……もうすぐ。もうすぐであの子は私のモノに。私だけのモノになるんです……ふふふ」
その日、ハクはアロエに呼び出されて彼女の家へ訪れる。優しいお姉さんの様に迎えるアロエの姿にハクは安心していた。ハクは知らないのだ。アロエが好きな人を自分のモノにする為に、手段を選ばない性格である事を。彼女は肉食獣の様に貪欲で、だが確実に獲物を捕らえる為に牙を隠すのが上手かった。時には好きな人の周りに居る人物を消す事すら厭わないが、それをしないのは最初に狙われたリーダーが必死に彼女の殺意を躱した賜物である。プライドのリーダー=ハクの飼い主だった為、真っ先に狙われたのだ。ご愁傷さま。
「ふふ、どうぞ」
「ん……いただきます」
アロエは椅子に座ったハクの前へ飲み物を差し出した。表面上はジュースとして出したそれだが、当然ただのジュースでは無い。アロエはこの日、ハクを完全に自分のモノとする下準備を始めようとしていた。……その為なら大好きなハク本人すらも騙す覚悟を、既に彼女はしている。ハクが受け取ったコップをゆっくりと口元へ近づける様を、アロエはジッと見続ける。やがてその中にあった液体がハクの口に流れ、喉を通った音を聞いた時。アロエは顔に出そうな笑みを抑えるのに必死だった。
「……ん、ぁ……変な、味」
「当然です。それはジュースなんかじゃありませんから」
「……ぇ」
「頭がボーっとしますよね? フワフワとして、気分が良くなって来ませんか?」
「よく、わかんない……けど、そう……かも」
ハクに見せて来た優しいお姉さんの皮を被りながら、僅かに見え隠れするアロエの本性。ハクの目は焦点が合わなくなり始めており、その思考も真面ではいられなくなり始める。アロエが作り上げた薬。それは一種の麻薬の様なものだった。身体に害は無いが、天にも昇る様な気分を得ると共に途轍もない依存症を発生させる。まだその事実を知らないハクは言われた言葉に頷くのみであり、自分が薬無しでは……アロエ無しでは生きられない身体となった事に気付けない。
「欲しくなったら、私のところへ来てくださいね。貴女が欲しがるものを、私は用意出来ますから」
微笑みながら告げたアロエの言葉が遠くに聞こえながら、やがてハクの意識は薄れていった。
それからハクの身体はアロエの思惑通り、薬を求める様になってしまった。最後に告げたアロエの言葉が残っていたのか、欲しい物を求めてアロエの元へやって来たハクは同じ物を貰う。そして気分が良くなったまま、いつの間にか気を失ってしまうのだ。目覚めた頃には帰る時間になっており、正常な思考でアロエにお礼を告げて帰宅。数日後にはまた欲しがり、アロエの元へ……その繰り返しだった。だが徐々にその間隔は狭くなっており、アロエは何度目かのハクが自分の元へやって来た時。彼女の欲しがるままに薬を渡さなかった。
「何度かあげてますけど、これも唯じゃ無いんですよ? ふふ」
「! お金、取る……? いくら?」
「そうですね……1200000程でしょうか?」
「……そんな、お金……無い」
「それでは、もうあげられませんね」
「!? ……お願い。薬、欲しい……」
アロエの提示した金額はハクが払える額では到底なかった。プライドのリーダーが調子の良い日に1日で稼げる額の凡そ10倍であり、ハクの手持ちは多い時でも10000程しか無い。それを知ったアロエは手に持っていた薬をハクから離す様に持ち上げてしまい、その光景を前にハクはアロエへしがみ付きながら欲しがり始める。そんな光景にアロエは顔がニヤケるのを必死に堪えながら、ハクに新たな提案をした。
「それじゃあ、お姉さんのお願いを聞いてくれるなら……お薬をあげましょう」
「! する。……だから」
内容を聞く前にハクは了承してしまう。それ程までに彼女は薬を欲しているのだろう。アロエは全てが思い通りになった事で、薬をゆっくりと降ろし始めた。
「私のモノになって、私だけを見て、私だけを愛して、私にだけ身体を許せるなら、これをあげます。元の世界へ帰る事も諦めるんですよ。飲んだ瞬間、受け入れたと判断します」
「っ! んっ……ゴクッ」
その約束は使命を放棄するのと同義。だが欲しがるハクの頭の中には薬の事しか無く、躊躇する事もせずにそれを受け取ったハクは薬を飲んだ。待望の頭がボーっとしてフワフワする感覚の中、何時もと違って薄れない意識で見る視界には……堪える事を止めたアロエの魔女の様な笑みが映っていた。
アロエの部屋。そのベッドの上では、部屋の主であるアロエとハクが横になっていた。
「ぅあぁ! あぁ! ひっあぁ!」
「ふふ、ふふふ。ふふふふっ!」
目の焦点が定まらないまま、生まれたままの姿で喘ぎ声を漏らすハク。そしてそんな彼女の身体に手を這わせて笑い続けるアロエ。
薬の効果は高い依存性と共に、正常な思考を奪っていた。自分が何をしているのか、されているのかも分からないまま、ハクはアロエから言われた通りに彼女へ身を捧げる。……それがまた薬を貰える唯一の方法だったから。
「誓いの、口付けをしましょう?」
アロエはそう言ってハクの唇を奪う。正常な判断する事の出来ないハクは口を閉じる事すら出来ず、彼女の舌を容易に受け入れる事になった。
「ん、じゅ……んぐっ」
「ん、はぁ……あろ、ぇ……もっひょ……もっひょ……ちょぅ、だぃ……」
「焦らなくても、あげますよ。貴女の望むもの、全てを。ですから、貴女の全てを貰いますね」
その口付けはハクの頭をより蕩けさせる。感じた気持ちの良さを更に欲してアロエに懇願すれば、彼女は嬉しそうに答えてから再び口付けを開始した。
口付けの最中、アロエはハクの乳房に手を伸ばす。アロエに比べれば小さくとも、確かにあるその膨らみを手で包み込んで揉み度に、ハクの口からは微かな喘ぎ声が漏れ始める。
「ひあぁ! ん、ちゅ……は、へぇ……気もひ、いぃ……!」
真面に話す事も出来ないまま、ハクは思った事を口にする。アロエはそんなハクを更に壊そうとする様に、身体を撫で回し続けた。
元々ハクの身体は人に比べて敏感な体質だ。だが薬を盛られた彼女の身体はそれ以上の感度となっており、アロエの愛撫に悶えた彼女は忽ち絶頂を迎える。声を殺す事も耐えようとする事も出来ないまま、みっともなく舌を出して絶頂する姿にアロエの笑みは止まらない。
「その醜い姿も、見るのは私だけです。もっともっと、愛して差し上げますからね」
無様な姿にアロエは頬に手を当ててそう告げると、愛用の杖を取り出した。そして彼女はハクの上に覆い被さると、自分とハクの間に杖を差し込み始める。
2人の胸の谷間に入り込んだ杖。上部の太い部分が2人の間で顔を出し、下部の細い部分が秘部の入り口に触れる。そしてアロエが動き始めれば、彼女の身体に押された杖がハクの秘部に擦りつけられ始めた。当然、胸に挟まった部分も揺れ動いて刺激を与える。
「んはぁ! ん、ひぃぁああぁ!」
「あん。ふふふ。気持ち、良いですね」
杖の上部がアロエとハクの胸の谷間を行き来して、下部が擦れる度にハクの嬌声が響き渡る。
「そろそろ、私も……っ!」
「あっ! あっ! アあアぁァぁァぁぁ!!」
その絶頂するハクの声は叫びにも聞こえた。普段の彼女を知る者が決して見た事も聞いた事も無いであろう、無様なイキ姿。それは後にも先にもアロエしか知らない。
薬の効果を消す方法は、制作者であるアロエしか知らない。ハクを求めて薬を盛った彼女がそれを許す訳も無く、ハクは永遠に薬を求めてアロエの元へ通い続ける事になる。支払いの方法は身体を差し出す事。薬を求めておかしくなってしまった彼女は躊躇もせず、アロエに全てを委ねるだろう。
「ふふ……ふふふっ、あっはははっ! 手に入れました! もう、私だけのモノです」
全てが思惑通りに進んだ時、アロエは自分の横で眠るハクの身体を抱きながら魔女の様に笑う。
「これでもう、プライドに居る理由もありませんね。誰かに邪魔をされない為にも、この街を離れましょう。貴女と2人っきりで生きていける、誰も居ないところへ」
数日後。ハクは忽然とプライドから、街から姿を消した。そして同時期に同じプライドに所属する薬師が1人、行方不明となった。