「ていっ」
ピンク色の長剣でゴブリンの頚を跳ねて、ふかふかの不毛な地を東に進む。行きにレッサーグリフォンの群れを狩ったせいか、やたらゴブリンを見かける。
「ちゃんと不意打ちで倒しているけど、バレていないわよね?」
天使の紋章が何かオーラでも発しているのか、ゴブリンに見つからなくても一定距離近づくと膨れ上がるペニスを見て顔が少し赤くなる。
「それにしても多すぎないかしら。」
もう今更ゴブリンが何体来ても負ける気はしなかったが、死体処理が面倒になってきた。地面に空けた大穴にゴブリンの死体を蹴り落とす。
「魔法を学べるとしたらファイアーボールを最初に習うわね……」
叶わぬことを考えながらエルシズロッドで深紅の両手大剣を作り出し地面ごと切り刻むと、土を被せて目印に十字架っぽくした枝を突き刺す。
「腐敗した肉の落とし穴なんて絶対に落ちたくないわ。」
真っ赤になった地面を見ながら、はやく森の栄養になってくれることを願う。その後大量のゴブリンを処理しながら進み、ようやく巨木エリアまで戻ってきた。
「100体ぐらい倒したんじゃないかしら…」
腐葉土エリアを小鬼墓場エリアに名前を変更したくなるほど倒した気がする。
流石に疲れたので、巨木の木陰で休んでいると
ピロリン♪
と脳内に音が鳴り響く。
「まぁ、あれからけっこう戦ったものね。」
警戒のために木上まで登ってから、久しぶりに全鑑定能力を発動させる。
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氏名:エルシオーネ・イル・ステアリート・エキュ
性別:女性【処女】
Lv:16➡17
SP:0➡1
年齢:14
生理周期:18
身体状況:安全日 精液中毒
肉体開発度:120
子宮状況:未使用且つ屈服済
称号:精液愛飲家 穢れ無き者
パラメータ
体力:50
持久力:11
筋力:30
技量:35500
敏捷:20000
攻撃力:50000
防御力:25
魔力:99999
生体スキル
天使の加護Lv3
羞恥の呪いLv1
霊獣契印(2刻)Lv1
羞恥魅了の呪いLv1
少女性徴の呪いLv1
生殖力アップの呪い(+10)Lv1
魔法キーLv1
避妊魔法強制無効化Lv1
魔法キー強制解放Lv1
危険日強制告知Lv1
鑑定能力Lv4➡Lv5
戦闘スキル
血風魔導暗殺剣Lv1
魔装精製Lv30
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色々と変わった気がするけど、前回のステータスを全然覚えていないから、何が変わったかよくわからない……ッ!
でも戦闘スキルがやけにスッキリした気がする。
取り合えず見覚えの無い項目に更に鑑定重ねることにした。
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称号:穢れ無き者
効果:肉欲混じりの悪しき感情を弾く
備考:肉も魚も食べずに過ごす修行者が希に手に入れる清らかな心を表す称号。悪しき感情は所持者に届かなくなるだけで、消滅するわけではない。
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この称号が精液愛飲家の隣にあるのは笑ってしまう。穢れまくってるんですがそれは……。好きで肉や魚を食べなかったわけではないのに。というかあたしは清らかな心を持っているのだろうか。
まぁそれはさておき、効果を見るに羞恥魅了の呪いのレベルの上昇を完全に押さえてくれそうだ。
「でも悪意に鈍感になりそうわね……」
良く漫画などで見た聖女がぽやぽやとしたキャラだったのもこんなスキルを持っていたのかもしれないが、自分が悪意に気付けないぽやぽやキャラになるのは恐ろしい。
「一応称号ってON/OFF切り替えられるのね……。」
まことに残念ながら精液愛飲家はプラス効果しか無かったからOFFにすることを考えたことは無かったが、穢れ無き者は少々効果を発動させたままだと危険な場合も有りそうなので、悩んでいたら効果を切れそうな手応えが返ってきた。
「取り合えずこの森では、殺すか殺されるかだからONのままで良いわね…」
恐らくこの称号が足を引っ張るのは笑顔で近づいてきて、後ろ手で媚薬を染み込ませたハンカチを持っているような人間に気が付けなくなることなのだ。
ゴブリン達は笑顔でやって来ても殺す。
「やっとこれのお陰で正面からゴブリンを倒しても大丈夫ね。」
ゴブリンからの肉欲100%の悪意で羞恥魅了の呪いのレベルが上がることを怖れて、全て暗殺めいた殺しをこなしてきたが、この称号のお陰で真っ向から戦える。
「願わくはもうちょっとはやくこの称号が欲しかったわね。」
ゴブリンの群れとも言える大群を相手に、一度も視認されずに殺しきった疲れがよみがえってくる。
「お陰で戦闘スキルがなんかやばいのになってるじゃない……」
――――――――
血風魔導暗殺剣Lv3
極めて高い魔導技術を要する剣を用いて行われる暗殺者の剣術のなかでも切断・出血に特化しているもの。
効果:与えた傷が癒えにくくなる。
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「そう言えば戦闘スキルを鑑定したのは初めてね。」
鑑定しなくても意味ぐらい解ると鑑定していなかったが、ちゃんと効果を持っているようなので今度から戦闘スキルも鑑定しておかないと危ないかもしれない。
一通り鑑定を終えたので木から降りて東へ向かう。
「巨木エリアはなんか平和ねー」
上から差す日差しが、巨大な葉で散らされて優しい木漏れ日になっているため、魔物がうろつく辺境の地だとしてもどこかくつろげるのだ。
「「「「「「プギィィィィ!!!」」」」」」
くつろげるのだ。
「あーもうっ。今日はヤケに魔物が多いわね。」
進行方向に大量のオークが隊列を組んで歩いているのを見つけ、咄嗟に身を隠す。様子をうかがってみると、皆戦鎚を構えブヒブヒと言いながら北の方へ進軍しているのが見える。
「何体要るのよ……」
流石にこの数のオークを正面から倒しに行ったら死ねると思う。横に3体、縦が木に隠れて全貌がみえないが、少なくとも20列は見えるから60体は要る……。
60体と聞いて少ないと思うと感じただろうが、そもそもオークは5.6メートルもあるのだ。威圧感がとてつもない。
「というか白木エリアの木を根刮ぎ奪ったのはこいつらね。」
装備している防具は個体によって異なるが、戦槌は皆白い木製の棍棒だ。今までどこにこんな群れが隠れていたのかは解らないが、このまま無傷で去らせるのも納得が行かない。
「最後尾から何列か刈り取ろうかしら……」
延々と延びていくオークの波を巨木の枝からこっそり伺う。……相変わらず死体の処理がネックだ。
もし気付かれた時、死体を処理しないで撤退することになる。四体のオークの死体であんな化け物が生まれたのだ。何が生まれるかわからない。
「うーん、このまま見逃すしか無いのかしら……」
考えている間もオークの波は途切れず北に流れていく。でも経験値的に何列か切り取れれば美味しいのは間違いない。オークズウッドクラブも回収できる。
取り合えず、最後尾に回ってみるとこにした。
オークの長蛇を遡り続けて数分、ようやく最後尾が見えてきた。
途中、巨木から飛び移るときに足を滑らせて焦ったが空中を蹴れるあたしにはなんの問題もなかった。
それよりも大変なのは、
「60体じゃ済まないわね……。途中から数えただけでも500体ぐらい居たかしら……」
思わず声に出して呟いてしまう。
どうやって食料を確保しているのだろうか。取り合えず生命豊かな巨木エリアで、全く生命を見かけなかったのはアイツらが原因と断定して良いだろう。
まともな狩りで群れを維持できるとは思えない。
恐らくあのオークの群れが、ここらの頂点なのだ。
そこまで考えて、疑問が湧く。アイツらのトップはどこにいたのだろうか。オークリーダーなり、オークキングなりそれらしきものは全く見当たらなかったが。
巨木の枝に隠れながらオークの波が途切れるのを待っていると、歩いているオーク達の装備が変化しているのに気がついた。
これまでほとんどのオークは皮の鎧や、ぼろ布を纏い白木のハンマーを装備していたが、最後尾集団のオークは金属でできたフルプレートを纏い、手には鈍色に光る槍が握られている。
間違いない、ここが本隊だ。
バレないようにうかがっていると、その中に一際目立つオークがいた。
口からは二本捻れた角の様な牙がはみ出ており、身体や腕の太さも周囲のオークより倍大きい。
普通のオークでも5、6メートルくらいの大きさなのにデカすぎないだろうか。
ソイツが装備しているのは、棘の装飾が施された禍禍しい鎧に同じくトゲトゲの盾、それらと対称的に神聖さすら感じさせる黄金の片手半剣だった。
まぁ、埒外なオークの大きさだから片手半剣に見えるだけで、あたしが持てば間違いなく両手特大剣になるが。
――――よこせ。
ソイツがもつ黄金の剣がなんとなく、欲しいと思った。
別に魅入られたとか、そういう感じではない。
貰ってやろう、ソレぐらいなぜか傲慢な感情が湧いてきたのだ。
まだゲーム感覚が抜けていないのかもしれない。
なんとなく強そうな装備が目にはいって、あたしもそれがほしいと幼稚な心が騒いでいる。
「よし盗もう」
別に戦って勝ち取る必要はない。奪って逃げてしまえばいいのだ。空すら駆ける俊敏なあたしを、オークが捕まえられるとは思わなかった。
ティラスの両手剣に魔力を込め、巨木から静かに飛び降りる。
この群れに襲いかかってくる存在なぞどこにもいなかったのだろう、誰もあたしに気が付いていなかった。
『GOBAAAAAAAAA!!!!!!!!!』
魔力を込めたティラスの両手剣は、一際大きかったオークの上半身を鎧ごと完全に切断していた。
――案外やれるわ。
事切れる巨大オークから黄金の剣をもぎ取り、今だ呆然としているフルプレートを装備したオーク達を見てくるりと一回転。回転斬りで上半身と下半身をサヨナラさせる。
此処に来てようやく周りオークが突っ込んでくるが、その前に必死になって切り捨てたオーク達をミンチにする。
「死体の方が怖いわっ!」
一番強かったはずの味方の死体を切り刻むあたしの姿に怖じけついたのだろうか、一瞬立ち止まった隙を見逃さずあたしは空に逃げた。