「この街道の右手に、そろそろ見えてくるはずね……」
あたしは街の外に出て、地図を眺めながら歩いていた。
ロブ爺から貰った羊毛紙の地図に、迷宮狂いのギルド職員が更に書き込んでくれたお陰でこのあたりの迷宮の位置は手に取るように解る。
「小鬼の花園だったかしら」
周辺には屋台が幾つか並び、冒険者たちが迷宮探索の為に覗きこんでは冷やかしている。
「なんか、道の駅みたいね……。」
乗合馬車の待機場に、食事処まである。
煩雑に刀剣が詰まれた武器屋は、修学旅行で見かけた木刀を売ってるお土産屋に見えてしまった。
あたしも迷宮探索の為に何かしら道具を買ったりしたかったが、現金0の貧困少女である為何も買うことができない。魔力がなかったら冒険者にすら成れず、今ごろ春を売る羽目に成っていただろう。
「さて、あれが入り口ね。」
空中に書かれた魔方陣の中に消えていく人々が列をなしていて、魔方陣の手前にいるギルドの警備員にギルドカードを見せている。
ここに並べば迷宮に入れるらしいのであたしも並ぶ。
待っている間暇なので鑑定を使うと、警備員の称号に犯罪者があった。
……内部犯?替え玉?
どちらにせよこの迷宮で盗賊が蔓延ってるのは間違いないようだった。少し待っていると順番が回ってくる。
「やぁ、小鬼の花園へようこそ。お嬢さんはソロで潜るのかい?」
「はい。採取だけなので」
「中迷宮でソロってことは結構腕に自信があるのかな?……あれ、まだFランクじゃないか。」
「逃げ足には自信があるので大丈夫です。」
「うーん、ゴブリンにやられたりしないようにね?君みたいな可愛い子が魔物にやられちゃったら勿体ないから」
「大丈夫です。」
一応心配してくれたようだった。思ったよりいい人なのかもしれない。
魔方陣に手を当てると
》中迷宮 「小鬼の花園」に侵入しますか?
と脳内に響いたので肯定する。
》了承を確認。入り口に転送します。
一瞬フワッと浮いたと思うと目の前が薄暗い土壁になっていた。極大迷宮の時より転送のエフェクトがショボかった気がする。
小鬼の花園は洞窟型の迷宮で、内部は光苔のお陰でうっすら明るく、出てくるモンスターはどれもゴブリン系統らしい。
ついでに死体を放置してもアンデット化しない!あれはあの極大迷宮の特徴の一種だったらしい。
迷宮狂いの話も少しは役に立つ。あたしは早速エルシズロッドを引抜き、いつでも魔装が展開できるように魔力を込めると、洞窟の奥に向かって歩き出した。
しばらく歩いているとゴブリンの死体が落ちていた。他の冒険者がやったようだ。こういった死体も普通の迷宮ならいずれ吸収されて無くなるそうだ。
つまり近くに冒険者が居るということだ。まぁアレだけ並んでいたのだから当たり前だが。
土の洞窟は矢鱈に入り組んでいて先が見通し難いから気を付けることにしよう。
そう思って進んでいると、少し開けた場所に出た。
辺りを見渡して見ると、奥の方でゴブリンに囲まれている冒険者達がいた。
ゴブリンごときに苦戦するなら囲まれた時点で死ぬし、囲まれて死なないならゴブリン相手に苦戦しない筈だ。
怪しんだあたしは鑑定を使ってみると、やはりその冒険者達の称号に犯罪者があった。
全部まとめて殺処分でいいわね。
そう思ったあたしは深紅の弓を作り、冒険者から順番に射殺した。
「ゴブリンに囲まれていなかったら避けれたのに……」
まぁ敵に情けは不要である。
転生してからの初めての殺人だったが、特に不快感はなかった。
◇◆◇◆
角から出てきたゴブリンリーダーの脳天にスローイングナイフを突き刺さる。これで何体目だろうか。
迷宮内に存在する魔物を間引くと迷宮の拡大を防げるらしいが、その気がなくても見つかると面倒なことになるので結局間引く羽目になっている。
「花園って蕾すら生えてないじゃない……」
途中下り坂を数回降りたので結構深層に降りてきていると思うのだが全く花が見つからない。
そろそろクエスト達成料より、道中で返り討ちにした盗賊から奪い取ったお金の方が多くなってしまいそうだ。
因みに装備品もきっちり空間倉庫に回収している。臭そうな革鎧や下着は捨てたが。
エルシズロッドを回収しに行く途中で、またゴブリンを見つけたのでナイフを投げつけ殺害する。
あたりの生き物が死滅したのか、無音になると遠くで行われている剣戟の音が拾えるようになった。
「誰かが戦っているのかしら?」
ゴブリンの群れに手子摺るふりをしていた盗賊を思い出して深紅の長剣を作る。
しばらく進むと少し開けた空間になっていて、周りには琥珀のような蜂蜜色の結晶が10個壁に埋め込まれていた。そこでは冒険者が三人、十体のゴブリンと戦っていた。
あの先頭の男剣士がリーダーだろうか、指示を出してながらゴブリンを切り捨てている。金髪の男は魔法使いのようだ。何やら呪文のようなものを呟くと杖から炎を出している。最後の一人は白髪の少年だった。怯えているのか腰が入っていない。
ゴブリンごときに何を恐れているのだろうか?と眺めていると、後ろの琥珀擬きからゴブリンがぬるりと沸いてきた。
一種の無限沸きなのだろうか?三人がゴブリンを殺すと同じ数だけのゴブリンが後ろの琥珀から産み出される。
どうやらあの三人は相当の時間ゴブリンどもと闘っていたようだ。
積み上げたゴブリンの死体に足をとられ、バランスを崩した隙にリーダー風の男が吹き飛ばされる。
―――頃合いかしら。
エクスタシスロッドを巨大ブーメランにして、10体のゴブリンを死なないように膝から下を切断する。
「こっちに来なさい!」
「すまない!助かった!」
少年と魔法使いが真っ先に離脱して、その後何とか姿勢を立て直したリーダー風の男が戻ってくる。
両足を切断されたゴブリン達は、ゴブゴブともがくだけで追いかけてくることは出来なかった。
「それで、何があったのよ?」
琥珀のあった場所から結構離れた所で振り替えって聞く。
なんとか着いてきた魔法使いと少年は完全に座り込んでしまっている。
「いやぁ根エリアで発見されたラシヌゴブリンの琥珀を狙ってみたけどあんなに出てくるとは思わなくてね。」
「少し見てたけど際限なくゴブリンが湧いてきてたわね……。所で根エリアって何かしら?」
「何って小鬼の花園の根エリアは根エリアだよ。西側から突入すると何故か地下から始まるんだ。不思議だよね。」
「根エリア以外に何があるのかしら?」
もしかしなくても、とんでもなく無駄な時間を過ごして居たのかもしれない……。思わず疑問を口に出してしまう。
「おや、ここの迷宮は初めてかい?入り口の警備が教えてくれるはずなんだが…。小鬼の花園は西から入れる根エリア。北から入れる花エリア。東から入れる茎エリア。三つのエリアからなる中迷宮なんだよ。」
リーダー風の男が壁を鞘で削りながら説明してくれる。
「南は入れないの?」
「この迷宮が成長したら入れるようになるんじゃないかって言われているよ。」
ゴブリンごときにやられそうになっていた癖に、中々ベテランのオーラを漂わせている。
「あたし、小鬼花の雄蕊探しているんだけど……」
「ええっ!?き、君が使うのかい?そうか、どうりでソロ……。ごほん。小鬼花の雄蕊なら花エリアで採れるよ」
助けた代わりと情報を請求したらドン引きした様子を浮かべながら教えてくれた。別に依頼で採取しにきただけなのだが……。
「そう、なら一度この迷宮から出ないとね。」
用がすんだので別れようとすると、慌てて引き留められる。
「ちょっと待ってくれ!」
「何よ?」
「正直仲間もかなり消耗してしまってね、どうせ迷宮から出るなら一緒に着いていっても構わないかい?」
確かに魔法使いのおっさんはかなりキツそうな顔をしているし、少年は前屈みになって辛そうにしている。
鑑定しても怪しい結果は出ないから大丈夫そうだが……。
「なら銀貨3枚で良いわよ」
ギルドカード発行費だけでも確保しておくことにした。
「や、安っ!それで良いのかい!?ありがとう!君は私達の命の恩人だ!」
感動したように抱き締めてくる。これってセクハラじゃないだろうか。……というかもっと吹っ掛ければ良かったな。
「良いからさっさと行くわよ。早くしないと花エリア行く時間が無くなっちゃうじゃない。」
リーダー風の男を振り払い、少年に手を差し伸べる。
「あっ……。あ、ありがとうございます……」
立ち上がっても手を離さないこの少年も、中々変わっている気がする。
じーと見詰めても手を離さない。
しょうがないので離せと手に力を込め少年の手をもみもみと握ると、もみもみと力を込め握り返してきた。
違う、そうではない。この子は天然なのだろうか。
リーダー風の男と魔法使いの男を見ると既に入り口に向かって歩き始めているので、しょうがなく手を繋いだまま追いかけるのだった。
エロシーン書けないっすねぇ(くそ雑魚作者)
取り合えずほんへ適当にかき連ねて後からエロシーン足せたら足すゾ~