「ふぁぁぁ…。良く寝たわ。」
小屋の中のベッドで目を覚まし起き上がる。昨日は小屋作りに時間を割き過ぎたのでベッドはただの木の板だったが、久しぶりに冷たい風を浴びないで寝ることができた。
ベッドの脇に立て掛けてあるティラスの両手剣を背負い、エクスタシスロッドを手にして外に出てみると既に日差しが高くなっていた。
「窓が一切無いから日差しが入ってこなかったのね。」
ブラックカーテンを閉めて寝ると、いつも通りの時間に起きれないアレである。今度透明度の高い石ころでも沢山見つけたら、モザイクガラスを作るのも良いかもしれない。
そんなことを考えながら、袋から取り出した回転刃草の実を噛み砕くと口の中に血の匂いが広がる。
果たして口の中で起きるのが性犯罪と傷害罪だったら、どちらがマシなのかという永遠に解けない問題を頭の片隅で考えながら、今日のやることを考える。
「探索ならここから東と北の森にはまだ向かってないわね。」
だが北の森はNGだ。巨木の上からでも、ある地点を境に突然雪が積もっているのが見える。まともな装備を整えないと、魔物に殺られる前に自然に殺されてしまう。
東の森は上からはわからない。ただの緑葉が広がっている様に見える。因みに黒木エリアも白木エリアも上から見ると、葉っぱのせいで普通の森に見える。
「それとも小屋のグレードアップかしら」
まだまだ出来たばかりの小屋。壁の隙間に粘土を詰めたり、ベッドを改良したり、家具を作ったり、やることは沢山ある。
「もしくは血と精液以外の食べ物かしら」
サキュバスとヴァンパイアのハーフかな?と自分で言っておいて疑問が湧いてくる。色々と考えたが、やはり何もかもが足りない。
「小屋の強化も新しいご飯もやっぱり新しいところを探索して何かしらを見つけないといけないわね」
粘土なんて見つけてないし、ご飯はいい加減人類用の食べ物がほしかった。ウロにむかい袋に幾つかスペルの実を詰めて、腰にエルシズロッドを七本挿す。
あんなにあったエルシズロッドも残り30本になってしまった。
ふと気になって小屋に鑑定を書けてみる。
――――――――――――
エルシーマギハウス
作製者の魔力に満ちた全く新しい魔道具。中で過ごすと体力を回復させ、劣化した卵子が再生する。
攻撃力:50000
許容魔力:70000
―――――――――――――
一応良い効果が着いたのだろう。素直に喜ぶ。それにしても後ろにかいてある効果を見るに、晩婚化が進んだ国でも見つけたら高く売れるかもしれない。
この地を去る前に、大量のエルシズロッドを生産して持っていくことにした。あたしったらポジティブ。
さて気が反れてしまったが、探索に出掛けることにする。あたしは天使の小羽の紋章に魔力を込め、隣の巨木に飛び移ると、ゆっくりと梯子を降りた。
東へ東へと進み続ける。巨木エリアは落ちている枝すら常識はずれな大きさなので、結構歩いているときに邪魔である。なので実は地上から1mほど上の、空中を現在歩いていたりする。
「ギギッ!?ギャッギャッ」
お陰であたしを見つけたゴブリンは死ぬほど驚いているようだが。
「グギャッギャッ!」
あたしを睨み付けるゴブリンの肉杭がくっきりと浮き上がり始め、思わずため息が漏れる。
天使の紋章を手に入れる前より確実に、ゴブリンの興奮度とか、そういう状態になる早さとかが上がった気がする。
昨日あたしに角材で上半身を砕かれたゴブリンも、下半身を堅くしながら事切れていた。
「グギャッギャッ!ギギィ!」
あたしを見たまま腰をかくかく動かしていたゴブリンは、そのままハテた様だった。ゴブリンのそれ以上汚れることの無さそうな襤褸切れが更に汚れていく。
精液の匂いがあたしにまで届くが、もはや慣れてしまったので特に感じることはなかった。
きゅるるるぅぅ…
それどころか何時も食べているスペルの実と同じ臭いなので、嗅いでいてお腹が空いてきてしまうぐらいだった。近くの巨木の枝に腰掛け、袋から回転刃草の実を取り出す。
これも食べ続けていたら、戦場でお腹が空くようになったりするのだろうか。なんてことを考えながら実を幾つか食べる。
食事を終えて下を見ると、未だにゴブリンは此方を見上げていた。
あたしは……
何時まで見ているのか。少々苛ついたので……
少しショボくれたようにも見える目がどこか……
➡何時まで見ているのか。少々苛ついたのでイタズラしてやることにした。
天使の紋章に魔力を込め、ゴブリンに近づいていく。
ゴブリンは近くによってくるあたしを見て更に肉杭を膨らませる。
それを見てあたしは空中でしゃがみ、ゴブリンに脚の間が良く見えるように開いてみせた。
するとゴブリンは襤褸切れを捨て去り、
「グギャッギャッ!」
と叫びながら飛びかかってくる。
必死になって、腰についているソレを突き刺そうとしてくるが、全然届かない。
何度も飛び上がっては背中から落ちるゴブリン。
「ほらほらーこっちですよー」
その滑稽さに、面白くなったあたしは下着を脱ぎすて、ゴブリンの顔に被せる。
「グギャッギャッ!!ギャァッ!」
グッショリと濡れた下着を被せられて更に興奮したのか、先程より少しだけ高く飛べるようになったゴブリン。
それでも全く届かない。
諦められてしまっても詰まらないので、少しだけ高さを下げてみる。
近づいてきたあたしの大切なところを見て、ゴブリンの肉杭が限界まで膨れ上がり、暴発した。
ビュービューと勢い良く飛び出す白い液体があたしの脚や脚のつけ根をべったりと汚していく。
その瞬間、透明な床のような力場を発生させていた力が失われ、背中から落ちてしまう。
「ガハッ」
背中を強打し肺の中の空気が全て抜け、身動きが取れなくなる。
「ギギッ」
代わりとばかりにゴブリンのぬらぬらとした肉杭が打ち込まれる。
「ぃ…げほっ。ぃゃ…」
息の苦しさと犯される苦しさで悲鳴すらあげることができない。
「まって…」
――ちゅぷ、ちゅぷちゅぷ。
息ができないまま、自分の性器が蹂躙される音すら遠く聞こえる。
ゴブリンの腰がびくびくと跳ねる。
お腹の中が暖かく感じる…?
自分の子宮がちゅうちゅうとそれに吸い付く
目の前が徐々に暗くなり、何もかもどうでも良くなっていく。
これで終わり。
片手まで倒せるはずのゴブリンの苗床となる、屈辱的最後。
意識がブチりと千切れとんだ。
END6 脳死産卵器
➡少しショボくれたようにも見える目がどこか可愛らしいとか思う事は別に無く、エルシズロッドで深紅の長剣を作ると飛び降りて首を跳ねた。
「今日は東の森の探索です。ゴブリンと遊んでる暇は無いです。」
しばらく東に進み続けるとやはり、ある地点を境に生えている木が巨木から変化した。
「名付けるなら、青木エリアでしょうか…」
紳士服ではない。そこのエリアに生えている木達は、まるで海のように鮮やかな青色の樹肌を持っていた。
きっと名前はオーシャンツリーとかそんな感じに違いない、そう確信しながら鑑定を使う。
―――――――――――
ただの木である
ただの木である
効果:ただの木である
副作用:ただの木である
備考:ただの木であるただの木であるただの木であるただの木であるただの木である
―――――――――――
「……ッ!?」
無様に巨木に衝突することになっても構わず後ろに跳ね上がり、ティラスの両手剣を抜き放ち39950の魔力を込める。
「何も…起きない?」
青木エリアに未だ足を踏み入れて居なかったお陰だろうか。
不気味な静けさを保つ青色の木を視界に入れたまま、剣の構えを崩さずにゆっくりと後ずさり、巨木の後ろに隠れると足の天使の紋章に限界まで魔力を注ぎ込んで、左右に撹乱するように飛び回りながら逃げ出した。
……拠点のハウスのベッドの中で丸くなっているが、震えが止まらない。何だかわからないが、とても不吉な感じがあの鑑定結果からしたのだ。
「うぅ……東に行くんじゃなかった……」
気が付くと涙がこぼれていた。初めてゴブリンを殺したときも、スペルの実を食べたときも、超巨大回転刃草にミンチにされかけた時も泣かなかったが、ついに泣いてしまったようだ。
「んんっ!ぐすっ……ふぅ」
しばらく巨木の葉っぱ布団の中で震えが止まらなかったが、日が沈むころになってようやく落ち着いた。
「か、鑑定レベルが足りなかっただけよ!」
きっと、そうなのだ。人は未知を恐れる。気が付かないうちに異世界生活で貯まっていたストレスが、あそこで爆発しただけなのだろう。
「でもあそこは当分近づかない!」
そんな勇気を持つことはできなかった。
今でさえ、東の、あの木が生えていた方に視線を向ける気がしない。
「んでもって今日は寝る!」
小屋の外に出て、ウロにあるスペルの実を回収する気にもならなかったあたしはそのままご飯抜きで眠りについた。