目を覚まし、緩めていた貞操帯を閉め直し鍵をかける。
寝てる間に排出される老廃物を浄化で消すために、寝てる間も完全には脱ぐことができなかった。
「そろそろこの世界に来て一週間かしら」
まともな食事と風呂と寝床が懐かしく感じる。
寝る前に空間倉庫に入れておいたスペルの実を取り出し、鑑定する。
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スペルの実(淫)
効果:魔力微回復
副作用:発情する
備考:食べると発情Lv4を引き起こす
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「確率で発情だったのに悪化してるわね……」
この倉庫に入れたら食料はダメになる。少し悲しくなるが解りきっていたことだった。そのまま少しピンクの色が混じったスペルの実を食べる。
じわりと身体が熱をおび始め、動悸が激しくなる。
「Lv4の発情でこれなのね……」
身体の機能が勝手に作動されたような感じがするが、心は冷静のままだった。
何も考えないで自分の身体を使い人体実験をしていたが、Lvが上がると心にも作用するかもしれない。
「寝起きのせいか少し考えなしだったわね……」
身体の熱が引くまで10分ほどかかった。
「さて、装備の方はどうなったかしら……」
食料に発情スキルがつくのは覚悟していたが、装備につくかが解らなかったのだ。エルシズロッドを取り出して見てみる。
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エルシズマジックロッド(淫)
攻撃力:250
許容魔力:1000
保有スキル:発情Lv8
備考:敵に発情Lv8を引き起こす
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「……?一応強化なのかしら。てっきり使うとあたしが発情したりするのかなっておもってたけど。」
これからは予備のエルシズロッドを全部空間倉庫に入れてしまっても構わないだろう。ティラスの両手剣は入れる気がわかないけど。
「それにしても、空間倉庫ってどれくらいの大きさまで入るのかしら。」
昨日の巨大アンデッドオークが降り下ろしていた巨大こん棒とか戦闘中に奪って倉庫に入れられたら便利かもしれない。
結局あのこん棒はオークが死んだあと灰になってしまったが。
「例えば、この小屋とか入るのかしら?」
外に出て、空間倉庫に入れてみる。すると目の前からあたしが作った小屋が消え去り、落ち葉だけが落ちていた。
空間倉庫のウィンドウを見てみると、エルシズマジックハウス(淫)と書かれていた。
「あ……」
どうやら桃色空間倉庫は食べ物、武器、魔道具、素材、全て構わず発情スキルを付与してしまうようだった。
慌てて空間倉庫から小屋を取り出すと、茶色の木の小屋が潰れかけのセンスの無いラブホテルの一角みたいなピンクの小屋になっていた。
「これ、下手したらもう住めない……」
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エルシーマギハウス(淫)
攻撃力:50000
許容魔力:70000
保有スキル:発情Lv8
備考:敵に発情を引き起こす
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「……」
前回鑑定したときはスルーしていたけど、なぜ家に攻撃力が表示されているのだろうか。これで殴りかかればいいのだろうか。確かに大量のエルシズロッドを埋め込んであるから武器に出来るかもしれないが……
色んな考えが頭をよぎるが、
「取り合えず、この小屋はまだ使えるわね」
中で過ごすと発情とか付かなかっただけラッキーなのだ。しかも空間倉庫に入るということは持ち運び可能な小屋なのである。
「遠出しても、家で寝れるのは良いかしら。」
ピンク色の小屋なんてそこら辺に建っていたら目立ちまくるかもしれないが。一応後でカモフラージュの方法を考えることにしよう。小屋を再び仕舞う。
「小屋がなくなったら拠点って感じがなくなっちゃったわね……。」
一応巨木を覆う巨大回転刃草とかあるけど、これは異常だ。
そう言えばこれも持っていけるのだろうか。
あたしは拾えるものは何でも拾う主義なのだ、なんて思ったが、再設置出来なさそうなので止めておく。
レッサーグリフォン以外の飛行する生物はまだ見かけていないが、寝ている間の防御はあった方がいいだろう。
まぁそれはさておき、
「今日は、遠出してみましょう。」
いい加減一日以内に戻ってこれる範囲を探しても何も得るものは無いだろう。小屋も持ち運べるようになったのでかなり遠くに足を運んでみることにした。寝る前に小屋のショッキングピンクを覆うためにカモフラージュをする必要があるが。
「さて、準備準備。」
どっちゃりと詰まれているスペルの実とウォーヴァの実と回転刃草の実をほぼ空間倉庫に流し込む。
どんな確率で高Lvの発情が付与されるか知らないが、これだけ詰め込めば4Lv以下の木の実が沢山できるだろう。一応最悪のために皮袋の中にも木の実を詰めておくが。
そして予備のエルシズロッドも全て空間倉庫に入れる。発情スキルがついても相手に悪影響が出るだけなのでむしろ強化と言えるだろう。
最後に小屋を作るときに余った角材を全て入れる。何かに使うかもしれない。
「さて、西南東どちらに行こうかしら」
エルシズロッドを地面に立て重力に任せる。
「うん、東ね。」
途中まで破壊されているから、道中迷わず進めるに違いない。拠点を空っぽにしたあたしは東に向かって旅立つのだった。
◆◇◆◇
あれからかなり東に進んできた。
他のエリアだったらとっくに草原エリアや水林エリアのように別のエリアに変わって、更にもう一回変わりそうなくらい進んできた。
空間樹の鑑定結果に書かれていた空間負荷という謎の言葉を恐れ、空を進んで移動することにしたあたしは途中で魔装グライダーを作ることを思い付き、かなり楽して長距離を進んできたのだ。
「寒いしそろそろ下りて、寝る準備をしたいわね……。」
行くも青の森、戻るも青の森である。
何処か小屋を出せる場所はないか辺りを見渡しながら飛んでいたあたしは、目の前に透明な障壁の様なものが広がっていることに、気が付くのが遅れた。
「ちょっと、なによこれ!」
慌ててグライダーを消して反対側に翔ぼうとしたが、スピードを出しすぎていたため反動で障壁に突っ込み、思わず目を閉じたあたしの脳内にピロンとメッセージが届いた。
》極大迷宮『時空豚魔王の蠱毒な楽園』から離脱しますか?
「は、はい?」
》了承を確認。入り口に転送します。
慌てて目を開くと全身が青い極光に包まれていた。
あまりの眩しさに再び目を閉じる。
少しして瞼に感じる光が弱くなり、再び目を開けるとそこは石でできた門の前だった。
「……???」
しばらく現状をつかみ損ねていたが、何となく今起きていることを把握し終わると同時に、目の前の門から人が数人出てきた。
兵士だろうか、鎧を身に付けて片手には槍を腰には長剣が吊られている。ついに人間との接触である。なんてことを考えていると
「失礼、突入経路と所属クランを教えてくれないか?」
先頭に立っていたチョビ髭を生やしたおっさんが、すこし警戒したような雰囲気で聞いてくる。
突入経路も所属クランもさっぱり解らんが、聞き返しても録な展開になら無い気がする。
前世で鍛え上げた妄想からなる
「あら、少女一人に随分と物々しいのね?まぁいいけど。南から突入したラインス姫騎士団所属のエルシー・イステアリよ」
120%大嘘を相手の顔をしっかり見ながら、流れるように吐く。前世だったら間違いなく噛んでいた所業である。
あたしの言葉を聞き、後ろの兵士とこそこそ相談し始めるチョビ髭。
「南というと……の……から……突入…?」
「そうかもしれません。それにしても……姫騎士団なんて…………」
「だが、あの立ち振舞い中々の……」
「でもどうやって……」
「あの…………格好……るな」
結構話している。どうやら此処から人が出てくるのはかなりあり得ない事のようだ。馬鹿正直に此処は何処ですか?なんて聞いてたら危なかったかもしれない。
話が纏まったのかチョビ髭が戻ってくる。
「えへん。あー、どうやって異端の森を突破したのかは聞かないが、ギルドカードは提示してもらう。」
何だそれ。そんなもん持ってねーよ、なんて言えないので、
「ギルドカードなら途中で失ったわ。あなただって後ろの迷宮がそう楽じゃない事なんて知ってるでしょ?」
腰に手を当て、悪びれなく答える。
もちろん大嘘である。この世界のギルドカードが作成されるタイプじゃなくてステータス表示的な奴だったらアウトの大嘘である。
「ふむ、確かにそうだな。彼の地で形振り構って居たら生き残れんだろう。」
チョビ髭はあたしの言葉を信じたのか、納得したような表情を浮かべた。賭けの成功である。
「では門にて再発行してもらう付いてくるように。」
「はいはい」
何時でも魔装を作り出せるようにエルシズロッドを挿したウェストベルトを触りながらチョビ髭の後を私は着いていった。