あたしはRPGゲームでどうせ使わないのに、薬草を99枚買うタイプである。目の前に転がってる大量のエルシズロッドを見てそれを思い出した。
「朝から一気に魔力を使ってしまったわ」
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999/99999
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エルシズロッドを99本も作って何がしたかったのであろう。ハッと気が付いた時には、もう白木エリアの東側は一部完全にはげあがってしまったし、魔力はほぼ空である。まぁ一応魔力は回復できるのだが。
ちらりと顔を横に向け、今度は左の方に大量に積まれているスペルの実を見る。黒木エリアの北側に落ちているスペルの実は根刮ぎ持ってきてしまった。
あたしは取り合えず役に立つものは、根刮ぎ拾ってしまうタイプでもあるのだ。まぁゴブリンすら食べないようなので困ってる生き物はヴィータぐらいだろう。
あたしが持つ精液愛飲家の効果とスペルの実が持つ魔力回復効果の二つの効果で、一粒スペルの実を食べるだけで魔力がそこそこ回復するので、何個かスペルの実を口に放り込む。
「あー。苦い苦い。」
歯で潰し、中から出てくるねっとりとした汁を唾液でコーティングし、舌で直接触れないようにしながら喉奥まで運び飲み干す。
精液を飲むことも大分慣れて来てしまって、正直元男としてはかなり複雑な気分なのだが。
「…んぐ、ぷはぁ。うげ」
飲み干した後つい漏れるため息が精液臭く、思わず顔を歪める。
だが一応プラス効果しかないので、これからも積極的に精子を飲んでいこう……って成るわけがない!
でも魔力が尽きて屈強な山賊に犯されるなんてシーンになったら役に立つかもしれない。
今のところ山賊どころか人間すら見当たらないが。
「それにしても少し寒いわね。」
昨日一昨日と晴天が続いていたが、遂に曇ってしまった。何時もより光が少ない森の中は、少し不気味に見える。今夜は冷え込みそうだ。
仮拠点のウロを魔力で作った道具でなんとか綺麗にし、92本のエルシズロッドと大量のスペルの実を中にしまう。
そして代わりに、上から垂れてきて揺れている回転刃草の実を何粒か摘み取り皮袋に入れる。
ティラスの両手剣を背負い、7本のエルシズロッドを腰に挿し右手でエクスタシスロッドを握れば準備完了である。
「いざ拠点造りよ!!」
食料は西の彼方から飛んできたので、拠点をいい加減強化することにした。
住居において一番大切なのは何だろうか。巨木から降りながら考える。あたしは利便性だと思う。利便性という言葉がファジー過ぎて、それだけで大抵の事をカバーしてしまうからだが。その点今の仮拠点はどうだろうか。
地上数十メートルの地、リビングなしダイニングなしの0LDKである。挙げ句エレベーターどころか階段すら無い。
天使の小羽を手に入れたから階段は要らないかもしれないが、魔力の無駄使いは良くない。
「そうね、まずは階段を作ろうかしら。」
下まで降り、巨木を見上げながら呟く。巧くやれば螺旋階段を作れるかもしれない。試しに仮拠点にしていない巨木の外側を削り階段状にしていくことにした。
エクスタシスロッドを両手で掴み魔力を込めていく。許容魔力の量がエルシズロッドの時よりも多いためか、より複雑な物を創り出せそうな手応えを感じる。
上から掴むハンドルと後ろから掴むグリップを創り、ゆっくりと溝をつけた刀身を伸ばしていく。ある程度刀身を伸ばしたら、溝にエルシズロッドを嵌め込み、鎖状の刃を刀身の回りに展開させる。
「ひゃっはー魔装チェンソーの完成ですわー!」
試しに魔力を込めると、深紅のチェンソーが猛烈な勢いで回転をはじめる。そのまま巨木の外皮に触れさせると、全く抵抗なく刀身が沈んでいく。
強烈な震動を押さえ付けるような手応えを感じると思っていたので少し拍子抜けである。
気を取り直しそのまま巨木を切り刻んでいくと、
「はぁ、はぁ……効率最悪だわ。」
30段も作らないうちにやる気がなくなる。
そもそも何段作れば上に行くかとか何も考えていなかった。
「取り合えず梯子にしましょう」
一気に志が低くなったが、梯子さえ作れば一々魔力の刃を展開しながら登るよりは、楽になるので良しとする。
エクスタシスロッドで鮮血色の剣を作り、足と手を引っ掛けられる窪みを巨木の表面につけていく。これも丸太梯子の一種なのだろうか。
天使の小羽を使うことで、空中での作業がとても簡単にできた。
「何段あるか解らないけど、梯子の完成ね。」
拠点のとなりの巨木に、数百段からなる梯子が出来上がる。直接作らないのはフェイント的なアレである。断じて試作ということを忘れていたわけではない。
寝ている間に敵が近寄らない用に、直接梯子を作らなかったのである。
拠点の巨木の回りには超巨大回転刃草の結界があり隣の巨木から飛び移るにしても、あたしのように空中を自在に動けないと百舌鳥の早贄と化すので、安全は確保されるのだ。
「さて、次は小屋かしら。野晒しはそろそろ耐えかねるわ」
巨木の上はかなり広く、普通の木の丸太でログハウスを作ったとしても、十分に広さが余るのだ。
まぁログハウスの作り方なんぞ知らないのだが、最初は強く当たって後は流れといった感じで作れるだろう。
「でもまともな木材が無いわね…?」
白木エリアの木は魔力を流したら変化してしまうし、黒木エリアの木は大切なスペルの実生産地である。
巨木は切り倒したら大変なことになってしまうし、水林エリアにあった恐らく湿気まみれで家の材料に向いていないだろう。
「あー。森で木材に困るなんて…」
海で水分不足になったような気分に成りながら辺りを歩いていると、朝の散策の時に西の方で巨木が何本か倒れていた事を思い出した。
昨日恐らくだが超巨大回転刃草が飛来した時に、巨木を薙ぎ倒していったのだ。
拠点から少し西に進むと、何本か巨木が地面に倒れていた。ここで巨大回転刃草はバウンドでもしたのだろうか?
疑問はさておき早速エクスタシスロッドに、限界まで魔力を込めてヴェスタ色の超巨大ブレードを作る。
動かない相手ならこんなふざけた方法でもバラバラにできる確信がある。天使の小羽で空を舞いながら両手で超巨大ブレードを振り回し、一瞬で大量の角材を手に入れた。
「やっと、運び終わったわ…」
一番大変なのは拠点エリアに、作ってしまった大量の角材を持っていくことだった。
何か方法は無いか色々考えたが、何も浮かばず結局抱き抱えては、天使の小羽で空を駆ける脳筋論破である。
挙げ句何度も回転刃草が引っ掛かるので、フルストレスだった。途中でゴブリンがゴブゴブ言いながら近寄ってきた時に、思わず角材で叩き潰して一本だめにしてしまったのもしょうがないだろう。
「さて、小屋作りね。」
といっても雨風がある程度防げれば良いのだ。気楽に行こう。
角材に窪みを作り、交互に噛ませ組み立てながら快適ビ●ォーアフターでよく見た土台っぽいのを作っていく。
たぶんこんな感じだった筈だ。
次に土台に板を打ち付けていく。釘の代わりに、大量に余ったエルシズロッドを打ち込むことにした。
完成した土台の上に、角材を四本使い作った木枠を10枠ほど隙間なく積み上げる。そしてなんやかんやして
「エルシズウッドハウスの完成ね!」
100%木材から作られた小屋である。所々にエルシズロッドが埋め込まれていることによって小屋全体に魔装が展開できるだろう。たぶんすきま風が酷かったら使うと思う。
どうにか完成した小屋を感慨深く眺めているとあることに気がつく。
「……入口がないわね。」
ティラスの両手剣に魔力を込め、風下側の壁の一部を切り抜く。
「今度こそ完成ね!」
異世界転生三日目にして、自分の家を手に入れるあたしだった。