ギルドカードを作成した事務所の正面階段を下りて、再びふり返って事務所を見る。
「………ほんと、汚い建物ね。お金、後払いなんて許して大丈夫なのかしら。」
金は金のあるところに集まる。
前世の世界の記憶と照らし合わしても、そこは金の無さそうな場所だった。
とは言えどこかの機関の様なことを言っていたのから、銀貨三枚くらいどうってことは無いのだろうだが。
「さて、何処へ行こうかしら?」
眼前には全く見知らぬ街並みが広がっている。一番近いのはヨーロッパ大陸系の観光地だろうか。
それでも剣やら槍やらを武装して、ピンとした耳を持ったエルフや屈強なドワーフ達が人に混ざって闊歩している街の風景なんて見たことはなかった。
「取り合えずギルドで素材の買い取りとかしてもらおうかしら……。有るか解らないけど。」
何にせよ何も持っていなかった。土地勘も無いし、知り合いもいないし、金もない。
あまりキョロキョロし過ぎないように、石畳の街を進んでいく。
「意外と弱い人ばっかりね……」
人やエルフ、ドワーフと多種多様な種族が見られたので片端から鑑定をかけていたが、どの種族もあたしのステータスより優れているものは居なかった。
一部頑強さとか筋肉とかで負けるステータスはあったが、魔力は一番多くても1000ぐらいだった。
「この街では敵無しかしら?」
すれ違う度に服に手を忍ばせてくる輩が多いのは鬱陶しいが、財布すら持っていないあたしには関係のない話だ。
でも胸を揉むのは動きにくいので止めてほしい。
貞操帯を着けていなかったら下も触られて居たのだろうか、まぁそんな事無いか。
そう考えてる間に薄暗い袋小路にたどり着いてしまった。
「あら、行き止まりね。」
しょうがないので戻って別の道に行こうとすると、前方に薄汚い格好をした男が現れ道を塞ぐ。
「何か用かしら?」
「何か困ってないかい?」
にこやかに話しかけてくる初老の男性。70歳くらいだろうか。ステータスを見ても捩じ伏せるのは楽勝だ。正直に話してしまっても構わないだろう。
「宿が見つからないのよね」
「ならうちに泊まらないかい?オンボロだが外で過ごすよりはましだろう」
「あら良いのかしら?」
「もちろんだとも。私もお嬢さんのように可愛らしい子を家に招待するのは嬉しいからね」
「ならお願いするわ。」
やはり美少女はお得である。あたしは先導するお爺さんの後ろを着いていった。
◇◆◇◆
「さぁ、ここだよ。」
入り組んだ町の迷路を通り抜け、辿り着いた先は少々オンボロな小屋だった。
これならあたしが作った小屋のほうがましかもしれない。
まぁ小屋を置く場所もないのでお世話になるのだが。
「お邪魔するわね。」
中に入ると汚いが、生活感が漂う場所だった。
流石に木から作ったあたしの小屋とは比べ物にならないくらいには過ごしやすそうだった。
「何かいい匂いがするわね」
奥まで進むと、シチューの様な匂いが漂ってくる。
「夜ご飯を作ったんだが今日は作り過ぎてしまってね、誰か友人でも招待して食べようと思ったがお嬢さんが少し困っているように見えたからね。」
お爺さんが机の上にシチューのようなものを盛ったお皿を並べながら答える。
「さて、家では友人を招待した時にある遊びをしているんだが、お嬢さんも夕食前にやってみないかい?」
「あら、面白そうじゃない。」
せっかく家に招待してもらっておいて、断るのは失礼だと思い話だけでも聞いてみることにした。
どうやら目隠しをして目の前に用意されたものを当てる遊びらしい。前世のTVで似たようなものを見たかもしれない。
「当てたら何か賞品は有るのかしら?」
「そうだねぇ。この街にいる間私の家に泊まり放題、でどうだい?」
現金も持っていないあたしにとって中々良い賞品だ。あたしは遊びに挑戦することにした。
まず真っ黒な布で目を隠される。
「何も見えないわね。」
するとカチャカチャと何か金属音がなる。何処からか何かを取り出しているのだろうか。
「さ、さぁ。当ててごらん。」
どうやら目の前にもう置かれたらしい。何かの熱気のようなものがどこか独特な臭いと共に伝わってくる。
「うーん、解らないわね。触ってみたりしても良いのかしら?」
流石にどんな形をしているかも解らずに、物を当てることは出来ない。
「だ、大丈夫だよ。両手でしっかり握ってね。」
若干お爺さんの息が荒いように感じる。
あの袋小路から距離があったので、疲れてしまったのかもしれない。あまり遊びを長引かせても悪いので早く答えを探すことにした。
言われた通りに両手で包み込むと、あることが解った。
それは熱を持っていて、棒状の物であるということだ。前世だったら笑いながらふざけてチンコ!と答えていたかもしれないが、流石に親切なお爺さんがその様なものをぶら下げているわけがない。
「とりあえず、棒状の何かって事はわかったわ。」
「おぉ、当たっているよ。お嬢ちゃんは中々センスがあるね」
しばらく手で擦ったり揉んだりして考えても答えがでなかったため、お爺さんがヒントを出してきた。
「て、手でさわる以外にも嗅いだり、舐めたりすると良いかもしれないね。噛んだらだめだよ?」
お爺さんがそう言うので試しに臭いを嗅いでみると、ツーンとした臭いがする。流石にこれを舐めようという気分はわかない筈なのだが、自然と舌が伸びてしまった。
「しょっぱいわね……」
舌先で軽く突っついて見ると舌がピリピリと痺れる。
お爺さんから悪意は感じないが、いい加減止めたくなってきた。
そう思いながらも舌は勝手に動き、ソレの回りをレロレロと舐め、ついに口で加えてしまった。
ちゅうちゅうと刺激を与えていると、ソレがいきなり膨れ上がり、口のなかに液体をぶちまけた。
「……苦いわね。」
吐き出そうとしたのだが、スペルの実を食べ続けたせいか、苦いにも関わらずすべて飲み干してしまった。
「はぁ、はぁ……。飲んじゃったんだね。何だか解ったかい?」
「いいえ、全然わからなかったわ。」
もしかしたら前世の世界には無かったものなのかもしれない。
刺激を与えると精子そっくりな汁を出す人肌ほどの暖かみを持った棒状の肉なんて、ぺニスしか浮かばないが、スペルの実というふざけた存在もあったのだから恐らくあるのだろう。
それにスペルの実とは味が少し違って美味しかった様にも感じられた。
「明日も試しちゃだめかしら?」
あわよくば宿も確保できる頼みである。
「勿論だとも。また同じものでお嬢ちゃんに挑戦させてあげよう。」
目隠しを外してくれたお爺さんに聞いてみると喜んで承諾してくれた。
それからあたしたちは夜ご飯を食べることにした。
「美味しいわ。」
「そうかい。それは良かった。」
お爺さんはあたしが食べるのをニコニコしながら眺めている。久しぶりに人間らしい食事をした気がする。
食事を終えるとお爺さんは台所の方に消えて、数分後コップを持って戻ってきた。
「あたしだけ良いのかしら?」
「君のために搾ってきたミルクだから遠慮せず飲んでいいよ。」
そう言ってお爺さんが渡してきたコップを覗き込むと、黄ばんだ液体がドロリと満タンまで注がれていた。
地球の牛と違って、此方の牛は品種改良がされていないのかもしれない。
一口飲むと、口の中が生臭い匂いで一杯になった。貰っといてアレだが完全に精液の味である。心なしか魔力が回復していくような気がした。
「か、変わった味ですね。」
そう答えるとお爺さんはミルクを出すのがもう歳だからあまり美味しくないのかもしれないと悲しげな表情をしたので
「いえ!あたしはこのミルク大好きです。毎日牛乳瓶3本くらいのみたいです!」
と答えると気持ち悪いほど満面の笑みで喜んで
「明日、日中も飲めるように用意しておくよ」
と答えてくれた。
少し早まったかもしれないが、寝床はちゃんと鍵つきの部屋を用意してくれたので、安心して眠ることができた。