宿屋にあるシングルクラスの自室で眠っていたハクは突然聞こえて来る物音に目を覚ました。場所は部屋の壁を越えた向こう側。首を傾げながら壁へ近づいた時、そこへ微かな罅が入る。それに嫌な予感がして咄嗟にその場から離れた途端、壁が大きな轟音を立てて崩壊した。
「……ぇ」
「ふぅ……爽快だ」
破壊された壁が土煙を上げる中、徐々に見えて来る人影は額の汗を手で拭ってまるで一仕事を終えたかの様な仕草をする。セーラー服にも似た衣装に『砕』と書かれた眼帯を付け、水色の髪をした大金槌を持つ少女。向こう側もハクが見える様になったのか、嬉しそうに手を挙げて「おはよう!」と声を掛ける。
やがて轟音を聞きつけて宿の女将や、この騒動の下手人……モンスター娘のサイクロプスを仲間にした青年が姿を現す。破壊衝動を常日頃から抱えているサイクロプスの強行。宿の壁は青年が弁償する事になり、だからと言って即座に直せる訳もない。結果、ハクは破壊された壁を通じてサイクロプスと相部屋になる事が決定する。
サイクロプスは常に何かを破壊したがる性格である。だが青年は彼女が『それ以外に楽しい事を知らないから』だと思っている。そしてハクも同じ様にサイクロプスはまだ物を知らないだけであり、他の事を知る事でその衝動を抑えられるのではないかと考えていた。
「ハクって寝てばっかりだな」
「ん……寝るの、気持ちいい……」
「寝るのがか? それより何かぶっ壊した方がスカッとするぞ?」
「……おいで」
「むぅ……仕方ないな」
姿はハクよりも大きな少女だが、他の事を知らないサイクロプスはまるで全てを包み込む様に両腕を出して同じベッドへ誘うハクの姿を前に抗えなかった。小さな母に抱かれる様に身体へ腕を回されて、そのまま添い寝する様にベッドへ横になった2人。今まで1人部屋で過ごし、宿へ来る前も1人だったサイクロプスには初めての感覚であった。
「なんか、暖かいな……」
「……おやすみ……」
初めて誰かと寝る暖かさを知ったサイクロプスは、その感覚に身を委ねてハクと共に昼寝をする。
破壊しか知らなかったサイクロプスはハクと交流する様になって、色々な事を率先して知る様になっていった。外へ出て何もしないで日向ぼっこをする時もあれば、他の第三者と共に買い物やカフェで食事を取る事も。そうして数々の知識を取り込んでいったサイクロプスは、何時の間にか内に秘める破壊衝動を克服していた。
「ハク。今日はどうするんだ?」
「……寝る?」
「分かった! それじゃあ、寝よう!」
「……」
その代わり、彼女は四六時中ハクと共に行動する様になっていた。ハクから始まり、彼女を通して様々な事を取り込んだサイクロプスだが、それはハクへの依存にも繋がっていたのだ。昼寝をするのも、遊びに行くのも、全て『ハクがするから自分もする』という思考になっていたサイクロプス。そんな彼女の様子に気付いたハクはそれが良くないと分かっていた。何時の日か、世界を離れる時が来る。その時までにサイクロプスは自立している必要があるのだ。
ハクはサイクロプスが寝付いてから、起こさない様にその場を離れて仲間達へ相談する事にした。サイクロプスが破壊衝動を克服したものの、自分に依存しているであろう事を。それは仲間達も薄々気付いていた様であり、全員で話し合った結果……しばらくハクはサイクロプスと距離を取る事になる。
宿で過ごしていれば、必ずサイクロプスはハクの場所へ向かうだろう。故にハクは宿以外の場所でしばらくの間過ごす事で話は落ち着いた。スケルトン娘の棺桶や神殿の巫女にも誘われたが、ハクが最終的に選んだのは歓楽街の様に商売が盛んな第二地域のホテル。エリアリーダーが便宜を図ってくれる事にもなり、その日からハクは宿屋を離れる様になった。
数日後。
ハクは歓楽街のホテルで寝泊まりをしていた。その日も何時も通り、朝になって目を覚ましたハクはパジャマから着替えて部屋を出る。と同時に焦った様子でエリアリーダーのモンスター娘がハクを見つけて近づき始めた。
「ま、不味いよハク! あの子が……!」
「!?」
その内容はサイクロプスに関係する事であった。ハクが居なくなってから2.3日の間はサイクロプスも大人しくしていたのだが、昨日突然暴れ出した上に部屋を滅茶苦茶にして宿を飛び出してしまったとの事。抑えようとした数人が怪我までしており、譫言の様に『ハク、ハク』と名前を呼び続けていたと聞いてハクは身の危険を感じる。
「流石にここに居る事は知られてないと思うけど、気を付けないと……ひっ!」
「……ぁ」
「見ぃつけた……」
ハクの場所を明かしていない事など、サイクロプスには殆ど関係のない話であった。目に光を失ったサイクロプスがユラユラと揺れながら一歩ずつ近づいてくる。サイクロプスの脅威は出会った当初から高めであった。それに謎の力が加わり、今彼女を抑えられる存在はいない。それは宿屋での出来事が証明しており、エリアリーダーもその何処かおかしな姿に恐怖を感じていた。
「やっと、また一緒になれる」
「……」
「え、えっと……」
「今すぐ、消えろ。さもないと……ぶっ壊すよ?」
「あ、ぁ……ごめん、ハクちゃん!」
モンスターとしての本能なのか、サイクロプスの低く重いその言葉にエリアリーダーは立ち向かう事が出来なかった。ハクに謝りながらも、彼女を置いて逃げ出してしまったその姿を見送りながら、ハクは自分の腕を掴むサイクロプスに視線を向ける。その瞬間、一気に腕を引かれたハクは彼女に唇を奪われた。
「んっ!?」
「ん、ちゅ……じゅる……ぁ、はぁ……」
恍惚とした笑みを浮かべるサイクロプスは、ハクの居たホテルの部屋へそのまま有無を言わさず引きずり込んだ。そして軽々とハクの身体を持ち上げたサイクロプスはベッドへその身体を放ってしまう。大きなベッドの軋む音と共に転がされると、瞬く間に距離を縮めたサイクロプスはハクの上に圧し掛かる。
「……どうして……ここが」
「匂いがしたから。ハクの匂い。あたしを変えた奴の匂いだ、絶対に忘れない」
サイクロプスはハクの質問に答えながら、着ていた服を脱がし始める。今から何をしようとしているのかは誰が見ても明らかであり、だがハクはそれを止める事が出来なかった。下半身は完全に圧し掛かられており、両手も頭上に片手で拘束されていたのだ。元々サイクロプスは巨大な金槌を武器に扱う力自慢のため、ハクの力では微塵も動かす事が出来ない。
「今のあたしにしたのはハクだ。だから責任を取れ。ずっとあたしの傍に居ろ。逃げ出そうって考えてるなら、ぶっ壊してやる。あたしがハクしか考えられないみたいに、あたしの事しか考えられない身体にしてやる」
「ん、ぁ!」
前を脱がして、サイクロプスはハクの乳房を片手で鷲掴みにする。力を入れる事しか頭に無かった彼女が痛みを与えない様に手加減を出来る様になったのも、壊す事以外に様々な事を知ったからなのだろう。ハクに自分が学んだ事を見せつける様に、サイクロプスは目の前の小さな身体を優しく愛撫し続ける。
「あたしだけを見ろ。……
「ぁ! ク、ロ……」
「あたしの事をそう呼んでいいのもハクだけなんだ。ハクが、もうあたしの全てなんだ」
快感に身悶えながら彷徨う視線を自分へ強引に固定させて、サイクロプスはジッと目を合わせ続ける。互いの仲が良くなって自然と出来たサイクロプスの愛称。それはハクだけが使うものであり、サイクロプスは今後他の誰にもその愛称を許す事は無いのだろう。もう彼女の依存は引き返せない段階にまで優に到達していた。
「前のあたしはハクにぶっ壊された。だから今度はあたしがハクをぶっ壊してやる」
「ひぁ! ん、ぁ!」
乳房を揉む手が激しさを増す中、空いていた胸の突起にサイクロプスは口をつける。揉んで吸って舐めながらハクの両胸を刺激しつづければ、自然とハクの両足が快感に悶えて動こうとする。だがそれを自身の身体で制していたサイクロプス。圧し掛かりを少し軽くすると、彼女は太腿をハクの両足に割り込ませて股へ擦り付け始める。まだ脱がされていない下着が徐々に濡れ始めるのは、ハクが強く感じている証拠である。
頭上に抑えられていたハクの両手が解放される。サイクロプスが胸を揉みながら口で味わうのに必死になって、背中へその手を回したからだ。ハクは強い刺激にサイクロプスを抑えようと両手を伸ばすが、力の抜けてしまうハクでは無意味な行為である。快感からハクがしがみつく様にサイクロプスの頭を抱える姿勢になれば、それは大きな子供を甘やかす幼子の様な光景にも見えた。2人の関係は本当にそんな感じなのだろう。色々な事を教えたハクと、教わったサイクロプス。だが後者の依存がハクの今後の運命を狂わせる。
「クロ……来ちゃ、うっ!」
「あたし、知ってるぞ。イクって奴だろ? イっちゃえ、あたしにイかされろ!」
「ひっ、あぁ! ク、ロ……んぁぁぁぁぁ!!!」
遂に絶頂を迎えてしまった時、普段は聞く事のないハクの大きな声を聞いて最初は驚いたサイクロプスはその後嬉しそうに笑い始める。それは安心させる様な優しい笑みだが、彼女の手足は再びハクを感じさせようと攻めを再開した。
「待っ、て……まだ、イった……ばっか……っ!」
「イクと頭が真っ白になって、気持ち良くなるんだろ? 繰り返せばきっと、ハクは壊れる筈だ」
「ま、さか……」
「ぶっ壊すってさっきから言ってる。安心していいぞ。……その内、ハクの大事なアレもあたしがぶっ壊してやるからな!」
「っ!」
それが何を意味するのか、分からない訳がない。だがハクはこのままでは不味いと分かっていても、サイクロプスから逃げ出す事が出来なかった。
その後、ホテルには少女の嬌声が響き続ける。しかし防音設備の施されたその部屋へ誰かが助けに来る事もなく、他の誰にも知られぬままにハクの旅には終止符が打たれた。