※この作品はR-18です。

愛され過ぎた少女達   作:ウルハーツ

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【プリコネR】 ユースティアナ(ペコリーヌ)

「ここに、あの子が本当に居るんですね」

 

 ユースティアナ・フォン・アストライアには大事な過去がある。ペコリーヌという名で孤独に長い時を過ごし、ある壮絶な戦いの末に奪われた王女の地位を取り戻した彼女は今、ある情報を頼りに人気の少ない場所へ赴いていた。傍には鎧を纏った者達が何人かついており、だが決して目立たない様に一定の距離を保っている。

 

「やはり危険です。ここは私達に任せて……」

 

「いいえ。もしここにあの子が居るなら、私が絶対に助け出します。皆を信用して無い訳じゃないですよ? ただ、私が助けなきゃ……駄目なんです」

 

「……分かりました」

 

 全身に鎧を纏った者が1人、近づいて声を掛ける。その声音は明らかに女性で、ユースティアナの言葉に少し黙った後に彼女はそれ以上何も言う事はしなかった。

 

 現在彼女達が居る場所は、国の法を破って行われる違法な商工会の会場前であった。そこでは本来扱う事を禁止された商品が出回り、オークションも行われているとの事。……そして、今回出品されるものの中にユースティアナが無視出来ない情報が一つ存在していた。

 

 ユースティアナがまだ幼く彼女がこの国の次期王位継承者として生活していた頃、王宮には一匹の翼が生えた小さな白猫が存在していた。それは王宮の昔を知る者なら大概の者が知っている存在。ユースティアナにとっても大事な家族の様な存在であったが、ある日を境に突然行方知れずとなってしまう。国中が総出で探した者の見つからず、彼女の秘密も目的も知っていたユースティアナは『もうこの世界には居ない』という可能性に嫌でも辿り着いた。

 

 それから長い時が経ち、孤独だった頃でもずっとこの世界の何処かに居る事を願って探し続けていた彼女の元に届いた情報。それはあるオークションに珍しい生き物が出品されるというものだった。情報がそれだけなら、彼女自身がここへ来る様な事は無かっただろう。だがその珍しいの詳細が『翼の生えた白い子猫で、子供の姿になれる』となれば無視は出来ない。ユースティアナが知る限り、それが当て嵌る存在は1人しか知らないのだから。

 

 何故今になって情報が流れて来たのかは分からない。本当に別の世界へ行っていた可能性を考えながらも、まずはその情報が本物であるかを確認する為にも。ユースティアナは商工会に潜入を開始する。最初は突入する策も講じられたが、最悪商品を持って逃げられる可能性も考えた結果の潜入である。

 

 目的であったオークション会場をユースティアナ達はすぐに見つける事が出来た。客として中へ紛れ、騒ぎ続ける会場内を見回して何処にどんな人物が居るのかを把握。何時でも行動が出来る様に準備をした上で、開始するのを待つ事となった。

 

「ようこそいらっしゃいました、お客様方」

 

「……」

 

 ステージの上。嫌悪感を感じる程に気色の悪い笑みを浮かべてお辞儀をする男。そして始まるオークションの出品物は、時に普通で時に許されない情報通りの違法性を感じるラインナップであった。そして中には人間の様な存在も売られており、買っていった人物が会場を出るのを確認した騎士達が目配せをしてから購入者の後を追い掛ける。商工会から離れた場所で違法な購入者を確保し、人間を解放するためだ。

 

「さぁ、次の商品は……未知の生物! その見た目は時にモンスターの子供にも見えるが、実際はなんと人間!? さぁ湧き上がれロリコン共!」

 

「……っ! ハ、ク」

 

 男の口上と共に黒い布に覆われた車輪付きの檻が運ばれて来る。そして一気にそれが捲られた時、中に入っていた足に鎖の繋がれた少女……ハクの姿にユースティアナは息を飲んだ。観客達の中にも僅かなどよめきが起こる中、ハクはスポットライトを当てられて眩しそうに眼元を覆いながら檻の外へ視線を向ける。その目には明らかな恐怖が浮かんでいた。

 

「さぁ、滅多にお目に掛かれない美幼女だぁ! 金額は500万ルピから!」

 

 会場内に札を上げて金額を叫ぶ声が複数回響き始める。10万ルピ程刻みつつも上がって行くハクの値段。そんな中、ユースティアナは周りの声も聞こえないくらいにハクをジッと見つめて固まっていた。周囲の気配も消え、やがてハクと2人だけの世界になった時。2人の視線は交わる。

 

「1250万!」

 

「1260万!」

 

「1300万!」

 

「1300万が出た! 他には居ないかぁ!?」

 

 値段が上がって行くのも遂に終わりが見え始めた頃、ユースティアナは自分を見て驚いた様に目を見開いた彼女を安心させる様に笑顔で頷いた。そして視界の男が1300万で売却を決める木槌を落そうとした時、ユースティアナは入場の際に渡された札を掲げた。

 

「1億、です」

 

「……へっ?」

 

 騒がしかった会場に響いたユースティアナの声。余りにも今までの流れ全てを無視する様に告げられたその膨大な額の宣言に、司会だった男も驚愕で固まってしまう。当然、彼女の宣言を更に覆す様な値段の宣言は出て来ない。……そしてようやく我に返った司会の男は動揺しながらも、木槌を再び手に取った。

 

「い、いいい、一億ルピでそちらのお嬢さんが落さぁぁつ!」

 

 会場内に響き渡る木槌の音。オークション会場での買い物は一人一品までと決められていたため、落札した彼女はスタッフに連れられて会場から離れる事になる。そしてその際、入る前に会話をした鎧姿の女性に視線を向けて気付かれない様に合図を送る。女性の了承する様に返した頷きを見て、ユースティアナはその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが商品だ。確認しな」

 

「はい」

 

 連れて来られた場所で、ユースティアナは自分が落札したハクと対面する。周囲には落札したにも関わらずお金を払わない客に何時でも対処する為か、屈強な男達が数人。だがその誰もが可憐な女性と弱々しい少女の姿に危険は無いと油断している様子だった。

 

 檻が開き、購入の証として首輪を渡されたユースティアナの元へハクは連れて来られる。ボロボロになったワンピースと痛々しい足の鎖。その姿にユースティアナは見ていられず、自分へ近づいて来た彼女の身長に合わせてしゃがみ込むと……抱きしめる。

 

「大丈夫。もう、大丈夫ですよ」

 

「……ぁ」

 

「お嬢さん、商品に触れるのはルピを払ってからにしてもらえるかい」

 

「……? なんか、外が騒がしいな」

 

 ユースティアナの行動を咎める男の傍で、何か異変を感じた別の男がオークション会場へと続く扉を開ける。次の出品が盛り上がっている様にも聞こえる声だが、何か違和感を感じて男が確認しに行く中、他の誰にも聞こえない声でユースティアナはハクへ耳打ちをした。そしてそれに弱々しくも頷いた時、痺れを切らした様に男が「お客さん!」と声を上げる。そしてハクと彼女を引き剥がそうとした時、一瞬の間にユースティアナは剣を抜いていた。

 

「なっ!」

 

「私の大切な子を商品にして売ろうとした罪、絶対に許しません!」

 

 近づいた男が吹き飛び、壁へ激突する。一斉に周りに居た男達が武器を抜いて警戒し始める中、ユースティアナは剣を振ってハクの足を繋いでいた鎖を断ち切った。まだ足に鉄の輪自体は残っているものの、ハクは自由に動ける様になったのだ。

 

「くっ、女だからって油断したか。金を払わない奴は容赦しねぇ!」

 

「此方だって、容赦しません! ハク、行きますよ!」

 

「……ん」

 

 男達は決して弱い訳では無い。用心棒の様な仕事をしている時点で、一般人に比べれば何倍も強いだろう。……だが、沢山の壮絶な戦いを乗り越えたペコリーヌ(ユースティアナ)の敵では無かった。そして、自らの力で無くとも彼らよりも確実に強い友の力を借りるハクも負けはしない。瞬く間に男達が倒され、ハクは息を切らしながら服装が元に戻ると共に倒れそうになる。が、それをユースティアナは地面へ激突する前に受け止めた。

 

「大分、弱ってるんですね。無理をさせてごめんなさい。王宮に戻ったら、一杯ご飯を食べて寝ましょう! そしたらすぐに元気一杯ですよ!」

 

「……あり、が……とう」

 

 笑顔で告げるその言葉に、安心し切った様に眠ってしまったハク。そんな彼女を横抱きに抱えて、ユースティアナはオークション会場へ戻る。

 

 会場内は正しく阿鼻叫喚であった。外と中で準備をしていた王宮の騎士達によって突入された商工会の会場。そこに居る者は例外なく捕らえられ、生きながらに売られていた者達は解放される。中には抵抗する者も居たが、練度の高い騎士団を相手に1人残らず帰り討ちにされていた。

 

「この、女がぁ!」

 

 突然、横から剣を片手に飛び出して来た男。その狙いはユースティアナであり、彼女は今ハクを抱えていた為に応戦出来ない。しかし彼女はそれが自分に届かない事を確信していた故に、怯える事も無かった。

 

「痴れ者が!」

 

 男の横から現れた全身に鎧を纏った女性がその剣を自らの持つ剣で受け止め、軽々と弾き返すと同時に吹き飛ばす。置いてあった椅子を轢きながら転がった男は、立ち上がる前に他の騎士によって取り押さえられた。

 

「助かりました」

 

「いえ、当然の事です。……ここは私達にお任せください」

 

 その言葉にユースティアナは頷いて返し、ハクを連れて会場を後にする。既に王宮へ帰る為の迎えは来ており、彼女はハクを抱えたまま乗り込んで王宮へ向かう。少し揺られながらも、抱えたハクを抱き締めたユースティアナの表情は優しさに満ちていた。

 

「話したい事、沢山あるんです。だから早く元気になってくださいね」

 

 

 

 

 

 

 

 ユースティアナによって救出されてから数日。王宮で手当を受け、食事や睡眠もしっかり取る事でハクの元気はすっかり元通りとなっていた。

 

 王宮での生活はハクが昔に居た頃と余り変わらず、だが幼かったあの頃と比べてユースティアナは明らかに忙しい毎日を送っていた。が、それでも彼女は合間を見つけては自由に行動している。ハクとの時間もその一つであり、ユースティアナは自分の自室で街が寝静まった真夜中にベッドの上に座ったハクと立ちながら向き合っていた。

 

「それじゃあ、教えてください。今まで何処に行ってたんですか?」

 

 寝る準備を整えていたが故に薄いネグリジェの様な服を纏ったユースティアナが、腰に手を当てて少し怒った様子でハクを問い詰める。元気になった事でハクが何時も通りの生活を送れる様になったと知り、今まで我慢し続けて来た質問を到頭ぶつけたのだ。それは彼女が誰よりも知りたかった事。既に世界を渡っている事は知っていた為にその答えは分かり切っていたが、本人の口から聞きたかったのだ。

 

 ハクは自分が別の世界へ渡っていた事。そしてその先でユースティアナとは全く関係の無い、この世界とも関係の無い者達と出会って使命を果たしていた事を説明する。そして数日前に嘗て訪れたこの世界へ戻った時、最初に出会った親切な人を信用して……裏切られ、売られるに至った。

 

「なら、また貴女は私の前から何時か消えてしまうんですか?」

 

「……」

 

 心配そうに聞いたユースティアナの質問にハクは答えない。その視線は下を向き、だが逃がさないとばかりに「答えてください」と続けたユースティアナ。やがてゆっくりと顔を上げたハクの瞳を見た時、彼女はすぐに理解した。ハクの瞳の中には明らかな迷いがあると。

 

「私、は……元の世界に……帰りたい。……でも」

 

「ハク……」

 

「ユーの傍に……居たい」

 

 吊り橋効果という言葉があるが、正しくハクはその影響を受けていた。裏切られて売られそうになり、自分に近づく最悪の未来に絶望していたところへ颯爽と助けに現れたユースティアナ。そんな彼女に元々幼い頃から親交があった故に心を許していたハクの彼女に対する思いは一気に親愛から変わったのだ。

 

「わ、私だってずっと一緒に居たかったんですよ? でも、突然居なくなってしまって……」

 

「……」

 

「だから、約束です。もう私の傍から離れないでください」

 

「……ん」

 

 ユースティアナのハクに対する思いは昔から特別であった。そんな何年も抱えていた想いが今この時実った事で、彼女は涙を落としながら告げる。そしてそれにハクが頷いた時、ユースティアナは喜びに涙を流しながらも笑みを浮かべて……ハクを抱き締めた。

 

「大好きです、ハク」

 

「私も……好き」

 

 お互いに好意を再確認して、そのままゆっくりとユースティアナはハクと共にベッドへ身体を倒した。決して今、彼女の頭の中に淫らな欲は無い。だが今こうして結ばれた瞬間、自然と身体が動いていたのだ。そしてそれをハクも受け入れ、2人は自然とキスをした。

 

 

 

 

 

 

「って事で私達、結ばれちゃいました!」

 

「結ばれたって、女同士じゃないのあんた達!」

 

「もうキャルちゃん。愛に性別は関係ないんですよ!」

 

「……そう」

 

「おめでとうございます。ペコリーヌさま、ハクさま」

 

 後日、ペコリーヌとして仲間にハクとの関係を報告した彼女は動揺と賛辞を受けながらも始終笑顔であった。




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