くそ雑魚ゴブリンの斬首に成功してから2時間後。あたしは木の上にいた。
「電気の無い世界がこんなにも暗いなんて」
巨木の枝に腰掛けながら呟く。結局あの後殺害現場から離れながら寝床を探したのだが、まともな寝床を見つける前に辺りは闇の帳に沈んでしまった。
聞いたことの無い声が空から聞こえ、思わず身体の動きを止める。地上からも上空からも見えずらいであろう巨木の枝に今日の寝床を作ったが、どうやら今夜は熟睡出来そうにない。
ぶら下がる蔦を加工して作った寝床に座りながら、皮袋の中から木の実を取り出して食べると、
「にがっ」
生臭い香りが口の中に広がり思わず顔をしかめる。
「完全にアレの味ね。エルシーちゃんこんなのよく食べてたの……?」
皮袋の中には神様が用意してくれたのか、携帯食料に水が入っていたが、節約のために木の実を食べたことを後悔する味だ。
「さて、明日はどうしようかしらね……」
行く宛は全くない。そもそも人の町が近くにあっても行けない体質なのだ。最悪でもエルシーの美しさを隠せる全身ローブみたいなものが必要になる。
「それでも入街審査で脱がされて詰みそうね……」
はやく天使の加護のレベルを上げないと、もはやどうしようもないことが解る。手持無沙汰にティラスの両手剣で自分の顔を映してみる。
「こんなかわいい子を見てHな妄想をするなって無理な話よね……」
滑らかな銀髪にピンク色が混ざった可愛らしいツインテールが、小顔で整ったエルシーの魅力を最大限に引き出している。
「あたしだって妄想する。誰だってそーする。」
エロゲーの女主人公がブスな訳が無かった。その上あたしには数々の呪いが……ハァ。
前途多難な人生にため息が漏れそうなのを、木の実を放り込んで押さえる。今度は甘かった。
「そう言えばさっきの戦闘でレベルアップしたりしたのかしら。ステータス的にかなり格下だったけど。」
何か良い知らせが無いか考えていたら先程の戦闘?が浮かんできた。例えどんなに格下相手の戦いであっても、経験は積めたはず。特にやることも無いので鑑定を使うことにした。
―――――――――
氏名:エルシオーネ・イル・ステアリート・エキュ
性別:女性【処女】
Lv:14
年齢:14
生理周期:18
身体状況:安全日
肉体開発度:120
子宮状況:未使用且つ屈服済
パラメータ
体力:50
持久力:10
筋力:30
技量:35000
敏捷:10000
攻撃力:40000
防御力:25
魔力:99999
生体スキル
天使の加護Lv1
羞恥の呪いLv1
霊獣契印(2刻)Lv1
羞恥魅了の呪いLv1
少女性徴の呪いLv1
生殖力アップの呪い(+10)Lv1
魔法キーLv1
避妊魔法強制無効化Lv1
魔法キー強制解放Lv1
危険日強制告知Lv1
鑑定能力Lv1➡Lv2
戦闘スキル
剣術Lv99
両手剣術Lv99
魔導剣術Lv99
魔力操作Lv99
体術Lv03
魔道具知識Lv20
疾走Lv65
――――――――――
「…相変わらず見にくい鑑定結果ね。」
鑑定結果は目の前にホログラムのように投影されるのだが、あまりの量に視界の大半を埋め尽くす。その上肝心な鑑定結果すら見にくい。
「これじゃ戦闘中に鑑定なんて無理じゃない」
ため息が漏れそうになりながら鑑定結果を見ていると鑑定能力のLvが上がっていることに気がついた。
「まだ数回しか使ってないのにもう上がったのね。」
便利な能力のLvが上がるのは嬉しいが、その情報は呪いのLvも上がりやすいぞと言っているようで不安になる。不安から逃れるようにあたしはレベルアップした鑑定能力をたしかめた。
「鑑定能力がLv2になったことで、見たい鑑定結果だけ表示できるようになったのと、少し性能が上がったのね。」
最初からそれぐらい出来るようにしろ、とか思ってはいけない。どうせあの神様がくれた能力なのだ。取り合えず自分用に鑑定結果の表示を変えて見る。
―――――――――
LV:14
体力:48/50
魔力:99990/99999
―――――――――
「シンプル過ぎたかしら。」
でも戦闘中とかはこれだけで良いはずなのだ。自分が何ができるかなんて鑑定しなくても解っている。
戦う相手の戦闘スキルが解るのは良いことだが、自分のステータス表示は客観的に把握できたら嬉しいLVと体力と魔力だけで良いと木の実を食べながら思う。
「次に敵の鑑定結果はどんな風に表示させようかしら」
格下のゴブリン相手に暗殺するならまだしも、不意の戦闘に陥ったときに視界を悪くするのは自殺行為だ。
不意の戦闘時に表示する鑑定結果を決めておく。
――――――
Lv:
筋力:
魔力:
敏捷:
生体スキル
戦闘スキル
――――――
こんな感じだろうか。筋力と魔力さえ解れば相手の危険度は解るだろう。弱かったらその後じっくり鑑定すれば良いし、ヤバかったら逃げる。敏捷的に無理そうだったら戦うと。
「完璧ね!」
一先ず完成した鑑定能力に気分が良くなり木の実を口に放り込む。
「うん、苦いわね。」
ねっとりとした粘液が木の実を噛む度に滲み出る。その生臭い液体は植物由来とは思えないほどこってりしていて雄のソレを連想させた。食べていて癖になる味だ。
「ゲームのエルシーちゃんだったら発情してたりして…」
下らない事を言って気分を反らす。実は先程から下腹部が熱く成っている気がする。
「この木の実、本当に大丈夫なのかしら……」
身体に埋め込まれた知識を鵜呑みにして食べてしまったが、鑑定を使っていなかった。
「そう言えば生き物以外に鑑定を使ってなかったわね。」
取り合えず大量に集めてしまった木の実を鑑定することにした。
――――――――
スペルの実
ヴィータの木に成る二種類の木の実の一つ
効果:魔力微回復
副作用:一定確率で発情
備考:ウォーヴァの実と同時に食べるとスキル獲得
――――――――
どんぐり
ただのどんぐりである
――――――――
ウォーヴァの実
ヴィータの木に成る二種類の木の実の一つ
効果:体力微回復
副作用:一定確率的で鎮静
備考:スペルの実と同時に食べるとスキル獲得
――――――――
「発情したり、鎮静したり……」
誰も居ないのに恥ずかしくなる。人間なのに浅ましくも発情していたという事実があたしを責めるのだ。
発情するなんてまるで獣の様ではないか。
……なんだか思考がエルシーちゃんに近づいている気がする。
いや、よそう。頭を振ってアイデンティティーが崩壊しそうなろくでもない考えを振り払う。一人の夜はいつも余計なことばかり考える。
気分を反らすように手元にある凸とした木の実と凹とした木の実を合体させてみる。
これはこれで……余計な事を引き起こしそうだ。
「これは明日他の動物に食べさせて、なんのスキルを獲得するか確かめることにするわ。」
只でさえ呪いが多重に掛けられているのだ。この上に天使の加護のレベルを上げても対処できなくなりそうな、糞スキルを入手する可能性は避けたい。
灰汁抜きもせずどんぐりを食べるのは無理なので、携帯食料を取り出したあたしはムシャムシャと食べるとそのまま横になった。