※この作品はR-18です。

愛され過ぎた少女達   作:ウルハーツ

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【プラエデ】 エヴァンテ

 ハクがその世界へ到着した時、誰よりも最初に出会ったのは1人の女神であった。見た目は12.3歳の子供でありながらも、過去に1度死んで女神に生まれ変わった経歴を持つ女神、エヴァンテ。……彼女はとても純粋で、世界の為に運命を操り、人々を幸せに導こうとしていた。

 

 突然世界へ現れた予期せぬ存在を警戒して、エヴァンテはハクの前へ姿を現した。そして世界で女神として名が知られているのを分かった上で自己紹介をして、ハクの反応を確認。自分の世界の人間なら信じないか腰を抜かす様な名前を聞いてもハクが一切の動揺を見せなかった事で、全く違う世界からやって来た事をエヴァンテは理解した。そして、別の世界との干渉を恐れた彼女はハクを自分が日々を過ごす場所へ連れて帰る事を決める。保護、という名目で監視監禁する為に。

 

 ハクが自分の世界で過ごす様になっても、エヴァンテのする事は変わらなかった。人間が幸せになれる様、その運命を操り続ける。……だが、彼女の思いとは裏腹に人は争い、殺し合う。時には何の罪も無い子供や善良な者達も死んでいく光景を前に、エヴァンテは涙を流してやり直し続けた。

 

 何度も、何度も……何度も、何度も……繰り返される人の運命。その終局はいつだって変わらない。血が流れ築き上げられる死体の山に、エヴァンテの心は傷つき続ける。彼女の世界で共に過ごしていたハクに出来たのは、彼女の心が壊れない様に慰め続ける事だけ。

 

 

 だが、度重なる人の死と業を見たエヴァンテの心はハクに守り切れるものでは無かった。

 

 

 エヴァンテは遂に全てを諦めてしまう。女神としての役割から目を背け、人々が死ぬ事も、争う事も、全ては彼ら自身が勝手に生み出した運命に任せる事にして。

 

 女神としての仕事を放棄した彼女は彼女を女神にした更に高位なる存在、全知全能の神の怒りを買ってしまう。運命を操る力を始めとして、殆どの力を奪われてから人の住む世界へ落された彼女は……それに反抗する事も、抗う事もしなかった。もう全てを諦めた彼女にとって、何がどうなろうと関係なかったのだ。彼女に残されていたのは、微かに残された力と、自分の世界へ留めていたハクの存在だけ。

 

 

 

 

 

 

 

「よし、倒した。って。落ちないんだけど! はぁ……ハク、そっちは?」

 

「……出た」

 

「はぁ!? 何でそっちは2連続で出るのさー!」

 

 散らかった部屋の中、クイーンサイズの大きなベッドの上で転がってゲームをするエヴァンテはハクの言葉に怒った様子でその小さな身体へ圧し掛かった。ハクはそれを予期していた様に躱そうとするが、動こうとした瞬間にエヴァンテへ身体が引き寄せられてしまう。そしてうつ伏せのまま、上に乗ったエヴァンテの体重に潰され掛ける。

 

「……重い」

 

「そっちが軽いんだよ。と言うか、乙女に重いとか言っちゃ駄目だと思うんだけど。あたし、ハクに言った事無いでしょ?」

 

「軽い……言った」

 

「それは褒め言葉だから良いの。はぁ……もう1回やろ」

 

 エヴァンテの言葉に頷いて返したハクは、身体を動かして彼女を背から降ろそうとする。だがモゾモゾと動いたエヴァンテはハクの腰を枕に仰向けになってしまった。言葉にせずとも、自分の身体を枕にしてゲームをするつもりだと察したハクは小さな溜息をついてからゲームに再び集中する事にした。

 

 力を奪われて人の住む世界へ落とされたエヴァンテは、何か特別な事をするでも無く自堕落な日々を送っていた。幸いにも微かに残された力は生活を豊かにするのに役立つものであり、毎日を寝て過ごす事が可能と知ったエヴァンテは最後の慈悲とばかりに与えられた仕事……管理する塔の一部を改造して自分の部屋を作り上げた。魔物の徘徊するその塔には時折、腕に覚えのある者達が挑みに来る。それを適当に対応、排除を繰り返しながら日々を過ごしていた。

 

「んー? はぁ。また何か来た」

 

「……行く?」

 

「別に、ほっといて良いよ。勝手に自滅するだろうから。っと、今度こそ……また出ない」

 

「……」

 

「今度は答えなくても分かるよ。出たんでしょ? この、この!」

 

「んにゃ!」

 

 塔へ挑む者の気配を感じても、エヴァンテは何もしない。画面の中で倒した敵から手に入った物を確認して、目当ての物が手に入らずにハクは手に入った事実に嫉妬しながらその腹部を突いた。思わず猫の様な声を上げて身体が反応したハクは、無意識にエヴァンテの頭を落とす様に身体を動かしてしまう。柔らかいベッドと言えど、勢いよく落ちた頭にエヴァンテは微かに目を回した。

 

「あたしの枕ー!」

 

「……違う」

 

 ハクとエヴァンテの容姿は何年経っても変わらない。2人が乗ってもまだまだ空きのあるベッドの上で、寝転がりながら追い掛けて来るエヴァンテからハクは逃げる。だが再びエヴァンテの力で身体を引き寄せられたハクは、簡単に捕まってしまった。

 

「ふぁ~。眠くなってきたかも」

 

「……寝る?」

 

「ぅん、それも良いかもね……ぐぅ、ぐぅ」

 

「……」

 

 背後から抱きしめられる様にして捕まったハクの耳元で、可愛らしい欠伸をしたエヴァンテはハクの言葉にゆっくりと声を小さくして……そのまま眠ってしまった。身動きが取れなかったハクは逃げ出す気も起きず、同じ様に目を閉じる。塔の入り口では挑んで来た者が自滅どころか謎の結界で入る事すら出来ず、声を上げる。だが、2人の居る部屋に外の声や音は一切届かなかった。

 

 

 

 

 

 

 あたしが全知全能の神に力を奪われて人間の住む世界へ落とされた時、後悔した事が1つだけあった。それはあたしにまだ力があった頃、ハクをこの世界へ縛り付けなかった事。力があったあの頃なら、ハクの力を奪う事も世界を渡れなくする事も可能だった。だけどあたしは突然現れたハクの目的を聞いて、警戒はしても力を奪おうとは思わなかった。脅威になるとは思えなかったのもそう。だけど何より、自分にとってここまで大きな存在になるとは思っていなかったから。でも実際は全知全能の神に落とされて今の様な生活になっても、あたしが心置きなく一緒に過ごせる唯一無二の存在になった。……だからこそ、後悔した。

 

『……私の世界に、帰る』

 

 初めて出会った時、問い質したハクの目的。それが今も変わっていないのなら、いつの日かハクはあたしの傍から居なくなってしまう。そうなればきっと、あたしはまた1人ぼっち。元々世界を管理していた頃は1人だったけど、ハクが現れて1人じゃ無くなった。辛かった時はあたしの心を包む様に接してくれて、ハクの暖かさを知った。そして、それが消える事を想像して、あたしの心は冷たく震えた気がした。

 

「女神の力が無くても、方法はあるんだけどね」

 

 ハクの事を警戒したあたしは彼女の力について調べた。だからこそ、脅威にならないと判断出来た。そしてその時、あたしは自然とハクの力と世界を渡る為の条件を知る事になった。全知全能の神とも違う、誰に与えられたかは分からない力。その条件は、ハク自身が処女である事。……つまり処女さえ奪ってしまえば、ハクはずっとここであたしと一緒に過ごすしか出来なくなる。

 

 無理矢理、強引に奪おうと思えば今すぐにでも簡単に出来る。だけどそれをやったら最後、今の様に彼女との楽しい日々は送れなくなってしまう。それじゃあ、本末転倒。あたしはハクと一緒に、楽しくずっとここで自堕落に過ごし続けたいんだから。

 

「はぁ。そうすると、落とすしか無いよね……ギャルゲーと現実は違うんだけど、あたしに出来るかな……」

 

 不安はある。だけど出来なかった時の事なんて、考えたくも無い。絶対にハクをあたしに惚れさせて、両想いにならないと……彼女が居なくなったら、きっと今のあたしは耐えられないから。




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