「
空中に鍵を突き出し、捻る。
脳内でガチャリと音がしたと思うと、目の前にウィンドウが表れた。
「あぁ、そういうタイプなのね。……鍵要るかしら?」
試しにエルシズロッドを表示されているウィンドウに押し当てると、少し抵抗を感じたあと手に持っていたエルシズロッドは無くなり、代わりにウィンドウの中にエルシズロッド×1と表示されていた。
「これはどうかしら?」
落ちていた空間樹の欠片を何個か拾い倉庫に入れてウィンドウを見ると空間樹の欠片(壊)×6 空間樹の欠片(淫)×1と表示されていた。
「早速汚染されたのね……。」
今度は取り出してみる。空間樹の欠片(淫)と表示されている所を見て、手に出すイメージをした瞬間、手にはピンク色の木の破片が握られていた。
今度は同時に三つ出してみる……。
そうやってイメージを変えて色々と試していくと、
「こんな感じかしら?」
何回か試していると何となくわかってきた。
おそらくあたしを中心に90cmぐらいまで自由に物の出し入れが出来る。同時に出し入れるのは9個までだった。
「倉庫のLvが9だからかしら?装備品についているスキルレベルって上がるのかしらね…」
首にぶら下げた鍵をつまみながら考える。同時に出し入れするのは9個もあれば十分だが。距離はもう少しほしい。
まぁ装備のスキルレベルが上げられるのなら、もっと優先すべき物があるかもしれないが。
「まぁ、こんなところで良いかしら。」
空間倉庫の確認を終えて、探索を再開する。
青い回転草と戦った所から少し進むと、破壊跡がついに途切れ青い木々が生えていた。
「ついに破壊されていない空間樹を見つけたわ。」
早速リベンジとばかりに鑑定を行う。
――――――――
空間樹
全てが空間を越えて繋がっている樹木。
効果:光合成で空間魔力を生み出す。
副作用:空間に負荷をかけるため、生物に忌避感を引き起こす。
備考:対になる時間樹と掛け合わせると時空樹になる。
――――――――
「なにこれ、よくわからないわ……」
多分、今のあたしには役に立たないのだろう。地面から引き抜くと繋がりは断たれる様なので、何本か空間倉庫に入れておくことにした。
あたりの残骸を意味もなく空間倉庫にしまい終わると、かなり太陽が傾いていた。
「もう日が沈みはじめたのね。」
午前中は雨でゴロゴロしていたからか、今日は一日が終わるのが早い。拠点に戻ることにした。
戻る道は破壊し尽くされた直線。特に意識しなくても迷わない便利な道である。しばらくは巨木も見えない地平線を眺めながら進んでいるとブヒブヒ言っている集団を見つけてしまった。
慌てて空間樹の残骸に隠れる。こんなところに何しに来たのだろうか。前に見える集団は30体ほどの弱そうなオーク達だった。
「プレートメイルをつけていたオークリーダーは居ないようね……」
襤褸切れと棍棒、粗末な木の盾を持った集団を見つめる。このまま隠れていると日が沈んでしまう。
赤みが増す空の下、オーク達の鳴き声が響く。
「よし、倒してしまいましょう。」
エルシズロッドから深紅の弓をつくり、腰に吊るエルシズロッドを丸太ほどの矢にする。
この前見たオークの軍隊を思い出すと、ここで少しでも削っておくことは良い作戦に思えた。
「それにレベルアップも大切だわ。」
前世では持ったことすら無かった長弓の使い方が当たり前のようにわかる。
足の位置を変え、腰を落として矢をつがえようとしていったん止める。
「こっちで良いわね。」
弓をエクスタシスロッドにかえ先程より頑強な物を作り出し、弦に魔力を流したティラスの両手剣をつがえる。もちろん片手では摘まめないので手に魔力を込め、六本目と七本目の指を作り出し握る。
「魔力ってほんと、なんでもありよね。」
自分でやっておいてだが思わず呆れる。そのまま魔力を流し込み、オーク集団の土手腹を狙い引き絞る。
「頭を狙わなくても、やっぱり両断されたら死ぬわよね」
解き放たれたティラスの両手剣が鮮血色に輝いたと思うと、先頭に居たオークに突き刺さり、全く減速する事なく貫通し、数匹のオークのお腹を風通し良くすると彼方に消えていった。
「プギギギイイイイキギリリリ」
断末魔の叫びと残されたオークの悲鳴がうるさい。
どうやら端の方に居たオークが数匹難を逃れたようだ。
今度こそエルシズロッドをつがえ、たんたんと撃ち抜いていく。
「これで終わりかしら。」
何処からか飛んでくる赤い矢に仲間が次々と倒されて恐怖したのか、あらぬ方向に走り始めたオークの膝裏を撃ち抜き、2射目で地面に縫い付けて殺す。
「ちょっと、ティラスの両手剣の切れ味を舐めていたわね……」
飛んでいったティラスの両手剣の方をみると、残骸を貫通し、ぽっかりとあいた穴の奥に微かに光っているのが見えた。
「こめた魔力が切れる前に回収しなきゃね。」
残骸を飛び越え、回収しに行く。
大量のオークと残骸をくり貫き込められた魔力を減らしたのか、ぼんやりとした光を放ちながら空間樹の残骸にティラスの両手剣は刺さっていた。
両手で魔力を込め残骸を切り裂きティラスの両手剣を取り出し、背中に背負う。
かなり暗くなって来たのでこのまま拠点に向かいたくなるが、いったん引き返さないといけない。
「30体以上のオークでアンデッドが産み出されたら間違いなく死ぬわね。」
そう呟きながら戻ると、ソイツは立っていた。
『プルギュリリリィィィィィィ』
青い光を纏いながら、こん棒を振り上げる30メートルぐらいの巨大豚鬼。
「早すぎるわ……困ったわね。」
質量至上主義か知らないが、オークはやけにアンデッド化すると強くなる。今回は回りに漂ってた空間魔力を吸収した感じなのだろうか。
そんなことを考えながら全速力で足の間を抜けようとするが、大き過ぎて股下が遠い。
走りながら上を見てみると、アンデッド化して更に知力が下がったのか、巨大オークは明後日の方向にこん棒を降り下ろしていた。
ズドン
衝撃波が、爆心地から広がる。
地面から空気を伝わってあたしまでたどり衝撃波は、154㎝の身体を突き上げた。
「んひぁっ」
激しく揺さぶられ、ゾクゾクとした痺れが全身を駆け抜ける。こんなときに感じてしまうなんて、泣きたくなるが今は命の危機である。
あたしは集中し、なんとか股下に潜り込んだ。
もはや建造物にしかみえない足を紅の長剣で切りつける。バチィと音がして、化け物が纏っていた青い光が薄れる。
「なによ、あの草より魔力少ないじゃない。」
追加の深紅の長剣を作り出し、足に突き立てようとしたところで風切り音が聞こえ、後ろに飛び退く。
かわした武器の正体は巨豚の股間から伸びていた生殖器だった。
「気持ち悪いわね……」
思わず切り飛ばすが、切断面から大量の精液がどぼりどぼりとこぼれ始める。
「うえぇぇっ。どんな生態よ。」
切断面から大量の精液を流しながら再び振るわれる肉の鞭をかわし、避けきれない精液を空間倉庫で防ぐ。
「倉庫が孕みそうね……。」
かわした生殖器を根本まで縦に割り、降り注ぐ精液を全ての空間倉庫に流し込む事で防ぎ、今度こそ化け物の魔力を削り飛ばす。
全ての魔力を削ると、アンデッドは灰になって崩壊していった。
「はぁ……魔力が少なくて助かったわ。」
残されたオークの精液の残り香に顔を顰めつつ、そう呟いた。
魔力が沢山有ると、アンデッド化が早くなるのかもしれない。
「今度から死体は空間倉庫に入れてしまいましょう……」
こんなにアンデッド化が早いとさすがに参ってしまう。
とぼとぼと拠点に戻ったあたしは、バタンとベットに倒れ眠りについた。